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Hautarztpraxis Dr Chen プライベート皮膚科診療院 Dr. チェン
Fr. 19. Okt. 2018

そのとき時代が変わった - 敗戦からベルリンの崩壊まで

旅行ブーム到来 Die Reisewelle

1955年
いまや世界の果てに行っても、必ず一人には出会うといわれるドイツ人観光客。彼らの旅行ブームは、戦後、経済復興と高度成長を遂げ、収入と有給休暇が保証された1950年代に始まった。

旅行代理店の登場

西ドイツの1950年代は、東西冷戦の緊張が高まるなかで、個々人が日々に小さな幸せを見つけた時代である。経済復興と高度成長によって完全雇用が可能になり、戦争難民たちは仮住まいのバラックから脱出。工場ではベルトコンベヤーによる流れ作業が効率を高め、労働者には有給休暇が保証された。

こうして、旅行ブームを生む条件は整ったのである。「君知るや、レモンの花咲く国を」とゲーテが『イタリア紀行』にしたためた18世紀に、南欧旅行ができたのはひと握りの有産階級だったが、20世紀は大衆の時代。収入と休暇を保証された市民の関心が、外の世界へ向かっても不思議ではない。そのニーズを真っ先にキャッチしたのが、団体旅行を企画して列車までチャーターするドイツ初の旅行代理店「トウローパ(Touropa)」だった。

「低所得者にも休暇を」

寝台車の3段ベッドでくつろぐ若い女性、コンパートメントのソファーで談笑する夫婦、客車の横腹に大きなトウローパのロゴ。同社のポスターに惹かれ、西ドイツ人はまずバイエルン州キームガウ(Chiemgau)へ、やがてオーストリア、そしてイタリアへと観光を始めた。

ポスター
©touropa.com

「旅行ウェーブ(Reisewelle)」と称されたこのブーム。それは、元ブレーメン労働局長カール・デーゲナー(Dr. Carl Degener)の功績でもある。「低所得者にも手が届く価格での休暇を」を持論とする彼は、すでに1920年代、北ドイツからキームガウの山村ルーポルディング(Ruhpolding)へと向う団体列車を送り出していた。そして西ドイツ建国後、彼がドイツ観光局(DER)、バイエルン州観光局(ABR)の支援を受け再開した観光事業。それが51年にトウローパとして巣立ち、やがていくつかの競合代理店と航空会社を抱きこんで大規模な旅行会社へと成長する。社名は「Touristik Union International AG」。これが、現在もドイツの観光業をリードするTUIなのである。

航空会社LTUもこの時代に産声を上げた。55年にフランクフルトで設立されたこの「Lufttransport Union」社が、1号機をシチリア島へ飛ばしたのは56年3月2日。乗客はたった36人だった。やがて60年、マヨルカへの定期便がスタート。当初は年間10万人だった西ドイツからのマヨルカ観光は、その10年後、185万人に膨れ上がる。

はるかに遅れて日本にも

このブームを日本人の海外旅行史と比較すると、いかに西ドイツ人が早く、そして自由に国境を越えていたかが見て取れる。日本では、戦後から東京オリンピックが開催された64年までの19年間、業務を目的としない海外旅行はできなかった。しかもパスポートは一次旅券のみ。やっとオリンピックを機に自由化されても、渡航は一人年1回だけで、外貨の持ち出しは500ドル以下と制限されていた。

大卒の初任給が3万円に満たなかった当時、ハワイ1週間のパック旅行は35万円。一般庶民には手が出ない価格である。大型飛行機の登場と変動相場制による円高が始まった80年代に、やっと海外旅行は高嶺の花でなくなるが、同じ敗戦国でも島国日本と地続き国ドイツでは、大衆ツーリズムの発展に10年以上の開きがあった。

フライトの乗客数で見ると、現在ドイツからロンドンへ年間400万人、マヨルカへ370万人、トルコのアンタヤへ280万人が出かけている。ロンドンへはビジネス客が多いことを考えれば、休暇先の人気ナンバーワンはやはりマヨルカだ。

音楽家ショパンがフランスの女流小説家ジョルジュ・サンドと滞在した1838年を思い出すまでもなく、マヨルカは昔からの観光地である。現在はドイツ人と英国人の2週間格安パックツアー客で膨れ上がり、一時はドイツのマヨルカ買収話まで噂になった。

今後もドイツ人の旅行熱は決して衰えないだろう。 彼らにとってバカンスは権利、ステータスだからだ。 失業者が労働局に3週間の休暇補助金を申請した例さ えある。

デーゲナーが「ドイツ人は満腹したら次は記録的な旅行者になる」と予告したのは1949年。その言葉通り、ドイツは2007年も国別外国旅行支出で世界一と なっている。

14 März 2008 Nr. 705

 
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高橋容子 ドイツニュースダイジェスト創刊時からの常連ライター。日本で文芸映像翻訳を手がけ、渡欧。英・独・豪と移り、現在はスペインのバスク州暮らし。 www.geocities.jp/takahashi_mormann
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