instagram Facebookツイッター
ロンドンのゲストハウス
Sa. 29. Feb. 2020

そのとき時代が変わった1945年敗戦から1989年ベルリンの壁崩壊まで

高橋容子 ドイツニュースダイジェスト創刊時からの常連ライター。日本で文芸映像翻訳を手がけ、渡欧。英・独・豪と移り、現在はスペインのバスク州暮らし。

性革命 Sex Revolution

1967年
欧米の1960年代は改革の時代だった。ビートルズ、べトナム反戦、マリファナ、キング牧師、ヒッピー、ボブ・ディラン、長髪、ミニスカート — 戦中・戦後に生まれたベビーブーマーたちは既成の価値観と体制を激しく批判し、伝統文化に対抗するカウンターカルチャーを生み出していた。

禁欲から解放へ

公衆の性道徳が大きく変わったのもこの時代である。西ドイツで青少年向けの雑誌「BRAVO」が創刊されたのは1956年。雑誌には映画スターやミュージシャンなどの情報と並んで、医師とセラピストが性行動について読者の相談に乗るコーナーが設けられていた。このコーナーは後に、アドバイザーのペンネームが代名詞になるほどの人気シリーズになった。お近くの中高年男性に「Dr. Sommer」を知っているかと尋ねてみてほしい。ニヤリとした反応が返ってくるはずだ。

西欧社会の性道徳にはそれまで、キリスト教の性倫理が深く刻印されていた。夫婦の性行為は生殖との関係から神聖とみなされはしても、快楽を得るのは罪。特にプロテスタントの性倫理は禁欲的でさえあった。戦後、そこに風穴を開けた1人の女性が西ドイツにいたことを忘れてはならない。

その名はベアーテ・ウーゼ。現在、世界に進出するアダルトショップ「Beate Uhse」の生みの親である彼女は、敗戦の混乱期を生き抜くために「避妊解説書と性教則本とコンドーム」をセットにした商品を発売し、教会と法に真っ向から戦いを挑んだ女性であった。

一方でポルノの女王、他方で性の啓蒙者と呼ばれた彼女の功績によって、西ドイツ人の性モラルは徐々に罪の意識から離れ、経口避妊薬が西ドイツで61年、東ドイツで65年に許可された時、解放への道を一気に進み始めたのである。

サブカルチャーとして確立

オールヌードの後ろ姿をカメラに示し、壁の前に並ぶ男性4人、女性3人、幼い男の子が1人。彼らは壁に両手を付いて前かがみの身体を支え、端に立つ男の子だけがカメラの方を振り向いているーー。

この印象的な写真によって、67年1月12日に西ベルリンで設立されたヒッピー共同体「コミューン」は不滅の記憶を残すことになった。彼らは親世代の性道徳をナチズムの継承であると糾弾し、「フリーセックスによってファシズムとノイローゼを同時に克服しよう」と謳う。彼らは反権威、反秩序を叫ぶ挑発的なサブカルチャー集団だった。メンバーの中でもひときわ美貌のウシ・オーバーマイヤーは性革命のイコンとして脚光を浴び、後にフォトモデルとして活躍。ローリングストーンズのスーパーグルーピーとしても名を残している。

一方、キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と社会民主党(SPD)の大連立政権下で、ケーテ・シュトローベル保健相(SPD)が性科学映画を製作させたのも同じ67年だった。監督エリッヒ・F・ベンダー、タイトルは『HELGA』。主人公ヘルガの結婚、妊娠、出産を通して、男女の違い、受精、受胎、避妊、妊娠中の性生活、出産までの基本的な性知識を解説した作品で、ズーム撮影された出産シーンに男性観客が気を失ったことでも知られる。日本でも『女体の神秘』という邦題で大ヒット。西ドイツの国策映画が世界に先駆けた、きわめて珍しい事例と言えよう。

映画『Helga』の一幕
映画『Helga』の一幕。主人公ヘルガを演じるのは女優ルート・ガスマン
Bildquelle:Deutsches Filminstitut - DIF

国を挙げてのセックスウェーブ

ジャーナリストのオスヴァルト・コーレが制作した映画『Das Wunder der Liebe(結婚の創造)』の撮影も、この年に行われている。上映開始は68年2月。夫の早漏に妻が不満を募らせる夫婦や、建築家である夫が仕事のために妻と子どもをないがしろにする夫婦など、7組の夫婦の性生活をオムニバス形式で追ったこの映画は、保守層と教会から非合法のポルノ映画であるとして集中攻撃を受けることになった。

しかしそれが逆効果を生み、西ドイツでは600万人の観客を動員。オランダでは推薦映画に指定され、スイスでは上映を禁止した州から許可された州へ観客を乗せていくチャーターバスまで出現した。

前述のシュトローベル保健相が小中学校に性教育を導入するよう命じたのは、この翌年のことである。69年7月17日、本屋には全国統一の教科書となる「Sexualkunde-Atlas(身体の地図)」が一斉に並んだ。

そして71年、いまやカルトシリーズにも数えられる『Schulmädchen-Report(女子学生(秘)レポート)』の第1作が登場、素人演じる女子学生が性体験のエピソードと自慰について堂々と語るに及び、性革命はSexwelle(セックスウェーブ)の高波になった。

ひとたび必要性を認めれば官民が共同で事に当たり、科学的かつ組織的にそれを進めて後戻りしないーーそんな国民性は性解放にも発揮されたようである。

29 Mai 2009 Nr. 767

 

高橋容子 ドイツニュースダイジェスト創刊時からの常連ライター。日本で文芸映像翻訳を手がけ、渡欧。英・独・豪と移り、現在はスペインのバスク州暮らし。 www.geocities.jp/takahashi_mormann
Japan Airlines 2020年カレンダー販売
ドイツ・デュッセルドルフのオートジャパン 車のことなら任せて安心 ドイツからのお引越しはグローバス・リロケーション ロンドンのゲストハウス 日本メディカルセンター" 習い事&スクールガイド バナー

ロンドンのゲストハウス