Hanacell

Nr. 19 言葉の習得、子どもの能力

今回はテーマを変えて、読者からのお便りを紹介したいと思います。「自分の子どもにもっと日本語を学んでもらいたい」というドイツに住む日本人のお父さんのお悩みでした。国際結婚をして子どもが生まれると、最初はバイリンガルで話しかけるご夫婦が多いようですね。しかしながら、子どもが現地の幼稚園に通い始めると、やはりその国の言葉が有利になってしまいます。現地以外の言葉を習得させるには、意識的な努力が親にも子どもにも必要になってきます。テキストだけの学習では覚えたことが右から左へと抜けて行ってしまいますが、日本語の聞こえる環境があると学習の成果は違ってきます。

学校は学問の場所、生活指導は家庭の役目
イラスト: © Maki Shimizu

日本から赴任するご家族の場合、幼稚園や学校選びは大きな悩みの1つですね。お子さんが園児であれば、「遊びながら外国語が身につく」「自宅のそばに友達を作りたい」などの理由から、日本人幼稚園が近くにあっても、現地の幼稚園を選択するケースは少なくありません。送り迎えするお母さんにとっても、異文化を垣間見ることができて楽しいようです。ただ、園児期2~3年間で身につけた外国語は、日本に帰った途端に驚くほどの速さで忘れていきます。「その速さには笑うしかない」と、あるお母さんは言っていましたが、すぐに言葉を覚え、ネイティブレベルで会話をしていた子どもであっても、年齢が低いほど、忘れるのも速いようです。

けれども、子どもの脳というのは不思議なものです。すっかり忘れてしまったように見えて、実は本当に忘れたわけではないという例もあります。

お父さんの転勤で4歳からオーストラリアに移り住んだ日本男子M 君は、現地の友達たちと大の仲良し。自宅以外はすべて英語の世界。唯一の日本語教材は漫画『ドラえもん』でした。小学4年生で帰国したとき、「日本語を熱心に勉強したとは言い難い」とは母親のコメントですが、M君は日本語を学び始めると、同時に英語を忘れていきました。気が付けば、英語なんて言語はすっかり分からなくなってしまい、学校での英語の成績もイマイチ。当時を思い返せば「日本で学ぶ英語はあまり好きじゃなかった」と本人は言います。

学校は学問の場所、生活指導は家庭の役目
イラスト: © Maki Shimizu

ところが、転機が訪れます。「カナダのサマースクールに1カ月間くらい遊びに行ったら?」と父親が中2 のM 君をカナダへ送り出したのです。彼は生まれ変わって帰ってくることになるのですが、まず英語一色の生活が始まると、なぜか英語が理解できる自分に驚いたと言います。さらに別の“異変”にも気付きました。彼自身、まるでネイティブのような発音で英語が話せるのです。「なぜオレは英語ができるんだ?」

この夏以降、彼は自宅で英語しか話さなくなりました。自分に自信を持つようになり、高校も大学も英語を生かした進路へ進み、今では就職した日本企業を退職して20代で独立。経営者として世界中を飛び回っています。

私の娘の場合は3歳で渡独。外ではドイツ語、家では日本語の生活が始まり、バイリンガル風な生活をしていましたが、9歳を過ぎたあたりから日本語の語彙が明らかに貧しくなりました。私の経験では、9歳前後という年齢は、思考するときに用いる言語が決まる1つの節目であるように思えます。彼女はその後、14歳で日本の公立中学校に自分の意思で編入、日本語と格闘しながら今は高校受験生。夢はまだドイツ語で見ているとか。友だちと楽しく過ごせるならば、我が子が何語で話そうと構わないと思う今日この頃です。

最終更新 Freitag, 18 November 2011 14:21  
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