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第18回 法定最低賃金

ドイツで働く被用者の法定最低賃金(gesetzlicher Mindestlohn)が、2017年1月1日から引き上げられます。現在、1時間あたり8.50ユーロのところ、来年から8.84ユーロとなります。法定最低賃金は2015年1月に導入された新しい制度です。金額の引き上げられるこの機会に、概要をご説明いたします。

1)法定最低賃金とは

ドイツでは2015年1月1日から最低賃金法(Mindestlohngesetz)が施行され、全国一律8.50ユーロ(税込)の最低賃金の支払いが義務付けられています。来年1月1日からは、導入後初めて額が引き上げられ、34セント増の8.84ユーロとなります。

雇用者が被用者に法定最低賃金を支払っているかどうかの監査は、関税当局の管轄です。調査官は実態を確認するため、企業を訪問して雇用契約書を閲覧するなど、最低賃金の支払いに関する情報提出を求める権利があります。

2)最低賃金規定が適用されるのは誰か

法定最低賃金は、原則的にドイツで就業する全ての被用者に適用されます。正社員か契約社員か、ミニジョブかパートタイムか、またはどのような役職に就いているかは、関係ありません。

最低賃金は、以下のケースでも適用対象となります。

● 雇用主がドイツ企業か海外企業かに関わらず、ドイツ国内で働いている外国人被用者。
● 学生または職業訓練中の者が、3カ月以上にわたって任意の企業実習を行う場合。
● 職業訓練終了後、または大学卒業後に企業実習を行う場合。
● 長期失業者が再就職した場合。ただ、この被用者が採用前に1年間にわたって失業状態にあった場合には、雇用者は採用直後の6カ月間、最低賃金規定を適用しなくてもよい。

3)例外対象

法定最低賃金適用の例外となるのは、18歳以下で職業訓練を受けていない者と職業訓練中の者(Auszubildende)、または名誉職に就いている者です。実習生(Praktikant)については、学校の授業の一環、または職業訓練や大学の単位取得に際し企業実習が義務になっている場合は、例外となります。さらに、任意で3カ月以内の実習を行う者も対象外です。

4)労働時間の記録義務

労働に対して正当な最低賃金が支払われているかどうかを確認できるように、被用者には一定の記録義務が課せられています。被用者は、労働日ごとに業務の開始時間と終了時間、実労時間を記録します。この記録は、遅くとも業務日から数えて8日目までに書面の形で残し、その後最低2年間は記録を保存することを義務付けられています。記録方法については特別な書式はなく、タイムシートに手書きでも構いません。

全就労者が労働時間を記録する煩雑さを軽減するため、最低賃金法は特に以下の被用者に対して記録を義務付けています。

● 原則的に、ミニジョブを営む者。ただし、家事手伝いの職種は例外となります。被用者の毎月の労働時間が一定しない場合には、雇用者は被用者の記録をもとに、月ごとの実働時間に対して支払いを行います。つまり、ミニジョブの被用者に対しては、月額給与を固定して労働時間のプラスマイナスを翌月に繰り越す「時間口座」(Arbeitszeitkonto)の制度を運用することはできません。
● 「不法就労撲滅法」(Schwarzarbeitsbekämpfungsgesetz)に指定されている業種で働く被用者。具体的には、建設、飲食・ホテル関係、物流、ビル清掃、見本市や展示会ブースの設営・解体を行う企業などです。ただ、この場合にも、被用者の月額税込賃金や、雇用期間などに応じて例外があります。

5)留意点

法定最低賃金を算出する際のベースとなるのは、いわゆる「基本賃金(Grundlohn)」です。雇用契約書や労働協約の中で、毎月の賃金だけでなく休暇手当や12月のボーナスなどの支給を規定している場合は、これらを加えた総額が基本賃金です。つまり、時給計算においては「通常労働時間に対して支払われる全報酬」が基準となるわけです。

注意が必要なのは、これら固定給に加えて、特別手当が支給される場合です。たとえば残業手当、シフト制労働で発生する割増金、夜間・休日・祝日労働手当などがこれにあたります。追加で発生した労働時間、または特別な労働条件(騒音にさらされる環境での業務など)に対して、雇用者は別途手当を支給しますが、こうした特別手当は法定最低賃金を算出する際には計算に入れません。

まとめ

今回は法定最低賃金の概要をご紹介しましたが、最低労働賃金法は導入されて間もないため、概要に沿わない事例では、最新判例を参照しながら個別に検討することが必要になるでしょう。 個々のケースに適正に対応するためにも、当社のサービスをご利用下さい。

(筆者:税理士クリスティーネ・フュッセル)

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