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第27回 「ビットコイン」に関する課税

暗号通貨(仮想通貨)「ビットコイン」が、ここ数年、取引相場で最高値1万7000ユーロを記録するなど、電子取引の支払い手段や投機対象として注目されています。ただ、利用者はビットコインの税制上の扱いについて、これまでほとんど留意しませんでした。そこで今回は、最新の判例に基づき、ビットコインに関する課税について概要をまとめました。ここではビットコインを最も有名な仮想通貨として例に挙げましたが、すべての仮想通貨に適用されるとお考え下さい。

1)投機対象としてのビットコインへの課税

ビットコインは、ドイツでは原則的に、購入から1年以内に売却される場合に所得税の課税対象になります。この際、ビットコイン取引によって発生した利益は、投資資本のように、固定資産から発生した収入として一律25%のいわゆるキャピタルゲイン税が課税される形ではなく、個人としての売却行為から発生した所得という形で扱われます。ビットコインと、その他の個人売買による利益の合計額が年間600ユーロを超えなければ、非課税の扱いを受けることが可能です。また、ビットコインを1年以上所有すれば、売却して利益が発生しても所得税の課税対象にはなりません。

ビットコインの売却利益とは、購入額と売却額の差額から、売却時のコストを差し引いた額です。購入額とはこの場合、ビットコインの購入価格にトランザクション手数料などの費用を加算したものを指します。ビットコイン取引から発生した利益がどの年に課税されるかは、ビットコインの売り手が売却利益を実際に受け取った時点、原則的には銀行口座への着金日をもとに判断されます。

ビットコインを何回にも分けて購入した場合には、「最初に購入したビットコインが最初に売却される」(ファースト・イン、ファースト・アウト)という原則に従って売却利益が確定されます。以下に例を挙げます。

Yさんは2017年1月10日に1200ユーロで1ビットコインを購入、同年11月8日には相場上昇に伴って、さらに1ビットコインを6250ユーロで購入しました。Yさんは同年12月16日に、1万5000ユーロでそのうちの1ビットコインを売却しました。

課税対象となる売却利益は、1万3800ユーロ(1万5000-1200)です。課税上は、最初に購入したビットコインが最初に売却されたことになるからです。ビットコインが購入から1年以内に売却されたため、1万3800ユーロの投機利益に対して所得税が課せられます。

支払い貨幣としてビットコインを利用したり、ほかの暗号通貨と交換したりすることも、税制上はビットコインの売却とみなされます。この場合の売却利益は、ビットコインを手放すことで得た代償の価値となります。

ビットコイン取引で発生した損失も、個人売買によるその他の利益との相殺、という形で課税対象額に計上され、ビットコイン取引の別件で利益が発生していれば、これも併せて相殺されます。

2)事業資産としてのビットコイン

① ビットコインの売買

ビットコインが企業資産として保有される場合には、ビットコイン取引の収入が事業行為から得られる所得の一部とみなされ 、全面的に営業税または法人税の課税対象となります。上記でご説明した1年間の限定ルールは、事業所得には適用されません。しかし、売却時の「ファースト・イン、ファースト・アウト」の規定は、事業資産においても有効です。

ビットコインで発生した損失については、納税申告の際に全面的に控除が認められ、その他の利益と相殺されます。

② マイニングに対する課税

ビットコイン取引におけるトランザクション(所有権移転)を処理する作業は「マイニング」(採掘)、その作業を行ってビットコイン収入を得ている人は「マイナー」と呼ばれています。トランザクションに対するマイナーへのビットコイン報酬と、その売却または支払い手段としての利用は、課税上、上記とはまた異なる扱いを受けます。トランザクション処理には大規模な計算能力が必要で、かなりの電力を消費するため、ドイツの税務署では原則的にマイニングを「継続的な事業行為」と捉えています。このため、ビットコインは事業資産とならざるを得ず、その売却利益は事業収入とされます。この利益は所得税申告の際に申告義務があり、またドイツでは営業税も納税しなければなりません。

この規定は、それほど費用をかけずに自宅でトランザクション処理できる暗号通貨には必ずしも適用されません。従って、暗号通貨の取引を事業行為とみなすかどうかは、個々の事例で判断されることになります。

3)ビットコインに対する売上税

ビットコインの利用には、基本的に売上税は計上されません。ビットコインを支払い手段として直接利用する場合にも、売却、つまり普通の通貨と交換する場合にも、売上税は発生しません。マイニングについても同様に、売上税適用の前提となる「サービスと対価のやりとり」が発生しないため、適用から除外されます。これに対し、ビットコイン取引のプラットフォームを提供する事業者の営業収入は、売上税の課税対象となります。

暗号通貨に対する課税や所得税申告などについては、お気軽に当社までお問い合わせ下さい。(筆者:税理士ファブリス・ベーナー)

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リンケ・トロイハント会計税理事務所

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