ドイツワイン・ナビゲーター


醸造の手法 赤ワインの場合

この章では、最近ドイツでも一般的になってきているフランスの伝統的なスタイルにならった赤ワインの醸造法についてご紹介しましょう。

赤ワインを仕込む場合は、まず収穫したぶどうの梗を取り除きます。除梗・破砕機で梗を取り除くと同時に、粒を軽く破砕するのが一般的です。この潰したぶどう(マイシェ)を発酵槽に入れ、野生酵母による自然発酵を待つか、培養酵母を加えて発酵を促します。造り手によっては、果汁の循環をよくし、程良いタンニン分を得るため、ぶどうの一部を除梗せずに加えたり、除梗後の梗を少し加えることもあります。

アルコール発酵中、果皮からは主に色素や味覚物質が、また種や梗からはタンニンが抽出されます。これらを十分に抽出したい場合は、醸し期間を延ばします。その間、定期的に発酵槽の下部にたまるワインを下から抜き、果帽と呼ばれるぶどうの固形物が浮いている上部に流す液循環(ルモンタージュ)や、櫂などを使って果帽を崩す作業(ピジャージュ)を行います。実施方法や頻度は造り手によって様々で、作業は機械化されている場合もあります。発酵および醸しの温度は20~30度くらいです。発酵とそれに続く醸しの期間は、合わせて3、4週間程度。その後、圧搾前に発酵槽の下部からワインを抜き取り、残りを圧搾機で搾ります。

得られたワインは、造り手の意図によりステンレスタンク、あるいは様々なサイズのオーク樽に入れます。その後、マロラクティック発酵を経て、熟成のときを待ちます。発酵終了後は、樽の底に沈殿した澱を取り除くため、上澄みをほかの樽に移す作業、すなわち澱引きを行います。また、細かな浮遊物を取り除くため、清澄剤などを加えてワインを清澄させることもあります。

1980年代後半からは、ドイツでも小型のオーク樽が徐々に使われるようになりました。この小型オーク樽は通常225リットルですが、中には300リットル、500リットルサイズの樽を使用している造り手もいます。これらの樽はドイツではバリックと呼ばれ、フランスや米国、その他の国のオーク材で造られています。最近ではドイツ産オークのバリックも造られています。ワインの質によって、オーク香の加わる新樽を使用したり、1度あるいは2度以上使用した樽を再度使用したりすることもあります。このほか、例えば1000〜2400リットル容量の大型のオーク樽で熟成させている造り手もいます。

ボトリングの前には、ワインのブレンド(アッサンブラージュ)を行います。その組み合わせは、複数の樽のブレンド、複数の品種のブレンド、異なる畑の同品種のブレンドなど様々です。バリック・ワインの場合はこの時、最終的にボトリングされるワインに使用されている新樽の割合が決まります。中には、あえて樽香の強い新樽は使用しないという造り手もいます。ボトリング前には、ワインにより、濾過を行わない造り手もいます。ボトリング後はしかるべき期間、瓶熟成させてから出荷している醸造所もあります。

Weingut Meyer-Näkel マイヤー・ネーケル醸造所
(アール地方)

マイヤー・ネーケル醸造所
(左から)マイケさん、ヴェルナーさん、ドロテさん
©Weingut Meyer-Näkel

ドイツの赤ワインの故郷の1つ、アール地方の今話題の醸造所。ギムナジウムの数学&体育教師だったヴェルナー・ネーケル氏が1982年に実家の小さな醸造所を継ぎ、発展させた。現在、2人の娘たち、ドロテさんとマイケさんが醸造所の運営に参画。醸造はマイケさんが父親と一緒に担当している。デルナウのプファーヴィンガート、ヴァルポルツハイムのクロイターベルクなどの特級畑から優れたシュペートブルグンダーを生み出しているほか、南アフリカのステレンボッシュ、ポルトガルのドウロ地方でもワイン造りを行っている。

Weingut Meyer-Näkel
Friedenstr.15, 53507 Dernau
Tel.02643-1628
www.meyer-naekel.de


2008 Spätburgunder Blauschiefer
2008年産シュペートブルグンダー、ブラウシーファー(辛口)

18,00€

2008 Spätburgunder Blauschiefer

マイヤー・ネーケル醸造所が生産している数々のシュペートブルグンダーは、いずれも魅力たっぷり。今回はアール地方の土壌を代表するブラウシーファー(青色粘板岩)で構成される畑のぶどうから造られたシュペートブルグンダーを選んでみた。個人的には、スパイシーさが印象的なヴァルポルツハイム村のクロイターベルクGG(グローセス・ゲヴェックス)が好みだが、お値段も65ユーロと高価。普段飲むには、このブラウシーファーがお薦め。新樽の割合はごく僅か。濃いベリーの香りとトースト香が絡み、タンニンも柔らかく、すっと喉を通る。アール地方ならではのシュペートブルグンダーが楽しめる。
最終更新 Dienstag, 25 August 2015 12:19
 

醸造の手法 白ワインの場合

ワインの醸造方法は、白ワインと赤ワインで若干異なります。今回は、ドイツの白ワインの一般的な醸造法についてご紹介しましょう。

白ワインを醸造する場合は、まず収穫したぶどうを機械で軽く破砕します。ワインの種類によっては梗を機械で取り除いて破砕し、圧搾することもあります。このほか収穫したぶどうをそのまま圧搾することもあります。機械収穫の場合は粒だけをふるい落として収穫するので、そのまま圧搾できます。

圧搾は、潰したぶどう(マイシェ)を圧搾機に入れ、果汁(モスト)を搾る工程です。現在ではほとんどの醸造所が空気圧圧搾機を使用し、時間をかけて種が潰れない程度の低圧で優しく搾っています。事前に数時間マイシェを放置し(スキンコンタクト)、果皮の持つ成分を抽出してから圧搾することもあります。圧搾した後の残り滓(トレスター)は、同名の蒸留酒の素材となります。果汁はタンク内で一晩寝かせるなどして不純物が沈殿するのを待ち、澄んだ果汁だけを発酵させます。

続いて、果汁を発酵用タンクあるいは木樽に入れ、野生酵母の働きによる自然発酵を待つか、培養酵母を添加して発酵を促します。アルコール発酵中は理想的な温度を維持するため、多くの醸造所でタンク内や樽内の温度を調節しています。自然な状態で理想的な温度が維持できるセラーを持っている醸造所もあります。通常、白ワインは15~20℃くらいの低温発酵で繊細な香りを守ることが多いです。発酵は早くて約2週間、自然発酵の場合や糖度の高い果汁の場合は数カ月かかることもあります。完全発酵すると辛口になり、自然に発酵が停滞したり、発酵を人為的に止めたりすると、糖分が残る中辛口や甘口のワインができます。ワインのタイプによっては、マロラクティック発酵(乳酸菌によるリンゴ酸分解)を行います。マロラクティック発酵は自然に起こる場合もあります。ドイツ語ではBSA(生物学的酸分解 / Biologischer Säureabbau)と言います。

活動を終えた酵母の澱は、タンクや樽の底に沈殿します。11月~翌年1月にかけて、最初の澱引き(澄んだ上澄みを別のタンクに移し替える作業)が行われます。この作業は、タンパク質を安定させ、ワインをクリアにします。また、最初の澱引きの4~6週間後に2度目の澱引きが行われます。近年では、澱引きを全く行わずに翌年春頃まで放置する手法(シュール・リー)も実施されています。あるいは、2度目の澱引きを行わず、春先まで細かい酵母の澱(ファインヘーフェ)と接触した状態でワインを熟成させている造り手も多くなっています。

1~5月頃までは、タンクあるいは樽内のワインをじっくり熟成させます。ワインは3カ月ほど休ませるとそのキャラクターが現れてくるそうです。3~6月頃にかけて、必要な場合はブレンド(アッサンブラージュ)を行い、ボトリングします。ボトリングの際、ワインをフィルターにかけて濾過します。ボトリング後、数週間で出荷されるワインもありますが、さらに数カ月瓶熟成させ、例えば9月頃から出荷されるワインもあります。酸化防止剤は通常、マイシェあるいはモストの段階、発酵終了後、そしてボトリング前の3回にわたって添加されます。

Weingut Dr. Bürklin-Wolf ビュルクリン・ヴォルフ醸造所
(プファルツ地方)

ビュルクリン・ヴォルフ醸造所
©Weingut Dr. Bürklin-Wolf

ヴァッヘンハイムの伝統ある醸造所。バッサーマン・ヨルダン醸造所、ブール醸造所と共にプファルツの3Bと呼ばれていたこともあり、世界的名声を持つ。現在の当主はベッティーナ・ビュルクリン=フォン=グラツェさん。ケラーマイスター、フリッツ・クノル氏が生み出すリースリング・コレクションの品質の高さには定評がある。2005年からはビオディナミによるぶどう栽培を実施。また、バイエルン王国が1828年に同醸造所に対して行った格付けを採用。ブルゴーニュと同じ、グランクリュ、プルミエクリュの2段階の格付けとなっている。VDP会員ではあるが、独自の伝統ある格付けを優先している。

Weingut Dr. Bürklin-Wolf
Weinstrasse 65, 67157 Wachenheim
Tel.06322-95330
www.buerklin-wolf.de


2008 Wachenheimer Altenburg P.C., Riesling trocken
22008年産ヴァッヘンハイマー・アルテンブルク、プルミエクリュ、リースリング
(辛口)
16,00€

2008 Wachenheimer Altenburg P.C.,

プルミエクリュ(P.C.)、アルテンブルクのリースリング。ビュルクリン・ヴォルフ醸造所は、2008年コレクションで「ゴーミヨ・ドイツワインガイド」の最優秀コレクション賞を受賞。その実力のほどを印象付けた。フォルスト村のグランクリュ畑、ウンゲホイアーやキルヒェンシュトゥックのワインは35~70ユーロと高価だが、プルミエクリュは比較的求めやすい価格。ヴァッヘンハイム村アルテンブルク(石灰岩土壌)のリースリングは、ハーブやジンジャーを思わせる爽やかな香りで印象に残るワイン。
最終更新 Dienstag, 25 August 2015 12:18
 

ぶどう畑の四季

この章では、醸造所の1年間の畑仕事を追ってみます。

1~2月は、休眠中のぶどうの樹を剪定する季節です。1本の樹のおよそ8割をこの時点で切り落としてしまいます。例えばグイヨ(ギヨ)と呼ばれる垣根栽培の場合、残されるのは幹とそこから生える1本あるいは2本の、芽を6~10個くらい残した短い枝のみです。このような極端な剪定を行うことで、実るぶどうと茂る緑の程良いバランスが取れ、理想的な収穫量が得られます。剪定の際はぶどうの樹の骨格となる幹と枝に向き合うため、その健康状態をしっかりチェックすることもできます。カットした枝は取り除いて機械で細かく砕き、土に帰すこともあります。南欧では枝を燃やし、その灰を土に帰します。

2~3月にかけては、グイヨの場合、針金を張って作られたフェンスに紐状の柳の枝や紙を巻いた針金などを使って残した枝を結わえ、固定します。そうすると、各々の新梢が空間を保ちながら垂直に育ってくれます。この時期には、剪定した枝の先から滴る樹液が見られます。発芽はもうすぐです。

3~5月にかけての発芽、展葉の季節には、必要とあらば肥料をやり、ぶどうの樹全体に行き渡る養分のバランスを取ります。そして5~6月にかけては土壌を耕すなど、土の世話をします。冬の間に固くなってしまった土をほぐすことにより、空気が取り込まれ、ガス交換が行われ、土壌中の熱伝導も改善されます。この時期はぶどうの芽がぐんぐんと伸び、やがて開花します。余分な新梢や葉を取り除く作業も行われ、必要な枝だけが守られます。

開花を終え、結実したぶどうが成長する7~8月は、引き続き伸びる枝をフェンスに畳み込み、増える葉の数を適度にコントロールして、ぶどうが理想的な状態で成長できるよう手助けします。必要に応じて、伸び過ぎたぶどうの蔓の先をカットすることもあります。この時期はカビ菌などが繁殖しやすいため、造り手の選択により、化学農薬、伝統農薬、あるいはビオの調剤の散布が何度か行われます。また、緑化している畑では雑草を刈ります。場合によっては、グリーン・ハーヴェストと言って、必要のないぶどうの房を切り落とす作業も行われます。さらに凝縮したワインを造るためには、その後も必要に応じて、不要な房や房の一部を切り落とします。また、ぶどうの房が程良い日差しを受け、雨後に乾燥しやすくなるよう、密集した葉も取り除きます。

そして9月、いよいよ収穫シーズンの始まりです。収穫のタイミングはぶどうの品種によって様々で、各々の畑の、各々の品種の果汁の糖度、酸の量、種に含まれるタンニンの状態、アロマや色付きの状態、健康状態、天候などの要因を考慮して決定します。早熟品種の収穫は8月下旬に行われることもあります。収穫方法には手摘みと機械収穫があり、ともにそれぞれの利点がありますが、一般的に、高品質のワインは手摘みされます。貴腐ぶどうの収穫は、天気の良い晩秋、貴腐菌が上手く働き、ぶどうが乾燥した状態になってから手作業で行います。収穫に手間がかかるため、数日間にわたって貴腐化したぶどうを集めることもあります。アイスワインの収穫は、氷点下7度以下の日に、ぶどうが凍結した状態で行われます。このように、ドイツのぶどうの収穫期は12月の終わり頃まで続きます。

Weingut F. Altenkirch F・アルテンキルヒ醸造所
(ラインガウ地方)

F・アルテンキルヒ醸造所
©Weingut F. Altenkirch

ラインガウ地方、ロルヒの伝統ある醸造所。創業は1826年。現在はフランツィスカ・ブロイアー=ハドヴィガー、アンドレアス・フォン・ローゼン両氏による共同経営。ロルヒのスレート岩を主体とする優れた畑、カペレンベルク、クローネ、シュロースベルクなどから秀逸なリースリングを生み出している。現在、内外で評価が高まっている優れたコレクションを生み出しているのは、日本人醸造家の栗山朋子さん。2007年ヴィンテージから栽培・醸造責任者を務めている。リースリングのほか、限りなくエレガントなシュペートブルグンダーもお薦め。

Weingut F. Altenkirch
Binger Weg 2, 65391 Lorch
Tel. 06726-830012
www.weingut-altenkirch.de


2008 Grauschiefer trocken Fürstenberg, Alte Reben
2008年産グラウシーファー(リースリング、辛口)

8,00€

2008 Grauschiefer trocken

アルテンキルヒ醸造所のリースリングは、ベーシックな「シュタイルラーゲ(急斜面)」という名のワイン、テロワール(土壌)のタイプ別ワイン、個々の畑(ラーゲ)別ワインの3段階。今回ご紹介するのは、テロワールのタイプ別ワインの1つ「グラウシーファー(灰色スレート岩)」(ほかに「レス(黄土)」「クヴァーツシーファー(石英混スレート岩)」がある)。それぞれの土壌のタイプを最大限に活かす目的で造られたこれらのワインは、いわば「岩石のリキッド」シリーズ。優しい柑橘系の香りの奥に、秘めた力を感じるワイン。
最終更新 Montag, 24 August 2015 18:43
 

土壌の姿

テロワール、そして畑の格付けと、ちょっと堅苦しいテーマが続きましたが、本来、ぶどう畑や土壌を実際にこの目で見て新しい知識を得ることは、とても楽しいものです。

旅をしていると、自然の風景を背景に、おのずと建築物が目に留まります。例えばアール地方やミッテルライン地方、ラインガウ地方、モーゼル地方を旅すると、粘板岩で造られた濃い色の家をよく見掛けます。そしてその粘板岩も、黒灰色に青みがさしていたり、あるいは茶色っぽかったり、同じ岩石でありながら色調が微妙に違うことが分かります。

フランケン地方やラインヘッセン地方、プファルツ地方の一部では、ほのかな赤色や黄土色など、様々な色調の砂岩で建てられた家がたくさんあります。また、ラインヘッセン地方やプファルツ地方には石灰岩で造られた家も多く、一見ブルゴーニュと見間違えてしまいそうな風景にも出会います。

今から100年以上前にそれぞれのワイン生産地で建てられた伝統的な石造りの家々は、各地方のぶどう畑の土壌そのものを表しているかのようです。ぶどう畑の土壌の奥深くの様子は、通常見ることはできませんが、古い建築物が土壌についての情報を発信してくれているように思います。

ドイツのワイン生産地は、畑に柵がなく、散歩道やハイキング道が整備されており、ぶどう畑の間をどんどん歩いていくことができます。そのハイキング道の途中に洞窟があったり、石切り場が見えたり、岩が突き出ていたり、断層が顔を出していたりするところがあると、ぶどう畑の土壌構成をいくらか知ることができます。専門のガイドと一緒にぶどう畑を巡り、土壌について教えてもらえるウォーキング・ツアーもあります。

私は2009年の夏、ぶどう畑に詳しいガイドと一緒にモーゼル地方をハイキングしたのですが、そのとき彼女が粘板岩の洞窟に連れて行ってくれました。地表からは、風化して小さな板状になった粘板岩の、黒っぽい石片が散らばる畑の表面しか見ることはできませんが、洞窟に入ると、 粘板岩の塊をちょうど真下から見上げることになります。そしてその洞窟の上に生えている木が、岩の隙間を縫って根を生やしているのが見えました。私が訪れたのは暑くて乾燥がひどい時期でしたが、洞窟の中はひんやりしていて、 粘板岩の天井は湿り気を帯び、地下水が滴っていました。このことから、岩場の土壌は水はけが良いこと、そして、地中深くにはしっかりと地下水が確保されていることを知ることができました。

秋には、ラインヘッセンで醸造家の友人と一緒にぶどう畑の近くの石灰岩の断層を見に行きました。上部は粘土質の土壌や黄土(レス)などに覆われているのですが、下へ行くほど色調は白くなり、その石灰質の土を指先でほぐしていくと貝殻がたくさん出てきます。小指のサイズほどの牡蠣の殻や、口を閉じたままで石化し、真っ白になっているムール貝の殻も見つかり、太古の時代、本当にここが海だったことが分かります。

ぶどう畑とその周辺を歩くと、実に様々な発見があります。畑を歩き、土や石に手を触れ、造り手の労働の場に立ってみると、ワインを違った形で楽しめるようになるはずです。

Weingut Dr. Randolf Kauer ドクター・ランドルフ・カウアー醸造所
(ミッテルライン地方)

ドクター・ランドルフ・カウアー醸造所

ドイツのいわゆる「ワイン大学」として世界的に名高いヴィースバーデン大学ガイゼンハイム校の教授(専門はビオ・ワイン)、カウアー氏夫妻が風光明媚なバッハラッハで経営する小さな醸造所。カウアー氏は同大学の学生だった1982年に500㎡のぶどう畑を借りてワイン造りを始めた。80年代初頭のドイツは、緑の党の勢いが良く、エコ運動が盛り上がった時代。カウアー氏は時代の風潮を敏感に捉え、エコヴィン(Ecovin)というビオ・ワイン醸造家団体が結成される以前からビオ・ワインを生産していた。現在ぶどう畑は3,3ヘクタールに。エコヴィン会員。

Weingut Dr. Randolf Kauer
Mainzer Str. 21, 55422 Bacharach
Tel.06743-2272
www.weingut-dr-kauer.de


2007 Riesling Spätlese Oberdiebacher Fürstenberg, Alte Reben
2007年産リースリング、シュペートレーゼ (オーバーディーバッハー・
フュルステンベルク)アルテ・レーベン(ほんのり甘口)
11,00€

2007 Riesling Spätlese Oberdiebacher Fürstenberg, Alte Reben

「滋養味豊か」という言葉がぴったりの、飲むと気持ちが安らぐワイン。バッハラッハ近郊のオーバーディーバッハーにある、フュルステンベルクというスレート岩土壌から成る急斜面の畑のリースリングから優しい甘みを残して造られた低アルコール(10.5%)ワイン。樹齢53年の古木(アルテ・レーベン)のぶどうのみを使用しているため、凝縮感もたっぷり。妻のマーティナさんいわく、「3次元の味わいを持つワイン」。2007年産はほぼ完売。08年産は生産されず、今年5月から09年産の販売がスタートする。
最終更新 Montag, 24 August 2015 18:42
 

格付けされる畑

ドイツにおけるぶどう畑の格付けは、1984年に結成されたラインガウのカルタ同盟(Charta Vereinigung)によって始められ、1992年に格付けされたリースリングが初登場しました。このカルタ同盟の活動がベースとなり、1999年にはラインガウ地方で公式に、伝統品種リースリングとシュペートブルグンダーに限定しての畑の格付けが実施されるようになりました。また、2002年からはVDP(ドイツ・プレディカーツワイン生産者協会)も本格的な格付けに取り掛かり始めました。

現在も、格付けシステムは確立の途上にあります。法的に認可されているのは既述のラインガウ地方の格付けだけで、エアステス・ゲヴェックス(Erstes Gewächs)と呼ばれます。格付けされた畑は40ほどで、ラインガウ地方のぶどう畑の約3分の1に相当します。また、法的には認可されてはいないものの、VDPはドイツの全ワイン生産地において、着々と格付け作業を進めています。

VDPのシステムは試行錯誤を経て、2012年ヴィンテージから、エステートワインに相当するVDP.グーツワイン(VDP.Gutswein)、村名ワインに相当するVDP.オルツワイン(VDP.Ortswein)、1級畑に相当するVDP.エアステ・ラーゲ(VDP. Erste Lage)、特級畑に相当するVDP.グローセ・ラーゲ(VDP.Große Lage)の4段階となっています。VDP.グローセ・ラーゲのワインは、長年にわたって偉大なワインを生み出してきた、恵まれた畑が対象となっています。ドイツワイン法では、最も小さなぶどう畑の単位を単一畑(Einzellage)と言い、ドイツ全体で2600ほどありますが、VDPがエアステ・ラーゲ、グローセ・ラーゲとして格付けしているのは、そのうちのおよそ1割ほどです。また、格付けされているのは各々の単一畑のうちのVDPの会員が所有する部分に限定されています。

VDP.エアステ・ラーゲ、 VDP.グローセ・ラーゲのワインは、 格付けされた畑のぶどうが使用されているだけでなく、ぶどうがそれぞれの地方の規定品種であること、手摘み収穫であること、収穫量が規定量以下であることなど、様々な厳しい条件と審査をクリアしたものです。それは、優れたテロワールと優れたぶどう樹と造り手の丁寧な手仕事が一体となって生まれるワインなのです。

VDP.グローセ・ラーゲに指定された畑で造られるワインで、条件を満たした「辛口ワイン」をグローセス・ゲヴェックス(Großes Gewächs)と言います。ラインガウ地方で、エアステス・ゲヴェックスと呼ばれているワインは、これと同等と考えて良いでしょう。また、甘口ワインには従来のカビネットからトロッケンベーレンアウスレーゼまでの肩書きがそのまま使われています。格付けされた畑のワインは一目でそれと分かるよう、キャップシールにVDP.グローセ・ラーゲ、VDP.エアステ・ラーゲと書かれています。また、グローセス・ゲヴェックスは、エティケットにGGと表示されています。

飲み手にとって VDP.エアステ・ラーゲ、 VDP.グローセ・ラーゲという「ブランド」は、ワインを購入する際の1つの目安になります。とはいえ、VDP非会員の醸造所が同一の畑を所有し、高品質のワインを生産しているケースはいくつもあり、そのようなワインを発掘するのは楽しいものです。

非常に複雑ではありますが、エアステス・ゲヴェックス、グローセス・ゲヴェックス、あるいはエアステ・ラーゲ、グローセ・ラーゲという言葉を耳にしたら、それは格付けされている畑のことなのだ、と覚えておけば良いでしょう。格付けされた畑のワインは高価ですが、特別な日には、ぜひドイツワインの最高峰を楽しんでみてください。

 
Weingut Toni Jost トニ・ヨースト醸造所
(ミッテルライン地方)

トニ・ヨースト醸造所
写真)©Weingut Toni Jost

ミッテルラインの家族経営の醸造所。オーナーのペーター・ヨーストは、醸造所を継いだ1970年代半ばから現在に至るまでその名声を保ち続けている。リースリング(8割)とシュペートブルグンダーを中心とする、ドイツ・ワインの王道をゆく品種構成。VDPがエアステ・ラーゲに指定しているデボン紀のスレート岩土壌の畑「バッハラッハー・ハーン」を所有し、ライン川に面するこの急斜面の畑からは、グローセス・ゲヴェックス(辛口)のほか、カビネットから貴腐ワインに至る数々の偉大なリースリングを生み出している。

Weingut Toni Jost
Oberstr. 14, 55422 Bacharach
Tel.06743-1216
www.tonijost.de


2007 Bacharacher Riesling Spätlese feinherb
2007年産バッハラッハー・リースリング、シュペートレーゼ(ファインヘルプ)

9,80€

2007 Bacharacher Riesling Spätlese feinherb

伝統あるワイン街バッハラッハの畑のリースリングから、ほんのりとした優しい甘みを残して造られたシュペートレーゼ。ファインヘルプは、従来のハルプトロッケンに相当する味わい。酸味と甘みのバランスが非常に良く、ボリューム感も持ち合わせている。ワインだけでも楽しめるが、食中酒にも最適。スパイシーな料理のほか、酸味と甘みが交差するアジア料理などと合わせたいワイン。
最終更新 Montag, 24 August 2015 18:41
 

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