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個性派の生産地: ミッテルライン、ナーエ、ヘッシッシェ=ベルクシュトラーセ

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ユネスコ世界遺産にも登録されているビンゲンからコブレンツへ至るライン峡谷と、その北に位置するレマーゲン辺りまでが、ミッテルライン地方と呼ばれる全長100キロに及ぶワイン生産地域です。ライン川が最も美しい姿を見せてくれる場所で、狭隘な谷の斜面にぶどう畑が切り開かれています。古城や城跡が多く、ほぼ完全な状態で市壁が残っているオーバーヴェーゼル、かつてワイン取引の中心地であったバッハラハなどの美しいワイン街が点在し、風光明媚かつワインも美味しいという、ぜいたくな産地です。

この辺りの畑は粘板岩土壌で、生産されるワインの9割近くが白品種。主にリースリングが栽培されており、数多いシュトラウスヴィルトシャフトやグーツシェンケ(醸造所直営の居酒屋)で、ワインと軽い食事を楽しむことができます。

ナーエ地方では、ビンゲンでライン川と合流しているナーエ川と、その支流であるグラン川、アルゼンツ川流域を中心にぶどうが栽培されています。この辺りは太古の時代に極端な地殻変動が起こったため、土壌が変化に富んでおり、同じ畑であっても100メートルごとに岩石の構成が全く異なるということが珍しくありません。ナーエ地方でも白ワインの生産量がほぼ8割を占め、やはりリースリングが主要品種。土壌の多彩さゆえに、その味わいも実に多彩です。

同地域には、バート・クロイツナハからバート・ミュンスターへ至るザリーネンタール(ザリーネの谷)と呼ばれる美しい保養地があります。かつては岩塩も採れたそうで、塩分を含んだ鉱泉が湧いており、枝状架(ザリーネ)と呼ばれる、鉱泉を滴らせて水分を気化させ、塩を採取するための、小枝を組んだ壁状の装置が各所に見られます。この設備は現在、塩の採取のためではなく、呼吸器官などの治療に利用されています。枝状架周辺の空気は塩分をたっぷり含んでいるため、その近くで佇んだり、周辺をゆっくり散歩したりするだけで治療効果があるそうです。またこの地方にも、知る人ぞ知る「ナーエ・ワイン街道」があるほか、「ドイツ宝石街道」の中心地で、かつて鉱石の採掘で栄えたイーダー・オーバーシュタインまで足を伸ばす楽しみもあります。

オーデンの森の最西端に位置するヘッシッシェ=ベルクシュトラーセ地方は、プファルツ地方同様、いち早くアーモンドが開花する温暖な地域です。旧ローマ街道である「ストラータ・モンターナ(ベルクシュトラーセ)」沿いにぶどう畑が点在し、標高150メートルほどのなだらかな山々が連なる、優美な風景が広がっています。オーデンの森は、東から吹き付ける冷たい風からぶどう畑を守っています。

この地域のワイン造りの中心地は、「ワインと花の街」として知られるベンスハイム。ここでも、生産されるワインの78.9%が白ワインで、主にリースリングが栽培されています。土壌は主に黄土(レス)で、出来上がるワインは軽やかな味わいです。ベンスハイム近郊には、ユネスコ世界遺産のロルシュの修道院など、観光の楽しみも豊富にあります。

Weingut Simon-Bürkle ジモン・ビュルクレ醸造所
(ヘッシッシェ=ベルクシュトラーセ地方)

ジモン・ビュルクレ醸造所(ヘッシッシェ=ベルクシュトラーセ地方)

ヘッシッシェ=ベルクシュトラーセ地方は、オーデンの森が冷たい東風を遮ってくれるため、温暖でワイン造りに適した土地。この地方の中心地ベンスハイムに近いツヴィンゲンベルクのジモン・ビュルクレ醸造所は、1991年にクルト・ジモンとヴィルフリート・ビュルクレが共同でスタートさせた若い醸造所。クルト亡き後の2003年以降は、その妻ダグマー・ジモンとヴィルフリート・ビュルクレが醸造所を運営している。リースリングとブルグンダー種を中心とする高品質のワインで頭角を現している気鋭の醸造所だ。

Weingut Simon-Bürkle
Wiesenpromenade 13, 64673 Zwingenberg
Tel. 06251-76446
www.simon-buerkle.de


2006 Diorit Riesling Trocken
2006年産 ディオリート・リースリング(辛口) 16,80€

2006 Diorit Riesling Trocken

ツヴィンゲンベルクに近い、標高517メートルのメリボクス山の南斜面のぶどう畑で栽培されているリースリング。メリボクス山は花崗岩(かこうがん)、閃緑岩(せんりょくがん)から成っており、ジモン・ビュルクレ醸造所は、それぞれの土壌を活かしたグラニート(花崗岩)・リースリングとディオリート(閃緑岩)・リースリングをリリースしている。このディオリート・リースリングの土壌となっている閃緑岩は花崗岩に似た深成岩で、リースリングの土壌としてはめずらしく、ほかに類のないほど力のあるリースリングに仕上がっている。
 
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岩本順子(いわもとじゅんこ) 翻訳者、ライター。ハンブルク在住。ドイツとブラジルを往復しながら、主に両国の食生活、ワイン造り、生活習慣などを取材中。著書に「おいしいワインが出来た!」(講談社文庫)、「ドイツワイン、偉大なる造り手たちの肖像」(新宿書房)他。www.junkoiwamoto.com
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