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ラインヘッセンからの新風!「MAXIME HERKUNFT」

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ドイツ最大のワイン産地、ラインヘッセン地方は、これまで度々ドイツのワイン界に大きな潮流をもたらしてきました。

例えば、世界的に有名なワイン「リープフラウミルヒ」が誕生したのがラインヘッセンです。1786年にヴォルムスで創業したファルケンベルク社がリリースした「リープフラウミルヒ・マドンナ」は、ドイツで初めてブランド名が付けられたワインで、20世紀の始めに英国や北欧の王室で愛飲され、ボルドーワインと並ぶ、世界で最も高価なワインの1つでした。その後コピー商品が出回り、「リープフラウミルヒ」は安価な甘口ワインの代名詞となりましたが、 現在では、オリジナルの畑を所有するリープフラウエンシュティフト醸造所が、高品質で辛口スタイルのものを「リープフラウエンシュティフト・キルヒェンシュトゥック」の名称で復刻し、名誉を挽回しようとしています。

ラインヘッセンはビオワインが産声を上げた地域でもあります。メッテンハイムのザンダー醸造所は、1955年に化学農薬などの使用をいち早く止めたビオワインのパイオニアです。1983年にはドイツ初のビオワインの生産者団体も誕生しました。それが他地域にも伝播し、1985年に全国組織のエコロジカル・ワインぶどう栽培協会が発足します。この団体は、ビオワインに特化した生産者団体「エコヴィン」の前身で、現在、220もの醸造所が会員となっています。

近年では、2002年に結成され、昨年末に約20年にわたる活動に終止符を打った若手醸造家のグループ「Message in a Bottle」が注目を浴びました。ドイツでは1990年代から、若手醸造家の団体が各地でいくつも誕生し、グループ内でオープンに情報交換し、助け合いながら高品質のワイン造りに邁進しています。

「Message in a Bottle」は、古くから偉大なワインを生み出していたライン川沿いの地域「ラインフロント」ではなく、忘れられていた内陸部で生まれました。1980~90年代に、環境に配慮し、収量を抑えた高品質のワインで頭角を現したフレアスハイム=ダールスハイムのケラー醸造所、ヴェストホーフェンのヴィットマン醸造所などの、当時20代だった意欲的な次世代が立ち上げたネットワークだったのです。

約30名いた「Message in a Bottle」のメンバーは、恵まれたテロワール、ビオワインの伝統などの強みを生かし、重要品種であるリースリングとシュペートブルグンダーに力を入れるほか、誰でも気軽に参加できるイベントを行い、消費者とのつながりを大切にしてきました。彼らは現在、それぞれにドイツのワイン界をリードする造り手として活躍しています。

そして2017年、「MAXIME HERKUNFT(マキシーメ・ヘアクンフト)」という団体がラインヘッセンで産声を上げました。ドイツワイン界を牽引する全国組織、VDP(ドイツ・プレディカーツワイン生産者協会)に倣い、ワイン造りの現状に即した3段階の地理的格付けを採用し、高品質のワイン造りに取り組む団体です。

「MAXIME HERKUNFT」には、VDP ラインヘッセンの全ワイン生産者、「Message in a Bottle」の全メンバー、ラインフロントの賛同者らが結集し、会員は95醸造所に達しています。今後、VDPに次ぐ影響力を持つことになるであろう生産者団体として、その動向は他地域からも注目されています。

 
Weingut Dreissigacker
ドライシッヒアッカー醸造所(ラインヘッセン地方)

オーナー醸造家のヨッヘン・ドライシッヒアッカーさん
オーナー醸造家のヨッヘン・ドライシッヒアッカーさん

1728年創業の家族経営の醸造所。ドライシッヒは30、アッカーは農地の意。所有畑は38ヘクタール。オーナー醸造家のヨッヘン・ドライシッヒアッカーは、ラインヘッセン地方の名門、ケラー醸造所などで修業、ヴァインズベルクの国立専門学校を終え、2006年に25歳の若さで実家の醸造所を継いだ。2017年に完成した新醸造所は、景観を守り、畑の斜面に這うように建つ。セラーでは重力を生かし、ポンプを排除するほか、電力を太陽光発電で賄い、念願だった複数のヴィンテージのワインを飲み頃まで熟成させるスペースも確保。ベヒトハイム、ガイアースベルクの研ぎ澄まされた味わいのリースリングは同地のリースリングの最高峰の1つだ。「MAXIME HERKUNFT」会員。

Weingut Dreissigacker Untere Klinggasse 4, 67595 Bechtheim
Tel. 06242-2425
www.dreissigacker-wein.de


2017 Bechtheimer Riesling trocken2017 Bechtheimer Riesling trocken
2017年 ベヒトハイマー・リースリング 辛口 18€

ベヒトハイムの複数の優れた畑のリースリングから造られた「オルツワイン」。スキンコンタクトを48時間行い、8割をステンレスタンクで、2割を1200リットル容量の木樽で醸造。自然発酵。2017年9月から2019年1月まで、1年4ヶ月の長期にわたり、酵母と接触させた後にボトリング。直線的で引き締まった味わいの辛口リースリングは、フルーティさとスパイシーさ、酸味のバランスが絶妙で、しかも軽やか。石灰岩、レス、粘土が混在するベヒトハイムの土壌の個性を感じることができる。ビオ認証取得。

 
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岩本順子(いわもとじゅんこ) 翻訳者、ライター。ハンブルク在住。ドイツとブラジルを往復しながら、主に両国の食生活、ワイン造り、生活習慣などを取材中。著書に「おいしいワインが出来た!」(講談社文庫)、「ドイツワイン、偉大なる造り手たちの肖像」(新宿書房)他。www.junkoiwamoto.com
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