ドイツワイン・ナビゲーター


世界にその名を馳せる3地域: ラインガウ、モーゼル、フランケン

フランスのボルドーやブルゴーニュのように、世界にその名を知られた伝統あるドイツのワイン生産地、それはラインガウ、モーゼル、そしてフランケンの3地域でしょう。皆さんの中には、この3地域のワインのファンの方がきっといらっしゃることと思います。それぞれの地域には、互いに繋がっているライン川、モーゼル川、そしてマイン川がぶどう畑の動脈のように流れています。

ライン川はスイスアルプスに源流があり、ドイツ国内に入るとどんどん北上し、ヴィースバーデンの辺りでほぼ直角に西進、約30キロ先のリューデスハイム辺りから北西に針路を取り始めます。この直角に曲がっている地帯の右岸斜面がちょうど南向きになっており、緯度が50度と高いにもかかわらず、ぶどう栽培に適した畑となっています。ドイツを代表する白ワイン品種、リースリングの原産地はこの辺りであるという説もあります。また、貴腐ワイン(当初はシュペートレーゼといわれた)の収穫法もこの地で生み出されたといわれています。ベネディクト会、シトー会などの修道会や地元の貴族階級がワイン造りを発展させ、19世紀半ば~20世紀初頭にかけてラインガウ産のワインは、英国王室などでも愛飲されるほどになりました。

一方、マイン川の源流はフレンキッシェ・シュヴァイツ(フランケン地方のスイス)にある白マイン川と赤マイン川。ライン川に向かって西向きに大きなジグザグを描きながら流れ、その流れがマインフィアエック(マインの四角形 / Mainviereck)、マインドライエック(マインの三角形 / Maindreieck)と呼ばれる地形を形成し、川沿いの丘陵地帯に雄大なブドウ畑が広がっています。フランケン地方は、冷涼な気候にもかかわらず傑出したリースリングを生産しているほか、ドイツにおけるジルヴァーナー種の故郷、そしてボックスボイテル(語源には山羊の陰嚢と祈祷書を入れる袋の2説がある)という丸く平たいボトルワインの故郷としても知られています。この地方でも、領主司教や修道院がワイン造りを発展させました。文豪ゲーテは、ラインガウのワインとフランケンのワインをこよなく愛したと伝えられています。

モーゼル川はフランスのヴォージュ山地に源流があり、ルクセンブルクを過ぎるとライン川まで細かく蛇行しながら北東に進んでいます。モーゼル地方はドイツ最古のワイン生産地域で、古代ローマ人によってぶどうの栽培技術、ワインの醸造技術がもたらされました。そのため、ローマ時代の石造りの圧搾場の遺跡がところどころに残っています。その後、修道院がワイン造りをさらに発展させ、急斜面の畑がどんどん開拓されました。モーゼル地方もラインガウ地方と同じく伝統的なリースリングの栽培地。高品質の甘口ワインの生産に力を入れている醸造所が多いのもこの地域です。かつて、モーゼル地方はモーゼル・ザール・ルーヴァー地方と呼ばれていましたが、2007年より単にモーゼル地方と呼ばれています。しかし、ザール川、ルーヴァー川流域には伝統ある優れた醸造所が沢山あるので、2つの支流の名前は決して忘れたくないものです。

Weingut Reinhold Haart ラインホルト・ハート醸造所(モーゼル地方)  ラインホルト・ハート醸造所(モーゼル地方)

モーゼル地方で5本の指に入る名醸造所。1337年よりワイン醸造を営んでいたという記録があり、2000年の歴史を持つ集落ピースポート村最古の醸造所、そしてモーゼル最古の民間醸造所の1つと言われる。オーナーで醸造家のテオ・ハート氏は、2007年にはゴー・ミヨ・ドイツワインガイドの最優秀生産者に選ばれた。世界的に有名なピースポート村の急斜面にある特級畑ゴールドトロップフェン(黄金の雫)などから、高品質のワインを生産している。テオ・ハート氏のコレクションでは、酸味との絶妙なハーモニーが醸し出す爽やかな甘口ワインが95%を占める。

Weingut Reinhold Haart
Ausoniusufer 18, 54498 Piesport
Tel.06507-2015
www.haart.de


2007 Goldtröpfchen Kabinett Erste Lage
2007年産ゴールドトロップヒェン、カビネット、エアステ・ラーゲ(甘口) 12,50€

2007 Goldtröpfchen Kabinett Erste Lage

ゴールドトロップヒェンは、陶土を含む灰色粘板岩土壌の南向き斜面。猛暑の夏も背後の森に守られ、畑に必要な水分が失われることはない。エアステ・ラーゲとは、モーゼル地方の特級畑のこと。収穫量は、手摘みで1ヘクタール当たり50ヘクトリットル。自然の酵母で時間をかけて低温発酵させ、ボトリングまでにたっぷり8カ月をかけている。カビネットではあるものの、2014年までは保存が可能。あんずやトロピカルフルーツの香りあふれる優しい味わい。長期にわたり瓶熟成させるほど、甘さは徐々に控えめになるとのこと。
最終更新 Freitag, 21 August 2015 17:29
 

13の生産地域

ドイツには13のワイン生産地域があります。これらの生産地域は、1つの連邦州内に複数存在する場合もあり、例えばバーデン=ヴュルテンベルク州にはバーデンとヴュルテンベルクの2生産地域、ヘッセン州にはラインガウ、ヘッシッシェ・ベルクシュトラーセの2生産地域、ラインラント=プファルツ州にはナーエ、ラインヘッセン、プファルツ、モーゼル、アール、ミッテルラインの6生産地域がすっぽり収まっています。また、モーゼル地方はザールラント州にも広がり、アール地方、ミッテルライン地方は、ノルトライン・ヴェストファーレン州にもまたがっています。

1つの連邦州に1生産地域のみ存在するのはバイエルン州のフランケン地域。ザクセン地域はザクセン州とブランデンブルク州に、そしてザーレ・ウンストルート地域はザクセン=アンハルト州、ブランデンブルク州、チューリンゲン州の3州にまたがっています。16連邦州のうち、 原産地呼称保護ワインが生産されているのは計10州となります。

ドイツのワイン用ぶどうの総栽培面積は約10万2000ヘクタール、世界第15位です。この面積はトップのスペインの約10分の1、2位と3位を占めるフランス、イタリアの約7分の1でしかありません。ドイツのすべてのぶどう畑が、フランスのボルドー地域(約12万ヘクタール)の中にすっぽりと収まってしまうというと、その大きさがイメージできるでしょうか? とはいえ、そのボルドー地域ほどの大きさの土地では、実に多彩なワインが生産されています。例えば、ラインヘッセン地方を訪れるだけで、シャンパン・スタイルのゼクト、ブルゴーニュ・スタイルの赤ワイン、そしてドイツならではのリースリングがすべて味わえるのです。

ドイツワインのメインストリームであるクヴァリテーツワイン、そしてプレディカーツワインは、必ずこれらの13生産地域のぶどうから生産されており、1本のワインボトルの中には、1地域のぶどうしか使われていません。つまり、これらのドイツワインは当然のごとく、13の生産地域のそれぞれの特徴を表現しています。いずれの生産地域も、土壌や地形、気候などが異なり、異なる伝統を持っています。そのため、同じリースリングを栽培してもラインガウ、モーゼル、あるいはバーデンでは、その味わいに地域的な特色が表れるのです。

フランスワインを楽しむ人の中には、ボルドー派やブルゴーニュ派がいますが、ドイツワインを楽しむ人にも、ラインガウ派やフランケン派、モーゼル派がいます。自分の嗜好に合った生産地が見つかると、その地域に愛着が生まれ、ワイン選びが一層楽しくなります。ちなみに私は、元ラインヘッセン派。ラインヘッセンから徐々に守備範囲を広げ、今では13生産地域すべてのワインを楽しむようになりました。

それでは、次回から5回にわたって13生産地域を順にめぐって行きましょう。

Weingut U.Lützkendorf リュツケンドルフ醸造所
(ザーレ・ウンストルート地方) 

リュツケンドルフ醸造所(ザーレ・ウンストルート地方)

旧東独に位置するザーレ・ウンストルート地方は、ドイツ最北のワイン生産地域。ライプツィヒの南西約60キロに位置する。リュツケンドルフ醸造所は、このワイン地方の中心地であるザーレ川流域のバート・ケーゼンにある。オーナーのウヴェ・リュツケンドルフは、ドイツが再統一した1990年に旧東独フンボルト大学醸造学科を卒業。翌91年に、旧東独政府に没収されていたぶどう畑が32年ぶりに返却されると、本格的にワイン造りに取り組み始めた。彼のワインの品質の向上ぶりは年々めざましく、2007年のドイツ最北の地のコレクションは秀逸。

Weingut U.Lützkendorf
Saalberge 31, 06628 Bad Kösen
Tel. 034463-61000
www.weingut-luetzkendorf.de


2007 Karsdorfer Hohe Gräte Riesling Großes Gewächs
2007年産カースドルファー・ホーエ・グレーテ、リースリング、
グローセスゲヴェックス(辛口) 17,00€

2007 Karsdorfer Hohe Gräte Riesling Großes Gewächs

カースドルフ村のホーエ・グレーテと呼ばれる特級畑のぶどうで造られたリースリング。この畑では、1270年頃すでにワイン用ぶどうが栽培されていたという記録がある。旧東独時代に一時的に没収されていたものの、リュツケンドルフ家はおよそ100年にわたって、この南向きのポテンシャルの高い畑を所有している。鉄分を多く含む赤っぽい土壌には、泥土岩と石灰岩、陶土、珪岩が混在している。フランケン地方のワインを思わせるドライさ、力強さ、そしてミネラルを思わせる香りに溢れたリースリング。
最終更新 Freitag, 21 August 2015 17:28
 

ヴィーティス・ヴィニフェラ

ヴィーティス種と呼ばれるぶどう属の品種は約70種類あるといわれ、主に北半球の亜熱帯地域を中心に分布しています。そのうちの代表的なものに、カスピ海、黒海沿岸が原産といわれるヴィーティス・ヴィニフェラ種(Vitis Vinifera)があります。欧州には、このヴィーティス・ヴィニフェラ種が分布しています。同種は、欧州からの移民によって北米にも運ばれ、アメリカ原産のヴィーティス・ラブルスカ種(Vitis Labrusca)と交配されたりもしました。

醸造家やワイン評論家たちは、ヴィーティス・ヴィニフェラ種をヨーロッパ品種、ヴィーティス・ラブルスカ種をアメリカ品種と呼んでいます。一般的にヨーロッパ品種は粒が小さく、主にワイン醸造向き、アメリカ品種は主に食用向きといわれますが、ワインも造られています。リースリング種やシュペートブルグンダー種など、現在ドイツワインの原料となっている品種はいずれもヨーロッパ品種。アメリカ品種にはコンコルド種やイザベラ種などがあり、米国やポルトガル、CIS(独立国家共同体)地域、日本、ブラジルなどでは、これらの品種からワインを生産している醸造所があります。

欧州においても当初、丈夫なアメリカ品種とヨーロッパ品種の交配が行われていましたが、アメリカ品種の影響による「フォクシーな」といわれる独特の香りが嫌われたため、その試みは進捗しませんでした。この表現はフォックスという品種名に由来するといわれています。しかし、アメリカ品種は各種カビ菌に耐性があるため、1980年代頃からはエコロジー的観点からの研究が復活しています。

ところで19世紀の半ば、米国からぶどうの木の大敵であるフィロキセラ(独語名レープラウス/ Reblaus)という害虫が運ばれ、欧州のぶどう畑は壊滅的な被害を受けました。ヴィーティス・ヴィニフェラ種には、フィロキセラに対する耐性がなかったのです。その後、欧州では、フィロキセラに耐性のあるアメリカ原産種の根をヨーロッパ品種に接ぎ木して、この害虫による被害を防ぐようになりました。

現在、接ぎ木にはヴィーティス・ラブルスカ種以上にフィロキセラ耐性のある、ヴィーティス・リパリア種、ヴィーティス・ルペストリス種、ヴィーティス・ベルランディエリ種などが使用されています。今日の欧州では、自根(独語でヴルツェルエヒト/ Wurzelecht)で育てられているワイン用ぶどうは、ごくわずかです。例えば土壌が岩盤状であるなど、フィロキセラが生息しにくいモーゼル地方などの一部の幸運な畑で、自根のぶどうを栽培している醸造家がいます。砂の多い畑もフィロキセラが生息しにくい土壌です。

さて、このヴィーティス・ヴィニフェラ種ですが、日本原産のものが1つあります。それは甲州種です。甲州種は長い間その素性が不明だったのですが、ワイン醸造向きのヴィニフェラ系品種であることが明らかになっています。甲州種からは、世界的にも評価の高い高品質のワインが生産されるようになっています。

Weingut Johann Ruck ヨハン・ルック醸造所
(フランケン地方)

ヨハン・ルック醸造所(フランケン地方)

日本通としても知られるヨハン・ルックと息子のハンジ・ルック親子が共同でワイン造りに取り組んでいる、フランケン地方イプホーフェンにある名醸造所。創業は1839年だが、ルック家の歴史は945年まで遡り、当時すでにチュービンゲン近郊でワイン造りに関わっていたという。フランケンならではのシルヴァーナー種に力を入れているほか、リースリングやブルグンダー種も栽培。コイパーと呼ばれる陶土と泥灰岩の混在する土壌からはミネラル香の高いワインが生まれ、その気品ある味わいには定評がある。三畳紀(Trias)の土壌の個性を打ち出しながらワイン造りをしている5つの醸造所が結集したグループ、TRIASのメンバー。

Weingut Johann Ruck
Marktplatz 19, 97346 Iphofen
Tel. 09323-800880
www.ruckwein.de


2007 Iphöfer Julius Echter Berg, Silvaner TRIAS Trocken
2007年産イプヘーファー・ユリウス・エヒター・ベルク、シルヴァーナー、
トリアス(辛口) 19,00€

2007 Iphöfer Julius Echter Berg, Silvaner TRIAS Trocken

イプホーフェンの特級畑、ユリウス・エヒター・ベルクで栽培されたシルヴァーナーの最高級ワイン。この畑は上記のコイパーにグリーン系の砂岩と三畳紀の石灰土壌が混在し、ワインにスパイシーさ溢れる独特の個性を与えている。醸造過程ではできるだけ手を加えず、大型の木樽内で長期間にわたって酵母と接触させている。このワイン用ぶどうの収穫量は、1ヘクタール当たりわずか30ヘクトリットル。かりんの香りが漂う、非常に凝縮したシルヴァーナーに仕上がっている。なるべく大きめのグラスで、隠された香りを引き出しながら味わってほしいとのこと。
最終更新 Freitag, 21 August 2015 17:26
 

赤のぶどうたち

ドイツには、昔から主に赤ワインが生産されてきた地域がいくつかあります。バーデン地方には9世紀頃にシュペートブルグンダーが持ち込まれ、以来、赤ワインの栽培が行われているという説もあります。このほか、ラインガウ地方のアスマンスハウゼン一帯、アール地方、そしてヴュルテンベルク地方が赤ワインの産地として知られています。アール地方の赤ワイン品種の栽培面積は全体の84.4%、ヴュルテンベルク地方では70.2%を占めています。

ドイツの赤を代表するシュペートブルグンダー種(仏語名ピノ・ノワール)は、ラインガウ地方のアスマンスハウゼンでは13世紀から、アール地方では18世紀から栽培されていたといわれています。ドイツにおける同品種の栽培面積は赤品種の中では最大で、最近では世界的に通用する「ピノ・ノワール」という名称をエチケットに表示する造り手も増えています。シュペートブルグンダーもリースリングと同様に土壌の特徴をよく反映し、造り手によって異なるニュアンスのワインが生まれます。ヴュルテンベルク地方ではトロリンガー(別称ヴェルナッチ)を中心に、シュヴァルツリースリング(仏語名ピノ・ムニエ)、レンベルガー(別称ブラウフレンキッシュ)が栽培されています。

ドイツの赤品種のリストも、白品種と同じくらい長くなります。シュペートブルグンダーに次いで多く栽培されているのが、ドイツ系の交配品種ドルンフェルダーとオーストリアがルーツといわれるポルトギーザー。ただ、シュペートブルグンダーが増加傾向にあるのに対し、この2品種は現在、減少傾向にあります。

代わりに人気が出てきているのが、レンベルガー、ザンクト・ラウレント(仏語名ピノ・サンローラン)、フリューブルグンダー(仏語名ピノ・マドレーヌ)などの伝統品種です。いずれもヴュルテンベルクでは古くから栽培されており、同地方をこえて少しずつ栽培面積が増えています。中でもフリューブルグンダー(早熟ブルゴーニュ種の意)はその名の通り、シュペートブルグンダー(晩熟ブルゴーニュ種の意)より早熟で、シュペートブルグンダーの突然変異種でもあり、質の良いワインができるため、両方を栽培する醸造家も増えています。

ほかにも栽培面積が増加している品種があります。それは、これまでドイツでは栽培が不可能だったフランス品種、カベルネ・ソーヴィニヨンとメルロです。中にはカベルネ・フランやシラーを栽培している醸造家もおり、赤ワインにおいても白ワイン同様フランス品種がどんどん北上しています。この傾向は近年の気候変動とも関連があります。

カベルネ・ソーヴィニヨンは非常に優れたワインができる晩熟種です。ドイツでもすでに1970年代から同品種をベースとする交配種の研究が行われており、10年程前から徐々に栽培が始まっています。現在、カベルネ・ソーヴィニヨンとドイツ品種との交配であるカベルネ・ミトスとカベルネ・クビン(ともにレンベルガーとの交配)、カベルネ・ドリオとカベルネ・ドルサ(ともにドルンフェルダーとの交配)の栽培面積が少しずつ増えています。このほか、ビオの造り手を中心に減農薬栽培が可能な交配種レゲントも増加傾向にあります。

Jean Stodden, Das Rotweingut ジャン・シュトッデン醸造所
(アール地方) 

ジャン・シュトッデン醸造所(アール地方)

シュトッデン家は、ドイツでは例外的な赤ワインの産地アール地方で1578年からワイン造りを営んできた。特級畑、レッヒャー・ヘレンベルクを所有。「赤ワインの醸造所」と看板を掲げている通り、シュペートブルグンダーとフリューブルグンダーが、合わせて90%以上を占めている。極限まで剪定し、さらに房を間引いて平均収穫量を1ヘクタール当たり47ヘクトリットルにまで抑え、凝縮したワインを造ることに精力を傾けている。

Rotweinstrasse 7-9, 53506 Rech
Tel. 02643-3001
www.stodden.de


2006 Spätburgunder JS
2006年産 シュペートブルグンダーJS(辛口)19,00€

2006 Spätburgunder JS

黄土と粘土が混在する風化スレート岩土壌の急斜面で栽培されたシュペートブルグンダーを93エクスレで収穫。このJSシリーズは、いずれもオークの小樽、バリック樽を使用し、16カ月樽熟成させたもの。(新樽を8割ほど使用)チェリー、ブラックカラント、そしてミントが薫る。スパイシーでほんのりチョコレートを思わせる味わい。ラム肉やジビエ(野生肉)にぴったりのワイン。
最終更新 Freitag, 21 August 2015 17:24
 

白のぶどうたち

ドイツワインと聞くと、ほとんどの方が白ワインを連想されるのではないかと思います。確かにドイツは昔から主に白ワインの産地で、1980年の時点では白品種の栽培面積が全体の88.6%を占めていました。ところが、近年では赤ワインの生産量が増え、2013年の白品種の栽培面積は全体の64.5%となっています。

ドイツは、世界的にトップクラスの白ワインを生み出すことができる伝統品種リースリングの故郷であり、その栽培面積は白品種の中で最大です。リースリングは晩熟で、ドイツのような寒冷な地域(EUワイン法上の気候区分でAゾーン。ただしバーデン地方のみ、より温暖なBゾーンに分類される)でゆっくりと育つことにより、その美味しさが開花するといわれます。また、リースリングはテロワールの特徴を実によく反映する白品種ともいわれています。

次いで多く栽培されている白品種がミュラー=トゥルガウ(別称リヴァーナー)、グラウブルグンダー、ジルヴァーナー、そしてヴァイスブルグンダー(仏語名ピノ・ブラン)です。いずれもドイツの伝統品種で、爽やかな飲み心地の辛口ワインが主に生産されています。中でもグラウブルグンダー種(旧名ルーレンダー、仏語名ピノ・グリ)と東欧にルーツがあるジルヴァーナー種はここ数年、人気が再燃しています。

グラウブルグンダー種とヴァイスブルグンダー種はブルゴーニュがルーツのいわゆる「ブルグンダー種(ピノ種)」。ブルゴーニュ系の品種の中では、シャルドネの栽培面積も増えています。同じくフランス系のソーヴィニヨン・ブランも人気があり、高品質のワインが生産されるようになっています。南欧がルーツといわれるゲヴュルツトラミーナーの生産量も増加傾向にあります。

一方で、減少傾向にあるのがドイツ品種を主とする交配により生まれたバッフス、ショイレーベ、ファーバーレーベ、オルテガ、フクセルレーベ、モリオ=ムスカートなどです。現状では栽培面積で上位を占めているミュラー=トゥルガウとケルナーも交配品種で、生産量は徐々に減っています。

栽培品種の傾向を見ると、伝統品種がより好まれ、交配品種はどんどん淘汰されつつあることが分かります。これは、造り手および飲み手の伝統への回帰、本物志向の表れでしょう。しかし交配品種にも優れたものがあり、例えばショイレーベなどから偉大なワインを生み出す生産者もいます。また、減農薬栽培が可能な新しい交配品種も誕生しており、いずれはその中から頭角を現してくる品種があるかもしれません。

参考: リースリング・イタリコと呼ばれる白品種がありますが、これはドイツ語ではヴェルシリースリングと言い、ドイツのリースリングとは別の品種。オーストリア、ハンガリーで主に栽培されています。

Weingut Peter Jakob Kühn ペーター=ヤコブ・キューン醸造所
(ラインガウ地方)

ペーター=ヤコブ・キューン醸造所(ラインガウ地方)

ラインガウ地方、エストリッヒの伝統ある家族経営の醸造所。現在のオーナー、ペーター=ヤコブ・キューンは11代目。15ヘクタールのぶどう畑ではリースリング(約83%)とシュペートブルグンダー(約17%)が栽培されている。キューン氏はビオへの深い関心から、ビオディナミ(シュタイナー農法)の手法を取り入れているほか、垣根を低くし、地熱を活用したり、自然酵母による発酵を行うなど、自然の力を最大限に活かすワイン造りを行っており、世界的にも高く評価されている。

Mühlstr. 70, 65375 Oestrich
Tel. 06723-2299
www.weingutpjkuehn.de


2007 Landgeflecht Riesling Qualitätswein, trocken
2007年産 ラントゲフレヒト・リースリング、トロッケン(辛口)18,60€

2007 Landgeflecht Riesling
Qualitätswein, trocken

キューン家のぶどう畑、エストリッヒャー・ドースベルクは南向き、および西向きの斜面を持つ丘で風当たりが強いが、秋にはそれが利点となり、ぶどうを乾燥させて腐敗を防いでくれるという。黄土と粘土、および灰色珪岩の混合土壌からは、力強くミネラル豊かなワインができる。ブランド名ラントゲフレヒトは、ドースベルクの昔の土地台帳にある地名からとった。かつてはここに、大切なぶどう畑を守るために柳の枝を編んだ垣根(ゲフレヒト)があったという。エティケットにある2つのぶどうの房のマークは、キューン家のワインにおいてシュペートレーゼを意味する。滋味たっぷりのリースリング。
最終更新 Freitag, 21 August 2015 17:22
 

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