ドイツワイン・ナビゲーター


ぶどうという植物 5 ぶどう畑の算術

ワインをめぐる様々な数字は、ワイン選びの参考になることがあります。今回は『ゴーミヨ』などのドイツのワインガイドなどに記載されているぶどう畑にまつわる数字が、何を意味しているのかをご紹介しましょう。

ドイツでは、ぶどう畑の大きさをヘクタール(ha) で表します。1ヘクタールがどれくらいのサイズかをイメージするのによく比較対象とされるのが、スポーツ競技場の大きさです。国際大会のサッカーフィールドの面積が最大で8250平方メートル、野球のグラウンド面積は約1万3000平方メートルですので、1ヘクタールはサッカー場より大きく、野球場より小さめです。家族構成や畑の地形などにもよりますが、一家2 世代で経営する醸造所の所有畑の面積は10~20ヘクタールくらいだといって良いでしょう。

例えば、ワインガイドに記載されている「平均収量57hl/ha」といった数字は、1ヘクタール当たりの収穫ぶどうを圧搾した果汁の量をヘクトリットル(hl)単位(1ヘクトリットル=100リットル)で表したものです。ドイツのワイン法は、地域ごとに収穫の上限を定めており、例えばラインガウ地方では1ヘクタール当たり一律100ヘクトリットルまでの収穫が認められています。「57hl/ha」はかなり少ない収穫量であることが分かります。高品質ワイン生産者の団体、ドイツ・プレディカーツワイン生産者協会(VDP)が規定している最高ランクのワイン、グローセ・ラーゲの収量上限は50hl/haです。収量に関しては、イタリアのように、例えば8000kg/ haと、ぶどうの重量で表示する国もあります。1万kg (10トン)のぶどうからは、だいたい70~80ヘクトリットルくらいの果汁が得られますので、「57hl/ha」の場合、1ヘクタール当り、約7600kg(7.6t)/haのぶどうを収穫したことになります。

赤品種は通常、単位面積あたりの収量が少ないほど高品質のワインができるため、造り手たちは収量を減らそうと努めています。一方、白品種は赤品種より収量がやや多めでも高品質のものを造ることができるといわれます。収量の加減は、造ろうとするワインのタイプによっても異なってきます。重厚なワインでは収量は少なめ、軽快なワインの収量はやや多めです。

植樹数も近年よく話題にのぼる数字で、やはり1ヘクタール当たりの本数を表します。現在、ドイツの標準的な植樹数は1ヘクタール当り4000~5000本ですが、近年は「密植」といい、ぶどうの根がお互いに競争し、地下深くまで生えて、水分を充分に吸収できるよう、植樹間隔を狭くしている造り手もいます。その場合1ヘクタールあたり1万本程度を植えます。モーゼル地方などの急斜面の畑では、古来から密植が行われており、ブルゴーニュのように約1万本が植樹されている畑がいくつもあります。

樹齢もワイン選びの際に重視されます。ぶどうは植樹後、約3~4年の歳月を経て収穫が可能になり、徐々にその本領を発揮しはじめます。環境、栽培や剪定の方法、造られるワインのタイプにより、約25年で植え替えられるぶどうもありますが、100年を越えて実をつけるぶどうもあります。アルテレーベン(Alte Reben)と表示されるワインは、古木(古樹)から収穫されたぶどうを使用したもので、法規定はありませんが、一般には樹齢30~40年以上の古樹に実ったぶどうで造るワインです。

 
Weingut Karl Haidle
カール・ハイドレ醸造所(ヴュルテンベルク地方)

貝瀬
父フランク・ハイドレ(右)と息子のモリッツ。

ハイドレ家が初めて自社ワインを醸造したのは1949年。一家の拠点であるシュテッテンは古来より主にリースリングが栽培されていた土地で、ハイドレ家の主力品種もリースリング。レンベルガーの栽培を開始したのは約30年前だ。オーストリアではブラウフレンキッシュと呼ばれる人気品種で、近年ドイツでも人気が高まっており、ブラウフレンキッシュの名称でリリースしている醸造所もある。モリッツ・ハイドレはもともとカーデザイナー志望だったが、バーデン地方のゼーガー醸造所とラインガウ地方のキュンストラー醸造所で修業した後、醸造家になることを決意。ガイゼンハイム大学を卒業し、2014年から父親のフランクと共同で高品質のワイン造りに取り組んでいる。

Hindenburgstraße 21
71394 Kernen-Stetten
Tel. 07151-949110
www.weingut-karl-haidle.de


ヴォルケンタンツ リースリング2015 Blaufränkisch Trocken Bunter Mergel
2015 ブラウフレンキッシュブンター・メルゲル 辛口 9.60€

VDP グーツワインとしてリリースされているブラウフレンキッシュ。エンダースバッハとバインシュタインのブンター・メルゲルと呼ばれる泥灰岩土壌で栽培されているぶどうを使用。ブルゴーニュから取り寄せたバリック(小樽)の古樽で半年熟成させている。ヴュルテンベルク地方の赤は軽快なトロリンガーが主流だが、造り手も飲み手もブラウフレンキッシュのポテンシャルに気づき始めた。鮮やかなピンクレッド。もぎたてのチェリーを思わせる清楚で品格ある風味。モリッツはローストビーフとの組み合わせがお気に入り。

 


最終更新 Donnerstag, 01 September 2016 15:02
 

ぶどうという植物 4 交配

ぶどう品種の交配が盛んに行われるようになったのは、フィロキセラ、ウドンコ病、そしてベト病の襲来がきっかけでした。フランスでは1880年頃から、ドイツでは1920年代半ばから、フィロキセラに耐性のある米国の野生品種の交配が行われるようになりました。交配の試みはまもなく、台木において成果を上げました。

一方、病害に耐性のある栽培品種の交配はなかなか成果が上がりませんでした。ドイツでカビ菌に耐性のある品種が市場に登場したのは1990年代半ばになってからでした。最初に認可されたのが白ワイン品種のフェニックスと赤ワイン品種のレゲントでした。いずれもヴィーティス・ヴィニフェラ、つまりワイン用ぶどうといわれる欧州品種に属し、ウドンコ病とベト病、灰色カビ病にある程度の耐性があります。以前ご紹介した、ピーヴィー(PiWi)種と呼ばれるものです。

欧州の伝統品種はすべて、ウドンコ病とベト病に耐性がありません。これは致命的で、ぶどうを守るためには農薬散布が必須です。しかし米国やアジアの野生品種には、これらの病害に耐性のあるものがあります。ただ、これらの野生品種からは、欧州品種のような品質の良いワインができないという問題があります。

そこで、研究者たちは欧州品種と米国やアジアの野生品種を掛け合わせることで、双方の長所を備えたぶどうを得ようしました。その際、欧州品種と野生品種を1度掛け合わせるだけでは十分でなく、最初の交配で誕生した各々の新品種を、さらに別品種と掛け合わせ、それを納得の行く新品種が誕生するまで、何世代も続けます。

クローン選別では「選別」だけが人の手によって行われ、植物に対しては人工的に手を加えませんが、「交配」では人工的に授粉を行います。ぶどうは自家受粉するので、昆虫などの媒介の必要がありません。開花と同時に受粉が行われるので、人工交配は開花前に手作業で行い、母親となる品種の雄しべをあらかじめすべて取り除き、父親となる品種の花粉で受粉させます。その後、できたぶどうの房を収穫、得られた種をすべて植え、苗を育てます。

1年目はその中から丈夫な苗を選別し、2年目から4 年目にかけて、優秀な苗を選別していきます。その際、結実量、糖度、酸度、ぶどうの味、丈夫さなどが選別の基準となります。5年目から8年目は「初期検査期間」と言い、接ぎ木をして増やし、少量のワインを作って味を確認しつつ、選別を行います。9年目から14年目は「中間検査期間」と言い、これまでに選別した苗を、接ぎ木で増やし、少量のワインを作ってさらに選別します。このとき、実際に高品質のワイン生産が可能かどうかを選別基準とします。14年以降は「最終検査期間」と言い、やはり接ぎ木で増やし、少量のワインを作ってさらに厳しく選別します。中間検査期間までは通常1種類の台木を使用しますが、最終検査段階では、複数の台木を使うほか、複数のワイン産地で試験栽培を行います。1度の交配で、新品種が複数誕生することもあれば、成果がない場合もあります。

交配により、理想的な品種を得るには、このように長い年月がかかります。 例えばレゲントという品種は、最初の交配から30年の歳月を経て誕生しました。

 
Weingut Jesuitenhof
イエズイーテンホーフ醸造所(ファルツ地方)

Weingut Jesuitenhof
クラウス&モリッツ父子

イエズイーテンホーフは19世紀初頭に興った伝統ある醸造所。1980年代に醸造所を継ぎ、新風を吹き込んだのはクラウス&アンドレア・シュナイダー夫妻。2011年以降は、ガイゼンハイム大学を卒業した息子のモリッツが栽培・醸造においてさらなる磨きをかけている。ディルムシュタインの優れたぶどう畑、イエズイーテンホーフガルテン、ヘアゴッツアッカーなど計25ヘクタールを所有。主な栽培品種はヴァイスブルグンダー、リースリング、シュペートブルグンダー。ファルツ地方ではまれなジルヴァーナーにも挑戦している。最もポテンシャルの高い、単独所有畑でもあるイエズイーテンホーフガルテン(2.5ヘクタール)では ハイレベルのリースリングとシュペートブルグンダーを栽培している。

Weingut Jesuitenhof
Obertor 6
67246 Dirmstein
Tel. 06238-2942
www.jesuitenhof.de


Kleiner Garten 2014 Jesuitenhofgarten Spätburgunder trocken Kleiner Garten
2014年産 イエズイーテンホーフガルテン、
シュペートブルグンダー「クライナー・ガルテン」辛口 18.00 €

イエズイーテンホーフガルテンのシュ ペートブルグンダーは実も房もコンパクトなフランスのクローン。「クライナー・ガルテン」は石壁に近い区画に植えられた樹齢12年のシュペートブルグンダーだけを醸造したもの。この区画はブルゴーニュの栽培法と同じく密植で、幹の高さも標準の90cmではなく40cm。土壌により近いところで実るぶどうはほかの区画より早く熟す。バリック(小樽) で熟成。ミックスベリーのコンポートのような豊かな果実味が印象的。


最終更新 Mittwoch, 08 Juni 2016 14:10
 

ぶどうという植物 3 クローン選別

ワイン用ぶどうにおけるクローン選別とは、現存する株から望ましい性質を持つ単一の株を選び出す作業で、この手法自体はローマ時代から実践されていたといわれます。同様の選別はリンゴや梨、サクランボなどの果樹においても行われています。このクローン選別とは、具体的にどのような作業なのでしょう? リースリング300 Gm(Gmはガイゼンハイム研究所の略) グループを例に、選別方法を追ってみましょう。

リースリング300 Gmグループには、303 Gm、305 Gmなどのクローンが登録されています。これらのクローンは、1990年代半ばからジーベルディンゲンのユリウス・キューン研究所とガイゼンハイム大学ぶどう育種研究所が共同で実施している「遺伝資源保存プロジェクト」の一環として探し始められたもので、対象はリースリングのほか、ブルグンダー系品種、シャルドネなどです。古いぶどう畑の、優秀な性質を有する古木の遺伝子を後世に残すことがその目的です。

リースリングで選別の対象となったのは、モーゼル地方ロンギッヒの畑に1896年に植えられたぶどうや、ラインヘッセン地方の複数の畑のぶどうなどで、後世に残すに値するぶどうの木を探し求めて、選別作業が進められました。古木が植え替えられてしまう前に最良の株を選別し、大事な「遺産」を守るのです。

畑によって、クローンの対象となるぶどうの木が複数株得られることもあれば、1株も得られない場合もあるそうです。選別作業では、まず候補となるぶどうを選び出し、個々のぶどうの木について、何年にもわたり克明な観察記録をつけ、対象を絞りこみます。その際のチェック事項は、樹木自体の病害への耐性や丈夫さをはじめ、1本の木に実る房の数、房の大きさ、粒の大きさ、粒と粒の間隔、糖度、酸度、香りや味わいなど多岐にわたります。クローンの有力候補が絞られてくると、それぞれ株を増やして育て、マイクロヴィニフィケーションといって、少量ずつワインを醸造し、その質や風味を確認します。

このように選別過程には段階があり、1つのクローンを選別するには約20年かかります。「遺伝資源保存プロジェクト」では最終的に、各地のリースリングの古木から14種類のクローンが選別・登録されました。

クローン選別と対照的なのがマッサル選別です。クローン選別では最終的に1株のぶどうを選別しますが、マッサル選別では複数株を選びます。それは、ある古い「畑」の個性を新しい畑に引き渡す方法といえるでしょう。通常、数年後に植樹するための準備として行われる選別法だそうで、選別に費やす期間は1~2年とごく短期間です。何本の株を選ぶかは、植樹する畑の規模によって異なります。リュール教授の話によると、例えば1ヘクタールの畑に約8000本植樹する場合、マッサル選別された株の一つから直ちに得られる芽数は約50程度ですので、古い畑から少なくとも160本の株を選別することになります。

マッサル選別した複数のぶどうを新しく畑に植える場合は、クローン選別されたぶどうを植える場合と違い、畑の個々のぶどうの遺伝子のタイプが一様ではなくなり、手入れや収穫に困難が生じますが、その畑に特有の多様性は継承されます。また、同じ畑で複数のクローンを栽培する場合は、作業の効率化のため、列ごとや区画ごとにまとめて植樹されます。

 
Weingut Van Volxem
ファン・フォルクセン醸造所(モーゼル地方ザール地域)

貝瀬
ローマン・ニヴォニツァンスキー氏

元はイエズス会修道院の醸造所だったが、19世紀以降はビール醸造所を経営するファン・フォルクセン家が所有。1990年代の一時期は他社の経営だったが、2000年にビール会社ビットブルガー社の創業者のひ孫、ローマン・ニヴォニツァンスキー氏が醸造所を継ぎ、ファン・フォルクセンの名を復活させた。ヴィルティンゲン村のゴッテスフース、シャルツホーフベルクなどの特級畑を所有。栽培面積は約64 ヘクタール。栽培品種はリースリングが96%を占める。ニヴォニツァンスキー氏は1世紀以上前、ドイツのリースリングが世界各地のメトロポールで最高級ワインとして供されていた時代の記憶を呼び覚まし、妥協を許さない高品質のワインを生産することで、ドイツのリースリングのステータス回復に力を入れる。VDP(ドイツ・プレディカーツワイン生産者協会)会員。

Weingut Van Volxem
Dehenstraße 2
54459 Wiltingen/Saar
Tel. 06501-16510
www.vanvolxem.com


ヴォルケンタンツ リースリング2014 Volz Riesling VDP Grosse Lage
2014 フォルツ リースリング28€

ヴィルティンゲン村のブラウンフェルスの一区画フォルツはファン・フォルクセン醸造所のモノポール(単独所有畑)。シャルツホーフベルクに隣接し、1971年までは単一畑で、1868年のプロイセン王国の格付では最高ランクの畑。デボン紀の灰色粘板岩土壌は火山岩である流紋岩の割合が高い。急斜面で栽培されているリースリングの樹齢は60年、その一部は自根(接ぎ木ではないぶどう)だ。ワインはステンレスタンク内で自然発酵後、木の大樽で熟成。品格あるハーバルな風味。限りなくエレガントなリースリング。


最終更新 Mittwoch, 11 Mai 2016 09:59
 

ぶどうという植物 1 接ぎ木

2月中旬にガイゼンハイム大学ぶどう育種研究所の所長であるエルンスト=ハインリヒ・リュール教授を訪ね、ワイン用ぶどうの栽培についていろいろ教えていただきました。これからしばらく、ぶどう畑を様々な角度からクローズアップしたいと思います。

ぶどう畑を眺めるとき、いつも不思議な感覚に襲われます。それは人の手によって合理的に作られていますが、その風景にはそれが自然であるかのような美しさがあります。つる性の落葉低木であり、人間の背丈よりも大きな樹木になるはずのぶどうは、毎冬の剪定(せんてい)により低く育てられます。丹精込めて手入れされるぶどうの樹のコンパクトな姿は盆栽に似て、1本1本が個性豊かな芸術作品のようです。

この「盆栽」の幹を注意深く見ると「瘤(こぶ)」があることが分かります。幹が一カ所ぷっくり膨れているのです。台木であるアメリカ品種のぶどうと、接ぎ木されたヨーロッパ品種のぶどうの枝である穂木はここでつながっています。植えられて日が浅い若木を見ると、継ぎ目の部分とその下の部分がワックスで守られているのが分かります。ぶどうの大敵である害虫フィロキセラが欧州に来襲して150年たちますが、現在もあちこちのぶどう畑に生息しているため、耐性のあるアメリカ品種の台木がぶどうを防護しているのです。

欧州で使われている台木は30品種近くあり、各品種には選別されたクローンがいくつかあります。台木品種はいずれも19世紀後半から20世紀前半にかけて、北米各地で採取された性質の異なる複数のアメリカ品種をかけあわせ、改良されたものです。台木はフィロキセラ耐性を第一に交配されてきましたが、乾燥に強いもの、根が伸びやすいもの、石灰質土壌を好むものなど様々な特性があるため、醸造家は穂木だけでなく、台木と土壌との相性も考慮します。

接ぎ木の手法は、地中海地域ではすでに古代において知られていたそうです。欧州では中世になってから盛んに行われるようになり、りんごや梨などを接ぎ木で増やすようになりました。ぶどうも当初、畑で接ぎ木が行われていましたが、気温が低いため失敗するケースが多く、19世紀末になると、短くカットした穂木と台木を接ぎ木し、暖かい場所で育て、根が出てから戸外に植えるようになりました。

苗木業者が栽培で増やした穂木や台木は、束ねて接ぎ木業者に届けられます。穂木は芽一つ分の短い枝に、台木は芽を取り除いて必要な長さにそれぞれカットし、接ぎ木します。その後28度くらいの温室で4~5週間育て、さらに戸外で1年育ててから出荷します。

現在、ガイゼンハイム研究所に登録のある台木クローンの50%がイタリア、25%がフランスで増やされています。ドイツの醸造家が購入する苗木は、イタリアで増やした台木とドイツで増やしたリースリングの穂木を、イタリアで接ぎ木したものであったりします。

ところで先日、バッフスの古木にシュペートブルグンダーを接ぎ木したという醸造家に会いました。現状での成功率はさほど高くないそうですが、乾燥した暖かい日が40日ほど続くようであれば、戸外での接ぎ木は十分可能になるとのことです。畑のぶどうの幹を生かし、穂木を接ぎ木することで栽培品種を交替させる方法は世界各地で実践されていますが、寒冷なドイツではまだ実験段階です。

 
Kirsten Wein.Sekt.Gut.
キルステン醸造所(モーゼル地方)

インゲ夫妻
ベルンハルト&インゲ夫妻

モーゼル地方クリュセラート村の家族経営の醸造所。1992年に両親の醸造所を継いだベルンハルト・キルステンは同醸造所の3代目、ワイン醸造技士の資格を持つ。15ヘクタールの所有畑はクリュセラートを含めモーゼル川沿いの5つの村に分散している。先代はリースリング中心だったが、ベルンハルトはほかにヴァイスブルグンダー、シュペートブルグンダー、ソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネ、グラウブルグンダーも栽培。伝統製法のゼクトの生産にも力を入れており、自社ブランドだけでなく、ほかの醸造所のゼクト醸造も請け負う。ベルンハルトはカリフォルニアでワイン造りに携わったときにバリック(小型オーク樽)の良さを知り、ヴァイスブルグンダーの一部をバリックで仕込んでいる。

Kirsten Wein.Sekt.Gut.
Krainstraße 5
54340 Klüsserath
Tel.06507 99115
www.weingut-kirsten.de


ヴォルケンタンツ リースリング2014 Wolkentanz Riesling
ヴォルケンタンツ リースリング 8.50€

ベルンハルトは醸造所を継いだときから、極端な収量制限を行い、その結果ワインは深みとテロワールの個性を獲得した。「ヴォルケンタンツ(雲のダンス)」は醸造所の名刺とでも言うべきワイン。クリュセラート村の畑のリースリングだけを使用した、いわゆる村名ワインだ。雲のように軽やかな浮遊感を追求したワインは、低酸度、低アルコールで清水のような清らかな味わい。ほのかなハーブの風味が彩りを添える。バランスの良い辛口で、あらゆるシチュエーションにぴったりのリースリング。

最終更新 Montag, 14 März 2016 16:49
 

ぶどうという植物 2 クローン

ワイン好きの方なら「クローン」という言葉を、きっと一度は耳にされたことと思います。中には、1990 年代後半に話題になった、世界初の哺乳類の体細胞クローンである羊のドリーを連想なさる方がおられるかもしれません。

しかし、ぶどう栽培におけるクローンは遺伝子操作とは縁がありません。クローンとはギリシャ語で「枝」および「挿し木」のことだそうで、これがワイン造りにおけるクローンの意味するところです。

ある1本のぶどうの木は、挿し木をすることで無限に増やすことができます。例えばある古い畑に、丈夫で病害に強く、おいしく、質の良い実をつける理想的なリースリングの古木があれば、その枝を伸ばし、芽一つ分ごとにカットし、台木と接ぎ木して植えれば、その古木と同じ性質を持つぶどうの木が育ちます。今日のぶどう畑は、このように選別された優れたクローンで成り立っています。各々のぶどう品種だけでなく、台木にもクローンがあります。

クローンとは、このように一つの親株から無性生殖で増やした個体群のことを言います。その個体群は、すべて母株と同一の遺伝的組成を持つため、同一クローンを栽培すると、畑のぶどうが均質化されます。例えば病害などに対する反応が同じになるため、同時期に同じ方法で対処することができます。生育状態も同じなので、同時期に収穫することが可能になり、ぶどうの収量やクオリティーが安定します。区画ごとに一定のクローンを植えるメリットは非常に大きく、クローンが現在のワイン産業を支えています。

フィロキセラ来襲以前、造り手たちはぶどうの木が枯れてしまったら、「挿し木」や「取り木」で株を増やしていました。「取り木」とは、隣接するぶどうの枝を伸ばして地中に埋め、枝先だけを地表に出して生育させ、単独の株として成長したら、親株から切り離す方法で「挿し木」より確実だそうです。しかし、現在では台木が必要ですので、接ぎ木をしない「挿し木」や「取り木」を実施することはできません。

クローンの話に戻りましょう。リースリングを例にとると、ガイゼンハイム研究所の登録リストには、現時点で68種類のリースリング・クローンが登録されています。古いものでは1920年代に選別され、今日まで受け継がれているクローンもあります。ただ、このように長い年月を経ると、増やされたクローンが、遺伝的に一定でなくなってくるため、増やしたクローンの中から厳選したサブクローンを得ます。クローンはいずれも複数のウイルス病検査を受けており、市場に出回るものは確実に「ウイルスフリー」となっています。

同じリースリングであっても、クローンごとに個性があり、収量、糖度、酸度などがわずかながら異なります。また個々のクローンからできあがるワインの風味も異なり、非常にフルーティーな香りとなるクローン、 ニュートラルな香りになるクローン、 ペトロール香(リースリングに特有の鉱物、石油に似た熟成香)をほとんど生成しないクローンなどがあります。  このほか、個々のクローンには、それぞれに適した土壌や生育条件があります。最良のクローンというものはなく、複数の優れたクローンがあり、造り手は所有畑やその中の一定の区画、そして自らが造りたいと考えるワインにふさわしいクローンを選びます。

 
Sektkellerei Kasimon
ゼクトケラーライ・カージーモン

貝瀬
ケラーマイスターとして11年のキャリアを持つ貝瀬さん

カージーモンは、伝統製法ゼクトの旗手として評価の高い「ゼクトハウス・ラウムラント」のオーナー兼醸造家フォルカー・ラウムラント氏の元でケラーマイスターを務める貝瀬和行さんが、アルスバッハ(ヘッセン州)を拠点として友人と共同運営するマイクロワイナリー。貝瀬さんは東京農業大学短期大学部醸造学科卒業後、山梨県のワイナリー「あさや葡萄酒」勤務を経て、1997年に来独。ラインガウのシュロス・ラインハルツハウゼン醸造所で働きながら、2005年にケラーマイスター(醸造責任者)の資格を取得、2009年にはガイゼンハイム大学飲料工学科を卒業した。2012年に「ゼクトハウス・ラウムラント」に転職。「自分の理想ではなく、ワイナリーの理想を形にするのが僕の仕事」と裏方に徹し、ラウムラント氏を支えている。

Sektkellerei Kasimon GbR
Kazuyuki Kaise
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ヴォルケンタンツ リースリングShuwa Shuwa Cuvée Extra Brut
シュワシュワ・キュヴェ・エクストラブリュット12€

「シュワシュワ」は貝瀬さんが結婚記念に造ったプライベートゼクトで、その後も継続して生産しているもの。現在入手可能なのは2009年産で、シュペートブルグンダー50%、ヴァイスブルグンダー30%、リースリング20%のブレンドのロゼ。ベースワインはラインガウ地方産。研究熱心な貝瀬さんが、少量ずつデゴルジュマン(澱抜き)し、熟成過程を定期的に確認している「観察用」ゼクトでもある。酵母とともに6年以上寝かされ、ナッツのような香ばしさとふくよかさを獲得した。 味わい深く余韻の長い底力のあるゼクト。


最終更新 Dienstag, 19 April 2016 12:57
 

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