ドイツワイン・ナビゲーター


ワイン・フェア

ドイツでは業者限定の国際見本市から一般消費者向けのサロンまで、ワインフェアが多数開催されています。今回はお勧めを選んでみました。

〈 業者向けフェア 〉
「ProWein」デュッセルドルフ毎年開催
(次回は2015年3月15~17日)

メッセ・デュッセルドルフ社が開催するワイン&スピリッツ専門見本市。1994年にスタート。20年を迎え、出展者数ではボルドーの「Vinexpo」、ヴェローナの「Vinitaly」を上回る世界最大規模の見本市に成長。2014年の出展者数は4830社。うち845社がドイツ本国、3985社(82%)が外国の出展者。イタリア、フランスの出展者が圧倒的に多い。訪問者数は約4万9000人で、うち45%が国外から。出展者、訪問者ともに年々着実に増加している。2013年からは中国・上海でも「ProWein China」を開催、英国のワイン教育機関WSETを招へいし、セミナーに力を入れている。
www.prowein.de

「Intervitis Interfructa」シュトゥットガルト
3年に1回開催(次回は2016年4月27~30日予定)

ドイツ・ワイン生産者協会が中心となって組織し、シュトゥットガルト・メッセで開催する技術見本市。ワイン、フルーツ、ジュース、スピリッツの生産に関するあらゆる技術が対象。農業機械からタンク、樽、ボトリングライン、パッケージに至るまでの最新技術をキャッチできる。2013年は24カ国から567社が出展。
www.messe-stuttgart.de/de/intervitis-interfructa

〈 一般向けのフェア 〉
「Forum Vini」ミュンヘン 
毎年開催(次回は2014年11月14~16日)

今年で30回目を迎えるワイン&スピリッツ・フェア。主催者の交代があり、今年からはワイン関連の出版社マイニンガー社が主催。2013年は国内外から270社が出展、9000人が訪れた。ドイツ、イタリア、オーストリアから合計150醸造所が出展。食材業者も出展している。
www.forum-vini.de

「Wein Düsseldorf」デュッセルドルフ
毎年開催(次回は2014年11月8~9日、場所:インターコンチネンタルホテル)

ヴェーバー・メッセ社が主催ドイツを中心に約100の醸造所が出展。 ハンブルク、ハノーファー、ケルン、ミュンヘン、 シュトゥットガルトなどでも開催されている。
www.weinduesseldorf.de

「eat & style」毎年開催
(次回はベルリン2014年11月14~16日、シュトゥットガルト11月21~23日)

フレート・イベント社が主催する、今年で9年目となるフード・フェア。出展者400社、今年はすでにハンブルク、ケルン、ミュンヘンで開催。 合計訪問者数は11万人。メインスポンサーでもあるドイツ・ワインインスティトゥートの「wine & style」のブースでは13生産地域のワインが試飲でき、ワイン関連のセミナーも充実している。
www.eat-and-style.de 

このほか、ワイン商が主催するフェアがあります。秋冬はワイン関連の催し物が多いので、お近くの店舗で尋ねてみてください。

 
Weingut Lisa Bunn
リザ・ブン醸造所

リザ・ブン醸造所ラインヘッセン、ニアシュタインの家族経営の醸造所。現在、ワイン造りに取り組んでいるリザは4代目。少女時代は、天候に左右されながら週末も仕事をする両親の姿を常に見ていたため、醸造所の仕事には魅力を感じなかったと言う。醸造家の仕事の面白さを再発見したのは、税理士事務所、幼稚園、ホテル、旅行代理店などで実習体験を積んだ後のこと。アビトゥア(大学入学資格)取得後はラインヘッセン地方の醸造所などで実習を積み、大学では国際ワイン経済学を専攻。学生時代にオーストラリアと南アフリカの醸造所で研修した。「ワイン造りは1年サイクルでしか学べない。困難なヴィンテージに何度も遭遇している父母や祖父母から学ぶことはとても多い」と言う。所有畑は10ヘクタール。ニアシュタインのヒッピング、エールベルク、オルベルでは主にリースリングを育て、その他の畑ではブルグンダー種に力を入れている。リザのリースリングに対する評価は高く、目下、注目の若手醸造家の1人でもある。

Weingut Lisa Bunn
Mainzerstr. 86, 55283 Nierstein
Tel. 06133-59290
www.weingut-bunn.de


2013 Chardonnay vom
Kalkstein trocken 7.50€
2013年 シャルドネ・フォン・カルクシュタイン 辛口

ピースポーター・リースリングリザは醸造所の運営に関わるようになってから、ジーガーレーベ、ファーバーレーベ、フクセルレーベ、ケルナーをリースリングとブルグンダー種に植え替え始めた。また、生産しているワインのコレクションを、フルーティーで生き生きとしたグーツワイン、テロワールを前面に感じさせる遅摘みのオルツワイン(いわゆる村名ワイン)、自然醗酵後、長期にわたって酵母と接触させ、最後にボトリングするラーゲンワイン(単一畑のぶどうから造るワイン)の3段階に整理し、商品構成を明確にしたという。ご紹介するシャルドネはディーンハイムの単一畑、石灰岩土壌のターフェルシュタインのものだが、エチケットには畑名を表示していない。2013年は開花期の天候が思わしくなく、花震いのため結実が悪かった。そのため、80%は種がなく、ごく小粒にとどまったが、その後は順調に成熟し、甘く凝縮したぶどうが収穫できたと言う。ぶどうのアロマの多くは果皮に含まれているが、小粒だったため果皮の割合が果汁に対して高く、味わい豊かなワインになったそうだ。醸造時には彼女自身が足で踏んでぶどうを破砕し、一夜にわたってスキンコンタクト。10%をバリックで自然醗酵、残りはステンレスタンクで醗酵させたもの。滑らかで肌理の細かな舌触り、ほのかなナッツと洋梨の風味、ソルティーな後味、そしてあくまで軽快。タパスを肴にグラスを傾けるときにぴったりのワイン。


最終更新 Donnerstag, 13 November 2014 15:41
 

ドイツ・ワインインスティトゥート

各国のワインの広報活動は、政府系の食品振興会や貿易投資庁などが行っています。ドイツでは「ドイツ・ワインインスティトゥート(以下DWI)」がその役割を担っています。DWIは連邦食品・農業・消費者保護省の管轄下にあり、出資者にはドイツ・ワイン生産者連盟や、ドイツワイン基金などが名を連ねています。ドイツワイン基金はDWIの事業の支柱であり、活動資金はドイツワイン法に従ってぶどう畑の持ち主や使用権利所有者、ワイン生産者から徴収されています。


DWIの新しいロゴマーク

DWI本社はマインツにあり、11カ国にオフィスがあります。東京には2009年秋までドイツワイン基金駐日代表部がありましたが、現在の日本市場での活動は、マインツ本社でアジア・ロシア地域を担当するプロジェクトマネジャー、マヌエラ・リープヒェンさんが一手に引き受けています。

DWIの活動内容は市場調査からイメージキャンペーン、見本市出展、ワインの女王選考事業、イベント企画・実施まで多岐にわたり、統計資料やガイドブック「Öchsle(エクスレ)」も出版しています。

10年程前からは、ドイツにおける最重要品種である「リースリング」をキーワードに様々な活動を展開しています。例えば、2005年に開始した「Generation Riesling」というムーブメントは、若手の意欲的な生産者にスポットを当て、ドイツワインのイメージ転換を図る活動です。35歳以下の造り手なら誰でも参加できる緩やかなグループには、現在400人近い造り手が名を連ね、各地で共同試飲会やイベントを開催しています。

「Riesling Weeks」も、DWIが力を入れている活動の1つ。2007年に米国で開催した「Riesling Week」が発端となり、世界各地で様々な形で開かれるようになりました。これは、外食産業を含む各国のワイン業界の協賛を得て、消費者にドイツワインをプロモーションするイベントで、ドイツでは「Weinentdecker werden!(ワイン探検家になろう!)」というスローガンの下、大都市圏のレストランやワインショップで多彩なイベントが行われます。

「Riesling Lounge」もDWIの魅力的な活動の1つ。主にワイン産地でない地域のレストランやホテルと提携し、ドイツワインのアピールに力を入れています。最近ではハンブルクの「Freudenhaus」やロストックの「Carlo615」などにラウンジを設け、リースリングをはじめ、充実したドイツワイン・メニューを提供しています。日本では、ワイン輸入商社や酒販店などで構成される団体「リースリング・リング」の活動を支援しているほか、来る11月1~2日の「Vinexpo Nippon」に参加し、プロ向けのセミナーを開催予定。国際食品・飲料展「Foodex Japan」(次回は2015年3月3~6日開催)にも参加しています。

www.deutscheweine.de
www.generation-riesling.de

 
Weingut Julian Haart
ユリアン・ハート醸造所(モーゼル地方)

ユリアン・ハート醸造所モーゼル中部ピースポートの家族経営の醸造所。もともと料理人志望だったユリアン・ハート(28)が24歳の時に立ち上げた。ユリアンの父母は共に学校教師。10歳の頃から台所で母を手伝うようになった彼は、15歳の誕生日に両親が提案したミニバイクを断って、ミシュラン・ガイドが高く評価しているレストラン『ソノラ』(ドライス)でのディナーをプレゼントしてもらう。その後、ミシュランの3つ星シェフ、クラウス・エアフォルトらの下で料理修業をし、一流シェフになることを目指した。しかし、著名なリースリングの産地ピースポート生まれのユリアンは、料理を極めるほどにワインへの興味が湧いてくるのを抑えられず、ベルンカステル=クースの醸造学校で勉強しながら、エゴン・ミュラー醸造所、ケラー醸造所などで修業、2010年ヴィンテージで醸造家としてデビューする。現在の所有畑は4.5ヘクタール。ラインホルト・ハート醸造所、ヨハン・ハート醸造所とも親戚関係にあり、2013年からは叔父が経営していたヨハン・ハート醸造所を継ぎ、ヴィントリッヒの畑のほかにピースポートの著名畑を入手。同年に結婚し、畑もセラーもマーケティングも、すべて妻のナディーヌと二人三脚で取り組んでいる。

Weingut Julian Haart
Trevererstr. 12, 54498 Piesport
Tel. 06507-9389868
www.julian-haart.de


2013 Piesporter Riesling
2013年 ピースポーター・リースリング 14.00€

ピースポーター・リースリング叔父の畑を継いだことで、ユリアンはヴィントリッヒの畑のほかに、ピースポートのゴルトトロップフヒェン、シューベルツライ、ドームヘアの3つの畑を手に入れることになった。栽培されているリースリングの樹齢は平均45年。シューベルツライでは1905年に植えられたリースリングも実を付けている。急斜面の畑での手仕事は家族の協力に支えられている。畑仕事も収穫も、ユリアンの父母やナディーヌの父母ら、一家総出で行っている。畑面積は現状を維持し、すべてを家族で行う醸造所でありたいと語る。このピースポートのリースリングはゴルトトロップフヒェンとシューベルツライのぶどうを使用したもの。ステンレススティールタンクでの醸造。清らかでエレガント、しかも非常に精密な印象のワイン。残糖は15g/ℓで中辛口に相当。ユリアンは「モーゼル・トロッケン(モーゼルの辛口)」と表現する。2013年ヴィンテージは雨がちで、選別に手間が掛かったという。全般的にアルコール度数は低めだが、エキス量は前年、前々年を高く上回っているそうだ。ユリアンのリースリングは初ヴィンテージから評価が高く、2011年産は2種類のワインがパーカー・ポイント94点を取得している。


最終更新 Montag, 06 Oktober 2014 18:17
 

VDPと格付け

ドイツワインを購入する際に1つの指標となる生産者団体「VDP(ドイツ・プレディカーツワイン生産者協会)」は、鷲にぶどうのマークでお馴染みです。今回はVDPの沿革と2012年ヴィンテージから変更された格付けをご紹介しましょう。

1910年に発足したVDPの前身はドイツ・ナチュラルワイン競売者協会(VDNV)といい、高品質ワインを生産、競売する組織で、補糖(シャプタリザシオン)を行わない自然で純粋なワイン造りをモットーとしていました。1955年に協同組合会員を除外、自社栽培のぶどうからワインを生産し、競売する醸造所だけの組織となりました。品質管理を徹底し、戦後再び国際市場の舞台に踊り出ましたが、所属していたドイツワイン生産者協会(DWV)が1967年に「ナチュラルワイン」という概念の使用禁止を通達。VDNVは1971年に名称をVDPに変更し、再出発します。

1980年代に入ると、徐々にVDPの醸造所が新聞雑誌で評価されるようになりました。1989年には、当時の会長だったマトゥシュカ=グライフェンクラウ伯爵が米シアトルで初の国際リースリング・シンポジウムを開催し、世界にリースリングの魅力をアピールしました。1991~2006年のプリンツ・ツー・ザルム=ザルム会長時代には、収量制限、収穫時のぶどうの最低糖度のレベルアップなど、さらなる品質向上に取り組み、自然と共存するワイン造りへの方向性を打ち出します。グロースラーゲ(総合畑)表示の放棄、独自の格付けへの取り組みなど、独自の厳格なポリシーを優先させ、1994年にDWVから脱会します。

2002年にはVDP独自の3段階の格付けがスタートし、2006年に甘口ワインと辛口ワイン双方の格付け畑「VDP. エアステ・ラーゲ」という概念が生まれました。2012年産からは「VDP. グローセ・ラーゲ」という概念がこれに加わり、以下の4段階となりました。かつてのエアステ・ラーゲの畑のほとんどがグローセ・ラーゲに移行しています。ただ、ラインヘッセン、ナーエ、モーゼルは、VDP.エアステ・ラーゲを導入せず、3段階を維持しています。

VDP. グーツワイン:醸造所所有畑のぶどうを使用。ベーシックなエステートワイン。

VDP. オルツワイン:醸造所所有の一市町村内の畑(複数可)のぶどうを使用。いわゆる村名ワイン。

VDP. エアステ・ラーゲ:1級畑のぶどうだけを使用したワイン。

VDP. グローセ・ラーゲ:特級畑のぶどうだけを使用したワイン。

VDP.グローセ・ラーゲの辛口ワインだけを、特別に「VDP. グローセス・ゲヴェックス」と言います。甘口ワインの肩書きは、カビネットからトロッケンベーレンアウスレーゼに至る伝統的な肩書きが使われます。格付けのルール(収量、品種など)は生産地別に厳密に決められています。

VDPの格付けはVDP会員醸造所だけのものという点で、ボルドーのシャトーの格付けを想起させますが、実際に格付けされているのは醸造所ではなく所有畑という点では、ブルゴーニュの格付けとも同類です。VDPの会員は現在202醸造所で、全醸造所数の2%に満たないのですが、国際的に受け入れられやすいこの格付けモデルは、ドイツのワイン業界に大きな影響を与えています。

 
Schloss Vollrads
シュロス・フォルラーズ(ラインガウ地方)

シュロス・フォルラーズ/ロヴァルト・ヘップ氏ラインガウ地方エストリッヒ・ヴィンケルにある、800年の伝統を誇る醸造所。1211年にすでにワインを醸造販売していたとの記録がある。城主だったマトゥシュカ=グライフェンクラウ伯爵の死後、1997年からはナッサウ・シュパルカッセがオーナーに。1999年より醸造所ディレクターおよび醸造責任者を務めるロヴァルト・ヘップ(Rowald Hepp)氏は、亡き伯爵とも親交があり、醸造所経営の立て直しに尽力。2001年にゴーミヨ・ドイツワインガイドの最優秀醸造所ディレクターに選ばれた。「シュロス・フォルラーズを国内的にも国際的にも一目置かれる醸造所にしたいというビジョンを持って仕事に取り組んできた」と語る。彼はリースリング以外のぶどう畑をすべてリースリングに植え替え、収量を落として品質向上に努めた。現在の畑面積は80ヘクタール。土壌の個性を生かした高品質でオーセンティックなワイン造りで定評がある。ヘップ氏はジャパン・ワイン・チャレンジの審査員として、ほぼ毎年渡日している。VDP会員。

Schloss Vollrads
Vollradser Allee, 65375 Oestrich-Winkel
Tel. 06723-660
www.schlossvollrads.com


2013er Riesling Kabinett feinherb
2013年 リースリング、カビネット、ファインヘルプ 11.50€

2013er Riesling EDITION
2013年 リースリング、エディション 13.80€

リースリング、カビネット、
ファインヘルプ/リースリング、エディションシュロス・フォルラーズは、1716年にドイツで初めてカビネット(貴重なワインを保管する小部屋の意)という言葉をワインに使用したという。ワインの品質等級を表す最古の概念だ。ヘップ氏お勧めのこの「カビネット、ファインヘルプ」はタウヌス珪岩などのシュロス・フォルラーズの畑のぶどうから造られたもの。2013年産は柑橘系の風味と火打石のニュアンスがあり、後味に蜂蜜や甘いメロンの風味が感じられる。「エディション」は、毎年スタッフ全員でその年のコレクションをブラインドテイスティングし、辛口系で典型的なリースリングの個性を持ち、ヴィンテージの特徴がよく出ている、食中酒にふさわしいワインを選び、命名しているもの。2013年産は柑橘類とかりんの美しい風味。シュペートレーゼクラスのぶどうでスキンコンタクトを8時間行い、ふくよかさを出している。「醸造所が軌道に乗ったのは素晴らしいチームワークのおかげ。エディションは毎年スタッフに捧げるワインでもあるんだ」とヘップ氏。醸造所の人気商品となっている。

最終更新 Mittwoch, 10 September 2014 14:54
 

国際ワインコンクール

店頭で手にしたワインに、金賞や銀賞受賞を表示するシールが貼ってあることがあります。そのワインは、いったいどのようなコンクールをくぐり抜けてきたのでしょうか。今回は、ドイツで開催されているワインコンクールをご紹介します。

ドイツでは毎年、2つの国際ワインコンクールが開催されています。ノイシュタットで行われるMundus Vini(ムンドゥス・ヴィニ)とベルリンのBerliner Wein Trophy(ベルリナー・ワイン・トロフィー)です。いずれも、生産者と取扱業者が自主的に参加する形態で、参加費が掛かります。

今年で創設14年目を迎えたムンドゥス・ヴィニの場合、創設時のエントリー本数は約2000本でしたが、現在では6000本を超えています。国別エントリー数は、トップがイタリア、2位がドイツ、3位がスペイン、続いてフランス、ポルトガル、オーストラリア、オーストリア、チリ、南アフリカの順となっています。エントリー国は40カ国を超え、ここ数年、本数こそ少ないものの、タイや中国、インド、台湾などアジア各国も参加し始めています。

審査は1年に2度、約45カ国から総勢約220人のテイスターが集まり、計6、7日間にわたって行われます。テイスターの内訳は醸造家やコンサルタント、大学関係者、ソムリエ、ジャーナリストなどで、6、7人の小グループに分かれ、1グループで1日当たり60本程度をブラインド・テイスティングします。採点法は各コンクールによって多少異なりますが、その多くがムンドゥス・ヴィニのように、OIV(国際ぶどう・ワイン機構)の基準に従い、100点法を採用しています。採点の際は視覚、嗅覚、そして味覚の様々な要素を評価します。 合計点数により、グランドゴールド (Großes Gold、95点以上)、ゴールド(90点以上)、シルバー(85点以上)の3つの賞が授与され、受賞ワインにはシールを貼って販売することができます。2013年の場合はエントリーした約6212本のうち、グランドゴールド受賞が30本、ゴールドが1142本、シルバーが1601本。受賞ワインは全体の約45%でした。ムンドゥス・ヴィニは、2010年からビオワインのコンクール(Mundus Vini Biofach)も開催しています。

ワインコンクールの形態には、ムンドゥス・ヴィニのように企業が出版社と共同で行うもの、ワイン見本市が主催するもの、雑誌が実施するもの(英国のDecanter誌など)、利益団体(醸造家団体など)やワイン関連の研究所が行うものなどがあります。筆者の知る限り、エントリー数が最も多いのは、Decanter誌のワイン・ワールド・アワード(DWWA)で約1万4000本、英国のインターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC、William Reed Business Media社主催。日本酒部門もある)は約1万2000本、ブリュッセル国際ワインコンクールが約8000本です。

日本にも、アジア最大規模の国際ワインコンクール「ジャパン・ワイン・チャレンジ」や、今年創設された、日本女性だけが審査を行う「サクラアワード」があります。

Mundus Vini入賞ワイン
www.meiningers-weinsuche.com/de/mundus-vini-2014
Berliner Wein Trophy入賞ワイン
www.dwm.de/index.php?id=234&L=2%27

 
Eva Fricke
エファ・フリッケ(ラインガウ地方)

エファ・フリッケ エファ・フリッケはブレーメン出身。ガイゼンハイム大学でぶどう栽培・ワイン醸造を学び、イタリア、スペイン、オーストラリアなどで修業、ラインガウ地方のJ.B.ベッカー醸造所勤務を経てヨーゼフ・ライツ醸造所で醸造責任者として活躍した。ライツ醸造所に勤務していた2004年に独立を決意。06年に同醸造所での仕事と並行してキードリッヒに個人醸造所を立ち上げ、初ヴィンテージをリリース。所有畑0.24ヘクタール、生産量600リットルからのスタートだった。11年8月にライツ醸造所を退職し、9月からは完全に独立。現在の所有畑は6ヘクタール。栽培品種はリースリングと少量のジルヴァーナー。畑のほとんどがロルヒの急斜面にある。リューデスハイムの北側に位置するロルヒは近年注目を浴び始めている地区。中には樹齢60年のリースリングもあり、風化粘板岩や珪岩土壌の特性を生かしたワインが造られている。ロルヒのクローネとシュロスベルクは単独で醸造されるトップワイン。ロルヒハウゼンのゼーリッヒマッハーはセカンドワインという位置付けだ。このほか、ロルヒとキードリッヒそれぞれの村名ワインも生産している。約70%を輸出、残りはレストランと専門店に卸し、ワイン造りに専念している。

Suttonstraße 14, 65399 Kiedrich
Tel. 06123-703658
www.evafricke.com


2012 Rheingau Riesling QbA trocken
2012年 ラインガウ・リースリング(辛口)
9.00€(2012年産は完売)

ラインガウ・リースリング(辛口)ロルヒ、リューデスハイム、そしてキードリッヒで栽培されたリースリングのブレンド。エファが生産するワインの中で、最もベーシックな「グーツワイン」(エステートワイン)。日々の食卓で楽しめる軽快なワインだ。2009年から生産しているもので、農家から購入したぶどうや果汁から造っている。購入先の農家がビオに移行しつつあり、13年産では30%がビオのぶどうだという。エステートワインは醸造所のメッセージが聞こえるワイン。エファのこのワインは、ラインガウ特有の砂状のレス土、粘土、陶土、スレート、珪岩などで育ったぶどうのハーモニーが楽しめる。熟れたリンゴやモモなどの果実のアロマに溢れ、爽快な酸味とのバランスも良い、すっきりとした辛口。優しい味わいの中に秘めた力強さを感じる。目下、エファは着々とビオディナミ実践の準備を進めている。醸造所設立当初から、除草剤、殺虫剤は一切投入せず、ラインガウ・ワイン醸造家連盟のエコロジーワイン規定に従って醸造している。

最終更新 Mittwoch, 06 August 2014 16:14
 

ビオワインの世界 15 ビオワインの未来

昨年5月から約1年にわたり、「ビオワインの世界」と題してその現状をお伝えしてきましたが、連載を通してビオワインが少し身近なものとなったでしょうか? 

ドイツをはじめ、欧州のビオワインはようやく欧州連合(EU)の基準が整い、買い手にとって選びやすくなってきています。ドイツ国内のビオのスーパーマーケットやビオ製品専門店のワインコーナーは、訪れるたびに充実してきており、試飲が可能なところもあります。食材の多くをビオの店で調達するという人が増えている今、ビオワインも注目を浴びており、 2012年ヴィンテージからは、葉のマーク(EUのビオ製品のマーク)の有無によってワインを選んでいる人も多いはずです。ビオディナミ製品も、マーケットやビオ・ショップで「デメター」の食材が流通することにより、徐々に知られるようになってきました。

先月、ビオディナミ農法を実践している女性醸造家と話す機会がありました。彼女は、「ビオは『断念(Verzicht)』の農法、ビオディナミはそれにアクティビティーが加わる農法、つまり自然と対話する農法」だと言い、私がまだよく理解できていなかった天体の運行とワイン造りの関係について教えてくれました。「例えば剪定は月が欠け始め、樹液が下がっていくときに行う。月が満ち始めるときは樹液が上がってくるので、ぶどうには触らず、切った枝をフェンスから取り外す作業をするの。様々なプレパラートは月が欠け、樹液が下がるときに散布するのよ」。これまで、私が出会ったドイツのビオディナミの醸造家には、天体の運行はあまり意識していないという人が多かったのですが、彼女が長年にわたり宇宙の躍動に合わせて仕事をしていると知り、ビオディナミ農法の奥深さに改めて気付かされました。

ビオ農法はワインの造り手にとって、もはや避けて通れないものになりつつあります。ビオ農法を実施して緑肥を行ったり、薬草の煎じ液、抽出液、オイルなどを使用すると、植物自体の持つ治癒力がゆっくりと回復し、ある程度病害に対する抵抗力がつくようになります。また、ぶどうの房を減らしたり、1つの房を例えば半分程のサイズに切り落とすことは収穫量制限の手法ですが、同時にフルーツゾーンの風通しが良くなるので、灰色カビ病などをある程度防ぐことができ、農薬散布量を減らすことが可能になります。

ぶどう栽培における最大の問題は、本誌955号(2013年6月7日発行)でご紹介したようにウドンコ病(オイディウム)とベト病(ペロノスポラ)で、ウドンコ病には硫黄剤、ベト病にはボルドー液(主成分は硫酸銅)で対処します。ウドンコ病にはフェンネル油、トクサやイラクサの抽出液、ベーキングパウダーなどを併用し、硫黄の使用量をかなり抑えることができるそうですが、ベト病においてボルドー液の使用量を減らすことは伝統品種の場合、非常に困難で、今後の課題となっています。

926号(2012年7月6日発行)では、ビオの生産者が注目している農薬(殺菌剤)投与が少なくてすむPiWi種(ピーヴィ種=カビ菌耐性品種)を取り上げましたが、当時ご紹介したレゲント(赤品種)、ヨハニーター、ブロナー、ソラリス(いずれも白品種)に続き、ネーミングの良さもあって注目されているのが、カベルネ・ブラン(Cabernet Blanc)という白品種です。醸造所ナビではその先駆者をご紹介します。

Weingut Rummel
ルンメル醸造所(プファルツ地方)

クラウス&ズザンネ・ルンメル夫妻
クラウス&ズザンネ・ルンメル夫妻

プファルツ地方ランダウで、クラウス&ズザンネ・ルンメル夫妻が運営する醸造所。もともと複合農家だったが、先代がワイン造りに専念。元詰めは現オーナーの代になってから始めた。1994年よりエコヴィン(ecovin)基準でワイン造りを行っている。所有畑は14ヘクタール。栽培品種の50%がPiWi種という異色の醸造所でもある。栽培しているPiWi種はレゲント、ピノティン(Pinotin)、カベルティン(Cabertin)、カベルネ・ブランが中心。ルンメル夫妻のPiWi種への思い入れは強く、2005年にはランダウ市のエコロジー奨励賞の最優秀賞を受賞。エコヴィンおよびノイシュタットの研究所と共同で、栽培、醸造各分野における様々なプロジェクトを手掛けている。彼らの先進的な試みは高く評価され、連邦農業省からはパイロット企業としての助成も受けている。

Weingut Klaus und Susanne Rummel
Geißelgasse 36, 76829 Landau–Nussdorf
Tel. 06341–61972
www.rummel-biowein.de


2013 1er Cabernet Blanc trocken
2013年 1er カベルネ・ブラン(辛口)
7.10 €

ワインカベルネ・ブランは1991年にスイス人のヴァレンティン・ブラットナーが、カベルネ・ソーヴィニヨンと耐性品種(Resistenzpartner)を交配して生み出したもの。その後、プファルツ地方の苗木業者(Rebveredler)フォルカー・フライタークが選別し、2004年に新品種として登録した。カベルネ・ブランは粒が小さく、凝縮度も高い。ボトリティスに対して強い耐性があるほか、ウドンコ病、ベト病にも耐性が見られ、リースリング並みに寒さに強い。ワインはソーヴィニヨン・ブランを思わせるエレガントで爽やかな風味と、リースリングを連想させる酸味が特徴。後味に残るほろ苦さも魅力的。従来のPiWi種と違ってネーミングが良いことも、注目される理由の1つ。ルンメル夫妻はカベルネ・ブランのゼクト(13.20€)も生産している。エチケットデザインは、ズザンネ夫人によるもの。1er(Einser=1番目の)は、本来の品種名VB91-26-1をそのように呼んでいたことから付けられている。


最終更新 Mittwoch, 06 August 2014 15:54
 

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