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ビオワインの世界 13 ルネッサンス・デ・アペラシオン(Renaissance des Appellations)

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ルネッサンス・デ・アペラシオンは、ワイン造りにおけるビオディナミ農法の先駆者で、フランス・ロワール地方サヴニエールの醸造所「ラ・クレ・デ・セラン(La Coulée de Serrant)」のオーナーでもあるニコラ・ジョリが2001年に創設した生産者の団体です。ビオ生産者の団体ではありますが、団体名が物語るように、アペラシオン(個々の産地・畑)の個性を尊重することを基本理念としています。彼の著作『ワイン―天から地へ(Le vin - du ciel à la terre)』(1997年)は、ルドルフ・シュタイナーの『農業講座』をワインの造り手向けにまとめたもので、『魂の込められたワイン(Beseelter Wein)』(1998年)と題してドイツ語でも翻訳刊行されています。ドイツ語圏の農法に関する書物が、ワイン界においては、フランスで先に注目されたのです。

同団体は現在、世界13カ国に175の会員を擁しています。フランスの会員が120で最も多く、ドイツの会員数は9醸造所です。会員にはコーヒーなどの生産者もおり、ワインに限定されているわけではありません。90%以上の会員がビオディナミ農法を実践していますが、「ビオディナミは手段であり、目的ではない」との考え方から、ビオディナミ認証を受けていない会員もいます。ニコラ・ジョリは、認証やシュタイナーの農法以上に、ワイン造りに特有の根本的な事柄、例えばクローン選別法や機械収穫、培養酵母、凝縮法、ろ過法などにも疑問を投じ、ストイックなまでにナチュラルなワイン造りを模索しています。

ルネッサンス・デ・アペラシオンは、ワイン造りに関してレベル1(1つ星)、レベル2(2つ星)、レベル3(3つ星)の3段階の独自基準を設けています。ちなみに、同団体に加盟するには委員会メンバー全員の認可が必要です。

レベル1は、すべての会員に求められている基準です。基本となっているのは、ビオ、ビオディナミ農法を実践しつつ、それぞれのアペラシオンの気候や土壌がもたらす表現をそのまま活かす、作為のないワインを生産することです。化学肥料、化学農薬など、あらゆるケミカルな薬剤を排除するだけでなく、350種類以上あると言われる培養酵母(例えば、アルコール発酵中に特定のフレーバーをもたらす培養酵母)の使用なども禁じられています。

レベル2では、灌漑(かんがい)(欧州において)や機械収穫が禁じられているほか、シャプタリゼーション(補糖)や工業的凝縮法、クリオ・エクストラクション(冷凍抽出)なども禁じられています。

レベル3では、ろ過法などがより厳密に定められています。また、ニューワールドワインの生産者に対しても灌漑を禁じています。

参考までに、ビオディナミ農法を実践する団体にはこのほかに、1995年にフランスを本拠地として発足したビオディヴァン(Biodyvin)があり、現在90の醸造所会員がいます。ドイツの会員は1醸造所のみです。

ルネッサンス・デ・アペラシオン
http://renaissance-des-appellations.com

 
Weingut Ökonomierat Rebholz
エコノミーラート・レープホルツ醸造所(プファルツ地方)

 

ハンスヨルク&ビルギット・レープホルツ夫妻
ハンスヨルク&ビルギット・レープホルツ夫妻

プファルツ地方ジーベルディンゲンで、3代にわたって優れたワインを生産している醸造所。3代目オーナーのハンスヨルク・レープホルツの生み出すワインは、自然への敬意の念と伝統に裏付けられた手仕事の確かさを感じさせる極上のしずく。 エコノミーラートとは、主に地域農業において見識の秀でた人に与えられる称号のことで、ハンスヨルクの祖父エドアルト(1886~1966年)は戦後、この称号を授与された。エドアルトは徹底して「ナトゥアワイン」(作為のない自然のままのワイン)を生産、2代目のハンスは気候や土壌を研究し、同地に適した栽培種を探ったり、畑作業を改善したりした。同醸造所がその後、ビオ、ビオディナミを実践し、さらにはルネッサンス・デ・アペラシオンに加盟したことは、初代からの哲学が今日までしっかりと根付いていることを物語っている。

Weingut Ökonomierat Rebholz
Weinstraße 54, 76833 Siebeldingen
Tel. 06345-3439
www.oekonomierat-rebholz.com


2011 Spätburgunder Tradition trocken
2011年 シュペートブルグンダー・トラディツィオン(辛口)
21.00€

ワインレープホルツ醸造所ではリースリング、シュペートブルグンダーを中心に、ヴァイスブルグンダー、グラウブルグンダー、シャルドネ、ゲヴュルツトラミーナ、ムスカテラなど多彩なワインを栽培している。土壌も雑色砂岩、貝殻石灰岩、赤底統、レスなど多様だ。ここでご紹介するのは、ペーシックなシュペートブルグンダーだが、風味に深みと多層性があり、味わうのが楽しいワイン。ジーベルディンゲンの畑「イム・ゾネンシャイン」のぶどうを使用。平均樹齢は20年。除梗後、1週間にわたってコールドマセレーション(低温浸漬)を行い、発酵後はバリック樽で24カ月熟成(一部新樽)している。


 
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岩本順子(いわもとじゅんこ) 翻訳者、ライター。ハンブルク在住。ドイツとブラジルを往復しながら、主に両国の食生活、ワイン造り、生活習慣などを取材中。著書に「おいしいワインが出来た!」(講談社文庫)、「ドイツワイン、偉大なる造り手たちの肖像」(新宿書房)他。www.junkoiwamoto.com
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