ドイツワイン・ナビゲーター


ビオワインの世界 14 ビオへの移行

昨年の春から夏に掛けて、ビオ栽培に転向したばかりの醸造家の友人が、ラインラント=プファルツ州オッペンハイムにある農村地域サービスセンターが発行する、醸造家向けニュースレター「エコロジカルぶどう栽培情報(Info Ökologischer Weinbau)」を「参考までに」と言って、毎号転送してくれていました。

このニュースレターは1992年以降、毎年4月下旬から収穫前の8月上旬頃まで、ほぼ週1回のペースで発行されており、誰でも無料で購読できます(来年から有料化される予定)。年ごとに、ビオ基準に則ってどのようにぶどうを守れば良いか、きめ細かなアドバイスが書かれてあり、ビオの栽培家にとって重要な指針となっています。通常農法の生産者にとっても参考になる情報が満載です。

内容は、病害対策に始まり、畑の緑化方法、肥料のやり方、ボトリティス菌対策としての除葉の時期や方法まで、多岐にわたります。また、植物保護剤などの新製品が出ると、それがビオ認証農家で使用可能かどうかも教えてくれます。センターからは、購読している醸造家たちに呼び掛け、カビ菌などの被害状況などの情報も収集しています。メールなどで集まった情報は、次号に活用されることもあります。

通常農法からビオ農法に転向する場合、特定のビオ団体に所属すると会員同士で情報交換ができるなど、有利なことが多いですが、欧州連合(EU)のビオ基準を実践する際には必ずしも団体に所属する必要はなく、例えばこのニュースレターからも充分なアドバイスを得ることができます。会員以外の生産者が参加できるワークショップを開催している団体もあります。

ところで、EUのビオ基準は、醸造所が所有するすべての畑のビオ栽培への移行を義務付けていません。そのため、一部の畑のみでビオを実践している醸造所では、通常農法のぶどうとビオ農法のぶどうを別々に収穫し、セラーでも別々に取り扱わなければなりません。醸造過程において使用する機械やホースなどが通常農法とビオ農法で同一の場合は、別の時間帯や別の日程で使用するなどして、その間の清掃を完璧に行います。

2012年以降は、栽培だけでなく醸造過程においてもEUのビオ基準が導入されており、醸造過程における化学合成製品、遺伝子組み換え製品の使用は禁じられています。また、醸造に使用される製品清澄(せいちょう)剤、フィルター剤など)についても細かな規定があるほか、ワインの極端な冷却(冷凍)による凝縮、70度以上の熱処理などが禁じられています。様々な先端醸造技術については、一部見直しが行われているところです。EUビオ基準への移行期間は3年です。例えば、2013年8~9月にビオ管理局へ届け出をし、EUビオ基準での栽培・醸造を開始した場合、2016年産のものからビオワインの表示が可能となります。

EUビオ基準が厳守されているかどうかは、行政が認定する民間の会社が審査を行っています。EUビオ認証の検査は1日掛けて行われ、各々のビオ団体の検査と同じ日に、掛け持ちで実施してもらうことができます。

 
Weingut Juliusspital
ユリウスシュピタール醸造所(フランケン地方)

ユリウスシュピタールのフュルステンバウ
ユリウスシュピタールのフュルステンバウ

醸造所のオーナーであるユリウスシュピタール財団は、1576年に領邦司教ユリウス・エヒター・フォン・メスペルブルンによって設立され、今日もなお病院、老人介護施設、介護士養成職業学校などを経営している福祉団体。所有畑は172ヘクタールに上り、ヴュルツブルガー・シュタイン、イプホーファー・ユリウス=エヒター=ベルクなどの優れた畑を所有している。土壌は貝殻石灰岩、ローム、コイパー、雑色砂岩など多彩で、ジルヴァーナー、リースリング、ミュラー=トゥルガウ、シュペートブルグンダーなどを中心に栽培。2008年から一部の畑でビオ栽培を実践しており、徐々にビオの割合を増やしていく予定だという。収穫期には、朝一番にビオのぶどうを収穫して圧搾などの作業を行い、その後、通常栽培のぶどうを運び込んでいる。VDP会員。ヴァインシュトゥーベ「Juliusspital」では、ワインとともに郷土料理を味わえる。

Weingut Juliusspital
Klinikstr. 1, 97070 Würzburg
Tel. 0931-3931400
www.weingut-juliusspital.de


2013 Juliusspital Weißer Burgunder & Grauer Burgunder
2013年 ユリウスシュピタール ヴァイサーブルグンダー&グラウアーブルグンダー
10.00€

ワインユリウスシュピタール醸造所では、現在4種類のビオワインを生産している。ジルヴァーナー、ヴァイサーブルグンダー&グラウアーブルグンダー(いずれもボックスボイテル)、ミュラー=トゥルガウ、そしてキュヴェ・ヴァイス(いずれもボルドーボトル)だ。キュヴェ・ヴァイスはピーヴィ種であるヨハニーターとリースリングのブレンド。代表的なのは、フランケン地方ならではのジルヴァーナーで、リースリング以上に和食に合わせやすい万能ワインだ。ヴァイサーブルグンダー&グラウアーブルグンダーは、プファルツやバーデン地方産よりもアルコール度数が低く軽快。ほのかな洋梨やかりんの風味。ビオラント基準で生産している。


最終更新 Freitag, 15 August 2014 17:12
 

ビオワインの世界 13 ルネッサンス・デ・アペラシオン(Renaissance des Appellations)

ルネッサンス・デ・アペラシオンは、ワイン造りにおけるビオディナミ農法の先駆者で、フランス・ロワール地方サヴニエールの醸造所「ラ・クレ・デ・セラン(La Coulée de Serrant)」のオーナーでもあるニコラ・ジョリが2001年に創設した生産者の団体です。ビオ生産者の団体ではありますが、団体名が物語るように、アペラシオン(個々の産地・畑)の個性を尊重することを基本理念としています。彼の著作『ワイン―天から地へ(Le vin - du ciel à la terre)』(1997年)は、ルドルフ・シュタイナーの『農業講座』をワインの造り手向けにまとめたもので、『魂の込められたワイン(Beseelter Wein)』(1998年)と題してドイツ語でも翻訳刊行されています。ドイツ語圏の農法に関する書物が、ワイン界においては、フランスで先に注目されたのです。

同団体は現在、世界13カ国に175の会員を擁しています。フランスの会員が120で最も多く、ドイツの会員数は9醸造所です。会員にはコーヒーなどの生産者もおり、ワインに限定されているわけではありません。90%以上の会員がビオディナミ農法を実践していますが、「ビオディナミは手段であり、目的ではない」との考え方から、ビオディナミ認証を受けていない会員もいます。ニコラ・ジョリは、認証やシュタイナーの農法以上に、ワイン造りに特有の根本的な事柄、例えばクローン選別法や機械収穫、培養酵母、凝縮法、ろ過法などにも疑問を投じ、ストイックなまでにナチュラルなワイン造りを模索しています。

ルネッサンス・デ・アペラシオンは、ワイン造りに関してレベル1(1つ星)、レベル2(2つ星)、レベル3(3つ星)の3段階の独自基準を設けています。ちなみに、同団体に加盟するには委員会メンバー全員の認可が必要です。

レベル1は、すべての会員に求められている基準です。基本となっているのは、ビオ、ビオディナミ農法を実践しつつ、それぞれのアペラシオンの気候や土壌がもたらす表現をそのまま活かす、作為のないワインを生産することです。化学肥料、化学農薬など、あらゆるケミカルな薬剤を排除するだけでなく、350種類以上あると言われる培養酵母(例えば、アルコール発酵中に特定のフレーバーをもたらす培養酵母)の使用なども禁じられています。

レベル2では、灌漑(かんがい)(欧州において)や機械収穫が禁じられているほか、シャプタリゼーション(補糖)や工業的凝縮法、クリオ・エクストラクション(冷凍抽出)なども禁じられています。

レベル3では、ろ過法などがより厳密に定められています。また、ニューワールドワインの生産者に対しても灌漑を禁じています。

参考までに、ビオディナミ農法を実践する団体にはこのほかに、1995年にフランスを本拠地として発足したビオディヴァン(Biodyvin)があり、現在90の醸造所会員がいます。ドイツの会員は1醸造所のみです。

ルネッサンス・デ・アペラシオン
http://renaissance-des-appellations.com

 
Weingut Ökonomierat Rebholz
エコノミーラート・レープホルツ醸造所(プファルツ地方)

 

ハンスヨルク&ビルギット・レープホルツ夫妻
ハンスヨルク&ビルギット・レープホルツ夫妻

プファルツ地方ジーベルディンゲンで、3代にわたって優れたワインを生産している醸造所。3代目オーナーのハンスヨルク・レープホルツの生み出すワインは、自然への敬意の念と伝統に裏付けられた手仕事の確かさを感じさせる極上のしずく。 エコノミーラートとは、主に地域農業において見識の秀でた人に与えられる称号のことで、ハンスヨルクの祖父エドアルト(1886~1966年)は戦後、この称号を授与された。エドアルトは徹底して「ナトゥアワイン」(作為のない自然のままのワイン)を生産、2代目のハンスは気候や土壌を研究し、同地に適した栽培種を探ったり、畑作業を改善したりした。同醸造所がその後、ビオ、ビオディナミを実践し、さらにはルネッサンス・デ・アペラシオンに加盟したことは、初代からの哲学が今日までしっかりと根付いていることを物語っている。

Weingut Ökonomierat Rebholz
Weinstraße 54, 76833 Siebeldingen
Tel. 06345-3439
www.oekonomierat-rebholz.com


2011 Spätburgunder Tradition trocken
2011年 シュペートブルグンダー・トラディツィオン(辛口)
21.00€

ワインレープホルツ醸造所ではリースリング、シュペートブルグンダーを中心に、ヴァイスブルグンダー、グラウブルグンダー、シャルドネ、ゲヴュルツトラミーナ、ムスカテラなど多彩なワインを栽培している。土壌も雑色砂岩、貝殻石灰岩、赤底統、レスなど多様だ。ここでご紹介するのは、ペーシックなシュペートブルグンダーだが、風味に深みと多層性があり、味わうのが楽しいワイン。ジーベルディンゲンの畑「イム・ゾネンシャイン」のぶどうを使用。平均樹齢は20年。除梗後、1週間にわたってコールドマセレーション(低温浸漬)を行い、発酵後はバリック樽で24カ月熟成(一部新樽)している。


最終更新 Dienstag, 26 August 2014 17:30
 

ビオワインの世界 12 Demeter(デメター)

「Demeter」は、世界最古の「ビオ」生産者団体と言えるでしょう。その理念は、人智学の祖ルドルフ・シュタイナーが 1924年に行った「農業講座」に集約されています。この団体が結成されたのは1927年、翌28年にはデメター(ギリシャの豊穣の神)というブランド名が導入され、1930年頃からはドイツでも実践されるようになります。1932年の時点で会員農家数は1000に達し、オーストリアやドイツのみならず、スイス、オランダ、スウェーデン、ノルウェー、英国でも実践されるようになり、1939年にはニュージーランドにも支部ができました。

1941年にナチスがデメターの活動を禁じましたが、戦後まもなく再開されます。ドイツの本部はダルムシュタットにあり、会員生産者数は1400、農地面積は計6万8000ヘクタールに及びます。このほかに330の生産者、加工業者、契約パートナー、そして500カ所の販売所(Reformhausなど)があります。醸造所会員はうち47社です。

デメターはとてもインターナショナルな組織で、50カ国8000の農家が会員となっており、その農地面積の合計は26万ヘクタールにも上ります。ちなみに、全世界におけるワイン醸造所会員数は540、農地面積は計7600ヘクタールです。

ダルムシュタットには、1950年に設立されたビオディナミ研究所(IBDF)もあり、国内外の大学やほかの組織と共同でビオディナミ農法を科学的に研究しています。また、1970年代からはビオディナミをテーマにした学位論文も書かれるようになりました。 デメターの基準は欧州連合(EU)のビオ基準より厳格で、伝統農薬のほかに牛糞、珪石、薬草などの自然素材から作られる独自のプレパラートを使用して、ぶどう畑の生態系とぶどうを守ります。肥料もデメターの基準に叶った牛糞や植物由来のコンポストを使用します。EUの認証に加えて、年に1度の団体による認証と開発ミーティング(Entwicklungsgespräch)への参加が義務付けられています。

ビオディナミは自然を総合的に把握する農法であり、その処方の成果は非常にゆっくりと現れてくるため、強固な意志がなければ継続できないと言われます。しかし、その効果を確信するに至った造り手が増え、現在では、ほかのビオ団体もデメターの活動に注目するようになっています。昨年からは、エコヴィン(ECOVIN)とデメターがパートナーシップを組み、共同で勉強会などを開催しています。

「Demeter」基準例  ※〈〉内はEUビオ基準
会員は、所有するすべての畑において「Demeter」基準に則ってぶどうを栽培しなければならない。〈畑の一部でビオの実践が可能〉
ボルドー液用硫酸銅の上限は年間3kg/haまで。〈年間6kg/ha〉
ワインに添加する亜硫酸量(一例)は、辛口白・ロゼワインで150mg/L、 辛口赤ワインで100mg/L(いずれも残糖分2g/L以下の場合)。〈同一〉
www.demeter.de

 
Weingut Odinstal
オーディンスタール醸造所(プファルツ地方)

 

アレクサンダー・プリューガー

19世紀初頭にヴァッヘンハイム村長が海抜350メートルの地に設立した醸造所。1998年以降、バート・デュルクハイム出身のトーマス・ヘンゼル氏がオーナーとなり、大規模な改修が行われた。醸造所は20ヘクタールの敷地を擁するが、ぶどう畑は5ヘクタールで、残りは森林と牧草地。単一畑「ヴァッヘンハイマー・オーディンスタール」はミッテルハルト地区で最も高い位置にある。90年代からビオ栽培を実践、2006年にビオディナミに移行。豊かな自然に恵まれ、ビオディナミの実践には理想的な環境だ。 04年に栽培・醸造責任者として醸造所に加わったアンドレアス・シューマン氏は、ミュラー・カトワール醸造所、ヴィットマン醸造所などで経験を積んだ意欲的な造り手。彼の経験の蓄積はオーディンスタール醸造所において、独自のスタイルとして実を結び始めている。デメター会員。

Weingut Odinstal
オーディンスタール醸造所(プファルツ地方)
Odinstalweg, 67157 Wachenheim
Tel. 06322-9495312
www.odinstal.de


2012 Odinstal Silvaner 350 N.N.
2012年 オーディンスタール・ジルヴァーナー
350 N.N. 14.00€

ワインオーディンスタールは玄武岩、雑色砂岩、貝殻石灰岩、コイパー(赤色泥灰土)などが混在する多彩な土壌。単一畑内の土壌がかくも多彩なため、それをさらに区分し、それぞれの土質に合った品種を栽培するなど工夫している。栽培品種はリースリング、ヴァイスブルグンダー、オクセロワ、ゲヴュルツトラミーナ、ジルヴァーナーという個性的なコレクション。ジルヴァーナーはコイパー土壌の畑で栽培されている。森に囲まれた高台の畑では、ぶどうの成熟もゆっくりで、より豊かな風味が引き出される。リンゴや洋梨のみずみずしい果実香、芯のある味わい、爽やかな酸味とクリーミーな余韻が魅力的。500リットル容量のプファルツ産オーク樽内で醸造。ジルヴァーナーの持つ高貴さを最大限に引き出したワイン。

最終更新 Freitag, 15 August 2014 17:15
 

ビオワインの世界 11 ビオディナミ基礎講座 4

今回は、502番から507番までのプレパラートをご紹介しましょう。これらは基本的にコンポストの改良用です。中には、薬草としてよく知られた植物もあり、相性の良い動物の臓器を用いて効果を高めたりします。いずれも人間による自然観察の蓄積をシュタイナーが体系化したもの。500番台であるのは、現在の地球の文明がアトランティス文明以後、第5番目に相当するからだそうです。

ノコギリソウの花(502番): ノコギリソウは頭状化植物で、光のエネルギーを活用する能力に優れています。また、適量の硫黄を持ち、理想的な形でカリウムと結合しています。摘んだ花を雄鹿の膀胱に詰め、夏は光にさらし、冬は土中に埋めてできたプレパラートを堆肥に混ぜると、硫黄とカリウムの結合バランスが取れ、植物の成長プロセスを助けます。

カモミールの花(503番): カモミールの花は、粘膜、胃腸の炎症を癒すハーブとしても知られています。カモミールも適量の硫黄を持ち、カルシウムとの結合力に優れています。摘んだ花を雌牛の腸に詰め、冬の間、土中に埋めて腐敗させて得たプレパラートを堆肥に混ぜると、植物の耐性が強まります。

セイヨウイラクサ(504番): イラクサは窒素が過剰な土壌などに生え、その土壌成分のバランスを整える植物です。集めたイラクサは6月から1年間、ピート(泥炭)で囲むようにして土中に埋めます。できたプレパラートを堆肥に混ぜると、余分な鉄分や窒素を土壌から取り除いてくれます。

オークの樹皮(505番): オークの樹皮はカルシウムとタンニンを多く含みます。カルシウムはカビ菌の成長を抑制し、タンニンには殺虫効果があります。樹皮は細かく砕いて家畜の頭蓋骨の中に詰め、冬の間、水が流れ込みやすい場所に埋めます。腐敗したプレパラートを肥料に混ぜると、カビ菌の予防効果が強まります。

セイヨウタンポポの花(506番): タンポポは適応性のある強靭な植物です。その綿毛部分は細かな珪石を含む細胞から形成されています。摘んだタンポポの花を干してから牛の腸間膜で包み、冬の間、土中に埋めます。できたプレパラートを堆肥に混ぜると、植物の持つ珪酸の働きが強化されます。

カノコソウ(507番): カノコソウは、精神安定剤としても知られています。やや日陰の、湿気と石灰分の多い土壌に生え、根には温め効果があります。集めた花を搾り、その汁を水で薄めて堆肥に吹き付けると、土壌の微生物やミミズの活動が活発になります。

ドイツでは、農作業を行う際に天体の動きよりも現場であるぶどう畑の状態を優先させている醸造家の方が多いようです。また、プレパラートを手作りできない場合は、専門の生産者から購入することも可能です。

 
Weinhaus Stein
ワインハウス・シュタイン(プファルツ地方)

左からマティアス・シュタイン、ギュンター・フランツ、マティアス・ヴェルター
左からマティアス・シュタイン、
ギュンター・フランツ、
マティアス・ヴェルター

ランダウの「ワインハウス・シュタイン」は、農業技師・醸造家であるマティアス・シュタインが父親から継いだ醸造所。2003年に、マティアスは友人の林業家ギュンター・フランツ、地質学者マティアス・ヴェルターと共同で再出発した。3人とも副業としてこの醸造所の仕事を行っている。2004年からはビオ基準でワインを造り、2008年にビオディナミに移行。アルツハイムのなだらかな丘陵地カルミットが彼らの畑だ。カルミットは大部分がレス、ローム土壌だが、一部、石灰岩土壌が隆起しているところがあり、クライネ・カルミットという標高270メートルの山を成している。この山はアルツハイムとイルベスハイムの双方に属しているが、一帯の石灰岩土壌のぶどう畑は煩雑な手続きを経て2009年に単一畑「カルミット」として認められた。この畑からは、テロワールの活きたリースリングが造られている。ワインハウス・シュタインのコレクションは、白はリースリング、赤はレゲントのみ。シュペートブルグンダーはすべてブラン・デ・ノワールとしてリリースしている。デメター会員。

Weinhaus Stein
Matthias Stein - Matias Welter - Günter Franz
Arzheimer Hauptstr. 117, 76829 Landau-Arzheim
Tel. 06341-945376
www.weinhausstein.de


2009 Regent Qualitätswein, trocken
2009年 レゲント・クヴァリテーツワイン(辛口)5.00€

ワインレゲントは1967年にディアナ(ジルヴァーナー×ミュラー= トゥルガウ)とシャンブルサンの掛け合わせから生まれた、カビ菌への耐性が強い、いわゆるピーヴィ種で、1995年に栽培が認可された。同醸造所のレゲントはマティアスの父が2000年に植樹したもの。マティアスによると、かなりの減農薬は可能だが、完全無農薬はやはり困難で、開花後に伝統農薬を少量必要とする。レゲントは完熟すると果皮が裂けやすくなり、赤品種にとって致命的なボトリティス菌が付きやすいため、デリケートなケアが必要な品種だという。このレゲントは、力強かったタンニンにも、5年の歳月を経て滑らかさが現れ、飲み頃に近付いてきた感じ。チェリーやチョコレートの風味が魅力的だ。2009年産レゲントのバリック樽仕立ては春先にボトリングの予定(6.00€)。

 

 

最終更新 Freitag, 15 August 2014 17:17
 

ビオワインの世界 10 ビオディナミ基礎講座 3

宇宙の中の一惑星として、地球はほかの天体と関わりながら存在しています。地上の生物は、太陽からはもちろんのこと、月の満ち欠けやその他の惑星の動きからも何らかの影響を受けています。暦や季節の概念は、天体の動きを観察することから生まれたもの。ビオディナミ農法では、天体の影響を重要な要素と考えます。

もう1つの重要な要素が、雌牛の役割です。草食で、反芻(はんすう)する動物である牛は、3つの前胃と1つの後胃、そして長さ40メートルの腸管を持っています。第1胃の容量は200リットル以上あり、その中で活動する微生物の持つ酵素が、草の繊維質を十分に分解します。雌牛は牛乳のほか、貴重な植物素材の肥料をもたらしてくれるのです。

これら2つの要素を念頭に、ビオディナミ農法特有のプレパラートを2回に分けてご紹介します。主要なプレパラートは500番から507番まで8種類で、このうち最も大切なのが土壌に散布する500番とぶどうに散布する501番です。

ホルンミスト:雌牛の角に詰めた牛糞(500番) 
牛糞を雌牛の角に詰め、秋から復活祭の頃まで土中の一定の場所に埋めておくと、冬場の土壌と角の性質から、内部の微生物の活動が活性化されます。春に掘り起こした牛糞は規定量の雨水と混ぜ、約1時間掛けて水流が渦巻を形成するように撹拌(かくはん)します。撹拌作業は機械化されていることもあります。牛糞を水に均等に溶かし込むこの作業をディナミゼーションと言い、角4つ分の牛糞で1ヘクタールもの畑の肥料を賄えます。ディナミゼーションを行うため、少量の牛糞で済むのです。

ぶどう栽培では、主に畑を耕す前の日没時に散布します。500番を散布すると、土壌の微生物の活動が促進されて養分が根に行き渡りやすくなるほか、腐植土が豊かになり、ミミズの活動も活発になります。

ホルンキーゼル:雌牛の角に詰めた珪石(501番)
珪石(石英を主体とする珪化物=シリカストーン)は地殻を構成する重要な鉱物の1つ。砂の主成分であり、土壌によっては植物に取り込まれやすいコロイド状でも存在しています。特に牧草や砥草(トクサ)に多く届けられ、動物や人間の体内にも取り込まれます。人間の眼や肌の成分の1つでもあり、大気中にも存在します。光をよく反射するよう粉末状にした珪石を雌牛の角に詰め、復活祭の頃から秋に掛けて土中に埋めておくと、夏場の土壌と角の性質から、光の反射効果が強まります。取り出した粉末は、規定量を雨水に溶かし、500番と同様に撹拌します。501番は植物の成長期に、必要に応じて朝早くにぶどう樹に散布します。

501番を散布するとぶどうの成長バランスが改善されて成熟具合が安定し、光合成が促進されて植物の耐性が強化されます。また、養分の吸収バランスが良くなり、ぶどう自体がカビ菌、害虫などに対抗できる強さを獲得するようになります。

500番は地中の微生物などの生命とぶどうを繋ぎ、501番は太陽とぶどうの関係を繋ぐプレパラートと言えるでしょう。

 
Weingut Brüder Dr. Becker
ブリューダー・ドクター・ベッカー醸造所(ラインヘッセン地方)

ハンス&ロッテ夫妻
ハンス&ロッテ夫妻

 ブリューダー・ドクター・ベッカー醸造所は、1970年代からすでに、今日で言うビオワインを生産していた。現在のオーナーは、1980年代半ばに醸造所を継いだ5代目のハンス・ミュラー&ロッテ夫妻。ぶどうの栽培は主にハンスが担当、醸造は2人の共同作業だ。エコヴィンの設立時(1985年)からの会員で、2008年にデメターにも加盟した。ロッテは、かつてビオディナミの農家で研修した経験を持ち、ビオをさらに徹底させてビオディナミに移行することは、2人の目標でもあった。ビオ、ビオディナミを忠実に実践することで得られた宝物、それは微生物やミミズが活動する「生きた土壌」。水はけも改善され、ひどく乾燥する時期もぶどうがストレスなく成長するという。健康な土壌で育つぶどうは成熟のバランスも良く、粒もコンパクトになり、より「テロワール」が表現されたワインになるそうだ。

Weingut Brüder Dr. Becker
Familie Pfeffer-Müller
Mainzer Str. 3-7, 55278 Ludwigshöhe
Tel. 06249-8430
www.brueder-dr-becker.de


2012 Ludwigshöher Silvaner trocken
2012年 ルートヴィヒスヘーアー・ジルヴァーナー(辛口)10.50€

ワイン ルードヴィヒスヘーエのトイフェルスコップフという名の畑で栽培されているジルヴァーナーから作られたワイン。主にレス(黄土)で構成されるこの畑には、過去46年間にわたって化学農薬、化学肥料が投入されていないため、腐植土も豊かだ。ジルヴァーナーはいずれも樹齢40年を超える古樹。愛情を込めて育てられている1本1本のぶどう樹には、それぞれ個性が見られるという。収穫量がオークの大樽を満たすに至らないため、ステンレススティールタンクを使用。自然酵母で醗酵させたワインは、果実味とスパイシーさを併せ持ち、味わいのバランスが良く、力強さも感じられる。ロッテはハーブを多用した野菜料理やクリーミーなスープ、魚のムニエルなどに合わせて楽しんでいると言う。将来的には大型の木樽で醗酵させる予定。VDP基準のオルツワイン(村名ワイン)として販売されている。

 

 

最終更新 Freitag, 15 August 2014 17:18
 

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