昨年の春から夏に掛けて、ビオ栽培に転向したばかりの醸造家の友人が、ラインラント=プファルツ州オッペンハイムにある農村地域サービスセンターが発行する、醸造家向けニュースレター「エコロジカルぶどう栽培情報(Info Ökologischer Weinbau)」を「参考までに」と言って、毎号転送してくれていました。
このニュースレターは1992年以降、毎年4月下旬から収穫前の8月上旬頃まで、ほぼ週1回のペースで発行されており、誰でも無料で購読できます(来年から有料化される予定)。年ごとに、ビオ基準に則ってどのようにぶどうを守れば良いか、きめ細かなアドバイスが書かれてあり、ビオの栽培家にとって重要な指針となっています。通常農法の生産者にとっても参考になる情報が満載です。
内容は、病害対策に始まり、畑の緑化方法、肥料のやり方、ボトリティス菌対策としての除葉の時期や方法まで、多岐にわたります。また、植物保護剤などの新製品が出ると、それがビオ認証農家で使用可能かどうかも教えてくれます。センターからは、購読している醸造家たちに呼び掛け、カビ菌などの被害状況などの情報も収集しています。メールなどで集まった情報は、次号に活用されることもあります。
通常農法からビオ農法に転向する場合、特定のビオ団体に所属すると会員同士で情報交換ができるなど、有利なことが多いですが、欧州連合(EU)のビオ基準を実践する際には必ずしも団体に所属する必要はなく、例えばこのニュースレターからも充分なアドバイスを得ることができます。会員以外の生産者が参加できるワークショップを開催している団体もあります。
ところで、EUのビオ基準は、醸造所が所有するすべての畑のビオ栽培への移行を義務付けていません。そのため、一部の畑のみでビオを実践している醸造所では、通常農法のぶどうとビオ農法のぶどうを別々に収穫し、セラーでも別々に取り扱わなければなりません。醸造過程において使用する機械やホースなどが通常農法とビオ農法で同一の場合は、別の時間帯や別の日程で使用するなどして、その間の清掃を完璧に行います。
2012年以降は、栽培だけでなく醸造過程においてもEUのビオ基準が導入されており、醸造過程における化学合成製品、遺伝子組み換え製品の使用は禁じられています。また、醸造に使用される製品清澄(せいちょう)剤、フィルター剤など)についても細かな規定があるほか、ワインの極端な冷却(冷凍)による凝縮、70度以上の熱処理などが禁じられています。様々な先端醸造技術については、一部見直しが行われているところです。EUビオ基準への移行期間は3年です。例えば、2013年8~9月にビオ管理局へ届け出をし、EUビオ基準での栽培・醸造を開始した場合、2016年産のものからビオワインの表示が可能となります。
EUビオ基準が厳守されているかどうかは、行政が認定する民間の会社が審査を行っています。EUビオ認証の検査は1日掛けて行われ、各々のビオ団体の検査と同じ日に、掛け持ちで実施してもらうことができます。
ユリウスシュピタール醸造所(フランケン地方)

ユリウスシュピタールのフュルステンバウ
醸造所のオーナーであるユリウスシュピタール財団は、1576年に領邦司教ユリウス・エヒター・フォン・メスペルブルンによって設立され、今日もなお病院、老人介護施設、介護士養成職業学校などを経営している福祉団体。所有畑は172ヘクタールに上り、ヴュルツブルガー・シュタイン、イプホーファー・ユリウス=エヒター=ベルクなどの優れた畑を所有している。土壌は貝殻石灰岩、ローム、コイパー、雑色砂岩など多彩で、ジルヴァーナー、リースリング、ミュラー=トゥルガウ、シュペートブルグンダーなどを中心に栽培。2008年から一部の畑でビオ栽培を実践しており、徐々にビオの割合を増やしていく予定だという。収穫期には、朝一番にビオのぶどうを収穫して圧搾などの作業を行い、その後、通常栽培のぶどうを運び込んでいる。VDP会員。ヴァインシュトゥーベ「Juliusspital」では、ワインとともに郷土料理を味わえる。
Weingut Juliusspital
Klinikstr. 1, 97070 Würzburg
Tel. 0931-3931400
www.weingut-juliusspital.de
2013 Juliusspital Weißer Burgunder & Grauer Burgunder
2013年 ユリウスシュピタール ヴァイサーブルグンダー&グラウアーブルグンダー
10.00€
ユリウスシュピタール醸造所では、現在4種類のビオワインを生産している。ジルヴァーナー、ヴァイサーブルグンダー&グラウアーブルグンダー(いずれもボックスボイテル)、ミュラー=トゥルガウ、そしてキュヴェ・ヴァイス(いずれもボルドーボトル)だ。キュヴェ・ヴァイスはピーヴィ種であるヨハニーターとリースリングのブレンド。代表的なのは、フランケン地方ならではのジルヴァーナーで、リースリング以上に和食に合わせやすい万能ワインだ。ヴァイサーブルグンダー&グラウアーブルグンダーは、プファルツやバーデン地方産よりもアルコール度数が低く軽快。ほのかな洋梨やかりんの風味。ビオラント基準で生産している。



インベスト・イン・ババリア
スケッチブック
レープホルツ醸造所ではリースリング、シュペートブルグンダーを中心に、ヴァイスブルグンダー、グラウブルグンダー、シャルドネ、ゲヴュルツトラミーナ、ムスカテラなど多彩なワインを栽培している。土壌も雑色砂岩、貝殻石灰岩、赤底統、レスなど多様だ。ここでご紹介するのは、ペーシックなシュペートブルグンダーだが、風味に深みと多層性があり、味わうのが楽しいワイン。ジーベルディンゲンの畑「イム・ゾネンシャイン」のぶどうを使用。平均樹齢は20年。除梗後、1週間にわたってコールドマセレーション(低温浸漬)を行い、発酵後はバリック樽で24カ月熟成(一部新樽)している。
オーディンスタールは玄武岩、雑色砂岩、貝殻石灰岩、コイパー(赤色泥灰土)などが混在する多彩な土壌。単一畑内の土壌がかくも多彩なため、それをさらに区分し、それぞれの土質に合った品種を栽培するなど工夫している。栽培品種はリースリング、ヴァイスブルグンダー、オクセロワ、ゲヴュルツトラミーナ、ジルヴァーナーという個性的なコレクション。ジルヴァーナーはコイパー土壌の畑で栽培されている。森に囲まれた高台の畑では、ぶどうの成熟もゆっくりで、より豊かな風味が引き出される。リンゴや洋梨のみずみずしい果実香、芯のある味わい、爽やかな酸味とクリーミーな余韻が魅力的。500リットル容量のプファルツ産オーク樽内で醸造。ジルヴァーナーの持つ高貴さを最大限に引き出したワイン。
レゲントは1967年にディアナ(ジルヴァーナー×ミュラー= トゥルガウ)とシャンブルサンの掛け合わせから生まれた、カビ菌への耐性が強い、いわゆるピーヴィ種で、1995年に栽培が認可された。同醸造所のレゲントはマティアスの父が2000年に植樹したもの。マティアスによると、かなりの減農薬は可能だが、完全無農薬はやはり困難で、開花後に伝統農薬を少量必要とする。レゲントは完熟すると果皮が裂けやすくなり、赤品種にとって致命的なボトリティス菌が付きやすいため、デリケートなケアが必要な品種だという。このレゲントは、力強かったタンニンにも、5年の歳月を経て滑らかさが現れ、飲み頃に近付いてきた感じ。チェリーやチョコレートの風味が魅力的だ。2009年産レゲントのバリック樽仕立ては春先にボトリングの予定(6.00€)。
ルードヴィヒスヘーエのトイフェルスコップフという名の畑で栽培されているジルヴァーナーから作られたワイン。主にレス(黄土)で構成されるこの畑には、過去46年間にわたって化学農薬、化学肥料が投入されていないため、腐植土も豊かだ。ジルヴァーナーはいずれも樹齢40年を超える古樹。愛情を込めて育てられている1本1本のぶどう樹には、それぞれ個性が見られるという。収穫量がオークの大樽を満たすに至らないため、ステンレススティールタンクを使用。自然酵母で醗酵させたワインは、果実味とスパイシーさを併せ持ち、味わいのバランスが良く、力強さも感じられる。ロッテはハーブを多用した野菜料理やクリーミーなスープ、魚のムニエルなどに合わせて楽しんでいると言う。将来的には大型の木樽で醗酵させる予定。VDP基準のオルツワイン(村名ワイン)として販売されている。



