ドイツワイン・ナビゲーター


土着品種再発見 3 ムスカテラー

ムスカテラー(Muskateller)*も、長年ドイツで栽培されてきた品種です。ドイツでは、土着品種というよりは、伝統品種といった方が良いかもしれません。

ムスカテラーとひと括りにされるぶどうには、様々な親戚同士の品種があります。ドイツで一般にムスカテラーといえば、「ゲルバー・ムスカテラー(Gelber Muskateller)」、つまり黄色いムスカテラーと呼ばれるものです。「ローター(赤)・ムスカテラー」という品種もありますが、これはゲルバー・ムスカテラーの突然変異で、白品種に分類されます。フランス名は「ミュスカ・ブラン・ア・プティ・グラン(Muscat blanc à petits grains)」。単にミュスカ・ブランと呼ばれることもあります。ゲルバー・ムスカテラーは、ぶどうの粒の断面が正円形。ルーツはイタリアやギリシア、さらには小アジアに遡るのではないかと推測されています。

ゲルバー・ムスカテラーの親戚の中で最も良く知られているのがミュスカ・ド・アレキサンドリア(Muscat d' Alexandrie)で、エジプト原産の品種といわれています。ムスカテラーと聞いてマスカットを連想する方も多いと思いますが、日本で知られる食用ぶどうのマスカットは、このミュスカ・ド・アレキサンドリアのことで、ぶどうの粒の断面は楕円形をしています。

ゲルバー・ムスカテラーから醸されたワインの香りを嗅ぐとき、あの食用ぶどうのマスカットの香りが立ち上がることがあります。ワインの香りの表現に、ぶどう本来の香りが指摘されることはあまりないのですが、この「マスカット」の香りは特別です。

ドイツにおけるゲルバー・ムスカテラーの栽培面積は約180ヘクタール。ほとんどが爽やかな辛口のワインに仕上げられています。一方、フランスでは7000ヘクタール以上の土地で栽培されており、主に「ヴァン・ドゥー・ナチュレル(VDN, vin doux naturels)」と呼ばれる甘口の酒精強化ワインに使われています。また、イタリア、ピエモント地方のアスティ地域では、同品種から甘さを残したスパークリングワインや甘口ワインが生産されています。

*仏語でミュスカ、イタリア語でモスカート、英語でマスカット、スペインおよびポルトガル語でモスカテル。

【ムスカテラーの種類】
参考までに、ムスカテラーには、ほかにこんな仲間がいます。

ムスカート・オトネル(Muskat Ottonel)
フランスの研究者ジャン・モローが選別した白品種。親品種はグートエーデル(シャスラ)とミュスカ・ド・ソーミュール(Muscat de Saumur)といわれている。

モリオ・ムスカート(Morio Muskat)

ジルヴァーナーと ゲルバー・ムスカテラーの掛け合わせ。南プファルツ地方ガイルヴァイラーホーフ研究所のペーター・モリオが交配し、1980年代に人気を博した。

ミュスカ・ダンブール(Muscat de Hambourg)

ミュスカ・ド・アレキサンドリアとトロリンガーの掛け合わせで誕生した赤品種。なぜハンブルクという名が付いているのかは不明。主産地はフランス、ギリシア、ルーマニア、ウルグアイなど。食用ぶどうとしても消費される。

 
Hornickel & Hornickel Wein
ホルニッケル&ホルニッケル・ワイン(プファルツ地方)

ミヒャエル・ホルニッケルフリージャーナリストのミヒャエル・ホルニッケル(写真右)が営む個人醸造所。ノイシュタット・ハート地区の自宅前の小さな畑で、17列のゲルバー・ムスカテラのみを栽培している。彼はワイン街バッハラッハの出身。父親が醸造所の輸出担当社員で、自宅が醸造所の建物内にあったため、幼い頃から醸造所が遊び場だった。ジャーナリストを志望し、ベルリンで政治記者として働いていたが、1980年代後半、フランスの農業専門学校留学中に現地でワインの官能検査の最前線を知り、帰国後、マイニンガー出版社のワイン専門誌『Weinwirtschaft』の編集者の職を得るとともに、官能検査法をドイツに紹介。マイニンガー社のワインテイスティング部門の基礎を築いた。現在はジャーナリストとして活動するほか、国際ワインコンテスト「MundusVini」役員などを務めている。

Hornickel & Hornickel Wein
Mandelring 238,
67433 Neustadt an der Weinstrasse
Tel. 06321-6790156


2011 17 Zeilen Muskateller Tradition
2011年「17 列」ムスカテラ・トラディツィオン 9.80€

2011年「17列」ムスカテラ・トラディツィオン 9.80€ミヒャエルの初ヴィンテージは2008年。入手時に樹齢25年だったゲルバー・ムスカテラは以前の所有者の手入れが悪く、08年はぶどうがうまく成熟しなかったが、09年以降は毎年、その年の特徴を充分に表現したワインが生まれている。栽培アドバイザー、醸造をハンス=ギュンター・シュヴァルツ(ミュラー・カトワール醸造所の前ワインメーカー、写真左)が担当し、 畑は見事に再生。「作為のないワイン」 を目指すハンス=ギュンターの醸造哲学そのままのワインに仕上がっている。10年は除酸を行わず、ヴィンテージらしさを尊重。11年は残糖が辛口を1g/l上回ったためトロッケンと表記できず、トラディツィオンという名称になっている。ミヒャエルは「11年は、ぶどうをまるかじりするような味わい」と語る。ハンス=ギュンターの往年のムスカテラを記憶している飲み手たちが、毎年待ち焦がれているワイン。11年の生産本数は900本。
ワイン購入の問い合わせ先  www.weinstudio-pfalz.de 

最終更新 Freitag, 09 Oktober 2015 14:56
 

土着品種再発見 2 エルプリング

ドイツにおいて将来性が見込めそうなもう1つの白の土着品種に、エルプリング(Elbling)があります。 エルプリングはラテン語の「アルブス(albus)」(白の意)が訛ってできた言葉とされています。このほか、クラインベルガーと呼ばれることもあります。 エルプリングにもヴァイサー(白)・エルプリングと、その突然変異であるローター(赤)・エルプリングがありますが、ローター・エルプリングは果皮がほんのり色付くだけで白品種に分類されています。エルプリングはホイニッシュ(Heunisch)種と混同されていた時期があり、おそらく親戚ではないかといわれています。ちなみに、リースリングにもホイニッシュが掛け合わされているそうです。

エルプリングは、中世から19世紀にかけてドイツの広い地域で栽培されていたそうで、200年前にはドイツで栽培されていたぶどう品種の大半がエルプリングだったともいわれています。このほか、エルプリングはフランスのシャンパーニュ地方やアルザス・ロレーヌ地方、ルクセンブルク、スイス、そして東欧でも栽培されていました。

古代より続いていた「十分の一税」の廃止(この税制は、地域によっては19世紀に入っても実施されていた)とともに、より優れたぶどう品種、例えばリースリングやジルヴァーナーへの植え替えが進み、エルプリングは徐々に姿を消していったそうです。また、1787年にトリーアの選帝侯クレメンス・ヴェンツェスラウスが地元のワインの品質向上を命じ、「優れた品種」の栽培を奨励したため、エルプリングが姿を消し、代わりに植えられたリースリングが世界的名声を得ることになりました。

現在もエルプリングがかろうじて栽培されている地域が、上モーゼル(Obermosel)地域と下モーゼル(Untermosel)地域の一部。そのほとんどはゼクトのベースワインに使われていますが、スティルワインを生産している醸造家たちもいます。ただ、栽培面積は600ヘクタール未満で、減少傾向にあります。ルクセンブルクでも、ごく少量栽培されているようですが、スイス、フランスではほぼ消滅したといって良いでしょう。

エルプリングはヨーロッパ最古の品種の1つとされ、もともとローマ人がモーゼル川流域など北方にもたらした品種であると伝えられていますが、そのルーツは定かではありません。このほか、ライン地方が起源という説、ガリア地方からもたらされたという説もあります。

エルプリングは他品種よりも糖度が低い状態で完熟し、果皮が薄く、カビ菌が付きやすくなるため、早々に収穫しない場合は栽培に細心の注意が必要です。また、香りが控えめでボディーは軽やかなので、素朴な日常ワインに適した品種です。前回ご紹介したグートエーデルとも共通した性質といえます。とはいえ、古代より逞しく生き延びてきた品種だからこそ、飛躍する可能性は十分にあるはず。今、造り手も飲み手も、ようやくエルプリングを再発見し始めているようです。

 
Weingut Jürgen Dostert
ドステルト醸造所(モーゼル地方)

ドステルト醸造所ルクセンブルクとフランスとの国境に近いニッテルにある家族経営の醸造所。創業は20世紀初頭。現オーナーのユルゲン・ドステルトは1970年代半ばに醸造家マイスターの資格を取得し、高品質のワイン造りに取り組み始めた。息子ヨナスは先頃、ガイゼンハイムのワイン醸造大学を卒業したばかり。現在はルクセンブルクの醸造所で修業しながら実家を手伝っている。所有畑は6ヘクタール。モーゼルと言えばスレート岩土壌を連想するが、所有畑であるニッテルのライターヒェンとロシュスフェルスはともに貝殻石灰岩土壌。上モーゼル地方のぶどう畑は過去に世界的名声を得ることはなかったが、地酒として愛され、その多くはドイツ人が大好きなゼクトのベースワインに使用されている。

Weingut Jürgen Dostert
Moselstraße 45, 54453 Nittel
Tel. 06584-263
www.dostert-nittel.de


2011 Elbling Classic
2011年 エルプリング・クラシック 4.30€

2011年 エルプリング・クラシック 4.30€シャスラ シュール・リ シュロスガッセシュペートレーゼロシュスフェルスの複数の区画で栽培されているエルプリングを使用。樹齢は35~40年。ヨナスは、「エルプリングは古代から生き延びていた品種。生き延びるためにできるだけ多くの実を付け、遺伝子を残そうとしてきた。つまり、植物の原点とも言える性質が強く出ている品種」と言う。香りも味わいも控えめなので、単独で味わうより、食事と合わせて楽しみたい。ヨナスは今年から実家のエルプリングの畑の一角で、自らぶどうの手入れをし、ワインを造り始めている。父親とは違う、自らのスタイルを見出すための実験場だ。彼のブログ「若き醸造家の悩み」で、ヨナスの最新報告を読むことができる。 http://elbling-plus.de/wordpress/ 

最終更新 Freitag, 09 Oktober 2015 14:54
 

土着品種再発見 1 グートエーデル(シャスラ)

ドイツにおいて、将来性が見込めそうな土着品種にグートエーデル(Gutedel)があります。グートエーデルを直訳すると「善き高貴なるもの」。ぶどうにこれほど立派な名前が付けられているのですから、きっと古来愛されてきた貴重な品種に違いありません。とはいえ、グートエーデルと聞いてピンとくる方は少ないかもしれません。でも、シャスラといえばご存知の方がきっとおられるはずです。フランス語圏ではそう呼ばれています。グートエーデルには、ローター(赤)・グートエーデルと、その突然変異とされるヴァイサー(白)・グートエーデルの2種類があります。

グートエーデルが最も多く栽培されている国はスイスで、栽培面積は約4000ヘクタール。フランス語圏のヴォー州ではシャスラ、ヴァリー州ではフォンダンと呼ばれ、主に地元で消費されています。ドイツではバーデン地方最南部、フランスとスイスに近いマルクグレーフラーラント地区に合計約1100ヘクタールの畑があります。このほか、フランス・アルザス地方、ルーマニア、ハンガリーなどでもグートエーデルからワインが造られています。また、グートエーデルは食用ぶどうとしても世界各地で親しまれており、その主要産地はトルコです。食用には、果皮がほんのり赤みがかったローター・グートエーデルが好まれています。

グートエーデルは、栽培ぶどうとしては最古の品種とされ、その故郷はヨルダン川流域ではないかという説があります。上エジプト地域、ナイル川流域のファイユーム・オアシスでは5000年前に栽培されていた痕跡があるといわれています。また、フェニキアの船乗りたちによって、紀元前1200年頃から古代ギリシアやローマに運ばれ、広まったともいわれています。しかし、グートエーデルに限らず、伝統品種の起源説は不明確なことが多いようです。確実といわれているのが、1523年にフランス王に仕えていた外交官がコンスタンティノープルから、フォンテーヌブローとブルゴーニュにグートエーデル種を取り寄せたこと。ブルゴーニュ、マコネ地域にシャスラという村がありますが、グートエーデルのフランス名は、ひょっとすると、この村名に由来しているのかもしれません。しかしスイスでは、シャスラが野生のぶどう品種の自然交配で誕生したレマン湖地域の固有品種であり、1654年の古文書に登場しているといわれています。一方フランスは、18世紀にルイ15世の指示により、シャスラがフォンテーヌブローからスイス、ヴァリー州のシオンにもたらされたと主張しています。

ドイツでは、17世紀初頭からヴュルテンベルク地方やフランケン地方、ザクセン地方やバーデン地方で栽培され始めたとされています。1780年にはバーデン辺境伯カール・フリードリヒがスイス・ヴォー州レマン湖畔のヴェヴェイ(Vevey)からシャスラを取り寄せ、栽培を奨励しました。現在、バーデン地方マルクグレーフラーラント地区でグートエーデルが栽培されているのはその名残りであり、その遺伝子は、おそらくレマン湖畔のシャスラのものでしょう。

 
Weingut Kerber
ケルバー醸造所(バーデン地方)

ケルバー醸造所バーデン地方南部、マルクグレーフラーラント地区にある家族経営の醸造所。創業は1910年。1998年から父親の醸造所でワイン造りを担当しているリヒャルト=マルティンは、10年にわたりコックとして、ドイツをはじめスイスやノルウェーなどで腕を振るった後、ガイゼンハイムの大学でぶどう栽培・ワイン醸造学部を卒業、ベルリンでソムリエ資格も取得した。オーストラリア、南アフリカでのワイン造りの経験もあり、世界的な視野でワイン造りに取り組んでいる。ケルバー醸造所の所有畑はすべて、同地域で最も優れた畑に数えられるシュタウフェナー・シュロスベルクにある。土壌は軽い粘土とレス土が混じった貝殻石灰岩。栽培品種はピノ・ノワール(樹齢58年)やゲヴュルツトラミーナ(樹齢52年)などの伝統品種が主流。旧市街にあるヴィノテークと畑にあるヒュッテは試飲会やワインと食関連のイベントなどに使われており、年間を通じて予約可能。

Weingut Kerber
Hauptstraße 19, 79219 Staufen im Breisgau
Tel. 07633-924276
www.kerberwein.de


2010 Chasselas SL "Schlossgasse" Spätlese trocken
2010年 シャスラ シュール・リ
シュロスガッセシュペートレーゼ(辛口)8.00€

シャスラ シュール・リ シュロスガッセシュペートレーゼリヒャルト=マルティンは、グートエーデルをより世界的に知られた名称「シャスラ」の名でリリースしている。彼のシャスラが植えられているのは、シュタウフェナー・シュロスベルク内のシュロスガッセと呼ばれる区画。樹齢は20~30年。SLはシュール・リの略で、春先のボトリング時までワインを酵母と接触させておく、フランス・ロワールのミュスカデ地域で実践されている醸造法。このシャスラは、年によって全体の5~15%程度を少なくとも一度は使用されたフレンチオーク樽で寝かせ、ステンレススティールタンクのものとブレンドしている。軽快さを保ちつつも、とても味わい深いシャスラ。

最終更新 Freitag, 09 Oktober 2015 14:52
 

交配品種の話 4 ピーヴィ(PiWi)種とは?

今日に至るまで、ワイン用ぶどうにおいては不利な気候に耐えられる品種や安定した収穫量が得られる品種など、いくつもの新しい交配品種が生み出されました。このほかに、農薬散布が少量で済む品種の開発もコツコツと進められています。「ピーヴィ(PiWi=Pilzwiderstandsfähige Rebsorten)種」と呼ばれるカビ菌耐性品種です。PiWi種は主にアメリカから運ばれてきた、ヨーロッパのぶどう畑における大敵であるカビ菌に対抗できるよう交配されています。ドイツでは1980年代から、このようなカビ菌耐性品種が栽培され始めています。

かつてハイブリッド種と呼ばれる品種がありました。ハイブリッド種とは、やはりアメリカから運ばれたフィロキセラに耐性のあるアメリカ品種と、耐性のないヨーロッパ品種の掛け合わせで生まれた品種です。ヨーロッパのぶどう畑がフィロキセラ禍に襲われていた19世紀末、フランスの医師セイベル(Seibel) などによってハイブリッド種の研究が進められました。

まもなく、従来のヨーロッパ品種(ヴィティス・ヴィニフェラ)をハイブリッド種に植え替えることで、フィロキセラ禍により壊滅状態にあったヨーロッパのワイン産業を救済する見通しが立ちましたが、ハイブリッド種から造られたワインは、ヨーロッパ品種ほどの美味しさや品質には至りませんでした。フランスでは1960年頃にハイブリッド種の作付けが禁止されたほどです。その結果、フィロキセラ禍への対抗策として、ぶどうの根の部分だけをフィロキセラに耐性のあるアメリカ品種に接ぎ木する方法が採られるようになり、ハイブリッド種の研究は停滞します。

現在、ドイツではフライブルク・ワイン研究所、ガイゼンハイム研究所、ガイルヴァイラーホーフぶどう品種改良研究所などがピーヴィー種の研究に力を入れています。最も成果を挙げているのはガイルヴァイラーホーフで誕生した赤品種、レゲントです。レゲントは、ディアナ(ジルヴァーナー×ミュラー=トゥルガウ)とシャンボーソンの掛け合わせ。シャンボーソンはフランス人の生化学者セイヴ(Seyve)が生み出した品種で、ハイブリッド種同士の掛け合わせです。レゲントは色も濃く、メルロに似た風味があり、ラインヘッセン地方、プファルツ地方を中心に2000ヘクタール以上栽培されています。完全無農薬での栽培は困難ですが、最大8割まで農薬散布量を減らすことが可能だそうです。

レゲントに続かんとしている品種もいくつかあります。例えば、フライブルクの研究所が世に送り出したヨハニーター、ブロナー、ソラリス、カベルネ系のカベルネ・コルティス、カベルネ・カルボンなどです。これらのピーヴィー種は、ヨーロッパ品種として連邦品種局に登録されています。

前述のようにピーヴィー種は、植物の生長期の農薬(殺菌剤)投与が少量で済むため、ビオワインの生産者が注目しています。また、食用ぶどうとしても大いに活躍の場があります。しかし、ピーヴィー種は様々な問題を抱えています。その1つは品種の知名度がないこと。ビオワインとしてチャンスをつかめるかもしれませんが、それも消費者がピーヴィー種のワインを美味しいと感じるか否かにかかっています。ピーヴィー種のワインの品質が伝統品種のワインに匹敵するほど向上するかどうか、今後の動向に注目したいと思います。

Staatsweingut Freiburg
フライブルク国立醸造所(バーデン地方)

ゼーホーフ醸造所
©Staatsweingut Freiburg

フライブルク・ワイン研究所の施設として設立されたバーデン=ヴュルテンベルク州管轄の醸造所。フライブルクとブランケンホルン(イーリンゲン)に醸造施設を持ち、ブランケンホルンには1847年建造の伝統あるセラーがある。所有畑は計37ヘクタール。13ヘクタールがフライブルクとエブリンゲンに、24ヘクタールがカイザーシュトゥール地域にある。主力品種はピノ・ノワールをはじめとするブルグンダー種だが、リースリングも醸造している。研究所施設であるため、展開しているワインのバラエティーは実に多彩。PiWi種にも力を入れている。VDP、エコヴィン(EcoVin)会員。

Staatsweingut Freiburg
Merzhauser Straße 119, 79100 Freiburg
Tel. 0761-4016544
www.staatsweingut-freiburg.de


2011 Ebringer Johanniter trocken
2011年 エプリンガー・ヨハニーター
(辛口)14.80 €

エプリンガー・ヨハニーター

ヨハニーターは代表的な白のPiWi種。フライブルク・ワイン研究所で1968年に交配された。グラウブルグンダーとグートエーデルの掛け合わせにセイヴ・ヴィラール12481(ハイブリッド)を掛け合わせたものを、さらにリースリングと掛け合わせており、研究所所長だったヨハネス・ツィマーマンのファーストネームが付けられている。リースリングの特徴をしっかりと受け継ぎ、寒さに強い品種。このワインは、フライブルク近郊のエプリンゲン村で栽培されているぶどうから造られた爽やかな風味のワインで、2002年から毎年生産されている。フルーティーさはリースリングよりは控えめだが、ボティーはしっかりとしており、親品種であるグラウブルグンダーのボディーとリースリングのフルーティーさをあわせ持つ。ヨハニーターはドイツ全土で、まだ60ヘクタールほどしか栽培されていない。

最終更新 Mittwoch, 08 Juni 2016 14:11
 

交配品種の話 3 ドルンフェルダーの盛衰

1980年代から徐々に登場し始め、ニワトコの果汁のような濃いルビー色とフルーティーさ、柔らかなテクスチャーが評判となり、人気が急上昇した赤品種、それがドルンフェルダーです。栽培においては、土壌をあまり選ばず、腐敗に強く、安定した収穫量が期待でき、栽培や醸造の手間もさほどかからないため、造り手に好まれています。現在でも、赤品種としてはシュペートブルグンダーに次いで多く栽培されています。

ドルンフェルダーは、1955年にアウグスト・ヘロルトという学者がヴュルテンベルク地方のヴァインスベルク研究所で生み出した交配品種です。彼はこの新品種に、ヴァインスベルク研究所の創設を提唱したイマヌエル・ドルンフェルトの名前を付けました。品種として正式認可されたのは、1980年のことでした。

ヘロルト氏は、1929年にヘロルトレーベ (Heroldrebe)、1931年にヘルフェンシュタイナー(Helfensteiner)という赤品種を生み出しており、この2種がドルンフェルダーの親にあたります。ヘロルトレーベの親はポルトギーザーとレンベルガー(ブラウフレンキッシュ)、ヘルフェンシュタイナーの親はフリューブルグンダーとトロリンガーです。これら4種はいずれも、今日に至るまで栽培されている伝統的な品種です。

ドルンフェルダーは、色の濃い赤ワインを生み出そうという試みの過程で誕生した品種です。それも単独で醸造するのではなく、色の薄い赤品種で造られるワインにブレンドして色を濃くするという、補助的な役割の品種として造り出されたものでした。ドイツだけでなく、フランスやイタリアにもそのような色付けの役割を果たす品種があります。

ワイン・マーケティング関連の調査資料によれば、消費者の多くが赤ワインの購入ポイントに色の濃さを挙げています。「赤ワインの色は濃いほど良い」と考える人は、意外に多いようです。濃い色のワインは見た目にも凝縮感が感じられ、満足感を与えてくれるからです。

赤ワインの色をさらに濃く、という発想は新しいものではなく、造り手は、以前から主にブレンドという手法で赤ワインの色を濃く保ってきました。フランスでは、フリーラン果汁をロゼワインに使用し、残りの果皮と果汁で赤ワインを醸す方法が採られました(セニエ法)。こうすると、果汁に対する果皮の割合が多くなるため、色素やエキスの凝縮度が高くなります。この方法は、今もボルドー地方や南フランスなどで実践されています。

さて、ドルンフェルダーですが、この品種は品質面ではあまり大きく飛躍できませんでした。10年くらい前までは、ラインヘッセン地方やプファルツ地方の一流の造り手も必ずといって良いほどドルンフェルダーを栽培し、収穫量を減らすなどして愛好家をうならせる高品質なワインを生産していましたが、今では栽培をやめ、主に伝統品種のシュペートブルグンダーの生産に専念しています。そのため、ドルンフェルダーの栽培面積はやや減少傾向にあります。

それでも、ドルンフェルダーは赤の新交配品種の中で最も愛され、最も成功した品種。ドルンフェルダーから素晴らしい赤ワインを生産している醸造所はいくつもあります。

Weingut Kirchner
キルヒナー醸造所(プファルツ地方)

ゼーホーフ醸造所
醸造を一手に引き受けたラルフ
©Weingut Kirchner

プファルツ地方フラインスハイムの家族経営の醸造所。 1974年からは、ギュンター&ウルリケ・キルヒナー夫妻が醸造所を運営。手仕事を大切に、常に高品質なワインを生産してきた。両親が築いた堅固な基礎の上に新風をもたらしたのが、息子のラルフ。2007年から醸造を一手に引き受けて品質にさらに磨きをかけ、評価が高まっている。プファルツ地方の栽培品種は多彩。キルヒナー家でもドイツ固有の品種にこだ わらず、フランス品種にも力を入れており、ドルンフェルダーなどの新交配品種も積極的に栽培している。

Weingut Kirchner
Korngasse 14, 67251 Freinsheim
Tel. 06353-1838
www.weingut-kirchner.de


2011 Dornfelder Stadtmauer trocken
2011年 ドルンフェルダー・シュタットマウアー
(辛口)約6.60 €(専門店向けのライン

2010 Dornfelder Freinsheimer trocken
2010年 ドルンフェルダー・フラインスハイ
マー(辛口)4.70 €(2011年産は8月から販売)

フォム・カルクシュタイン

「プファルツ地方ではあらゆる品種に可能性があるが、赤ワインにおいて将来性があるのはシュペートブルグンダーと様々な赤品種のブレンドワイン。ポルトギーザーは徐々に失われていくだろう。だが、ドルンフェルダーにはチャンスがある」 と、ラルフは言う。辛口のドルンフェルダーには専門店向けの 「Stadtmauer」と蔵出しの「Freinsheimer」があり、後者は 醸し発酵期間が長めで、一部のワインを木樽で熟成しており、収穫翌年の8月から販売している。いずれもフルーティーさ、程良い力強さと酸味、そして軽やかさを持ち、とてもバランス が良く、デイリーワインに最適。
最終更新 Freitag, 09 Oktober 2015 14:51
 

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