ドイツワイン・ナビゲーター


交配品種の話 2 淘汰されていく新交配品種

ドイツにおいて、今日まで存続し得た新交配品種の中で健闘しているものに、白品種のショイレーベ(Scheurebe)やケルナー(Kerner)があります。ショイレーベはミュラー=トゥルガウと異なり、辛口だけでなく、高品質な甘口ワインとしても高評価を得ています。ケルナーはショイレーベより栽培面積は広範にわたるものの、ブレンドされることが多く、単独での存在感はそれほどありません。

ショイレーベは、ラインヘッセン地方や プファルツ地方ではソーヴィニヨン・ブランに匹 敵する魅惑的な芳香を持つ個性的な品種として、近年再び脚光を浴び始めています。最近では、若手の醸造家が新たに栽培を開始するケースも見られます。

ショイレーベは、ラインヘッセン地方のアルツァイぶどう栽培研究所所長だったゲオルク・ショイ(Georg Scheu)が生み出した品種です。父方はブケットトラウベ(Buketttraube)、母方はリースリングといわれ、交配年は1916年。正式に品種リストに加わったのは、ミュラー=トゥルガウと同じく1956年になってからでした。この交配品種は苗番号が88番だったので、「Sämling(ゼームリング / 苗)88」「S88」とも呼ばれ、オーストリアではこちらの名前で知られています。

ところで、アルツァイぶどう栽培研究所からはショイレーベのほかに、ジーガーレーベ (Siegerrebe)、フクセルレーベ(Huxelrebe)、カンツラー(Kanzler)、ファーバーレーベ (Faberrebe)、レグナー(Regner)、ヴュルツァー(Würzer)などの白品種が誕生しました。すべてショイ氏の手によるものです。1990年代中頃までラインヘッセンの醸造所では、これらのぶどうが普通に栽培されていました。

ドイツのほかの研究所では、よく名の知られている以下の新交配品種が誕生しました。

プファルツ地方、ガイルヴァイラーホーフ・ワイン・園芸研究所
モリオ・ムスカート(Morio Muskat)、
バッフス(Bacchus)、オプティマ(Optima)
ドミナ(Domina)

バーデン地方、フライブルク・ワイン研究所
フライザーマー(Freisamer)、ノーブリング(Nobling)
デックロート(Deckrot)

ヴュルテンベルク地方、ヴァインスベルク研究所
ケルナー(Kerner)、ユヴェール(Juwel)
ヘロルドレーベ(Heroldrebe)、ヘルフェンシュタイナー(Helfensteiner)、 ドルンフェルダー(Dornfelder)

フランケン地方、ヴュルツブルク=ファイツヘッヒハイム
・ワイン・果樹園芸研究所
リースラーナー(Rieslaner)、
アルバロンガ(Albalonga)

ラインガウ地方、ガイゼンハイム研究所
エーレンフェルザー(Ehrenfelser)、ライヒェンシュタイナー
(Reichensteiner)、 シェーンブルガー(Schönburger)
ロートベルガー(Rotberger)、ドゥンケルフェルダー(Dunkelfelder)

順に名前を見ていくと、一昔前のドイツのぶどう畑が目に浮かぶようです。これらの交配品種のうち、今なお栽培され、高品質のワインを生み出している品種は、白品種ではショイレーベ、フクセルレーベ、リースラーナー、赤品種ではドルンフェルダーくらいでしょうか。また、筆者の知る限りでは、フクセルレーベ、アルバロンガ、そしてバッフスの甘口プレディカーツワインも、わずかながら生産されています。ドイツでは交配品種の時代は終わりを告げたようですが、専門家の国際的交流が盛んな現在、これらの品種に意外な場所で出会う可能性もあります。ちなみに、筆者はブラジルでシェーンブルガーに出会いました。

Weingut Seehof
ゼーホーフ醸造所(ラインヘッセン地方)

ゼーホーフ醸造所
左:エルンスト& ルース・ファウト夫妻 右:フロリアンと婚約者 のカティア
© Weingut Seehof

ヴェストホーフェンの伝統ある家族経営の醸造所。エルンスト&ルース・ファウト夫妻と息子フロリアンが意欲的なワイ ン造りに取り組み、頭角を現し始めている。エネルギッシュな フロリアンは17歳の頃から実家のワイン造りに参画。その後、 プファルツ地方のドクター・ヴェアハイム醸造所、モスバッハー 醸造所で修行を積み、2003年からは実家の醸造を担当している。ラインヘッセンの伝統的な醸造所らしく、フクセルレーベやショイレーベなどの新交配品種からも、今なお高品質なワインを生産している。キルヒシュピール、モアシュタインなどの優れた畑のリースリングは、ラインヘッセン丘陵地方の大御所であるケラー醸造所、ヴィットマン醸造所に追いつかんとするクオリティー。ラインヘッセンの若手醸造家グループ、 メッセージ・イン・ザ・ボトルのメンバー。

Weingut Seehof, Familie Fauth
Seegasse 20, 67593 Westhofen
Tel. 06244-4935
www.weingut-seehof.de


2011 Scheurebe trocken
„Vom Kalkstein“
2011年 ショイレーベ 辛口
フォム・カルクシュタイン 6.50€

フォム・カルクシュタイン

フロリアンの自信作のショイレーベ。石灰質土壌が支配する畑のぶどうで、「フォム・カルクシュタイン」(石灰岩から)と名付けられている。ブラックカラントとニワトコの花の香りが魅惑的。フロリアンは、「ソーヴィニヨン・ブランに対する 僕たちの答え、それがショイレーベだよ」と言う。軽快なワインなので、アペリティフにも最適。食中酒としては、どんな料理と合わせると楽しめるか、料理人の想像力を掻き立ててくれるワイン。 また、フロリアンは可能な年に限って、モアシュ タインのショイレーベからトロッケンベーレンアウスレーゼ (TBA)を収穫している。2011年は糖度210エクスレで収穫することができた。
最終更新 Freitag, 09 Oktober 2015 15:13
 

交配品種の話 1 ミュラー=トゥルガウの130 年

これから4章にわたって、土着品種の対極にある交配品種をご紹介しましょう。交配とは、2つ以上の異なる品種を掛け合わせて新しい品種を得る作業のことで、品種改良の一手法です。交配によって、生産者が求める性質を持った新しい品種を得ることができます。交配品種を得るためには、人工授粉を行い、種を作り、畑で育てて木に成長させて、ぶどうが実るのを待たなければなりません。さらに、ぶどうの木や性質を確かめ、実ったぶどうから少量のワインを造り、その香りや味覚などを調べ尽くした上で新品種としてデビューさせるので、大変な時間がかかります。また、これだけの手間をかけても望むような品種にならないこともあります。

遺伝学の先達、グレゴール=ヨハン・メンデルが1865年に公表したメンデルの法則は、1890年代頃にオランダの植物学者ユーゴー・ド・フリースら複数の研究者によって再発見され、品種改良の時代が到来しました。ドイツでは、フリースの再発見以前から多くの研究者が品種改良に携わっていました。

ドイツで栽培されている交配品種のうち、最も古く、最もその名前が知られた交配品種が白品種のミュラー=トゥルガウ(Müller-Thurgau)です。現在ではドイツのほか、オーストリア、スイス、イタリア北部、英国、さらにはニュージーランド、米国、日本でも栽培され、成果を挙げています。

この品種が交配されたのは1882年のこと。交配したのは、スイス・トゥルガウ出身の研究者ヘルマン・ミュラー(Hermann Müller)で、場所はガイゼンハイムの研究所でした。1891年、ミュラーは転職を機にスイスに戻る際に、この新品種の枝150本を一緒に持ち帰り、挿し木をして育てました。ある時、育成を担当していた栽培家のH・シェレンベルク(H.Schellenberg)が、58番の木のぶどうの質がとても良いことに気付きます。それが、今日のミュラー=トゥルガウとなりました。

そのミュラー=トゥルガウが、バイエルンの栽培学者デルン(Dr. Dern)によってドイツに戻されたのは1913年。知名度が上がったのは、1921年にヴュルツブルクのぶどう栽培研究所のツィーグラー(Dr.Ziegler)が本格的な栽培に取り組んでからのことです。ミュラー=トゥルガウが正式に品種リストに加わったのは1956年、苗木として市場に出回るようになったのは1960年になってからでした。

ミュラー=トゥルガウが盛んに栽培されるようになった理由は、この新交配品種が気候や土壌をあまり選ばないからです。あらゆる気候、土壌で無理なく育ち、一定の収穫量を確保でき、酸味が柔らかで万人向けの味わいを持つ新品種の誕生は、農家にとってありがたいもので、白品種の中では長年トップの座を維持してきました。しかし、それと同時に、個性のないワインの大量生産も始まりました。本物志向の時代となった1990年代以降は人気に陰りが出始め、徐々にリースリングにその地位を奪われていきました。とはいえ、パールワインなどに積極的に使用し、成功している醸造所もあります。

ミュラー=トゥルガウは当初、母方がリースリング、父方がジルヴァーナーといわれていましたが、1998年に行われた遺伝子解析では、母方がリースリング、父方がシャスラであると推定されました。しかしその後、改めて行われた遺伝子解析で、父方はマドレーヌ・ロイアル(Madeleine Royale)であることが判明しました。

Fritz Müller verperlt GmbH
(ラインヘッセン地方)

クニプサー醸造所
醸造家のユルゲン・ホフマンさん
©Fritz Müller verperlt GmbH

ミュラー=トゥルガウの人気が陰り始めた頃、人気挽回を狙って「リヴァーナー」という別称が与えられたが、この新名称はあまり定着せず、イメージアップにはさほど貢献しなかった。しかし筆者は、ラインヘッセン地方の醸造家で、伝統製 法による秀逸なゼクトを生み出しているフォルカー・ラウムラ ントが大学時代に造ったミュラー=トゥルガウのゼクトが、当時高い評価を得たという話を聞いて以来、ミュラー=トゥルガ ウにも可能性があるはずと思っていた。その可能性に挑戦したのが、醸造家ユルゲン・ホフマンとミュンヘンのワイン商ギド・ヴァルターの2人。2009年に、ミュラー=トゥルガウの辛口のパールワインを「フリッツ・ミュラー」の名前でリリースした。ユルゲンは、ラインヘッセン地方アッペンハイムにあるホフマン醸造所のオーナー。「フリッツ・ミュラー」の醸造は彼が担当している。

Fritz Müller verperlt GmbH
Jürgen Hofmann & Guido Walter
Vor dem Klopp 4, 55437 Appenheim
Tel. 06725-3328
www.fritzmueller.fm


Fritz Müller Pearlwein
フリッツ・ミュラー パールワイン 6.50 €
 

ゲルバー・オルレアンス・シュペートレーゼ

気取らず気軽に楽しめるパールワイン(イタリア語でフリッツァンテ)は、ミュラー=トゥルガウという品種を活かせる絶 好のスタイルだったのか、「フリッツ・ミュラー」はリリース後、大人気を博し、今や大都市のデパートや主なワインショップなら大抵どこでも手に入るようになった。ブランド名のミュラーはミュラー=トゥルガウ、男性名のフリッツはフリッツァンテの意味も兼ねている。ミュラー=トゥルガウが新たに植樹されることはほとんどないため、フリッツ・ミュラーに使用されるミュラー=トゥルガウの樹齢は全体的に高く、中には40年を経たぶどうの樹もあり、ぶどうの品質も高い。爽やかなりんごや梨の香り、軽快な味わいは、これからの季節にぴったり。 ユルゲンとギドは、今や伝統品種とも言える愛すべき品種に新たな可能性を拓いた。
最終更新 Freitag, 09 Oktober 2015 14:47
 

土着品種のお話

ここ数年、ヨーロッパの各ワイン産地では、忘れられていた土着品種(Autochthone Rebsorte) が再び脚光を浴び始めたり、栽培・収穫方法や醸造方法を改良することで格段に美味しくなったりしているように感じます。土着品種は、固有品種あるいは自生品種と訳しても良いかもしれません。また、このような土着のぶどう品種からワインを造る際には、単独で醸し、品種名をアピールする傾向もあるようです。

例えば、最近ドイツでも注目され、レストランでよく提供されているスペイン・ルエダ地方の白品種ベルデホ、ガリシア地方などで栽培されている白品種のゴデージョ、スペイン・ガリシア地方とポルトガルのヴィーニョ・ヴェルデ地方にまたがって栽培されている白品種アルバリーニョ、オーストリアで栽培されている白品種グリューナー・フェルトリーナ、南チロル地方の赤品種ラグラインなどが思い浮かびます。

さて、土着品種とはどのような品種のことを指すのでしょう? 少々漠然とした定義ではありますが、それは各々の土地、地方に特有の、そこで昔から育てられている品種のことをいいます。つまり、近代以降に他の地方から「輸入」されていない品種のことです。ヨーロッパの各地域では、古来ワイン造りが行われてきたため、栽培品種の多くが土着品種で構成されています。

ドイツで最も知られた土着品種に、リースリングがあります。その他の土着の白品種には、モーゼル地方のエルプリング、主にプファルツ地方で栽培されているグラウブルグンダー、ムスカテラー、ゲヴュルツトラミーナー、フランケン地方やラインヘッセン地方で栽培されているジルヴァーナーなどが、赤品種ではヴュルテンベルク地方のトロリンガー(ヴェルナッチの変種)、レンベルガー(ブラウフレンキッシュ)などがあります。シュペートブルグンダーもブルゴーニュ由来とはいえ、上記の解釈に従えばドイツの土着品種の範疇に入ります。

ところで、リースリング、グラウブルグンダー、ムスカテラー、ゲヴュルツトラミーナー、ジルヴァーナーはアルザス地方でも栽培されており、これらは皆、アルザスの土着品種でもあります。また、リースリング、ジルヴァーナー、レンベルガーはオーストリア、トロリンガーは北イタリア、南チロル地方の土着品種でもあります。ワインを選ぶときは、ついドイツワイン、オーストリアワイン、フランスワインという風に国別に線引きをしてしまいますが、土着品種の分布から地図を描いてゆくと、思いがけない発見があります。

ドイツの土着品種は、世界各地で移民やその子孫たち、あるいは現地の人たちによっても栽培されています。例えば、リースリングは米西海岸と東海岸の双方で栽培されていますし、オーストラリアのクレア・ヴァレーやイーデン・ヴァレー、そしてニュージーランドにも優れたものがあるほか、日本でも栽培されています。また、ゲヴュルツトラミーナーもカリフォルニア州や南アフリカ、オーストラリアやニュージーランドなどで栽培されています。

Weingut Knipser クニプサー醸造所
(プファルツ地方)

クニプサー醸造所
左からフォルカー& ヴェルナー・クニプサー兄弟、シュテファン
©Weingut Knipser

クニプサー家の先祖は南チロル出身。17世紀初頭にプファルツ地方に移住した。現在のオーナーであるヴェルナー&フォルカー兄弟は、いち早くボルドー品種の栽培に取り組み、とりわけ赤ワインの可能性に挑戦し続け、成果を挙げてきた。2人はバリック樽導入の先駆者でもある。主力品種はリースリングとピノ・ノワール。第三紀の貝殻石灰岩土壌、ライン川岸に堆積した砂や小石の土壌から畑の特性を表現するワインを生み出している。石灰岩が支配するグロースカールバッハのブルクヴェークでは、同醸造所のトップクラスのピノ・ノワールとシャルドネ、一部のボルドー品種が栽培されている。2005年からはヴェルナーの息子シュテファンもワイン造りに参画している。

Weingut Knipser - Johannishof
Hauptstraße 47-49
67229 Laumersheim
Tel. 06238-742
www.weingut-knipser.de


2009 Gelber Orleans Spätlese trocken
2009年 ゲルバー・オルレアンス・シュペートレーゼ(辛口) 15€

(2010年産まで、全ヴィンテージ完売。2011年産は3月から入手可能)

ゲルバー・オルレアンス・シュペートレーゼ

一時は絶滅の危機に瀕したドイツの土着品種ゲルバー・オルレアンス(Gelber Orleans)を現在新たに栽培しているのは、筆者の知る限りではブロイアー醸造所(ラインガウ地方)とクニプサー醸造所の2醸造所のみ。クニプサー醸造所では伝統ある品種への関心から、1993年に試験的に栽培を開始した。12世紀にラインガウのエーバーバッハ修道院で栽培され始めたこの品種は、おそらくフランス原産であろうと言われている。その後、ラインガウだけでなく、ラインヘッセン、プファルツでも栽培されていたが、19世紀にはそのほとんどがリースリングに植え替えられてしまった。ハーバル系の爽やかで控えめな香り、優しい酸味とスパイシーな味わい、ミディアムボディーの上質なワイン。ヴィンテージによっては、バリックを使うこともあるという。
最終更新 Freitag, 09 Oktober 2015 14:46
 

コルクのお話 3 - コルク臭はどこから?

2010年3月、ドイツのジャーナリストが「コルクなしでもコルク臭―セラーの老朽資材(木材)もワインにコルク臭をもたらす」(フォルカー・ムラセク記者)というタイトルの記事を発表しました。ガイゼンハイムのワイン研究所にインタビューをして書かれた記事です。

その記事によると、従来、ワインに「湿っぽくカビ臭い匂い」が感じられると、それは必ずコルク臭であると表現されてきたが、コルクを一切使用していないワインにも、同様の悪臭が感じられるケースがあり、原因をコルクに限定することはもはや不可能だということです。もちろん、悪臭の原因がコルクにある場合もありますが、それまでのように100%コルク由来であるとは言えなくなったわけです。フランスでも、同様の調査結果が出ているそうです。

コルク樹皮は、自然素材であるがゆえに、塩素を含有するごく微量の化学物質を含んでいます。コルクが湿気を帯び過ぎると、カビがその化学物質をトリクロロアニソール(2,4,6- Trichloranisol / TCA)という化合物に変え、このTCAが後にコルクからワインに移ってしまうのです。TCAは湿度の高いセラー中に存在する、何らかの汚染物質(特に1980年代以降製造が禁止されている保存剤で処理された古い建築用木材や、ほかのあらゆる木材など)が原因となる場合もあるそうです。発生したTCAは、セラーの空気を汚染します。例えば、大量購入したコルクをそのような状態のセラー内で保管していると、コルクに悪臭が移ってしまうことがあります。この悪臭は、ナチュラルコルクやプレスコルクだけでなく、合成樹脂コルク、さらにはセラーの備品であるホース、シーリング材、フィルターにも移ってしまうそうです。

このニュースは、ハンブルクのワイン関係者たちの間でも話題になりました。コルク以外の栓、つまりスクリューキャップやプラスティックコルク、ガラスのキャップ、そしてステンレスの王冠を使用しても、コルク臭の問題は100%解決されないことが分かったためです。また、TCAはワインに限らず、ミネラルウォーターやチーズ、コーヒーなどからも検出されています。

TCA以外にも、木材処理剤やダンボールコーティング剤由来といわれるトリブロモアニソール(2,4,6-Tribromoanisol / TBA)や、かつては殺虫剤や除草剤に含まれ、現在では塗料などに使用されているペンタクロロフェノール(Pentachlorophenol / PCP)とカビが反応して発生するテトラクロロアニソール(2,3,4,6-Tetrachloranisol / TeCA)などが同様の悪臭をもたらすそうです。

コルク製造会社はTCAの発生を防ぐための研究開発を進め、着実に成果を上げつつありますが、ワイン造りにおいては清潔なセラーが何よりも大切な前提条件です。

(この章は、Amorim社のゲルト・ライス社長のご協力を得て執筆しました。また、3章にわたりドイツ・コルク協会にも資料を提供いただきました。)

Weingut Spiess シュピース醸造所
(ラインヘッセン地方)

シュピース醸造所
© Weingut Spiess - Riederbacherhof

ラインヘッセン地方南部ベヒトハイムにある家族経営の醸造所。ユルゲン・シュピースとウテ夫人、そして2人の息子、ヨハネス、クリスチャンのチームワークでワイン造りに取り組んでいる。「息子たちがワイン造りに加わってから、より自然に近いワインを造るようになった」とウテ夫人は言う。ベヒトハイムのハーゼンシュプルング、ガイアースベルク、シュタイン、ハイリッヒ・クロイツなどが特に優れた所有畑。土壌は主にレス土、粘土、そしてマール(泥灰岩)が混在する。健全な土壌から健全なぶどうを収穫することを最優先に、ワイン造りを行なう。赤ワイン造りにも意欲的で、ピノノワールのほか、1990年代半ばからカベルネソーヴィニヨン、メルローも栽培している。

Weingut Spiess - Riederbacherhof
Gaustraße 2, 67595 Bechtheim
Tel. 06242-7633
www.spiess-wein.de


2011 Riesling Kabinett
2011年 リースリング・カビネット

6.50€(小売価格)

2009 Grüner Veltliner Eltviller Sonnenberg

ベヒトハイムの複数の畑のリースリングから醸されたカビネットは、アルコール度数11.5%の軽やかなボディーのワイン。ザンドドルン(スナジグミ)を思わせる熟れた果実味と、奥深く、多層的なミネラル香が印象的。ヨハネスはケラー醸造所とクニプサー醸造所で、クリスチャンはワグナー・シュテンペル醸造所とフィリップ・クーン醸造所で、それぞれ修業を積んだ。これからがますます楽しみな醸造所。
最終更新 Freitag, 09 Oktober 2015 14:45
 

コルクのお話 2 - ナチュラルコルクができるまで

現在、ワインボトルの栓には、ナチュラルコルクのほかにスクリューキャップやガラス栓、合成樹脂栓や王冠などが使用されています。ナチュラルコルクは、ごくまれにコルク臭と呼ばれるトラブルが発生するにもかかわらず、ドイツのワイン愛好家には、最も支持されている素材です。今回は、ナチュラルコルクの製造方法を、簡単にご紹介しましょう。

幹から剥がされたコルクオークの樹皮は、まず3カ月から1年にわたって風通しの良い場所で素材が安定するのを待ちます。その後、何度も水を取り替えながら煮沸して膨張させ、さらに3週間ほど保管します。そして、コルク栓に使用可能な品質のものを選別、カッティング(型抜き)し、表面を研ぎます。洗浄前のこのコルクを生コルクといい、この段階でも選別を行います。

その後、生コルクを洗浄します。洗浄には過酸化水素が使われます。過酸化水素には殺菌と漂白の効果があります。乾燥後はさらに品質別に分類してコルクの滑りを良くし、気密性を高めるためにパラフィン、シリコンなどで表面加工します。型抜き後に残ったコルクを粒状に砕いてからプレスして成型するコルク(プレスコルク)は、上下にナチュラルコルク片を貼り付けてから洗浄します。醸造所名などは最後に印刷されます。

出来上がったコルク栓には、たいてい表面に小さな穴がいくつも空いていますが、これはナチュラルコルクそのものの状態で、ワインの品質に影響はありません。肝心なのは、内部組織に異常があるか否かだそうです。コルクの長さは38~60ミリまであり、ワインの品質等級などに応じて使い分けます。

コルクはその保存法、打ち方にも細心の注意が必要です。通常のコルクを打つときは、コルクの温度が15~25度、コルク自体の湿度が5~7%、ワイン上面とコルクの下面の間隔が20ミリ、ワインの温度が15~18度、ボトル内の気圧がマイナス0.2バールと軽い低圧であること、などの条件が必要だそうです。

スクリューキャップも徐々に普及し始めています。スクリューキャップはすでに1970年代から試されており、長期保存するタイプのワインにも使用できることが分かっていました。スクリューキャップは、やがて失われていくフレッシュなワインのアロマを、通常のナチュラルコルクよりも数カ月長く持続させてくれるそうです。そのためドイツでは、長期保存するワインよりも、早飲みワインに導入している醸造所が多いようです。

ナチュラルコルク以外の栓は、コルク臭のトラブルを解決するため、過去約20年間にわたって研究、開発が行われてきました。スクリューキャップやガラス栓、合成樹脂栓や王冠などは、コルク由来のコルク臭の原因にならないこと、そしてナチュラルコルクよりも安価であることから、使用割合が増えてきています。

(コルク栓の製造工程については、Korkindustrie Trier社のハイナー・シーベンさんのご協力を得て執筆しました。)

Weingut J.Koegler ケグラー醸造所
(ラインガウ地方)

ケグラー醸造所
© Weingut J. Koegler

ラインガウ地方、エルトヴィルで5代にわたってワイン造りを行ってきた家族経営の醸造所。所有畑は34ヘクタール。年間15万本を生産している。醸造所の建物は、1467年にグーテンベルクの指導の下、世界最古の聖書およびラテン語文献解釈のための辞典が印刷された場所でもある。オーナーで醸造家のフェルディナント・ケグラー氏は、高品質なリースリングを生み出すほか、ブルゴーニュスタイルのシュペートブルグンダー、ラインガウ初のグリューナー・フェルトリーナーをリリースしている。レストラン、宿泊施設も併設され、ラインガウの旅の拠点に最適。

Weingut J. Koegler
Kirchgasse 5, 65343 Eltville
Tel. 06123-2437
www.weingut-koegler.de


2009 Grüner Veltliner Eltviller Sonnenberg
2009年 グリューナー・フェルトリーナー・エル トヴィラー・ゾネンベルク

18€

2009 Grüner Veltliner Eltviller Sonnenberg

ケグラー醸造所では、2000年からオーストリア固有の白品種、 グリューナー・フェルトリーナー種を栽培し始め、03年からリリースしている。ドイツにおけるグリューナー・フェルトリーナーの生産者は、まだ片手で数えられるほど。ケグラー氏は、酸味が強調されたリースリングの対極である、まろやかな酸味のワインを顧客に提供したいと考えるうちに、このオーストリア品種が最適だと確信を持つに至ったという。グリューナー・フェルトリーナーは、かつてはラインガウ地方で栽培されていたこともあり、エルトヴィルのリースリングが栽培されていた土壌にもうまく適応しているという。上品なフルーティーさとほのかな白胡椒の香りは、日々の食卓にぴったり。スタンダードなグリューナー・フェルトリーナー(9ユーロ)と、より凝縮感のある単一畑ゾネンベルクのグリューナー・フェルトリーナーの2種類がある。
最終更新 Freitag, 09 Oktober 2015 14:43
 

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