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樽をめぐるお話 2 - 木樽の手法

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現在、ドイツの醸造所において木樽はどのように使われているのでしょうか? その手法は実に多様で、一言では言えません。そこで、大型の木樽(フーダー、シュトゥックなど)とバリック、そしてステンレススティールタンク*が、それぞれどのように使い分けられているかを簡単に整理してみます。

リースリングなどのフルーティーな白品種には、その香りを活かすためステンレススティールタンク、あるいは大型の木樽が使われています。白と赤のブルグンダー種(ヴァイスブルグンダー、グラウブルグンダー、シュペートブルグンダーなど)およびブルグンダー系の白品種(シャルドネなど)、その他の赤品種には、造り手によって大型の木樽、バリック、 ステンレススティールタンクのいずれもが使われています。

シュペートブルグンダーなどには、オーク材の発酵槽を使用している醸造所とステンレススティールなどの発酵槽を使用している醸造所があります。バリック内での熟成期間は、造り手の意図やワインのタイプにより、短くて3カ月、最長2年程度です。シャルドネは、ブルゴーニュのようにバリック内でアルコール発酵させている造り手がいます。

いずれの醸造所にも、樽やタンクの使用法に関して独自の考えがあります。 昔ながらの大樽を使用し、セラーの自然の温度を良しとする醸造所もあれば、その木樽に最新の冷却装置を装備しているところもあります。また、ステンレススティールタンクに冷却装置を整えている醸造所もあれば、温度調節を行っていない醸造所もあります。また、同一の醸造所内でもワインのタイプやヴィンテージによって樽やタンクを使い分けることがあります。樽内での熟成期間も然り。それぞれのワインが、どの段階でどれだけの期間、木樽、あるいはバリック内で過ごしたかは、造り手に聞いてみないと分かりません。

樽の大きさにもバリエーションがあり、フーダーやシュトゥックにも、ハーフサイズのハルプフーダー(500リットル)、ハルプシュトゥック(600リットル)があるほか、ダブルサイズのドッペルフーダー(2000リットル)、ドッペルシュトゥック(2400リットル)もあります。かつてビール用に使われていた、より大きな木樽を修理して使っている醸造所もあります。

ドイツでは、ボルドー容量のバリック(225リットル)も、ブルゴーニュ容量のピエス(228リットル)も使われています。また、ブルゴーニュなどで1度使用された樽を購入し、使用している醸造所もあります。

*ステンレススティールタンクが普及するまでは合成樹脂タンクも併用されていました。このほか、壁面に作り付けられたコンクリートタンクを使用している醸造所もあります。

Hirschhorner Hof ヒルシュホルナー・ホーフ醸造所
(プファルツ地方)

ヒルシュホルナー・ホーフ醸造所
写真:©Hirschhorner Hof

プファルツ地方ダイデスハイムの名門、ブール醸造所(ライヒスラート・フォン・ブール)の前醸造長フランク・ヨーン氏が、農生物学を学んだゲルリンデ夫人と共に立ち上げた新しい醸造所。2002年に築400年の建物と3ヘクタールのぶどう畑を手に入れ、醸造所の基礎を築いた。ファーストヴィンテージは2003年。現在リリースしているのは、リースリング・ブントザントシュタイン(雑色砂岩、自社畑、平均樹齢25年)とピノ・ノワール(平均樹齢15年、他農家から購入したぶどう)、リースリング・ゼクト(ブリュット)の3種類のみ。中でもピノ・ノワールは大変な人気で、発売されるやたちまち売り切れるほど。ヨーン氏は、栽培・醸造コンサルタントとしても活躍中。

Hirschhorner Hof
Hirschhornring 34, 67435 Neustadt
Tel. 06321-670537
www.hirschhornerhof.de


2009 Riesling Bundsandstein Oestlich Lenchen
2009年 リースリング ブントザントシュタイン

14.50€

2009 Riesling Bundsandstein Oestlich Lenchen

ヨーン氏は、醸造所設立当初からビオディナミ農法でぶどうを育てている。醸造においても自然の酵母を活かしているほか、温度調節などの人為的な手法を拒み、セラーの自然の温度に任せてワインを育てている。リースリングの醸造には昔ながらの大型の木樽、ドッペルシュトゥックを使用。醸造においては、早い段階から木樽を使うことによって高品質で安定したワインが出来上がるという。2009年は、ぶどう造りに理想的な、太陽の恵みを存分に受けたヴィンテージ。柑橘系、とりわけオレンジの皮の香りに溢れ、柔らかな酸味と繊細でほのかな甘みを感じる愛らしいリースリング。国際ビオワインコンテスト「ムンドゥスヴィニ・ビオファッハ(MundusVini BioFach)」で大金賞(Grosses Gold)を受賞した。
 
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岩本順子(いわもとじゅんこ) 翻訳者、ライター。ハンブルク在住。ドイツとブラジルを往復しながら、主に両国の食生活、ワイン造り、生活習慣などを取材中。著書に「おいしいワインが出来た!」(講談社文庫)、「ドイツワイン、偉大なる造り手たちの肖像」(新宿書房)他。www.junkoiwamoto.com
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