ドイツワイン・ナビゲーター


コルクのお話 1 - コルクオーク

コルクは古代から有用な素材として、例えば網漁業の浮きなどに活用されていました。ボトルワインの栓として使われ始めたのは、ガラス産業が発展する17世紀後半からです。

コルクという素材は弾力性があり、気密性を持っていて、しかも軽量です。このような万能素材が自然界に存在し、コルクオークの樹皮を剥がすだけで得られるとは、ワイン産業にとって、なんという幸運でしょう。コルクオークのおかげで、ワインを長期間保存することが可能になりました。これから3章にわたり、コルクについてお話ししたいと思います。

1つの小さなコルク栓は約8億個もの細胞から構成され、その約半分をスベリン(Suberin)という不飽和脂肪酸が占めています。この物質は液体や気体、細菌の侵入を防ぐ効果があるといわれています。ほかの樹木にもスベリンは含まれていますが、コルクオークに限って、スベリンがコルクとして使われる樹皮部分にとりわけ多く含まれています。

コルクオークの産地は、ヨーロッパと北アフリカの地中海沿岸地域に限定されています。その森はトータルで230万ヘクタール(ドイツ全土の約15分の1)。そのうち約3分の1がポルトガルにあります。このほかスペイン、イタリア、フランス、モロッコ、アルジェリア、そしてチュニジアにコルクオークの森があります。

コルクオークは樽に使用されるオークと同じく、ブナ科コナラ属(Quercus)に属していますが、幹ではなく樹皮を利用します。コルクオークの樹齢は約250年。良質なコルク素材を提供できるのは、そのうち約150年間といわれています。通常、樹齢20~25年を経た後、約10年おきに1度、樹皮を剥がして利用します。1本のコルクオークから、1度に約45キロの樹皮が得られます。樹齢を全うするまでに多くて15回ほど樹皮が取れるので、その合計は約700キロに上ります。

環境破壊により森林が減少しているというニュースをよく耳にしますが、ポルトガルのコルクオークの森は毎年約1%と、わずかながらも増加しています。過去10年間で、イベリア半島全域のコルクオークの森は15万ヘクタールも増えたそうです。 コルクオークはほかの樹木と利用法が異なり、原木を伐採しないために森が守られるのでしょう。また、密植されず、生えているのは1ヘクタール当たり30本、多くても100本程度であるため、木々の間にはほかの植物や動物が生存する空間や、農作物を栽培するためのゆったりとしたスペースがあるのです。

コルクオークの森が守られると、その生態系も守られます。イベリア半島のコルクオークの森には、絶滅の危機に瀕している動物(スペインオオヤマネコなど)が生存しています。また、コルクオークは燃えにくいため、森林火災の予防効果もあるそうです。

コルクの生産量は年間30万トン。このうち52%がポルトガル産です。生産されるコルクの70%がワイン産業において、すなわちワインボトルの栓として使用されています。

Weingut Chat Sauvage シャ・ソヴァージュ醸造所
(ラインガウ地方)

シャ・ソヴァージュ醸造所
写真:Winkler Dachsbergの畑の入り口
©Weingut Chat Sauvage

ラインガウ地方の著名なワイン村の1つ、ヨハ二スべルクの新進気鋭の醸造所。2001年に、ハンブルクで建設業を営むワイン愛好家のギュンター・シュルツ氏が創業した。ラインガウ在住の娘を度々訪れて現地でワインに親しむうち、リースリングは偉大なのに、シュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)は納得の行くものに出会えなかったことから、自ら醸造所を立ち上げ、リースリングの畑にピノ・ノワールを植え、ワイン造りに取り組み始めた。シャ・ソヴァージュ醸造所のピノ・ノワールは、リースリングのためのテロワールが偉大なピノ・ノワールを生み出す素地も持ちあわせていることを教えてくれる。

Weingut Chat Sauvage
Hohlweg 23, 65366 Johannisberg
Tel. 06722-9372586
www.chat-sauvage.de


2009 Clos de Schulz Chardonnay
2009年 クロ・ド・シュルツ・シャルドネ

26€
(完売。2010年ヴィンテージは予約可能。販売は2012年春から)

2009 Riesling Bundsandstein Oestlich Lenchen

シャ・ソヴァージュ醸造所の所有畑は7ヘクタール。うち8割がピノ・ノワール、2割がシャルドネ。ワインはすべてブルゴーニュの伝統醸造法を踏襲している。オーナーの名を冠した「クロ・ド・シュルツ(Clos de Schulz)」は、ヴィンケル(Winkel)にあるダックスベルク(Dachsberg)のタウヌス珪岩、黄土、およびロームの混在する土壌で育つシャルドネから生まれた。収穫量は1ヘクタール当たり35ヘクトリットル。フレンチオーク樽を使用し、新樽比率は50%。厚みのある味わいで、果実味も豊か。醸造責任者ミッヒェル・シュテッター氏の腕が冴える、ラインガウでは珍しいエレガントなシャルドネ。
最終更新 Freitag, 09 Oktober 2015 14:42
 

樽をめぐるお話 3 - 樽造りとバリックの現在

1つの樽は、気の遠くなるような時間を経て造られます。前々回にご紹介したブライト氏は、樹齢150年を経た直径約50cmのオークを使用していました。年輪の幅が狭いものは、樹木がゆっくりと成長している証であり、そのようなオークは質が良く、ワインの樽に適しているのだそうです。理想的なオーク材は、縦に割って節のない部分を選別し、2~3年間にわたって空気の良い屋外で日光と風雨にさらします。

ドイツで使用されているバリックの素材は、ほとんどがフランス産オークです。フランスの森林のおよそ3分の1はオークの森で、年間20万樽を生産するサイクルができているそうです。今日ではドイツの造り手も樽の品質を吟味するようになり、リムーザン地域圏、ニエーヴル県、アリエ県、アリエ県内のトロンセなど、オークの産地や種類、樹齢、さらには樽の生産者に至るまで、こだわりを持って選ぶようになりました。

樽材は通常、一方のたがをはめた段階で、水で湿らせながら、内側から直火で熱して曲げやすくし、工具で締めて成形します。その後、仮成形された樽の内側をトーストします。バリック特有の樽香の強弱は、このトーストの度合いで決まります。通常、ライトなトーストからヘビーなトーストまで4段階あり、醸造家はそれぞれのワインに相応しいものを選択します。

バリックは、フランスで製造されるものが最も優れているそうです。微妙なトースティング技術には熟練の技が必要です。ドイツにはバリック樽造りの伝統がないため、ドイツ産、あるいは東欧産のオークを使用する場合も、フランスの工場で樽にしてもらうことが多いようです。

ワインには果皮や果梗から得られるタンニンが含まれていますが、バリック内で熟成していくうちに、バリックのオークに含まれるタンニンが加わり、出来上がるワインに骨格や力強さを与えます。また、ワインはバリックで熟成していく間、オークを通して微量の酸素と接触します。これは大樽においても同じです。この微量の「酸化」はワインを安定させるのに役立ちます。

バリックの使い手には、長期にわたる熟成を待つ根気が必要です。また、バリックを使いこなすには、経験の豊かさも必要です。かつてはドイツでも新樽による強調されたトースト香がもてはやされましたが、最近では新樽の比率を減らし、上品なトースト香を出すようになっています。

バリックのトースト香は、いまや世界的な流行となりましたが、バリック自体が非常に高価であり(1樽約700ユーロ)、3~4年しか使用できないため、ニューワールドのフレンチスタイルのワインの生産者たちの間ではバリックを使用せずにトースト香を加えるという自由な発想が生まれました。現在、実施されている方法には、ステンレスタンクで醸造するワインにオークチップやインナーステーヴと呼ばれるオークの板を加えて風味を移す方法などがあります。

EU圏内でも2006年10月以降、オークチップやインナーステーヴの使用が認められるようになりました。ただ、ドイツではプレディカーツワインへの使用はいまだ禁じられています。

Weingut Bergdolt-Reif & Nett ベルグドルト=ライフ&ネット醸造所
(プファルツ地方)

ベルグドルト=ライフ&ネット醸造所
写真:クリスティアン&カティア・ネット夫妻と息子のアレキサンダーくん
© Weingut Bergdolt-Reif & Nettf

プファルツ地方、ノイシュタット近郊のドゥットヴァイラーにある家族経営の醸造所。目下、親子3代でワイン造りに取り組んでいる。10年前からは、ジュニア世代のクリスティアン・ネットが主に醸造を担当。地下10mにわたる黄土、粘土、そして石灰岩が主体の土壌、そして自然のサイクルがもたらす恵みを大切に、テロワールが活きるワイン造りを目指している。分散する所有畑には、約15品種のぶどうが、それぞれ最適な場所に配されている。主体はリースリングだが、ブルゴーニュ品種やボルドー品種も栽培している。クリスティアンは祖父と父から、何よりも畑の個性を知ること、そして気象を読むことを学んだという。 醸造所では、クリスティアンの父親ベルンハルトさんが射止めたイノシシ肉も販売している。

Weingut Bergdolt-Reif & Nett
Dudostraße 24, 67435 Duttweiler/Pfalz
Tel. 06327-2803
www.weingut-brn.de


2008 Avantgarde Lagrein
2009年 2008年 アヴァンギャルド・ラグライン

€13

2009 Riesling Bundsandstein Oestlich Lenchen

クリスティアン・ネットは2003年に研修で南チロル地方(イタリア)を旅した時、現地の土着品種、ラグライン種(赤)のダークチョコレートを思い起こさせる美味しさに感動し、ドイツにまだ存在しないこの品種を栽培しようと思い立ったという。ファーストヴィンテージは2005年。ラグラインは早霜に弱いので、気候が安定するまではなるべく成長するがままにし、8月に入ってから徹底したグリーンハーヴェストを行って収穫量を落としている。このアヴァンギャルト・ラグラインは、18カ月にわたりバリックにて熟成。新樽比率は50%。穏やかなスパイシーさが魅力的なワイン。
最終更新 Freitag, 09 Oktober 2015 14:41
 

樽をめぐるお話 2 - 木樽の手法

現在、ドイツの醸造所において木樽はどのように使われているのでしょうか? その手法は実に多様で、一言では言えません。そこで、大型の木樽(フーダー、シュトゥックなど)とバリック、そしてステンレススティールタンク*が、それぞれどのように使い分けられているかを簡単に整理してみます。

リースリングなどのフルーティーな白品種には、その香りを活かすためステンレススティールタンク、あるいは大型の木樽が使われています。白と赤のブルグンダー種(ヴァイスブルグンダー、グラウブルグンダー、シュペートブルグンダーなど)およびブルグンダー系の白品種(シャルドネなど)、その他の赤品種には、造り手によって大型の木樽、バリック、 ステンレススティールタンクのいずれもが使われています。

シュペートブルグンダーなどには、オーク材の発酵槽を使用している醸造所とステンレススティールなどの発酵槽を使用している醸造所があります。バリック内での熟成期間は、造り手の意図やワインのタイプにより、短くて3カ月、最長2年程度です。シャルドネは、ブルゴーニュのようにバリック内でアルコール発酵させている造り手がいます。

いずれの醸造所にも、樽やタンクの使用法に関して独自の考えがあります。 昔ながらの大樽を使用し、セラーの自然の温度を良しとする醸造所もあれば、その木樽に最新の冷却装置を装備しているところもあります。また、ステンレススティールタンクに冷却装置を整えている醸造所もあれば、温度調節を行っていない醸造所もあります。また、同一の醸造所内でもワインのタイプやヴィンテージによって樽やタンクを使い分けることがあります。樽内での熟成期間も然り。それぞれのワインが、どの段階でどれだけの期間、木樽、あるいはバリック内で過ごしたかは、造り手に聞いてみないと分かりません。

樽の大きさにもバリエーションがあり、フーダーやシュトゥックにも、ハーフサイズのハルプフーダー(500リットル)、ハルプシュトゥック(600リットル)があるほか、ダブルサイズのドッペルフーダー(2000リットル)、ドッペルシュトゥック(2400リットル)もあります。かつてビール用に使われていた、より大きな木樽を修理して使っている醸造所もあります。

ドイツでは、ボルドー容量のバリック(225リットル)も、ブルゴーニュ容量のピエス(228リットル)も使われています。また、ブルゴーニュなどで1度使用された樽を購入し、使用している醸造所もあります。

*ステンレススティールタンクが普及するまでは合成樹脂タンクも併用されていました。このほか、壁面に作り付けられたコンクリートタンクを使用している醸造所もあります。

Hirschhorner Hof ヒルシュホルナー・ホーフ醸造所
(プファルツ地方)

ヒルシュホルナー・ホーフ醸造所
写真:©Hirschhorner Hof

プファルツ地方ダイデスハイムの名門、ブール醸造所(ライヒスラート・フォン・ブール)の前醸造長フランク・ヨーン氏が、農生物学を学んだゲルリンデ夫人と共に立ち上げた新しい醸造所。2002年に築400年の建物と3ヘクタールのぶどう畑を手に入れ、醸造所の基礎を築いた。ファーストヴィンテージは2003年。現在リリースしているのは、リースリング・ブントザントシュタイン(雑色砂岩、自社畑、平均樹齢25年)とピノ・ノワール(平均樹齢15年、他農家から購入したぶどう)、リースリング・ゼクト(ブリュット)の3種類のみ。中でもピノ・ノワールは大変な人気で、発売されるやたちまち売り切れるほど。ヨーン氏は、栽培・醸造コンサルタントとしても活躍中。

Hirschhorner Hof
Hirschhornring 34, 67435 Neustadt
Tel. 06321-670537
www.hirschhornerhof.de


2009 Riesling Bundsandstein Oestlich Lenchen
2009年 リースリング ブントザントシュタイン

14.50€

2009 Riesling Bundsandstein Oestlich Lenchen

ヨーン氏は、醸造所設立当初からビオディナミ農法でぶどうを育てている。醸造においても自然の酵母を活かしているほか、温度調節などの人為的な手法を拒み、セラーの自然の温度に任せてワインを育てている。リースリングの醸造には昔ながらの大型の木樽、ドッペルシュトゥックを使用。醸造においては、早い段階から木樽を使うことによって高品質で安定したワインが出来上がるという。2009年は、ぶどう造りに理想的な、太陽の恵みを存分に受けたヴィンテージ。柑橘系、とりわけオレンジの皮の香りに溢れ、柔らかな酸味と繊細でほのかな甘みを感じる愛らしいリースリング。国際ビオワインコンテスト「ムンドゥスヴィニ・ビオファッハ(MundusVini BioFach)」で大金賞(Grosses Gold)を受賞した。
最終更新 Freitag, 09 Oktober 2015 14:34
 

樽をめぐるお話 1 - 大樽とバリック

かつて、ワイン樽職人の仕事を2日間かけて追ったことがあります。モーゼル地方で当時最後の樽職人といわれたピースポート村のヨーゼフ・ブライト氏の工房で、引退直前の彼の仕事の一部始終を見せてもらったのです。彼は、約50年の間に大小2000の樽を造ったそうです。製作していたのは、主にモーゼル地方の伝統的な樽である「フーダー(1000リットル)」。素材はオーク*です。体力のあった30代の頃は、年間160樽も生産していたそうです。

ところが、80年代後半に入るとフーダーの注文が徐々に減りはじめ、その頃から今度は小型オーク樽の注文が増えたそうです。「バリック・ボルドレーズ」と呼ばれるフランス・ボルドー地方の伝統的な樽(225リットル)のドイツ版です。当時ブライト氏は、「年をとって体力的に大型のフーダーを造るのが辛くなった頃に小型の樽の注文が増えたので、仕事がとてもやりやすかった」と仰っていました。

このエピソードからうかがえるように、ドイツでは1970、80年代頃から温度管理や清掃、メンテナンスのしやすいステンレススティールのタンクが徐々に普及し始め、 モーゼル地方のフーダーや、ライン川地域の「シュトゥック(1200リットル)」 といった大型の樽は少しずつ姿を消していきました。

一方で、小型のオーク樽が一部のワイン(主にブルグンダー種)に使われるようになります。ドイツでもフランス名を転用してバリックと呼んでおり、主にフランスから樽を取り寄せています。樽材にドイツ産のオークが使用される場合も、製品化は高品質を誇る本場フランスの技術に委ねられることが多いです。

バリックを使用すると、ワインにバニラやココナッツの風味にも似た特有の樽香が加わります。ドイツでは1980年代頃まで、検査機関のテイスターがこの樽香をワインに特有でない異臭であると判断し、ラントワインに格下げしてしまうことがありました。

ドイツで昔から使われていた大型の木樽には樽香を付ける目的はなく、樽香が付かない状態にしてから使い始め、何十年にもわたってメンテナンスをしながら使用し続けます。ドイツワインを代表するリースリングは香り高く、造り手はその純粋な風味を活かすため、通常バリックを必要としません。

一方、グラウブルグンダーやシュペートブルグンダーなどの品種は、バリックを使うことでワインに調和する個性的な風味が加わります。その樽香は、新樽ほど強く出ます。バリックは通常、3〜4回繰り返し使用します。

1991年にドイチェス・バリック・フォーラム(Deutsches Barrique Forum)、93年にバリックフォーラム・プファルツ(Barrique Forum Pfalz)というバリックを使用するワインの品質向上を目的とした団体が相次いで結成されると、ドイツワインの伝統とは異質な、樽香のあるワインがその地位を確立し、バリックの選択、使用法も洗練されていきました。ドイツにおけるバリックの台頭は、バリックと相性の良いブルグンダー種など、フランス系品種の栽培の増加とも関係しています。

* オークはブナ科の落葉樹の小楢(コナラ)や水楢(ミズナラ)のことです。

Weingut Querbach クヴェアバッハ醸造所
(ラインガウ地方)

クヴェアバッハ醸造所
写真:© Weingut Querbach

エストリッヒの高台にある1650年創業の伝統ある醸造所。現在のオーナーはペーター・クヴェアバッハ氏。ワイン造りは、ペーターさんと父親のヴィルフリートさんが共同で行っている。試飲会でクヴェアバッハ醸造所のスタンドを訪れると、いきなり垂直テイスティング(年代の違う同じ銘柄のワインを飲み比べること)が始まる。通常10ヴィンテージが準備され、クヴェアバッハ・リースリングの10年の軌跡を追うことになる。そして過去ヴィンテージの、時を超越した若々しさを実感する。常時10のヴィンテージが入手できる醸造所はドイツでもごく稀。現段階で、2000 ~ 09年までのすべてのヴィンテージを購入できる。ワインの価格も非常に良心的だ。

Weingut Querbach
Lenchenstr. 19, 65375 Oestlich-Winkel
Tel. 06723-3887
www.querbach.com


2009 Riesling trocken Q1(Querbach No.1) Oestlich Lenchen
2009年 リースリング(辛口)Q1 エストリッヒ・レンヒェン

11.85€

2009 Riesling trocken

ペーターさんは畑造りに力を入れ、醸造過程はワイン任せ。自然発酵が停滞しても、ワインを信じて気長にその成長を待つ。彼はラインガウ地方伝統の木樽シュトゥックの使用をやめてステンレスタンクを導入しているが、発酵温度の調節などは一切せず、 自然酵母を活かした木樽時代と変わらない使い方をしている。Q1は、レンヒェンというプルミエ・クリュ・クラスの畑のワインであることからそう名付けた。エアステスゲヴェックス(グラン・クリュに相当)として生産しているドースベルクより収穫量がやや多めになっている。クヴェアバッハ醸造所のワインは、すべてステンレススティールの特殊な王冠による栓。おそらくワインの保存には最も適した方法だろう。
最終更新 Freitag, 09 Oktober 2015 14:34
 

ワイン史とビール史の接点を探して 2

ワインの歴史に思いを馳せるとき、避けて通れないことがあります。それはキリスト教です。カール大帝はワイン造りを奨励する際にも、キリスト教を活用できると分かっていたので、教会にぶどう畑を分与したのでしょう。ドイツでは、ワイン造りはキリスト教の普及と共に本格的に始められました。ワインとビール、2つの文化の混在は、キリスト教文化と北方のゲルマン文化の融合の軌跡と言えるかもしれません。

さて、中世も後期になると、北部ドイツを中心にビール醸造ブームが起こり、12世紀末にはフランドル地方や北欧にまで輸出を行う醸造所も現れました。16世紀末のハンブルクには600ものビール醸造所があり、高品質のビールを生産していたそうです。

一方、ぶどう栽培地域が拡大していた南部では、ビールより安価に造られるワインが飲まれ、当時ミュンヘンで消費されていたビールのほとんどは、北部からの輸入品でした。バイエルンのビールの品質向上とパン用の穀物確保のため、ビール純粋令が公布されたのは1516年のこと。この法律のおかげでバイエルン公国のビールの品質が向上し、16世紀後半になると、本格的なビール醸造所が出現し始めます。

しかし、その後の30年戦争(1618~48年)によってドイツの土地や田畑は荒廃してしまいます。そして、戦後の復興の折りにビール造りに拍車が掛かりました。壊滅したぶどう畑を新たに開墾し、ワインとなるぶどうを収穫できるようになるまでには何年もかかりますが、ビールは麦の種をまけば翌年からすぐに醸造に取りかかれます。そのためバイエルン公国では、修道院も市町村もワイン造りを諦め、ビール造りに邁進していったそうです。もしここで伝統のワイン造りに拘っていたら、バイエルンはワイン大国になっていたのでしょうか?

また、30年戦争後はドイツ全域に300余もの諸国が分立し、諸国間の物資の移動には関税がかかりました。そのため、それぞれの国および市町村が独自に地ビールを醸造するようになり、地方色豊かなビール産業の基礎が出来上がりました。

フランス革命後は、営業の自由という権利を得た市民がビールを輸出品として売り出すようになります。ミュンヘンはビール都市として発展し、18世紀末には60の醸造所が当地で営業していました。

19世紀には醸造元でのビール酒場の開業も認められるようになり、ミュンヘンには1000人を超える客を収容できるビアホールが開業するまでになります。ただ当時、クナイペ(居酒屋)の数ではベルリンが2500軒でトップの座を誇っていました。19世紀末、ドイツには2万近い醸造所があり、全世界で生産されるビールの4本に1本はドイツ産だったほどです。さらに、この頃には冷却機も発明され、年間を通して安定した品質のビールを生産できるようになりました。

2回にわたり、大ざっぱにドイツのビール史を追ってみましたが、こうしてみると、ビールとワインは互いに補い合って発展してきたように思われます。リューベック出身の作家トーマス・マンはワイン通でしたが、ビールも毎晩欠かさず飲んでいたそうです。ワインの造り手たちも、畑仕事の後はしばしばビールで渇きを潤しています。ドイツはフランスやイタリアと異なり、2つの飲料文化が共に栄えた稀な国なのですね。

Winzergenossenschaft Britzingen ブリッツィンゲン共同組合醸造所
(バーデン地方)

ブリッツィンゲン共同組合醸造所
写真:©Winzergenossenschaft Britzingen

バーデン地方の最南端に位置するマルクグレーフラーラント地域のワイン造りの歴史は古く、西暦773年からワインが生産されていたという記録がある。同地域の中央に位置するブリッツィンゲンの共同組合醸造所の設立は1950年。180のぶどう栽培農家が所属し、会員の畑の総面積は199ヘクタールに上る。マルクグレーフラーラント地域はバーデン地方の中でも独特のワイン文化を持ち、グートエーデル種の栽培面積が4割を占めている。グートエーデルは伝統的に、辛口に仕立てられる白ワイン。同地方では日常的に楽しまれている。天候に恵まれた年には、ベーレンアウスレーゼやアイスワインも収穫可能だ。ところで、ともに名高い温泉処であるブリッツィンゲン近郊の街バーデンヴァイラーと福島県いわき市は2000年から交流事業を行っており、01年からは、いわき湯本温泉郷の旅館でブリッツィンゲン共同組合醸造所のワインを提供している。同醸造所社長のアヒム・フライ氏は、今年もいわき湯本温泉郷にワインを出荷しており、被災者への支援募金なども積極的に行っている。

Winzergenossenschaft Britzingen
Markgräflerland e.G.
Markgräflerstr. 25-29,
79379 Müllheim-Britzingen
Tel. 07631-17710
www.britzinger-wein.de


2010 Britzinger Rosenberg Gutedel QbA
2010年 ブリッツィンガー・ローゼンベルク・ グートエーデル QbA

4,20 €

2009 Dr. Siemens

アヒム・フライ氏によると、マルクグレーフラーラント地域のぶどう栽培農家では、9時頃に摂る2度目の朝食「ヴェスパー (Vesper)」の際、グートエーデルを軽く1杯楽しむのだそう。農家の人たちにとっては、この1杯が1日の活力源だという。グートエーデル種はスイスではシャスラ種と呼ばれ、各地で栽培されている(スイスのヴァレー地方に限り、フォンダン種と呼ばれる)。グートエーデルはリースリングと違って酸の量が少なく、「毎日飲めるワイン」などと言われる。このローゼンベルクのグートエーデルも、まろやかで穏やかな飲み心地。ほのかな柑橘系の香りが漂い、ミネラリティー、骨格、そしてボリューム感もある。野菜だけの軽い食事にも、肉料理(仔牛肉や鶏肉)や魚料理にも合わせられる1本。
最終更新 Montag, 05 September 2011 18:21
 

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