ドイツワイン・ナビゲーター


ビオワインの世界 9 ビオディナミ基礎講座 2

前回お話ししたハーバー・ボッシュ法の発見以降、人間を取り巻く自然環境は大きく変わってしまいました。化学合成肥料の登場によって農作物の大量生産が可能になり、人口が増加したのです。また、過剰な肥料は農産物の成長を極度に促進し、植物細胞が肥大化したり、組織が軟弱になったり、カビ菌などが繁殖しやすくなりました。人工肥料は、雑草の生育も促します。そして雑草が過度に繁殖するようになると同時に、特定種の昆虫が大量発生するといった現象が起こり始めます。

こうした自然界の不均衡を解決するために登場したのが、除草剤や殺菌剤、そして殺虫剤といった化学農薬でした。第2次世界大戦後もなお、農家が避けて通れなかった化学肥料と化学農薬。現在の農業は、これら化学製品に依存するようになってしまいました。また、化学肥料と化学農薬は土壌に残留し、地下水、河川、海洋の水質が悪化していきました。こうして見ると、20世紀初頭の段階ですでに危機感を抱いていたシュタイナーの先見性には驚くばかりです。

さて、シュタイナーの『農業講座』以後、有志たちによってビオディナミ農業が少しずつ広まっていきましたが、ドイツでは1941年にナチスにより活動が禁じられてしまいます。シュタイナーの自由な思想が、一部のナチスの反感を招いたのです。しかし、ビオディナミ農法の実践は、戦後まもなく再開されます。

戦後、ビオディナミ農法の発展に寄与した人物に、マリア・トゥーン(1922~2012年)がいます。人智学者であり、ヴァルドルフ学校の美術教師でもあった夫ヴァルター・トゥーンの影響でシュタイナーの思想に親しんだ彼女は、農業家フランツ・ルルニ(1894~1981年)が製作した種蒔きカレンダーを参考に、植物の成長と天体の運行の関係を研究します。彼女が約10年の年月を掛けて突き止めたのは、月の満ち欠けと種蒔きの時期、そして植物の成長の度合いには関連性があるということでした。そして1963年に、ラディッシュ、じゃがいも、玉ねぎなどの「根や茎」を食する植物、キャベツやハーブなどの「葉」の植物、豆類、とうもろこし、トマト、きゅうり、カボチャなどの「実」を食する植物、アブラナやひまわりなど「花」の種の部分を利用する植物のそれぞれの種蒔き時期、ぶどうや果樹の剪定の時期など、ビオディナミ農法による作業のタイミングを助言するカレンダーを発行し始めます。このカレンダーは彼女の死後も、家族によって毎年発行され続けています。

人類が1万年近く掛けて発見した農業の神秘、すなわち「農耕と牧畜の結婚」は、20世紀初頭にそのバランスを崩され、現在に至っています。シュタイナーの思想はドグマティックであると誤解されることがありますが、それは長年の人類の知恵の蓄積とゲーテの自然観から発展したものであり、世の中で起こっている事柄を理性的に、冷静に見つめた人間の率直な思考です。1980年代から着実に広まっているビオ農業も、化学肥料と化学農薬、そして遺伝子組み換え法から脱却しようとする理性的な試みなのです。

次回は、ビオディナミ農法の作業について具体的に紹介しましょう。

 
Weingut Pflüger
プリューガー醸造所(プファルツ地方)

アレクサンダー・プリューガー
プファルツ地方の期待の新人、
アレクサンダー・プリューガー

バート・デュルクハイムの家族経営の醸造所。現オーナー、アレクサンダー・プリューガーはドイツのほか、ブルゴーニュ、南フランス、南アフリカなどで経験を積み、実家の醸造所で働き始めた。父ベルントが1990年にビオ栽培を始めており、アレクサンダーは2008年にビオディナミ農法に移行。10年に醸造所を継いだ。エチケットに描かれている、馬を使い、畑を耕す人のシルエットが象徴するように、現場でも馬を使って畑作業を行っている。栽培品種の3分の1はリースリング。石灰岩と泥灰岩が混在するデュルクハイムのミッヒェルスベルクと、鉱物質土壌のウングシュタインのヘレンベルクから、畑の個性が活かされたリースリングを生み出しているほか、砂岩と石灰岩で構成されるデュルクハイムのフローンホーフではシュペートブルグンダーを栽培している。ブルグンダー種のほかにも、レンベルガーやシュヴァルツリースリング、ザンクト・ラウレント、メルローなど多彩な赤ワイン品種を生産。 エコヴィン、デメター両団体の会員。VDP準会員でもある。

Weingut Pflüger
Gutleutstr. 48, 67098 Bad Dürkheim
Tel. 06322-63148
www.pflueger-wein.de


2012 Blanc de Noir trocken
2012年 ブラン・ド・ノワール(辛口)7.00€
(2012年産は完売。2013年産は2014年2月より発売)

ワイン「唯一無二の土壌を持つ畑とぶどうの力を活かしたワイン造りをしたい」と語るアレクサンダー。ビオディナミに転換してからは、ぶどうが極端な乾燥、長雨や雹ひょうなどのストレスにも耐えられるようになってきているという。また、味わいのバランスも良くなっており、個性が際立つ、長期保存が可能なワインに仕上がるとのこと。毎年、あっという間に売り切れてしまう人気のブラン・ド・ノワールはシュペートブルグンダー70%、シュヴァルツリースリング(ピノ・ムニエ)25%、メルロー5%のブレンド。抑制された赤い果実の香り、しっかりした体躯が特徴。年間を通じて食卓を彩ってくれるワイン。

最終更新 Freitag, 15 August 2014 17:19
 

ビオワインの世界 8 ビオディナミ基礎講座 1

この秋、ビオディナミ農法の生産者団体デメター主催のワイン講座に参加しました。そこで学んだことを、4回にわたってお伝えしましょう。

ビオディナミ農法は世界最古のビオ農法と言って良いでしょう。20世紀初頭に人智学、そしてヴァルドルフ教育法を提唱したルドルフ・シュタイナー(1861~ 1925)が、亡くなる9カ月前に行った「農業講座」の内容を基本とした農法です。

シュタイナーは大変なゲーテ通だったそうです。1890年から97年まで8年間にわたってゲーテの自然科学に関する著作の編集作業を行い、ゲーテの自然観から大きな影響を受けています。ゲーテの『自然科学論集』もシュタイナーの『農業講座』も膨大な知恵の集大成であり、一度通読したくらいでは理解できないことも多く、将来も繰り返し読みたいと思っている書物です。

ビオディナミの考え方をご紹介する前に、少し農業の歴史を振り返ってみましょう。

人間は約1万年におよぶ農業の歴史の中で、試行錯誤を続けてきました。それは、肥料(窒素、カリウム、リン酸など)を探求する歴史でもありました。太古の農業には肥料という概念がなかったため、肥沃な土地で農業が発達しました。古代ギリシア時代の農業は非常に発展していたのですが、やはり肥料という概念はなかったようで、牛糞の有効な利用法は分かっていなかったと言われています。中世に入り、三圃式農業が実践されるようになった当初も、肥料というものは知られていなかったそうです。しかし、やがて休耕地で放牧された牛の排泄物が土壌を活性化することが分かるようになりました。耕作と放牧とが密接に繋がることで、持続可能な農業を実施できるようになったのです。この「農耕と牧畜の結婚」は農業における革命的事件でした。その後、植物を観察し続けることでも様々なことが分かってきました。例えば、畑にクローバーを植えると、そこではじゃ がいもがよく育つようになるといったことです。そうして、ある種の植物が肥料として利用されるようになりました。

並行して、化学の発達によってあらゆる元素が発見され、肥料の実態も解明されていきます。空気中には窒素が8割含まれていますが、揮散性の高いこの元素は、生き物の排泄物や空気中の窒素を土壌に取り込むことができる植物の存在によって肥料となることが分かってきたのです。しかし、硝石が肥料として有効であることが分かると、盛んにこの鉱物肥料が投入されるようになりました。

1916年にハーバー・ボッシュ法(窒素固定法・アンモニア合成法)が発見されますが、シュタイナーはこの発見に大変な危機感を抱いたそうです。以後、 硝石に頼る必要はなくなり、大量の窒素化合物(化学合成肥料)が農地に供給されるようになりました。こうして、不毛の地でも農作物の量産が可能になったのです。ハーバー・ボッシュ法は、硝石に代わって火薬・爆薬の生産にも利用され、第1次世界大戦時には兵器生産技術としても使われました。現在の農業は、この化学合成肥料によって成り立っており、ビオディナミ農法はこの動きに警鐘を鳴らしています。

※全4回の執筆に当たり、講師のロマナ・エッシェンスペルガー(Romana Echensperger)さんに助言をいただいたほか、デメター発行のハンドブックを参考資料として使いました。

 
Weingut Gysler
ギースラー醸造所(ラインヘッセン地方)

 

アレクサンダー&ハイケさん夫妻。
長女ヨハンナちゃん、次女カロリーネちゃんと
アレクサンダー&ハイケさん夫妻。
長女ヨハンナちゃん、次女カロリーネちゃんと
ラインヘッセン地方アルツァイ近郊にあるヴァインハイムの家族経営の醸造所。創業は1750年。父方の祖先はスイス出身で、バーデン地方を経由してラインヘッセンに根を下ろした。現在のオーナーであるアレクサンダーは、1999年に若くして亡くなった父親の醸造所を継ぎ、母親のレナーテさん、妻のハイケさんと共に醸造所を運営している。この地域のぶどう畑は2億8500万年前の赤底統(砂岩の風化土壌)と呼ばれる、非常に古い土壌が9割を占めている。赤底統の特性により、生き生きとした酸味を保ったワインが生まれると言われている。アレクサンダーのワインは初ヴィンテージから評価が高く、2004年の長女誕生を契機にビオに移行。ビオディナミ・ワインの先駆者ニコラ・ジョリの著作に感銘を受け、2008年からはビオディナミ農法を実践している。デメター会員。

 

Weingut Gysler
Großer Spitzenberg 8
55232 Alzey-Weinheim
Tel. 06731-41266
www.weingut-gysler.de


2011 Huxelrebe trocken
2011年 フクセルレーベ(辛口) 8.90€
2012 Scheurebe trocken
2012年 ショイレーベ(辛口) 8.90€

ワインギースラー醸造所の栽培ぶどうはリースリングが3割、その 他はブルグンダー種とラインヘッセン特有のフクセルレーベやショイレーベで構成されている。栽培しているリースリングは「トラウトヴァインクローン(Trautweinklon)」とも呼ばれるクローン。アレクサンダーの祖母が著名なリースリング栽培家フィリップ・トラウトヴァインの畑を相続したため、そのクローンを継ぐことになった。アルツァイは交配品種フクセルレーベとショイレーベが誕生した町。アレクサンダーはラインヘッセンでもすっかり珍しくなってしまったこれらの品種を、今なお大切に育てている。フクセルレーベは暑さが苦手で、温暖な地域での栽培は困難。冷涼気候の同地で収穫量を少なく抑えて造ることで、エキゾチックでフルーティーさ溢れるワインに仕上がっている。ショイレーベも絶妙のタイミングで収穫され、繊細な風味を醸している。いずれもラインヘッセンのワイン文化の繁栄を現在に伝える希少なワイン。

最終更新 Freitag, 15 August 2014 17:20
 

ビオワインの世界 7 その他の組織

これまで、ビオラント、ナトゥアラント、エコヴィンの3つのビオ生産者団体を紹介してきました。今回は、その他のビオ生産者団体を簡単にご紹介します。醸造所会員は非常に少ないですが、ワイン以外の飲料や食品を選ぶ際に、参考になさってください。

Gäa e.V.(ゲア)は、旧東独地域においてビオ農法を実践、推進するために設立された団体です。名称の由来はギリシャ神話に登場する女神ガイア(Gaia)。もともと東西分裂時代の1980年代に興った組織で、1989年のベルリンの壁崩壊直前、ドレスデンを本拠地に団体としての活動を開始しました。東西ドイツ統一後、1990年代初頭には州ごとに運営されていた組織の間で調整が行われて1つの団体として統合され、1995年にはゲア独自のビオ基準が認可されました。会員数は約480、会員農地は約5万ヘクタール、会員の9割が旧東独地域の生産者です。醸造所会員は現在のところいません。
www.gaea.de

Biokreis e.V.(ビオクライス)は、バイエルン州パッサウに拠点を置くビオ団体。1979年に、食に関心の高い消費者グループの運動として発生したものです。彼らは、生産者や加工業者に、積極的にビオに関わってもらいたいとの考えから同団体を設立し、健康食の普及に努め、料理教室やビオ農法に関するセミナーを開講しています。現在も会員の約2割が消費者で構成され、近隣の会員同士でネットワーク作りを試みています。会員数は約1300、会員農地は3万5000ヘクタール。醸造所会員は3社です。
www.biokreis.de

1991年設立のBiopark(ビオパーク)は、メクレンブルク=フォアポンメルン州のギュストロウを本拠地とするビオ団体。旧東独地域の生産者が圧倒的に多い団体ですが、ドイツ全域に会員がいます。会員数は約700ですが、会員農地が14万ヘクタールと広大。その多くが牧草地で、一部は自然保護地域に指定されています。酪農家、畜産農家、家禽農家が中心です。スーパーマーケット・チェーン、エデカと提携し、ビオの食肉を提供しているほか、食品大手ネスレと提携して離乳食の素材を提供しています。醸造所会員はいません。
http://biopark.de

ECOLAND(エコラント)は、バーデン=ヴュルテンベルク州ヴォルパーツハウゼンに事務局を置くビオ団体。BESH(シュヴェービッシュ・ハル農産物生産共同組合)の子会社です。1997年に設立され、ドイツ、ルーマニア、セルビア、インドなどに約1300の会員がいます。重要な産業は、ビオのハーブとスパイスの生産販売。エコラント・ハーブ&スパイスという会社を立ち上げ、こしょうやカルダモン、バニラなどのスパイスをインドの提携農家で、パプリカとにんにくをハンガリーの提携農家で生産しています。このほか、畜産、穀物、てん菜、大豆農家を網羅しています。醸造所会員はいません。
www.ecoland-verband.de

 
Weingut Hoflössnitz
ホーフレスニッツ醸造所(ザクセン地方)

ホーフレスニッツ醸造所

ザクセン地方ラーデボイルにある創業1401年の醸造所。第2次世界大戦後は旧東独で「国民醸造所」として運営され、東西ドイツ統一後の1992年にラーデボイル市に所有権が戻された。1998年、醸造所の大々的な修復工事のために市を中心とした財団が立ち上げられ、醸造所は事業形態に、そしてホーフレスニッツ・文化景観保護財団は文化遺産保護を目的に、同財団に参画している。醸造所の敷地内には歴史的建造物が多く、ザクセン・ワイン博物館やワインショップも整っているほか、元パン屋の店舗がペンションに、元ワインセラーはワインレストランに改装され、観光スポットとしても楽しめる醸造所に生まれ変わっている。1998年からビオを実践。旧東独初のビオワイン醸造所でもある。ビオ団体「ゲア」に所属していたが、団体内唯一の醸造所だったため、他醸造所との情報交換ができずに退会。現在では時間の許す限り、ワイン生産者会員の多いほかのビオ団体の勉強会などに参加している。

Weingut Hoflössnitz
Knohllweg 37, 01445 Radebeul
Tel. 0351-8398333
www.hofloessnitz.de


2012 Solaris Spätlese
2012年 ソラリス・シュペートレーゼ 14.90€

ワインホーフレスニッツ醸造所では2009~10年に掛けて、ミュラー=トゥルガウの畑が霜で壊滅的な打撃を受けたため、寒さに強靭なリースリングとPiWi種(ピーヴィ種:カビ菌に耐性のある交配品種)への植え替えが進んでいる。ミュラー=トゥルガウはカビが付きやすいため、ビオ醸造所として栽培し続けるのは困難が多いこともその理由だという。1998年からPiWi種への植え替えを始めており、現在では総栽培面積の半分をPiWi種が占めている。PiWi種は品種や畑、年によって農薬散布量を50~90%減らすことが可能だという。このソラリスもPiWi種の1つ。ラーデボイルのヨハニスベルクという畑で栽培されている。この畑は火山岩に分類される閃長岩(サイアナイト)を主体とする土壌。ソラリス・シュペートレーゼは柑橘系果実、かりんの香りが優しく、味わいもパイナップルやメロンを想起させる。

最終更新 Donnerstag, 07 November 2013 09:43
 

ビオワインの世界 6 ecovin(エコヴィン)

1985年にラインヘッセン、プファルツ、モーゼル、バーデン地方の計35のビオ醸造所が結集して設立した連邦エコロジカル・ワインぶどう栽培連盟(Bundesverband ökologischer Weinbaue.V.)がエコヴィンの前身です。1990年に団体名をエコヴィンに変更し、商標権を得ました。

エコヴィンは、ドイツで唯一ワインに特化したビオ生産者の団体で、本部はビオワインの中心地、ラインヘッセン地方のオッペンハイムにあります。ドイツにある13のワイン生産地域のうち、11地域に支部があり、現在、会員醸造所数は222、ぶどう畑の総面積は約1600ヘクタールに及びます。ワイン醸造家団体であるがゆえに、そのビオ基準は設立当初から、ぶどうの栽培法のみならず、醸造方法、そしてパッケージにおいても、きめ細かく定められていました。2012年産から適用されている欧州連合(EU)のビオワイン醸造に関する規定は、エコヴィンが長年にわたり実践してきた基準の多くを、そのまま採用しています。

エコヴィンの活動は多岐に渡り、例えば団体内でのワインコンテスト「エコヴィナー(Ecowinner)」を毎年実施しています。今年は77醸造所の423品のワインがエントリー。17のカテゴリで最優秀ワインが選ばれ、消費者がエコヴィン・ワインを選ぶ際の指標となっています。エコヴィンもほかの団体と同様、化学合成農薬や化学肥料の投入を禁じ、ぶどう畑の緑化を義務付けてビオトープの活性化を推奨しています。その際、できるだけ多様な植物で緑化し、成長した下草はなるべく刈り取らずにローラーで軽く折って土壌を覆い、昆虫などが生息しやすいよう配慮します。畑に「昆虫ホテル(Insektenhotel)」を設置している会員醸造所もあります。このほか、レゲントやフェニックスなど、農薬散布量を大幅に減らせるピーヴィ(PiWi)種の栽培を勧めています。

また、廃棄物を減らすため、できるだけカプセルの使用を避け、梱包用の発泡スチロールやビニルテープの使用を禁じています。さらに、プファルツやバーデン地方のオークを使用した樽を積極的に採用して植林が促されるよう努めたり、スペインやポルトガルのコルクの森が失われないよう、できるだけコルク栓を使用するなど、広域における環境保護に注力しています。

2010年からは、ビオディナミ団体のデメターと提携していますが、エコヴィン会員には、以前からビオディナミ農法を取り入れている醸造所も多く、中にはエコヴィンとデメターの両団体に加盟している醸造所もあります。エコヴィンはビオワイン造りの最前線を行く専門家集団と言えるでしょう。

「ecovin」基準例 ※カッコ〈〉内はEUビオ基準

● 会員は、所有するすべての畑において「ecovin」基準に従って栽培しなければならない。〈畑の一部でビオの実践が可能〉

● ボルドー液用硫酸銅の上限は年間3kg/haまで。〈年間6kg/ha〉

● ワインに添加する亜硫酸量(一例)は、辛口白・ロゼワインで150mg/L、 辛口赤ワインで100mg/L(いずれも残糖分2g/L以下の場合)。〈同一〉

ecovin: www.ecovin.de

 
Römerkelter
レーマーケルター醸造所(モーゼル地方)

ハイナー・ザウアー 一家
ディーンハルト父子

モーゼル川中流のマーリング=ノヴィアントにある家族経営のビオ醸造所。 オーナーのティモ・ディーンハルトは2005年に両親の醸造所を継ぎ、父ハンスと共に高品質のワイン造りに取り組んでいる。醸造所名は1980年代にモーゼル地方で発掘されたローマ時代のぶどう圧搾場に因んでいる。父の代から除草剤の使用を止めて畑を緑化するなど、ビオ農法に取り組み始め、1995年よりエコヴィンの会員に。ティモはビオディナミ農法を実践しており、エコヴィンの会員にとっては、この農法はスタンダードとなりつつあると言う。現在、レーマーケルター、ティモ・ディーンハルト、エディション・ビー(editionbee)の3つのブランドを展開。ピーヴィ種のレゲント、カベルネ・ブランからも高品質のワインを生み出している。

Römerkelter, Familie Dienhart
In der Duhr 6, 54484 Maring-Noviand
Tel. 06535-430
www.roemerkelter.de
www.edition-bee.de


2012 edition bee Kräuterwingert Riesling trocken
2012年 エディション・ビー クロイター
ヴィンガート リースリング(辛口) 9.80€

ワインエディション・ビーは、ティモ・ディーンハルトとワイン愛 好家でグラフィックデザイン事務所を経営する友人アンドレアス・トランが共同で生み出したブランド。2人が愛してやまないスレート岩の傾斜畑ホーニッヒベルク(Honigberg)で栽培されているリースリングを中心に、5種類のワインを展開。環境、そしてミツバチを守りたいとの願いから「ビー」という名称にした。ワインはすべて自然酵母による醗酵。クロイターヴィンガートは、オレンジやハーブの風味が際立つ瑞々しいワイン。ビー・シリーズにはこのほか、ベーシックなビートル(beetle)、ほのかな残糖がやさしいブラウシーファー(Blauschiefer、樹齢25年)、トップクラスの辛口クロイツライ(Kreuzlay、樹齢35年)、残糖のあるファルケンボルン(Falkenborn、樹齢38年)がある。これら5本に、モーゼル・リースリングの様々な表情と魅力が存分に表現されている。

最終更新 Mittwoch, 09 Oktober 2013 16:06
 

ビオワインの世界 5 Naturland(ナトゥアラント)

「Naturland」の設立は1982年、本部はミュンヘン近郊のグレーフェルフィンクにあります。

ドイツ国内の会員生産者数は2604、総面積約14万ヘクタール、国外の会員生産者数は約5万、総面積約12万ヘクタールに及びます。ヴッパータールのフェアトレード会社GEPA(第三世界パートナーシップ普及協会)が1986年に発展途上国におけるビオ農業普及のため「Naturland」をパートナーにしたことにより、国外会員が急激に増加しました。ビオ基準に国内外の差はありません。

「Naturland」の活動の特徴は、化学合成農薬、化学肥料、遺伝子組み換え技術の禁止といった農作物・商品基準に加え、2005年に導入された独自の保障基準が定められていることです。人権の尊重、児童労働の禁止にはじまり、発展途上国の原料などを公正な価格で買い取り、相手国の生産者、特に労働者の就労条件を改善するフェアトレードに力を入れています。2010年からはフェア認証も行っています。このような基準は、欧州連合(EU)のビオ規定にはないもので、ほかのビオ団体に先んじて造り手の生活、労働環境も守っていこうとしているのです。また、漁業、養殖漁業、林業、さらには化粧品、テキスタイル産業などにおいても独自の基準を設け、より全体的な環境保護を目指しているのも、「Naturland」ならではです。

「Naturland」がワイン、ゼクト用ぶどうの栽培、醸造の基準を定めたのは、ワイン醸造所会員が集まり始めた1986年頃でした。現在、ドイツ国内の 会員醸造所は35軒で、ぶどう畑の総面積は349ヘクタール、ドイツ以外ではイタリアとオーストリアに計6軒の醸造所があります。「Naturland」は、1990年代にドイツ高品質ワイン生産者連盟(VDP)とパートナー提携を結んでいたことがありましたが、現在は提携関係を解消、団体内に「ワイン専門委員会」を設置しています。

「Naturland」会員も、すべての所有畑において「Naturland」基準で栽培することを義務付けられています。広報担当者いわく、ワイン造りにおいては、セラーの全設備をビオ用と通常用に完全に分離することが困難であるから、というのが主な理由だそうです。つまり、畑の一部だけでEUビオ基準を実践している醸造所のビオワインは、セラーにおいて通常農法のぶどうから造られたワインに含まれている残留農薬に接触する可能性があるのです。

また、同団体もビオラント同様、ぶどう畑の緑化を義務付けています。多種多様な植物がバランス良く育つように、必要であれば種蒔きも行い、益虫が集まってくる環境を整えています。また、品種、土壌の性格を考えた上で適切な収穫量を判断し、ぶどうの樹が健康で長生きできることを目標としています。

「Naturland」基準例 ※カッコ〈〉内はEUビオ基準

● 会員は、所有するすべての畑において「Naturland」基準に従って栽培しなければならない。〈畑の一部でビオの実践が可能〉

● ボルドー液用硫酸銅の上限は年間3kg/haまで。〈年間6kg/ha〉

● ワインに添加する亜硫酸量(一例)は、辛口白・ロゼワインで150mg/L、 辛口赤ワインで100mg/L(いずれも残糖分2g/L以下の場合)。〈同一〉

Naturland: www.naturland.de

 
Weingut Hahnmühle
ハーンミューレ醸造所(ナーエ地方)

リンクスヴァイラー夫妻
リンクスヴァイラー夫妻

ナーエ地方アルゼンツの谷でリンクスヴァイラー家が経営する醸造所。1898年にカール・リンクスヴァイラーが中世からの伝統ある粉挽き小屋「ハーンミューレ」を入手し、醸造所名とした。アルゼンツの谷では1956年の霜害で壊滅的な打撃を受けるまで、ワイン醸造が非常に盛んだったが、現在、その南部地区でワイン造りを続けているのはハーンミューレ醸造所1軒だけだ。現オーナーはカールの曾孫にあたるペーター&マルティナ・リンクスヴァイラー夫妻。1986年に醸造所を継いで以来、ビオ農法を実践。1997年には水力発電装置を導入し、醸造所の電力を自家発電で賄っている。主力ワインは栽培面積の5割を占めるリースリング。とりわけ「Alisencia」はトーン・シーファー土壌のテロワールの個性が生かされた、香り高く、力強いフルーティーさを持つリースリング。誠実なワインの評価は高い。団体の活動内容に共感し、1998年に「Naturland」の会員となった。ビオ団体「ルネサンス・デ・アベラシオン」設立時からのメンバーでもある。

Weingut Hahnmühle
Peter & Martina Linxweiler
67822 Mannweiler-Cölln
Tel. 06362-993099
www.weingut-hahnmuehle.de


2012 Grüner Silvaner
2012 Blauer Silvaner
2012年産 グリューナー・ジルヴァーナー 6.50€
2012年産 ブラウアー・ジルヴァーナー 7.10€

ワインリンクスヴァイラー夫妻はアルゼンツの谷の伝統を活かしたワイン造りに取り組んでいる。その一例が、リースリングと トラミーナのブレンドワイン。「ミッシュザッツ(Mischsatz=混植)」と言って、かつて同一の畑に複数の品種が混植されていた伝統を受け継ぎ、同じ畑に2品種を植えて(ただし垣根式栽培であるため、列単位での混植)同時に収穫し、一緒に醗酵させている。もう1つの例は、ドイツでも非常に珍しいブラウアー・ジルヴァーナー。「アルゼンツのウアレーベ(Urrebe=原種)」とも言われ、グリューナー・ジルヴァーナーよりもやや力強く、スパイシーさが強調された味わい。前菜にグリューナー・ジルヴァーナーを、メインディッシュにブラウアー・ジルヴァーナーを合わせて楽しめそう。

最終更新 Dienstag, 06 Oktober 2015 09:09
 

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