実りの秋の到来と共に芽生えてくるのが、美味しいものに対する食欲。
「たまには奮発して、高級レストランへ!」と思っても、
膨大な数のレストランの中から1軒に狙いを定めるのは、なかなか難しい。
そんなときに役に立つのが、レストランを星の数で格付けする「ミシュラン」や
1~20点の採点方式で評価する「ゴー・ミヨ」など、世界的に有名なガイドブックだ。
今号では、これらガイドの2012年ドイツ版の中から厳選8店をご紹介。
今宵は大切な人と星付きレストランで、こだわりシェフの自信作に舌鼓を打ちながら、
至福のひと時を過ごしてみませんか。
(編集部:林 康子)
伝統を保ちつつ、進化し続けるレシピ
Landhaus Scherrer
ハンブルクで最も美しい並木道「エルプショセー」がまだ畦道だった 1840年に、通行人が休憩するための酒屋として開業し、日曜・祝日通行料の支払いが義務付けられた際には料金所の役目を果たしたという時代を経て、1975年にアルミン&エミ・シェーラー夫妻が開いた小さな飲食店が、このレストランの原形だ。彼らの料理は地元市民の評判を呼び、たちまち有名店に。その後、2代目シェフのハインツ・ヴェーマンが現在に至るまで30年以上、1日たりとも星を失わずに営業を続けている。同店のモットーは、「伝統と革新が交わる場所」。地元で採れる厳選食材を使用し、調理過程で起こる食材の変化に科学的視点からアプローチするフランス生まれの「分子調理法」を用いた創作料理から、ハンザ地方の伝統的なレシピによるジャガイモサラダまで、新旧様々な味を展開している。人気メニューは鴨のカリカリ焼きと骨付きイシビラメ。シェフがゲストの目の前でさばき、調理してくれる。

Landhaus Scherrer
12:00~15:00(LO14:30)
18:00~オープンエンド(LO22:30)
日休業 ※予約推奨
Tel: 040-883070030
Elbchaussee 130, 22763 Hamburg
www.landhausscherrer.de
素材本来の味をとことん追求
La Vie
歴史情緒溢れるオスナブリュックの旧市街、市庁舎の真向かいに建つレストランを営むのは、これまでフランス料理界のあらゆる賞を総なめにしてきたドイツきっての名コック、トーマス・ビューナーと、サービスを仕切るスリランカ出身の妻タヤルニ。「グルメな人のメッカ」を謳い、18世紀築の威風堂々たる建物にふさわしい最上級の料理を提供している。「素材の味に適う味はない」と言うビューナーは、食材の味を最大限に引き出すためのレシピを何週間も掛けて考案している。その一例が年々洗練されていく鹿料理で、ソースには調味料を一切使わず、真空パックした肉をぬるま湯で温めて搾り出した肉汁を使うという徹底ぶり。また、肉や野菜は焼くのではなく自家製オイルを使い、低温でじっくり煮込んで味を凝縮させている。こうして完成するコース料理は、異なる料理の寄せ集めではなく、1皿1皿に盛られた素材の味がつながることで奏でられる「極上のシンフォニー」なのだ。

La Vie
19:00~オープンエンド
水〜土12:00~オープンエンド
日月休業 ※予約推奨
Krahnstr. 1-2, 49074 Osnabrück
Tel: 0541-331150
www.restaurant-lavie.de
高級食材を、そっとやさしく調理
bean & beluga
ドレスデンの名店Bülow Residenz で約10年間、修行を積んだ後、料理の極意を探るべく米ニューヨークやスペイン・マヨルカ島などの名店をめぐったシュテファン・ヘルマン。彼が2007年に格調高いユーゲントシュティール建築が特徴の旧カフェBinneberg を改築して開いたレストランは、オープンからわずか5カ月後に星を獲得した。「豆とチョウザメ」という一風変わったレストラン名には、素朴な豆類からキャビアまで、ここではあらゆる食材を堪能できるというヘルマンの想いが込められている。彼のこだわりは、新鮮な高級食材の味を損ねないよう大切に、やさしく調理し、口の中に入れて初めて完成するという型破り のレシピだ。今年3月からは7品のベジタリアン・コースもスタートし、メニューの幅は大きくグレードアップ!レストラン下の地上階には、軽い食事ができるビストロバーとデリカテッセンの店が併設され、星付きシェフ自慢の味を気軽に楽しめる。

bean & beluga
18:30~22:00 日月休業
地上階ビストロバー:
10:00~23:00 日月休業
Tel. 0351-44008800
Bautzner Landstr. 32, 01324 Dresden
www.bean-and-beluga.de
1品1品に遊び心とストーリーを込めて
Villa Merton.
フランクフルトの高級住宅街にあって、瀟洒な佇まいが一際目を引くレストランは、もともと1925年、「グリュンダーツァイト」と呼ばれる興隆期に地元の富豪リヒャルト・メルトンが建てたネオバロック様式の別荘だった。2009年に大々的にリフォームされ、地元のセレブリティーたちから絶大な支持を集めている同レストランを仕切るのは、ワインの選定とサービスを担当する支配人ティーリー・フェルデンと、ズュルト島やシュトゥットガルトの名門で修行した若手シェフ、マティアス・シュミット。地元の食材から世界に通用する味を作り出すため、オリーブオ イルや柑橘類、海水魚など、地元で採れないものは材料リストから省き、代わりにハマナスやブナの実、松の芽、小麦の苗汁など珍しい食材を使って遊び心溢れる独創的な料理に挑戦している。「1品1品にストーリーを込めている」と語るシェフが四季折々の旬な食材で作る料理は、味わう人の目と舌に新鮮な驚きと感動を与えてくれる。

Villa Merton.
12:00~14:00 / 18:00~22:00
土日休業 ※予約推奨
Am Leonhardsbrunn 12, 60487
Frankfurt am Main
Tel: 069-703033
www.villa-merton.de
豊かな自然の中に映えるモダンな新名所
schanz. restaurant.
絵に描いたように美しく長閑な自然と名産のモーゼルワインが、ハイキングやワインの愛好家を惹き付ける町ピースポートに2011年夏、新たな名所が加わった。小さなホテルとワイナリーを営むガブリエル&エーリッヒ・シャンツ夫妻のもとに、長いコック修行の旅を終えた息子トー マスが戻ってフランス料理店を開き、同年秋に早速、星を獲得したのだ。「上質な食材が手に入る場所で作られる料理を志向している」と語る彼のスタイルは、モダン・フレンチ。天然ヒラメやブルターニュ産のオマールえび、トリュフなど、自ら吟味した高級食材の価値を、匠の技と言えるほどに凝った調理を通して最上級にまで高めている。そこへさらに彩りを添えるのが、彼のパートナーであり建築家のブリッタ・ティボが手掛けたレストランの内装。周囲に並ぶ昔ながらの石造りの建物とは一線を画す、ガラスや金属をふんだんに取り入れたスタイリッシュなデザインは、建築物としてだけも一見の価値あり。

schanz. restaurant.
12:00~14:00 / 18:30~21:00
火18:30~21:00
月休業
Bahnhofstr. 8a, 54498 Piesport
Tel: 06507-92520
www.schanz-restaurant.de
無駄のない食事に、最適なワインを
Becker’s Restaurant
古代ローマの遺跡群が壮大な歴史ロマンを感じさせるドイツ最古の町、 トリーアにある高級ホテル内のレストラン。ホテルのオーナー兼レストラン・シェフのヴォルフガング・ベッカーは1997年に先代から経営を継ぎ、妻でソムリエのクリスティーナとともに大改装を決心。そしてついに2011年、伝統的な石造りの建物と無駄を省いたフォルムが特徴のバウハウス様式の建物を融合させたデザイン・ホテルに生まれ変わった。同ホテル内のレストランで味わえる料理は、「意味のないものは皿に乗 せない」とヴォルフガングが断言する通り、無駄な飾りを一切省いた、食材の色が際立つ逸品ばかり。カリフラワーのトルテやあんこうのかぼちゃ・オレンジ・にんじん添えなど、定期的に替わる創作コース料理は8品または5品。それに合わせてクリスティーナが勧めてくれるワインの中には、ぶどう畑を所有するベッカー夫婦が自ら醸造したヴァイスブルグンダーやシュペートブルグンダーも含まれている。(下写真 Fotos: © Becker's)

Becker’s Restaurant
19:00~オープンエンド
日月休業
※予約推奨
Olewiger Str. 206, 54295 Trier
Tel: 0651-938080
www.beckers-trier.de
食材の価値を調理によって完結させる
Amador
工業都市として発展を遂げたライン=ネッカー地域の町マンハイム。そ の工場街の一角にある、旧人形製造工場を改築した建物が同レストランだ。目立った看板はなく、ここがレストランであることを示すのは、重厚な鉄の扉に記された「A」という文字のみ。しかし、無機質なレンガ造りの外観とは対照的に、中には白を基調としたインテリアに赤いアクセントが際立つ近未来的な空間が広がる。同店のシェフ、フアン・アマドールはここで、伝統的なフランス料理に両親の故郷であるスペイン、そしてドイツ料理の要素を織り交ぜたアヴァンギャルドな料理の開発に勤しんでいる。1997年に一つ星を獲得し、2002年に2つ星、08年に三つ星シェフへと昇格したアマドールは、米国のグラント・アケッツや英 国のヘストン・ブルメンタールら世界屈指の料理人たちと評判を分ける実力派。あらゆる食材に関する膨大な量の科学的知識を有する彼が、最新の調理法を駆使して素材の価値を完全なものへと引き上げる。

Amador
19:00~オープンエンド
日月休業
※予約推奨
Floßwörthstr. 38, 68199 Mannheim
Tel: 0621-8547496
www.restaurant-amador.de
世界に名立たるスター料理人のお墨付き
Historisches Eck
「完璧な食事とは何か── それはゲストを幸せにすること」。このポリシーを胸に、同レストランのシェフ、アントン・シュマウスは日々厨房 に立っている。ホテリエを父に持ち、幼い頃から料理人になることを夢 見ていたバイエルン出身のシュマウスは、スイスとスウェーデンの星 付きレストランで急速に頭角を現し、米ニューヨークに乗り込んで、世界に名を馳せるスター料理人、トーマス・ケラーを感服させた。さらに、そのケラーが経営するフレンチの殿堂Per Seで腕に磨きを掛け、2009年、ついに念願叶って地元レーゲンスブルクで独自の店を構えた。ドナウ河畔の古都レーゲンスブルクの大聖堂至近に建つレストランは、アーチ型の天井が重厚感を醸し出す歴史的な建築。グルメ界の最新の流行を取り入れたフュージョン料理から、地中海料理、バイエルンの伝統料理まで、トップクラスのご馳走には、フレンドリーなスタッフたちの笑顔とシェフの愛情というスパイスがよく効いている。

Historisches Eck
12:00~14:00 / 18:00~01:00
日月祝休業
※予約推奨
Watmarkt 6, 93047 Regensburg
Tel: 0941-46524734
www.historisches-eck.de



インベスト・イン・ババリア
スケッチブック

























スイス生まれのパウル・クレーは、20世紀のドイツを代表する画家である。1911年にワシーリー・カンディンスキーと知り合い、表現主義のグループ『青騎士』に参加。20年代には造形学校バウハウスのマイスター、そしてデュッセルドルフ美術アカデミーの教授を歴任するが、ナチスの台頭後まもなく“退廃芸術家”とみなされて国を追われ、1940年にスイスで死去している。 






Tonhalle 
今回、ご協力いただいたのは
バイエルン州の州都ミュンヘンで9月22日、毎年恒例のオクトーバーフェストがいよいよ開幕する。東京ドーム約9個分に相当する広大な会場、テレージエンヴィーゼ(Theresienwiese)に世界中から600万人以上のビールファンがこぞって集まり、ジョッキを片手にあちらこちらで飲めや歌えの大騒ぎ。今回は、ドイツが誇るこの一大イベントを満喫するために抑えておくべきポイントをランキング形式でご紹介しよう。これを読めば、あなたもオクトーバーフェスト通になれるはず!(編集部:浅井 久美子)
ミュンヘンの地ビール
会場内にある14カ所の大テントでは、ミュンヘン市内の6つの醸造所でこのビール祭りのためだけに造られたビールを堪能できる。中でも特にお勧めなのが、高い人気を誇るアウグスティーナー(Augustiner)や、「バイエルン国王のためのビール」として醸造されたという由来を持つホーフブロイ(Hofbräu)、毎年オクトーバーフェストの開会宣言が行われるテント、ショッテンハーメル(Schottenhamel)で飲めるシュパーテン・フランチスカーナー(Spaten-Franziskaner)。その他のビールも、ぜひ試してみて!
祭りを華やかに彩るパレード
初日を飾るのは、ゾンネン通り(Sonnenstraße)を出発点にビール樽を積んだ地元の醸造所の馬車や鼓笛隊などが連なる約1時間のパレード(9月22日11:00頃)。そしてハイライトは、1835年に開かれたバイエルン王ルートヴィヒ1世と妻テレーゼの銀婚式の祝いを起源とする2日目のパレード(9月23日10:00頃)。マキシミリアン通り(Maximillianstraße)からオクトーバーフェスト会場までを、華麗な民族衣装に身を包んだ大勢の人々と40以上の豪勢な山車、鼓笛隊が、約2時間掛けて練り歩く。
場を盛り上げるライブ音楽
大テントの1つ、ブロイローズル(Bräurosl)のテントには、民族音楽を代表する5人組のバンド、ズードティロラー・シュピッツブアム(Südtiroler Spitzbuam)が登場。ユニークなデザインのテントが目を引くヒッポドローム(Hippodrom)では、オクトーバーフェストでお馴染みのバンド、ミュンヒナー・ツヴィートラハト(Münchner Zwietracht、右写真)らが伝統的な音楽でテント内を賑やかに演出する。9月30日11:00頃からは、女神バヴァリア像の下で複数のバンドによる盛大な民族音楽のコンサートが開かれる。
ビールと共にいただく伝統料理
オクトーバーフェストを訪れる最大の目的は、もちろんビールを飲むこと。しかし、飲んでいるだけではお腹が空くし、せっかくミュンヘンに来たのなら、バイエルンならではの料理もビールと共に味わいたい。各テントは、当地特産の白ソーセージ(ヴァイスヴルスト、Weißwurst)や、ボリューム満点の豚のすね肉(シュヴァインスハクセ、Schweinshaxe)、そしてオクトーバーフェストには欠かせない名物料理である鶏の丸焼き(ヘンドル、Hendl)など、こてこてのバイエルン料理をたっぷり堪能できる食の宝庫だ。
大はしゃぎできる乗り物・アトラクション
老若男女がとことん楽しめるプログラムとして、オクトーバーフェストには遊園地の乗り物・アトラクションも欠かせない。祭り会場を一望できる大観覧車(Riesenrad)や、50年以上オクトーバーフェストで愛され続けているミュンヘン・ツークシュピッツ鉄道(Münchner Zugspitzbahn)のほか、8月に開催されたロンドン五輪の余韻に浸れそうなジェットコースター、その名も「オリンピア・ルーピング(Olympia Looping)」などの絶叫マシーンも充実。ただし、ビールで酔った勢いで乗り物に向かうことは避けて!
民族衣装を着てみる
皆と一緒に乾杯の歌を歌ってみる






