Hanacell
特集


フォトコンテスト2014 受賞者発表!

独・仏・英 ニュースダイジェスト主催
フォトコンテスト2014
受賞者発表 !

既に遠い記憶となりかけた思い出が、まざまざとよみがえってくる。
いつも見慣れているはずの何げない光景が、違った輝きを見せる。
海外生活を送る独・仏・英ニュースダイジェストの読者の皆様と、
写真を撮ることの楽しさを共有したいとの願いから始まった
フォトコンテストは、4回目を迎えました。
今年も力作がそろった数々の写真の中から、受賞作品を発表いたします。

マチュア部門大賞

「アリゾナの夕焼け」
ルグラン 青木祐子 さんフランス

「アリゾナの夕焼け」 ルグラン青木祐子さん

まさか自分の作品が大賞に選ばれるなんて、初めて知らせを聞いたときには信じられませんでした。本当にうれしいです。この写真は2014年8月に米国アリゾナ州セドナ市で開催されたツアーに参加したときに撮りました。スピリチュアルな場所なので、そうした特別な雰囲気が感じられるよう背景を意識してシャッターを押したことを覚えています。また重いカメラを使用していたので、カメラを落としてしまわないように気をつけました。写真のモデルとなったツアー・ガイドのサラさんが、大自然と一体になって写っているところが気に入っています。

審査員コメント旅の思い出を扱った主題が秀逸です。写真に写った光が美しい。構図のバランスもきちんと取れています。さらに、夕陽を眺めている被写体がつくり出す、何とも言えない雰囲気が素晴らしいと思います。雰囲気を写真で捉えるというのは、非常に難しいですよね。世の中には「雰囲気を捉えた写真」が確実に存在するにも関わらず、どうすればそのような写真を撮ることができるかを説明するのは難しい。どんな雰囲気を残したいのか、その雰囲気を捉えるためにはどんな構図にすればいいか。それを考えながら、何度も撮り続けるしか他に方法はないのかもしれません。 by Canon Europe

キッズ部門大賞

「妹」
クネル翔音 さん(10歳)フランス 

「妹」クネル 翔音 さん(10歳)

今年の夏、インドネシアのバリ島の海岸で散歩をしていたときに、妹が気持ち良さそうに海岸を走っていたので、写真を撮りました。その際に心掛けたのは、太陽の光がカメラのレンズの中に入りすぎないようにすること。出来栄えとしては、妹が「走っている」という感じをよく捉えることができたと思います。私が写真を撮るときに普段使用しているのは、お母さんが昔使っていたカメラ。来年の夏は日本に行く予定なので、日本でしか撮ることのできない、日本らしい写真をいっぱい撮りたいです。

審査員コメント子供が楽しそうに遊んでいる姿をうまく捉えていますね。何よりも海に反射する光が美しい。空と海をバランス良く入れ込んだ構図も素晴らしいです。前方には走る子供と太陽の光の反射、中央やや後方に波、そして遠景には水平線と空。よく見れば、この写真は幾つもの異なる層によって構成されていることが分かります。遠方まで広がる景色を撮る際には、前方に何を置くかが重要です。前方に何もなければ、退屈な写真になってしまう恐れがあるからです。本作品は、遠くの景色と前方のモデルのバランスが取れたまさにお手本のような写真ですね。by Canon Europe

マチュア部門特別賞

「ラベンダー畑」
稲葉政文 さんイギリス 

「ラベンダー畑」稲葉政文さん

8月下旬にロンドン郊外サットンのラベンダー畑に出掛けたときに撮影した写真です。ラベンダー自体は既に花が枯れているものが多く、満開とはいきませんでしたが、天気が良くて暖かい日の光がちょうど良い具合に入ってきました。娘が動き回るので、いろいろなことに気を遣う時間はありませんでしたが、とにかく構図だけには気をつけて、娘、花、そして空がうまく収まるよう心掛けました。娘の服装がラベンダー畑にマッチしているのと、不思議そうに自分の手を見つめているところが自分でも気に入っています。

審査員コメント写真に写っている子供の顔に注目してください。子供がカメラのレンズではなく、ほかのものに興味を示している瞬間を捉えたという点にこの写真の最大の特徴があります。周囲のものに多大な関心を払っているということが如実に分かる表情ですね。画面に縦と横をそれぞれ3分割する線を設定し、その線が交わる点上に被写体を置くという「3分割法」に則った構図も完璧です。また子供と同じ低い視点から撮影しているという点にも工夫を感じます。こうして低い位置で撮るというのは、写真に「気持ち」を吹き込みたい場合に有効なテクニックです。 by Canon Europe

「もしもし こちらアザラシ」
一柳絵美 さんドイツ

「もしもし こちらアザラシ」一柳絵美 さん

9月にヘルゴラント島という北海に浮かぶ小さな島を訪れた際、海岸沿いで何十頭もの野生のアザラシが、気持ち良さそうに昼寝をしている姿を目にしました。その中に、寝ぼけまなこで電話に出ているかのような格好の1頭を発見。あまりの可愛らしさに感激し、その表情を逃すまいと、できるだけズームインして、たくさん撮影したうちの1枚がこの写真です。受賞できるとは全く考えていなかったので、とてもうれしいです。動物が好きなので、これからも自然な表情を浮かべる動物の写真を撮っていきたいと思います。

審査員コメント野生動物の一瞬の動きを捉えており、タイトルとマッチした、ユーモラスでインパクトのある作品だと思います。アザラシののんびりした表情や、「もしもし?」と電話をしているかのような可愛らしいしぐさ。しかし、その首の傷跡からは野生生活の厳しさが垣間見られます。このアザラシの人生までも写し出しているかのようです。今回の応募作品には、ポストカードになりそうな奇麗なものが多かったのですが、その中で最も動きを感じられる作品でした。「もしもし?」の後に続くアザラシの言葉が何であるかは、見る人の想像力によって違ってくるのでしょうね。 by Steigenberger Frankfurter Hof THE SPA

「白鳥の湖」
ジャンフランソワ・ジェニー さんフランス 

「白鳥の湖」ジャンフランソワ・ジェニー さん

娘の夏休みを利用し、7月下旬に家族皆でマレーシアにて夏のヴァカンスを過ごしました。クアラルンプール滞在中にバード・パークに行き、そこで数羽の水鳥が湖上に浮かんでいる姿を見て、あまりの美しさに魅了されシャッターを切りました。それぞれの水鳥の動きが異なるので、全体のバランスを取り、優雅な雰囲気が表現できるように気を付けました。チャイコフスキーの「白鳥の湖」を連想し、あたかもダンスをしているかのような水鳥の姿が美しく撮れたところが気に入っています。これからは言葉では表現できない自然の美しさを撮りたいと思っています。

審査員コメントどこにでもあるような池の風景ですが、そこに鏡のように池に映り込んだ自分を見ている右上の水鳥の姿が印象的です。経済、宗教、人種間での民族主義の台頭、さまざまな理由で少しずつ世の中がまたおかしくなりつつあるのを実感する時代となりました。そんな時代にあって、この一つの限られた空間の池の中で、いろいろな方向を向きながら、群れの中で睦まじく暮らす一家。そして鏡のように自分に問い掛けている一羽の鳥を見て、一つのメッセージを含む写真なのでは?と感じました。自分の子供たちの次の世代が平和であればいいのですが。 by GUILOGUILO

「Trackstand」
斉藤真大 さんイギリス

「Trackstand」斉藤真大 さん

入賞という思いもよらない結果に驚いたと同時に、うれしい気持ちでいっぱいです。この写真は、夏休みに友達が僕の住む町に来て、自転車に乗ったり、写真を撮ったりしながら遊んでいたときに撮影したものです。自転車の骨組みと、背景と人物のバランスを考え、友達がかっこよく見えるように撮ろうと心掛けました。友達をいつもよりずっとかっこよく撮れたことがうれしかったです。普段から一眼レフカメラで風景や人々を、またスクーターやスケートボードの動画を撮ったりしています。今後はスポーツに関する写真と動画をもっと撮りたいです。

審査員コメントグレーの地面と茶色いレンガの背景が、主人公の青年と自転車をくっきりと、そして鮮やかに引き立てており、構図の取り方も絶妙です。さらに手前の最下部において水平に引かれたラインによって、写真の奥行きと立体感が強まっていると思います。全体の落ち着いたトーンに、庭の花木の色合いがほのかなスパイスとして加わっているあたりにもセンスを感じますね。曇り空の下に広がる何げない日常を、柔らかく、そして温かく感じることができる1枚です。 by 宝酒造株式会社

キッズ部門入賞

「秋のコロッセウム」
今村颯輝 さん(11歳)ドイツ 

「秋のコロッセウム」 今村颯輝 さん

10月12日にクサンテンという町で撮った写真なのですが、雲一つない天気で気持ち良い日でした。そのとき、コロッセウムの中をおばあさんが孫を連れて歩いていたのです。日本にいる祖母とは今は遠く離れているので「おばあちゃんと散歩できていいな」と思いながら撮りました。僕は高いところが好きなので、高い位置から撮ろうと、自分の視線より高く撮れるよう手を頭の上まで伸ばしてコロッセウム全体が入るようにしました。普段、写真を撮るのは家族で出掛けて気が向いたときくらいです。ドイツでは、日本にはない建物や風景を撮りたいと思っています。

審査員コメント広いコロッセウムの中で、おばあさんとその孫と思われる2人が仲良く手をつないで歩いている姿が、とてもほのぼのとしていて印象に残りました。撮影された方は、この写真に写った2人のように、コロッセウムの真ん中に家族と一緒に立ったらどんなに楽しいことがあるだろう、果たしてどのような景色が見えるのだろう……と、きっといろいろなことを想像しながら撮ったのではないかと思います。写真を通じて家族の絆を感じさせてくれたところが、入賞作品として選んだ決め手となりました。 by Paris Miki International GmbH

キッズ部門入賞

「猫ちゃんは可愛かった」
伊藤雅珠 さん(6歳)フランス

「猫ちゃんは可愛かった」伊藤雅珠 さん

この写真は、学校の帰りに仲良しのお友達と公園に行ったときに撮ったものです。お友達がダイジェストのコンテストに応募するというので一緒に応募したくてお花をたくさん撮っていたら、猫ちゃんが来て、可愛かったので撮りました。自由にしている猫ちゃんを撮りたかったので、そこを注意して撮りました。猫ちゃんのポーズと目の表情が気に入っています。使ったのはママのカメラ。普段は貸してもらえないけれど、このときは応募したくてお願いをして貸してもらい、たくさん撮ることができました。本当はもっともっと毎日撮りたいです。

審査員コメントまず、猫の意志のある目が良いと感じました。大人だとなかなかこのような構図は撮らないのではないでしょうか。子供だからこそ撮れた写真であり、そのときの雰囲気がよく伝わる、とても素敵な写真です。今回の応募のために、お母さんからカメラを借りて写真を撮ったということですが、せっかく入賞されたので、これからも続けて写真を撮っていただきたいですね。周りにあるさまざまなものをよく観察し、そのときにしかない時間を写真に残していってください。これからのますますの成長を応援しております。 by BOOK OFF

キッズ部門入賞

「雨の日のクモの巣」
ヘインズ朋樹 さん(7歳)イギリス 

「雨の日のクモの巣」」ヘインズ朋樹 さん

僕の写真が入賞したことを、お母さんから教えてもらいました。とてもびっくりしましたが、うれしいです。写真を撮ったのは、学校から帰る途中の道。雨がやんだ後にできたクモの巣にたくさん付いている水滴とクモを見つけました。クモが逃げてしまわないように、そしてクモの巣や木に触って水滴が落ちないように気をつけました。きれいな形をしたクモの巣に、水滴がキラキラ光ってきれいなところを上手く撮ることができたと思います。普段は家族、旅行の風景、庭の鳥や花、自分で作ったレゴや絵の記録を撮るのが好きです。これからは動物も撮りたいと思っています。

審査員コメントまるで宝石のように光る雨滴と、カラフルなクモの存在感が際立っています。またクモの巣の背景に広がる緑いっぱいの自然が、手前に見える雨水の瑞々しさとクモの生命感をより一層引き立てているようにも思えます。暗くそして雨続きであるがゆえに、ともすると陰鬱な気分になりがちな英国特有の天気の中で、日常的な風景の中からこのような美しい自然を発見してしまう子供らしい視線が素晴らしいと感じたため、入賞作品として選ばせていただきました。 by JP Books

審査員総評

今年も水準の高い作品がそろいました。本コンテストは今年で第4回を迎えましたが、作品の水準が回を追うごとに向上していくのがはっきりと分かります。このため、秀作ぞろいの応募作品の中から大賞や入賞作品を選び出すという作業も年々難しくなってきており、審査員も頭を悩ますことが次第に多くなってきました。一例を挙げますと、本コンテストにおいては、これまで被写体を反射的に撮影したいわゆるスナップ写真が応募作品の中に多く見られました。ところが今回集まったのは、構図を練ったり、タイミングを計ったりと撮影に時間を掛けたとうかがえる写真ばかり。またカメラの機能が進化していることも、作品の水準が高まっていることの一因となっているのかもしれません。一方で、写真を撮影する際にその出来栄えを左右するのはカメラの機能ではなく、あくまでも撮影者の腕です。一体どんな写真を撮りたいのかを自身に問い掛けながら撮るのが、写真撮影を上達させるためのコツと言えます。 by Canon Europe

From News Digest

仏・英・独のニュースダイジェスト主催フォトコンテスト2014に数多くのご応募をいただきまして、誠にありがとうございました。本企画は、読者の皆様からの参加に大きく依存する構成となっております。大切な思い出を写した写真を共有していただいた応募者の方々、またお忙しい中、コメントの提供などご対応いただいた大賞・入賞受賞者の方々、そして賞品を提供してくださったスポンサー企業の皆様に、社員一同、心より感謝申し上げます。

当選までの流れとしましては、例年と同様、まずはニュースダイジェスト社内で一次審査を実施。「審査員総評」でも紹介されていましたが、今年は各作品とも非常に凝ったものが多く、一次審査から難航しました。その後、各国審査員による最終選考を実施。大賞作品、審査員特別賞作品、各国入賞作品が決定しました。  

応募作品の中には、プロの手によるものと見紛うほどの高い水準に達した写真が数多くありました。一方で、実際に写真撮影の仕事を経験された方というのはほとんどいらっしゃらなかったようです。受賞後の感想をうかがった大賞・入賞の受賞者の方々が、口をそろえたように「まさか自分が受賞するとは思ってもみなかった」と仰っていたのが印象的でした。また受賞者の皆様は、普段から写真を撮るのが好きという方が多かったようです。撮ることにはそれほど自信はないけれども、写真展に行くのが好きと仰る方もいらっしゃいました。「好きこそものの上手なれ」という言葉の意味を、再認識したような気がします。

受賞者と賞品

    マチュア部門

  • 大賞: ルグラン 青木祐子さん
    Canon Europeより Canon EOS 100D Digital SLR Camera
  • マチュア部門特別賞: 稲葉政文さん
    Canon EuropeよりCanon PIXMA MG6450
  • 英国入賞: 斉藤真大さん
    宝酒造株式会社より清酒・焼酎・みりんのセット(200ポンド相当)
  • ドイツ入賞: 一柳絵美さん
    Steigenberger Frankfurter Hof より THE SPAのご利用券(250ユーロ相当)
  • フランス入賞: ジャンフランソワ・ジェニーさん
    新割烹のレストランGUILOGUILOよりお食事券 (200ユーロ相当)
  • キッズ部門

  • 大賞: クネル翔音さん
    Canon EuropeよりCanon IXUS 145
  • 英国入賞: ヘインズ朋樹さん
    JP Booksよりバウチャー(50ポンド相当)
  • ドイツ入賞: 今村颯輝さん
    Paris Miki International GmbH より 「Ray-Ban」キッズ用サングラス(70ユーロ相当)
  • フランス入賞: 伊藤雅珠さん
    BOOK OFFよりバウチャー(60ユーロ相当)

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最終更新 Freitag, 05 Dezember 2014 10:24
 

ベルリンの壁崩壊から25周年、記念式典開催

ベルリンの壁崩壊から25周年

ベルリンの壁崩壊から25周年東西冷戦の象徴だった「ベルリンの壁」 が1989年に崩壊して、今年で25周年を迎えた。

四半世紀前、世界は東と西、共産主義圏と資本主義圏に分かれ、今とは異なる国境が世界地図の上に引かれていた。その境界が引き直されるという劇的な変化を経験した20~40代の世代に、それぞれのパーソナルヒストリーを話していただいた。

旧東ドイツ市民の生の声を通して、ベルリンの壁崩壊の歴史的瞬間を振り返る。
(インタビュー・構成:見市 知)


ヨアヒム・ガウク牧師が率いるデモに参加

キルステン・ヘルマンさん (1972年生まれ、当時16歳)
Kirsten Hermann

スタイリスト・ギャラリー経営者 / 当時ロストック、現ベルリン在住

キルステン・ヘルマンさんベルリンの壁が崩壊したというニュースを耳にしたとき、私の頭の中は空っぽになり、ただただ泣くことしかできませんでした。16歳の高校生の目から見たとき、東ドイツは自分の意見を人前で言うことに不安を感じたり、たとえ良い成績を挙げても大学に進学できなかったり、西ドイツにいる親戚を自由に訪ねることができなかったり……という社会でした。そういったことから解放され、いきなり新たな世界が私の目の前に広がったのです。

忘れられない思い出は、ベルリンの壁崩壊前の10月19日、ロストックで当時反体制派の牧師だったヨアヒム・ガウク氏(現連邦大統領)が指揮するデモに、友人たちと一緒に出掛けたことです。しかし、そのとき友人の1人がデモに参加することを直前になって躊躇しました。彼はその少し前に、西ドイツに住む祖母を訪ねるために当局に出国申請を出したばかりだったんですね。私ともう1人の友人は彼を説得しました。「今一緒に来れば、もうすぐ出国申請を出す必要はなくなるんだ。自分たちの行きたいところへ行き、住みたいところに住めるようになるんだよ」ってね。そして、ロストック市内のシュタージ(秘密警察)本部へ向かって行進したのですが、途中、通りに面した家々の窓に、デモへの賛同を示すロウソクの灯りがきらめいていたのを覚えています。

個人的には、東西ドイツ統一によって生じた「良いこと」の方が多く思い浮かびますが、今もロストックにいる友人知人の中には現状に不満を感じ、東ドイツ時代を懐かしむ人たちが少なくありません。しかし私は、そんな彼らとも心情的に通い合うものがあります。あの時代をともに経験した人にしか通じない「共通言語」があるんですよね。


壁が崩壊したとき、生まれて1日目だった

マクダレーナ・ブレーデマンさん(1989年生まれ、当時0歳)
Magdalena Bredemann

NPO職員 / 当時ドレスデン、現ライプツィヒ在住

マクダレーナ・ブレーデマンさんベルリンの壁が崩壊したとき、何を真っ先に考えたかですって? 私は、生まれてから1日しか経っていなかったんですよ。だから、あまり多くのことを考えることはできませんでした(笑)。

東ドイツのことについて聞かれても、私自身は体制が崩壊する前のたった1日しかそこに生きていなかったわけですから、人から聞いた話や本、メディアを通して得た知識でしか話せないのです。ですから、東ドイツの歴史について、たやすく断罪するようなことはしたくありません。

ただ、もし今もベルリンの壁があり、自分が東ドイツに暮らしていたとしたら……。旅行や言論の自由がない社会、個人的にも様々な制約がある中で生きなければならないのだと考えると、ぞっとしますね。

今、私は自分がどこへ向かうのかを自分で決められる社会、そして次の瞬間にもそれをフレキシブルに変更することができる社会に生きているわけで、そのことに対しては大変な満足感を覚えています。


国境や制約から解放され、自由に生きる幸せを感じる

クリスティアン・メアシュテット=ベルレットさん
Christian Meerstedt-Berlet(1979年生まれ、当時10歳)

イベント設営技師 / 当時ポツダム、現ベルリン在住

クリスティアン・メアシュテット=ベルレットさんベルリンの壁が開いた日のことは、実はよく覚えていません。ただ、翌日学校へ行ったら、欠席しているクラスメイトが何人もいました。後で聞いたら、皆家族で西ベルリンへ出掛けていたようです。当時、僕はベルリンの壁があること、その向こうに別の国があることは知っていました。そして、その国を訪れることができないということも。

初めて西ベルリンを訪れたときのことは、よく覚えています。スーパーマーケットに溢れる色とりどりの商品、マクドナルド……。それらを見たときのワクワクするような感覚は、その後、大人になってから初めてニューヨークを訪れたときにも覚えました。

東西ドイツ統一直後、僕の両親は失業し、3人の子どもを抱えて新たな仕事を探さなければならず、苦労したようです。しかし当時、僕ら子どもたちはそんなことを知らずにいました。ぜいたくな暮らしはできなかったけれど、何ら不足を感じたことはありません。

今の自分が当時の東ドイツに生きていたとしたら……。体制に反発を覚えてシュタージに監視されていたんじゃないかと思います。それに僕はテクノ音楽が好きなので、東ドイツで禁止されていたテクノのコンサートに出掛けて行って、問題を起こしたんじゃないかな。でも、家族を置いて西ドイツへ行こうとはしなかったと思いますね。

今、僕はベルリンの旧西エリアに住んでいて、毎日のように旧国境を越えて旧東エリアにある会社に通っています。僕の妻は旧西ドイツのケルン出身です。このように、かつてあった国境や制約から解放されて自由に生きられることを幸せに感じます。


旧東の失業問題は、今に至るまで深刻な問題

クリスティアーネ・ザイドラーさん(1969年生まれ、当時20歳)
Christiane Seidler

公務員(年金局勤務) / 当時ロストック、現エッセン在住

クリスティアーネ・ザイドラーさん家で両親とテレビを観ていたら、急にベルリンの壁崩壊のニュースが飛び込んできたのを覚えています。最初は信じられませんでしたね。それから、そのことが事実だと分かった後も、すぐに当局が軍事力を行使して事態をひっくり返すのではないかと思いました。

実感できるようになったのは、西側へ旅行できるようになったり、東ドイツ時代には見掛けることのなかったバナナが手に入るようになった頃からでしょうか。1年後には、自家用車をトラバントから日産に買い換えました。

当時、私は国営企業に勤めながらアビトゥア(大学入学試験)を受験していたのですが、私の勤めていた会社もその他の国営企業と同様、東西ドイツ統一によって閉鎖を余儀なくされました。私は運良くそのタイミングで大学に進学できましたが、多くの同僚が失業し、その中には再就職先を見付けられた人もいれば、方向性を見失ってしまった人もいました。失業問題は当時から今に至るまで、旧東ドイツ地域の深刻な問題なのです。

その後、私は年金局に就職し、15年来ノルトライン=ヴェストファーレン州のエッセンに住んでいます。旧東ドイツ出身の私が旧西ドイツで暮らしているわけですが、疎外感を感じることはありません。ここは人々の気質が開放的で暮らしやすく、気に入っています。

もし今もベルリンの壁があって、あのまま東ドイツで暮らしていたとしたら? 今も同じ国営企業で働いていたかもしれません。極めて地味な発想ですが、ほかに選択肢がないというのは、つまりそういうことなのです。社会主義国家の中で、淡々と暮らしていたのかな……と思います。

 

1989年の歴史的場面をたどるスポット

ボルンホルマー通り最初に開いたベルリンの壁
ボルンホルマー通り(Bornholmer Str.)

1989年11月9日に開かれた記者会見の席で、ギュンター・シャボウスキー政治局員が東ドイツ市民に対して旅行の自由を認めることを発表。「いつからですか?」という記者の質問に対し、「私の認識では今すぐ、即座にだ」と回答。この発表を受けて多数の東ベルリン市民が国境検問所に押し寄せた。当局からの正式な指令を待たずに、ボルンホルマー通りの検問所が開いたのが22:30。これに続いて、ほかの検問所も開放された。

ヤノヴィッツ・ブリュッケ28年間閉鎖されていた「幽霊駅」
ヤノヴィッツ・ブリュッケ
(U8 Jannowitzbrücke)

ベルリンの地下鉄U6とU8は、西を出発して東を抜け、また西へ出るという路線。これが東西分断時代は西ベルリンの地下鉄として使われていた。東エリアにある地下鉄駅はすべて閉鎖され、この区間を電車はノンストップで通り過ぎていたのだという。そんな不気味な経緯のある「幽霊駅」の中でもU8のヤノヴィッツ・ブリュッケ駅は、ベルリンの壁崩壊2日後の11月11日には東から西に行く際の駅として、いち早く復活した。

ライプツィヒ・ニコライ教会平和革命を起こした教会
ライプツィヒ・ニコライ教会(Nikolaikirche Leipzig)

ベルリンの壁崩壊への大きな流れを作った民主化要求デモは、ライプツィヒから始まった。もともとは1980年代からニコライ教会で行われていた毎週月曜日の「平和のためのお祈り会」が、デモへと発展していったという経緯がある。ベルリンの壁が開く1カ月前の10月9日には約7万人が参加し、市街を埋め尽くした。教会の入り口スペースでは、民主化要求デモに至る同教会の歴史を紹介するパネル展示が行われている。

ベルナウアー通りオリジナルのベルリンの壁
ベルナウアー通り(Bernauer Str.)

東西分断当時のままの壁が残る場所がベルナウアー通り。ここを訪れると、大概の人が「ベルリンの壁って意外に低かったんですね」という印象を口にする。「死の立ち入り禁止地帯(Todesstreifen)」を挟んで立つ二重の壁は、東側が約3メートル、西側が3.6メートルの高さ。棒高跳びの選手なら乗り越えられそうな気がする。しかし、東西分断の象徴として「半永久的にそこにあるだろう」と人々に思わせた威圧感の名残りを、ここでは感じられる。


1989 年「壁崩壊」までの流れ

5月2日

ハンガリー政府がオーストリアとの国境に設けていた鉄条網の撤去を開始。この頃、東ドイツから当局に正式な出国申請を行っていた待機者の数は10万人以上。夏休みの始まりとともに、ハンガリー、オーストリア国境経由で西ドイツを目指す人の流れが加速。

9月10日

ハンガリー政府が東ドイツ市民に対しても、オーストリア国境を正式に開放。これを受け、東ドイツ市民に対してチェコからハンガリーへと抜ける国境通過が禁止される。9月末には、1万人に上る東ドイツ市民が出国を求めてプラハの西ドイツ大使館を占拠。

10月17日

東ドイツのエーリッヒ・ホーネッカー書記長が退任。後任にはエゴン・クレンツ氏が就任。東ドイツ各地で自由選挙と反体制派の容認、旅行の自由を求めて数十万人がデモを実施。

11月9日

東ドイツ当局が市民に対し、「旅行の自由」を認めると発表。ベルリンの壁が崩壊。
※東ドイツ市民に対しては当時、チェコやハンガリー、ポーランドなど旧共産圏諸国への旅行は、一定の条件下で認められていた。


最終更新 Freitag, 21 November 2014 16:41
 

ドイツ国内外のクリスマスマーケットを巡る

ドイツのスイーツを味わおう 素朴な美味しさに舌鼓

ドイツ国内外のクリスマスマーケットを巡る

間近に迫ってきたクリスマスシーズン。
町が徐々にクリスマスのデコレーションで
美しく彩られていくのと同時に、
人々の胸もいよいよ高鳴ってくる頃だろう。
そう、夜空の星が地上に舞い降りたかのように
キラキラと光り輝くクリスマスマーケットが、
まもなく始まるのだから……。

恒例のクリスマスマーケット特集。
今年はドイツ国内のみならず、
いつもとはひと味違った
体験をしてみたいという方にお勧めの、
近隣諸国のマーケットもご紹介します。
気になる場所をチェックして、
今年も冬一番のお楽しみを思う存分堪能しよう。
(編集部: 山口 理恵)

ドイツ近郊のクリスマスマーケット

1Valkenburg オランダ

洞窟内で未体験クリスマス
Kerstmarkt Fluweelengrot 2014

Kerstmarkt Fluweelengrot 2014アーヘンから車でおよそ30分の場所に位置する町ファルケンブルフ。年間を通して観光客が訪れるルーインズ城跡には、クリスマスシーズンも訪問者が絶えない。彼らの目的は、城跡の下に広がる「ベルベットの洞窟(Velvet Cave)」に立つクリスマスマーケット。そこには、日常の喧騒を忘れさせる幻想的なクリスマスの世界が広がる。迷宮のような洞窟を道なりに進むその先には50以上のスタンドが並び、途中には休憩ができるカフェなどもある。

11月14日(金)~12月23日(火)
日~木10:00~19:00 金土10:00~21:00
12月23日10:00~18:00 
入場料: 大人5ユーロ 5~11歳3ユーロ 
4歳以下無料
Daalhemerweg 27, 6301 BJ
Valkenburg aan de Geul
www.kasteelvalkenburg.nl

2 Brussels ベルギー

この時季限定のアミューズメントパーク
Brussels Winter Wonder

Brussels Winter Wonder英国のツアーガイドたちが「欧州一個性的なマーケット」に選んだブリュッセルのクリスマスマーケット。全長2kmにも及ぶマーケット・ストリートには、移動遊園地や大観覧車、スケートリンク、そして200以上のスタンドが立ち並び、まさに街中に出現した巨大エンターテインメント空間といったところ。屋台では、ベルギーの郷土料理やアツアツのワッフルなどが堪能できる。一番の見どころは、世界遺産のグラン=プラス広場(Grand-Place)で行われる音と光のショー。

11月28日(金)~1月4日(日)
12:00~21:00 金~22:00 
土日11:00~22:00
the streets of Bourse, Marché aux Poissons,
Place St. Catherines
http://visitbrussels.be/bitc/BE_en

3 Strasbourg フランス

名実ともに欧州一のマーケット
Capitale de Noël

Capitale de Noëlライン川を挟み、バーデン=ヴュルテンブルク州ケールの向かいに位置する町ストラスブール。この時季、小さな木組みの家々はオーナメントやイルミネーションで美しく飾られ、まるでメルヘンの世界のよう。1570年以来続く、伝統あるここのマーケットは、世界の旅行者約5万9000人を対象に調査された、2013/14年度の「欧州で最も美しいクリスマスマーケット」ランキングで見事1位の座を獲得した。市内11カ所のマーケット会場はすべて徒歩圏内。

11月28日(金)~12月31日(水)
9:00~19:00
Place de la Cathédrale,
in the train station, Parc de l'Étoileほか
www.noel.strasbourg.eu

4 Basel スイス

都会ながらも郷土色溢れるマーケット
Basler Weihnachtsmarkt

Basler Weihnachtsmarktロマンチックな雰囲気漂うバーゼルには、旧市街を中心に2つのマーケットが立つ。11月27日のオープニング(18:30~)では、市長の合図で街中のイルミネーションが一斉に点灯され、一瞬にしてクリスマスムードに包まれる。マーケットの各スタンドには手工芸品やキャンドル、オーナメントなどがところ狭しと並び、スープやラクレット(溶かしたアツアツのチーズに、茹でたじゃがいもなどを絡めて食べる)、キッシュなど、スイスならではの食べ物も提供される。

11月27日(木)~12月23日(火)
11:00~20:00
Barfüsserplatz, Münsterplatz
www.basel.com/en/event/christmas-market

5 Wien オーストリア

音楽の都で過ごす聖なる夜
Wiener Christkindlmarkt

Wiener Christkindlmarkt毎年300万人が訪れて賑わう当地のクリスマスマーケットの歴史は、1296年に神聖ローマ帝国の君主アルブレヒト1世が、商人に12月のマーケット開催の許可を与えたことにさかのぼる。現在のマーケットは、市庁舎前に設置されるクリスマスツリーを中心に、革製品や工芸品、食べ物の屋台など、約150のスタンドが並ぶ。期間中は子どもたちのためのワークショップも開催され、市庁舎内でクッキーやクッションカバー作りなどが体験できる(詳細は下記ウェブサイト参照)。

11月15日(土)~12月24日(水)
10:00~21:30、金土10:00~22:00、
12月24日10:00~17:00
Am Wiener Rathausplatz
www.christkindlmarkt.at

6 Prague チェコ

世界遺産の地で味わう伝統のクリスマス
Vánoční trhy Praha

Vánoční trhy Prahaマーケットが開かれるのは、旧市街広場やヴァーツラフ広場、ハヴェル市場など世界遺産に登録されている歴史地区内。旧市街広場のマーケットには、チェコ共和国最高峰のクルコノシェ山から運ばれたもみの木が設置され、毎日17:00には明かりが点灯し、古都プラハの夜を幻想的に照らし出す。スタンドでは木工民芸品やボヘミアガラスなど、チェコの伝統製品が販売され、名物の焼菓子トゥルドゥロやチェコビールの屋台も登場する。

11月29日(土)~1月11日(日)
10:00~22:00
Old Town Square, Wenceslas Square,
Havel's Marketほか www.pragueexperience.com/events/

ドイツ国内のクリスマスマーケット

  • 7Rostock

    北ドイツ最大、圧巻のマーケット
    Rostocker
    Weihnachtsmarkt

    Rostocker Weihnachtsmarkt 11月24日(月)~12月22日(月)
    10:00~20:00 金土10:00~21:00
    日11:00~20:00
    サンタクロース来場:
    11月29日14:00(Stadthafen)
    Neuer Markt, Kröpeliner Tor, Stadthafen
    www.rostocker-weihnachtsmarkt.de
  • 8Hamburg

    港町がクリスマス一色に染まる
    Weihnachtsmärkte
    in Hamburg

    Weihnachtsmärktein Hamburg Rathausmarkt, Mönckebergstraße周辺, Jungfernstieg, Santa Pauli,
    an der St. Petri Kirche, Gänsemarktほか
    期間、会場などの詳細は下記ウェブサイト参照
    www.hamburg-tourism.de


  • 9Berlin

    市内各所に立つ個性的なマーケット
    Weihnachten 2014
    in Berlin

    Weihnachten 2014in Berlin Alexanderplatz, Gendarmenmarkt,
    Vor dem Roten Rathaus, Altstadt,
    Schloss Charlottenburgほか
    ※期間、会場などの詳細は下記ウェブサイト参照
    www.weihnachteninberlin.de

  • 10Hannover

    フィンランドのクリスマスも体験できる
    Weihnachtsmarkt
    in Hannover

    Weihnachtsmarktin Hannover 11月26日(水)~12月22日(月)
    11:00~21:00
    11月28日~12月22日:
    フィンランドのクリスマス村(Ballhofplatz),
    Altstadt, Am Hauptbahnhofほか www.hannover.de/Tourismus
  • 11 Magdeburg

    露天風呂が出現するマーケット
    Magdeburger
    Weihnachtsmarkt

    Magdeburger Weihnachtsmarkt 11月24日(月)~12月30日(火)
    11:00~22:00 Alter Markt, Rathaus前
    ※風呂は予約制
    (定員10人、Tel: 0391-5418923)
    www.weihnachtsmarkt-magdeburg.de

  • 12 Bielefeld

    赤い小屋が連なるロマンチックな空間
    Bielefelder
    Weihnachtsmarkt

    Bielefelder Weihnachtsmarkt 11月24日(月)~12月23日(火)
    12月27日(土)~12月30日(水)
    11:00~21:00 金土11:00~22:00
    Alter Markt, Stresemannstraße,
    Bahnhofstraße, Süsterplatzほか
    www.bielefeld.de
  • 13 Dortmund

    高さ45mの巨大ツリーが目印
    Dortmunder
    Weihnachtsmarkt

    Dortmunder Weihnachtsmarkt 11月20日(木)~12月30日(火)
    10:00~21:00
    金土10:00~22:00 / 日12:00~21:00
    12月24日10:00~14:00 
    12月26日12:00~21:00
    11月23日、12月25日は休み
    Hansaplatz, Alter Markt
    www.dortmunderweihnachtsmarkt.de
  • 14 Düsseldorf

    7つのマーケットが華やかに共演
    Düsseldorfer
    Weihnachtsmarkt

    Düsseldorfer Weihnachtsmarkt 11月20日(木)~12月23日(火)
    11:00~20:00 金土11:00~21:00
    11月23日は休み
    Marktplatz, Heinrich-Heine-Platz,
    Flinger Straßeほか
    www.duesseldorf-tourismus.de


  • 15 Köln

    カーニバルのごとき賑わいを見せる
    Kölner
    Weihnachtsmarkt

    Kölner Weihnachtsmarkt 11月24日(月)~12月23日(火)
    11:00~21:00 木金11:00~22:00 
    土10:00~22:00
    Kölner Dom, Alter Markt,
    Hafenweihnachtsmarktほか
    www.koelnerweihnachtsmarkt.com
  • 16 Bonn

    小さな町の隅々まで広がるマーケット
    Bonner
    Weihnachtsmarkt

    Bonner Weihnachtsmarkt 11月21日(金)~12月23日(火)
    11:00~21:00 日~木11:00~21:30 
    金土~22:30 12月23日~20:00
    11月23日は休み
    Münsterplatz, Bottlerplatzほか
    www.bonn.de/tourismus
  • 17 Aachen

    本場の出来立てプリンテンは格別
    Aachener
    Weihnachtsmarkt

    Aachener Weihnachtsmarktt 11月21日(金)~12月23日(火)
    11:00~21:00
    11月23日18:00~21:00
    12月23日11:00~20:00
    Münsterplatzほか
    http://weihnacht.az-web.de
  • 18 Erfurt

    大聖堂と教会に包まれた神聖な場所
    164. Erfurter
    Weihnachtsmarkt

    164. Erfurter Weihnachtsmarkt 11月25日(火)~12月22日(月)
    日~水10:00~20:00
    11月25日&木~土10:00~21:00
    Domplatz, Fischmarkt, Anger,
    Willy-Brandt-Platz
    www.erfurter-weihnachtsmarkt.eu
  • 19 Leipzig

    サンタにプレゼントを直談判?!
    Leipziger
    Weihnachtsmarkt

    Leipziger Weihnachtsmarkt 11月25日(火)~12月22日(月)
    10:00~21:00 11月23日10:00~20:00
    サンタクロースとの面会時間:
    水~日16:00~16:45
    Marktplatz
    www.weihnachtsmarkt-leipzig.com
  • 20 Dresden

    巨大シュトレンを見逃すな!
    580. Dresdner
    Striezelmarkt

    580. Dresdner Striezelmarkt 11月27日(木)~12月24日(水)
    10:00~21:00 
    Altmarkt
    ※このほか市内11カ所でマーケットを開催
    詳細は www.dresden.de 参照
    www.dresden-striezelmarkt.de
  • 21 Frankfurt

    モダンな金融都市で伝統を垣間見る
    Weihnachtsmarktin
    Frankfurt

    Weihnachtsmarktin Frankfurt 11月26日(水)~12月22日(月)
    10:00~21:00 日11:00~21:00
    Römerberg, Paulsplatz, Mainkai
    ※Römerbergでは様々なイベントを開催
    詳細は下記ウェブサイト参照
    www.frankfurt-tourismus.de
  • 22 Mainz

    大聖堂前は光の大海原
    Mainzer
    Weihnachtsmarkt

    Mainzer Weihnachtsmarkt 11月27日(土)~12月23日(火)
    11:00~20:30 金土11:00~20:00
    Am Dom
    ※ワイン樽を使ったテーブル席あり
    予約は下記ウェブサイトから
    www.weihnachtsmarkt-mainz.com
  • 23 Nürnberg

    クリストキントに会いに行こう!
    Nürnberger
    Christkindlesmarkt

    Nürnberger Christkindlesmarkt 11月28日(金)~12月24日(水)
    10:00~21:00 
    12月24日10:00~14:00
    クリストキントによる開会式: 11月28日17:30
    Hauptmarkt
    www.christkindlesmarkt.de
  • 24 Stuttgart

    規模は国内最大級、演出は豪華絢爛
    Stuttgarter
    Weihnachtsmarkt

    Stuttgarter Weihnachtsmarkt 11月26日(水)~12月23日(火)
    10:00~21:00 日11:00~21:00
    11月26日18:00~21:00
    Marktplatz, Schillerplatz, Königsbau,
    Altes Schlossほか
    www.stuttgarter-weihnachtsmarkt.de
  • 25 München

    国内最大のクリッペ・マーケット
    Münchener
    Christkindlmarkt

    Münchener Christkindlmarkt 11月27日(木)~12月24日(水)
    10:00~21:00 日10:00~20:00 
    11月27日17:00~21:00
    12月24日10:00~14:00
    Marienplatz www.muenchen.de/veranstaltungen/events/
    weihnachtsmarkt-christkindlmarkt.html
  • 26 Prien am Chimsee

    聖なる夜を湖に浮かぶ静寂の島で
    Christkindlmarkt auf der Fraueninsel

    Christkindlmarkt auf der Fraueninsel 11月28日(金)~30日(日)
    12月5日(金)~7日(日)
    金14:00~19:00 土日12:00~19:00
    Fraueninsel
    ※イベント等の詳細は下記ウェブサイト参照
    www.christkindlmarkt-fraueninsel.de



最終更新 Dienstag, 02 Juli 2019 12:12
 

ドイツのスイーツを味わおう

ドイツのスイーツを味わおう 素朴な美味しさに舌鼓

ビールやじゃがいも、ソーセージに引けを取らず、
甘いものも大好きなドイツ人。
Süßigkeiten in Deutschland老いも若きも、天気の良い日はカフェのテラスで
スイーツをほおばる姿をよく見掛ける。
ドイツのスイーツは大ぶりなものが多いけれど、
なぜかペロリと食べられてしまう。
今回は、定番のものから
もうすぐやって来るクリスマス菓子まで、
ドイツならではのスイーツを集めました。
これを見て食べたくなった方、食べ過ぎにはご注意を!
(編集部: 山口 理恵)

ケーキ編ケーキ編

ケーキ屋さんのショーケースに並ぶ様々なケーキを前に、どれも美味しそうで決められない! と頭を悩ませたことのある人は大勢いるだろう。それほど、ドイツのケーキのバリエーションは豊富なのだ。まずは、各地の伝統的なケーキをピックアップしてみよう。

Dresdener Eierschecke

カスタード好きにはたまらない
ドレスデン風アイアシェッケ

ドレスデン風アイアシェッケこのドレスデンの伝統菓子の発祥は、もともとはザクセンとテューリンゲン地域。小麦粉を使った土台とレーズンを混ぜたクワルク(Quark)または生クリーム、カスタードの3層構造になっている。Scheckeとは14世紀頃の男性の服装のことで、チュニックをベルトで留めた姿が3層に分かれて見えた。それになぞらえて、ケーキにその名が付けられた。

Frankfurter Kranz

フランクフルタークランツ地元民に愛される素朴な味
フランクフルタークランツ

その名が表す通り、フランクフルトの名物ケーキ。クランツとは「花輪」を意味する。リング状の型で焼いたスポンジとバタークリームを何層にも重ね、表面に砕いたヘーゼルナッツやアーモンドを隙間なくまぶし、てっぺんには砂糖漬けのチェリーを飾るのがお決まりだ。昔懐かしい素朴な味が、地元っ子に愛されている。

Schwarzwälder Kirschtorte

蒸留酒が決め手の大人の味
シュヴァルツヴェルダー・キルシュトルテシュヴァルツヴェルダー・
キルシュトルテ

シュヴァルツヴァルトの名産キルシュヴァッサー(サクランボの蒸留酒)をココアスポンジにしみ込ませ、生クリームとブラックチェリーをサンド。ドイツ国内で同名のケーキを販売する場合は、材料にキルシュヴァッサーを使用していなければならない法律がある。使用していない場合は、その名称での販売は許可されないという厳格な決まりも。

Prinzregententorte

バイエルン王国の王子を称える
プリンツレゲンテントルテ

プリンツレゲンテントルテヘルントルテとも呼ばれ、バイエルン地方で親しまれているこのケーキが生まれたのは1886年。バイエルン王国の摂政王子ルイトポルトを称えて作られたのがきっかけだ。ビスキュイとバタークリームを重ね、ダークチョコレートで表面をコーティングしている。当初は、王子が支配する行政地域が7つあったことに因み7層で作られていたが、現在は6層のものもある。

Baumkuchentorte

バウムクーヘンよりお手軽?!
バウムクーヘントルテ

バウムクーヘントルテバウムクーヘンの小片をバタークリームの間に挟むという一風変わった珍しいケーキ。写真のように表面をマジパンで覆っているものや、チョコレートでコーティングしたものなどがある。バウムクーヘンそのものをいただけるカフェは少ないが(クリスマスの項参照)、こちらはケーキ店やパン屋で見掛ける、ドイツ人に人気のケーキ。


ケーキ編デザート編

ドイツ料理レストランや一般的なカフェで提供されるデザートの種類は多くない。日本のように、新作デザートが次々と登場することもあまりない。しかし、長年人々に愛されてきた品々だからこそ、味に関してはお墨付きと言えるだろう。

Apfelstrudel

ドイツ料理レストランの王道デザート
アプフェルシュトルーデルアプフェルシュトルーデル

本家本元はオーストリアだが、ドイツ料理レストランでは欠かせないデザート。薄いパイ生地は15世紀に中東から伝わったとされる。その生地に溶かしバターを塗り、刻んだリンゴにシナモン、砂糖、レモン汁などを加えて煮込んだフィリングをくるくると巻いて焼く。カスタードソースやバニラアイス、生クリームなどを添えていただくのが定番。

Rote Grütze

さっぱり系のデザートがお好みなら
ローテ・グリュッツェ

ローテ・グリュッツェ北部でよく食べられるベリーのデザート。クランベリーやラズベリー、ブルーベリーと、様々な赤いベリーを粥(Grütze)状になるまで煮込んで冷やし、生クリームやクワルク、バニラアイスをかけていただく、さっぱり系の一品。ラスクとの相性も抜群だ。グラスにベリーとクリームを重ねて盛り付ければ、見た目もお洒落なデザートに変身!

Palatschinken

東欧から伝わったクレープ
パラチンケン

パラチンケン薄く焼いたクレープ状のパンケーキで、東欧からオーストリアを経てドイツへと渡ってきた。パラチンケンの語源は、「平らなケーキ」を意味するPlacenta(ラテン語)。フィリングはバラエティーに富んでいるが、一般的なのはジャムや生クリームなど。粉砂糖やチョコレートソース、バニラソースなどを添えていただくのが通例だが、軽食として食べることも。

Sächsische Quarkkeulchen

主食にもデザートにもなる優れもの
ザクセン風クワルクパンケーキ

ザクセン風クワルクパンケーキクワルクにじゃがいもを練り合わせて焼いた小ぶりのパンケーキ。ザクセン州発祥のデザートだ。生地には、マッシュポテトとクワルク(3:1の割合)に卵、小麦粉、シナモン、レーズンを加える。外側はカリカリ、内側はモチっとした触感が癖になる。メインディッシュとしても食されるが、アイスや粉砂糖、フルーツを添えればデザートに。

Apfelpfannkuchen

たっぷりのバターとリンゴが絶妙にマッチ
リンゴのパンケーキ

リンゴのパンケーキ新鮮なリンゴを使ったパンケーキ。生地をたっぷりのバターで焼き、途中でリンゴの薄切りを並べて裏返す。生地自体は甘くないので、食べる際に粉砂糖やシナモン、アイス、シロップなどをかけて、好みの味と甘さに調整するのがポイント。リンゴが1年中手に入るドイツでは、家庭で手軽に作れるデザートとして親しまれている。


ケーキ編クリスマス編

クリスマス・シーズンが来ると条件反射のように食べたくなる特別なスイーツ。素朴なものが多いが、それがまたノスタルジーを伴って、子どもの頃に体験した和やかなクリスマスの情景を呼び起こす。

Vanillekipferl

「冬の味」を詰め込んだビスケット
バニラキプフェル バニラキプフェル

三日月型をした、なめらかな口溶けのビスケット。オーストリアのウィーンが発祥だが、現在はドイツ、ハンガリー、チェコ、ルーマニアでも、クリスマス・シーズンには欠かせない菓子となっている。アーモンドパウダーとバニラパウダーをたっぷり入れるのが一般的だが、地域によってはクルミやヘーゼルナッツ、ピーナッツを使用するところもある。手作りする家庭も多い。

Stollen

クリスマス菓子の代表格
シュトレン シュトレン

クリスマスと言えばシュトレン。生地にマジパンやレーズン、オレンジやレモンの皮が練り込まれたものなど、店や家庭によって様々。年中入手可能だが、アドヴェント(待降節)の期間中にクリスマスマーケットで購入し、クリスマスの日まで少しずつ食べるのが一般的。ドレスデンのシュトレンは殊のほか有名だ。

Dampfnudel

見た目は中華まん!
ダンプフヌーデル ダンプフヌーデル

中華まんを彷彿とさせる白くフワフワの蒸しパンは、クリスマスマーケットの定番スイーツ。屋台で目印となるのは、日本のコンビニでよく見掛けるガラス製の保温器。味は具の入っていない中華の花巻に似ていて、バニラソースやチェリーソース、またはケシの実をかけていただく。クリスマスマーケットでぜひお試しを。

Baumkuchen

特別な機会に食べる貴重なお菓子
バウムクーヘンバウムクーヘン

ドイツのスイーツと言えば「バウムクーヘン」。伝統菓子であることには変わりないが、専門技術や機械を持つ店でしか作られていないため、どこででも食べられるわけではない。ドイツ人にとっても口にする機会は少ない一品で、現在ではクリスマスや慶事といった特別なときに食べる菓子となっている。

Plätzchen & Speculatius

家庭で作る伝統の味
プレッツヒェン&
プレッツヒェン&シュペクラツィウスシュペクラツィウス

プレッツヒェンは、クリスマスの時季に家庭で作られるクッキー。ツリーやハート、星形などの鋳型を使用して焼き、アイシングやチョコレートで思い思いに飾り付けをする。シュペクラツィウスは、ヴェストファーレンやラインラント地方で食べられるクリスマスの伝統的な薄焼きクッキー。しょうがやナツメグ、シナモンなどを生地に練り込んで焼く。

Lebkuchen

地域の個性が出る定番菓子
レープクーヘンレープクーヘン

地域によって形態が異なるレープクーヘン。硬いビスケットのようなものから、アイシングがかかったパンのようなものまで、同じレープクーヘンの名称で親しまれている。ビスケットは昔、長期保存食としても重用されていた。材料にはハチミツと、カルダモンやクローブ、シナモンなどの香辛料、オレンジやレモンの皮などを使用する。

最終更新 Montag, 20 Oktober 2014 10:09
 

演劇ユニット・チェルフィッチュ主宰 岡田利規インタビュー

演劇ユニット・チェルフィッチュ主宰 岡田利規インタビュー演劇ユニット・チェルフィッチュ主宰 岡田利規インタビュー 演劇ユニット・チェルフィッチュ主宰 岡田利規インタビュー

今年5月末、ベルリンの劇場HAU(Hebbel am Ufer)で開催されたフェスティバル「ジャパン・シンドロームー福島以後の芸術と政治」。
その中のプログラムの1つとして、演劇ユニット・チェルフィッチュの新作『スーパープレミアムソフト W バニラリッチ』が上演された。壮麗なバロック音楽の旋律と、まったりとした身体パフォーマンス、台詞回しが融合する独特な作風。役者の身体の揺れに合わせて観る方の思考も浮遊するような不思議な世界は、どのようにして生まれるのか、ここドイツの観衆の目にはどう映るのだろうか。
現在、ドイツを含む海外ツアーを展開中のこの作品の背景に迫るべく、チェルフィッチュの主宰者、岡田利規さんにお話をうかがった。
(Interview & Texte: Yasuko Hayashi)

Toshiki Okada

1974年横浜生まれ。演劇作家・小説家。
97年に演劇ユニット「チェルフィッチュ」を旗揚げ。
2005年『三月の5日間』で第49回岸田國士戯曲賞を受賞。
06年にドイツ・ミュルハイム劇作家フェスティバルに日本劇作家代表として参加。
07年、デビュー小説集『わたしたちに許された特別な時間の終わり』で第2回大江健三郎賞を受賞。
チェルフィッチュの作品では、現代の若者言葉と日常の動作を誇張したような身体性を持つ方法論を展開、国内外で注目を集めている。
公式サイト: http://chelfitsch.net

Super Premium Soft Double Vanilla Rich

(日本語公演、ドイツ語字幕付き)

【デュッセルドルフ】
会場:FFT(Forum Freies Theater)Düsseldorf Juta
10月30日(木)、31日(金)20:00 / 17.50ユーロ(割引9.80ユーロ)
Kasernenstraße 6, 40213 Düsseldorf
TEL: 0211-87678718   www.forum-freies-theater.de

【フランクフルト】
会場:Mousonturm
11月8日(土)20:00、9日(日)18:00
Waldschmidtstraße 4, 60316 Frankfurt am Main
TEL: 069-4058950   www.mousonturm.de

音楽とパフォーマンスの
アンバランスさが面白い

真夜中も蛍光灯が煌々と輝く、24時間眠らないスポット、コンビ二エンスストアでは、毎日のように様々な背景を抱えた人々が集まり、その人の数だけ異なる人間模様が繰り広げられている。『スーパープレミアムソフト W バニラリッチ』の舞台は、東京都内のとあるコンビニ。バイトの店員イガラシ君とウサミ君、新入りのミズタニさんを中心に、店を訪れる客を含めて、取りとめのない会話が淡々と展開されていく。どこにでもありがちなコンビ二の1コマ。しかし、一切の感情を押し殺したかのような彼らの無表情な顔は、その奥に、現代の日本社会が抱える何か得体の知れないものが見え隠れする。テーマありきの作品ではない。岡田氏は、コンビ二というありふれた日常の場面から、現代人を取り囲む問題を提起したかったのだろうか。

僕は作品の上演を通して、観客に何かを与えたいとは思っているけれど、得体の知れないものを掘り下げてほしいという特定の要求を持っているわけではありません。何かのテーマをそれとして作品の中で掘り下げるということは、はっきり言って不可能だと思うのです。抽象概念を使うことはできないので、掘り下げるというのならば、何か特定のものを使って行うよりほかない。そこで僕は、コンビ二が日本を象徴するものだから、そのシステムを自覚的に描こうとしました。ただ、コンビ二という器の中に社会のいろいろな問題を盛り込もうという意識はありませんでした。

チェルフィッチュ公演『スーパープレミアムソフト W バニラリッチ』

コンビ二を描くという作業の結果として出来上がった作品を観た観客がそれぞれ、そこから問題性なりテーマを見出していけば良いということなのだと言う。そのことをリアルに体感させるのが、劇中で使用されているバッハの音楽と、それとはまるで対照的な、気だるさをも感じさせる身体パフォーマンス。本作や前作『地面と床』をはじめ、チェルフィッチュの作品には身体性と音楽を意識したものが多い。通常はバックグラウンドに収まる音楽が、作品において大きな比重を占める「音楽劇」。役者の表情や台詞と音楽のミスマッチが、シュール感をより一層浮き彫りにする。

今回の作品とバッハの音楽を組み合わせたのは、そのアンバランスな感じが面白いと思ったからです。劇の内容と全く関係がなく、それが面白いと思うから。基本的に、僕が作り出す身体パフォーマンスと音楽って関係ないんですよ。ただ、音楽劇の場合には、パフォーマンスを音楽と無理やり関連付けるという作業をしますけれどね。

言葉のニュアンスが失われても
機能する台詞を書く

もう1つ、チェルフィッチュの作品を特徴付けているのが、台詞に現れる岡田氏の独特の言語観だ。修飾語を多用した『スーパープレミアムソフト W バニラリッチ』というタイトルからして、いかにもヒットを狙うコンビ二商品に付けられそうな名称だと、日本人であればピンと来るだろう。作中でも、今どきの若者らしい言葉が並ぶのだが、どもったり、繰り返したり、あまり抑揚もなく語られることによって、言葉のニュアンスが余計に誇張されているようにも感じられる。日本人だからこそ伝わる言葉のニュアンスをドイツ語で伝えるには、限界もあるのではないだろうか。

ドイツ語に訳したときに「ここまでは伝えたい」という最低ラインを設けているわけではありません。翻訳者を信用しているので。僕は日本語を書くとき、ニュアンスというのを非常に大切にしています。それは僕にとって、そして日本語ができる人にとって大事なことだからなのですが、そのニュアンスが翻訳によって伝わる、日本語が分からない人にも伝えたいなどとは端から思っていません。このニュアンスは日本語でしか伝わらないという台詞はあると思っています。そしてそれは(ドイツ語では)伝わらないです。ただ、だからといってそのニュアンスが存在しないような(ニュアンスのない)日本語を書くということも、僕にとってはあり得ないこと。つまり、日本語を書くときにニュアンスというのをものすごく大切にしているけれど、それと同時に、今書いている言葉のニュアンスが失われてもちゃんと成立する、機能する台詞を書こうという意識は常に持っています。

チェルフィッチュ公演『スーパープレミアムソフト W バニラリッチ』

ドイツの観客は、 リテラシーが高いと思う

岡田氏は2008年から毎年ドイツ公演を重ねる中で、当地の観客の反応にポジティブな手応えを感じていると言う。今回の作品も、コンビ二という日本特有の存在を扱う以上、台詞が機能しても、その社会的背景に関する知識がなければ、つまりコンビ二というものを知らなければ共感を得られない、伝わらないという懸念はなかったのか。

僕はこの作品でコンビ二のシステムを描いたので、コンビ二がないドイツでも作品の内容は伝わるつもりで作ったし、それは実際に伝わったと感じています。「ドイツにはコンビにはないよ」と言われたら、「それはそうですよね」で終わってしまうのでね。

上演後にどのようなリアクションが返ってくるかについてはあまり考えていないので、予想を裏切られるということもないのですが、ドイツの皆さんはいつもちゃんと観てくれていると思います。ふざけた作品なら、ふざけたものとして楽しんでくれるし、とてもシリアスでデマンディングな作品なら、真正面から高い集中力を持って付き合ってくれる。リテラシーが高いなと思います。

ドイツで公演を始めた頃はとにかく、演劇を観に来る人の動機や心構えというのが、社会に対する関心の延長上にあるというのを肌で感じたんですよね。それは、上演を行うことによって、あるいは公演後の観客との対話やジャーナリストの質問から得た印象です。演劇がそのように機能するのだということに驚いたと同時に、自分自身の考え方にもすごく影響を与えました。僕は演劇を作る人間なので、自分が作った作品を、そのように高い関心を持っている人たちの前で見せて、何か刺激を与えることができるのであれば、それほど嬉しいことはないなと思います。だから、ドイツで上演したこと、そしてそれを続けられているというのは、僕にとってすごく大きなことです。

言語が違っても機能する演劇。それを可能にするための核は、やはり演技する人間だろう。岡田氏が、自作の劇を演じる役者に求めるものとは。

独特であることですね。僕の求める方法をどのように形にするか。形にしたときに、同時にどのような味わいを出すかを重視しています。その人ならではのものを持っていないとね。僕の言葉をちゃんと理解して、どう表現してくれるかということです。最初から理解できる必要はないのだけれど。あとはもちろん、面白いこと。僕が「面白い」と思えることが大事なのですが。

チェルフィッチュ公演『スーパープレミアムソフト W バニラリッチ』

震災後に生まれた緊張感が、
作品をも変化させた

岡田氏にとって個人的に、そして劇作家として大きな転機となったのが、2011年3月の東日本大震災だったという。福島の原発事故の後、生まれたときからずっと暮らしていた首都圏を出て、熊本へ移住した。震災後に感じている将来への憂い、自分の中で起こった変化は、その後の作品にも反映されている。

原発事故の後、子どものことも考えて避難しました。避難という事実自体も大きな変化ですが、それによって、僕が日本で暮らす中でいろいろな意味での緊張感を感じるようになりました。例えば、僕は放射性物質というものに対する懸念を持っていて、住む場所も食べ物も気にしているけれど、気にしない人もたくさんいて、そのような人たちと共存するわけですよね。そう考えたとき、それ以前は持っていなかった緊張感を感じるようになりました。僕自身もそういう(緊張感を生み出すような)発言をするし、それがさらに緊張感を生む……その緊張感がある意味、日常になったというのも大きな変化で、そうなった自分が作る作品にも変化を与えますよね。

ただそれは、作品の中に緊張感が生まれるようになったというのではなく、作品の上演が観客との関係性において緊張感を引き起こすようなものを作りたいという気持ちが、以前より膨らんだということです。僕が感じているのと同じ緊張感を観客の皆さんにも経験させてあげたいというか。その緊張感の出所というのは、もはや放射能にとどまらず、政治であったりもします。今の日本の政治状況からは、僕には国がどんどん悪い方向へ進んでいるように見えます。さらに、自分たちが携わっている芸術や文化をめぐる状況というのも、この先悪くなっていくんだろうと思います。その理由の1つは、2020年に東京オリンピックがあるから。開催されるまでは良いと思いますが、終わったらとんでもないことになると思います。経済的に不況が進むというのもありますが、他者を排除するのが当たり前になったり、ある種の考え方の強要が行われたり。「いろいろな考え方があっていいよね」と言えることが少なくなり、息苦しくなっていくということですよね。事態がマイナスの方向に向かっていくという懸念はあります。

チェルフィッチュ公演『スーパープレミアムソフト W バニラリッチ』

どこにいても、演劇ができればハッピー

岡田氏は本年(平成26年)度、「文化交流史」に選出されている。これは、芸術家や文化人などを海外に派遣し、世界の人々の日本文化への理解を深め、海外の文化人とのネットワーク作りなどに繋がる活動を行う、文化庁主催の企画。このプログラムにおいて、岡田氏は韓国での活動を予定している。

来年、韓国・光州にオープン予定のアートコンプレックスで、オープニング・プログラムの1つとして新作を披露するのですが、そこには韓国の俳優さんにも出演していただく予定で、いわゆる(日韓の)コラボレーション作品になります。韓国ということで意識しているのは、国同士の関係がどれほど悪くなっても、僕だけは殺されないようにしようということですかね。仲良くしておきたいなと。まあでも、国という単位は僕にとっては全くもってどうでも良いことなので、今の話は冗談ですが(笑)。

2020年の東京オリンピック終了後は、日本でできる仕事なんてなくなると僕は思っているので、どこでだろうが演劇をやって生き延びていかなければならないというつもりだし、お金の問題ではなく、どこででも楽しく演劇を作りたいという想いです。もちろん、僕にはちゃんと使える言葉が日本語しかないし、この言語が好きなので、日本語を使って一緒に作れる日本人の俳優というのは、自分にとってやはり特別な存在なのですが、一方で、そんなことも言っていられなくなってしまうのかもしれないとも感じています。これから切ない将来が待っているのかなと。でも僕は、簡単に言えば演劇を作ることができればハッピーです。日本の将来に対しては悲観しているかもしれないけれど、僕はそれとは関係なく、ハッピーで演劇をやりたいと思っています。

チェルフィッチュ公演『スーパープレミアムソフト W バニラリッチ』

作品を手掛けるに当たって岡田氏が追求しているのが、強いパフォーマンスを作ること。「強い」とはどういうことなのか、説明できないと言う。ただ、自身が考える強さは絶対的なものであり、作品を作り、演出を行って、リハーサルをして……という一連の演劇制作のプロセスの中で、作品は強くなっていく。

演劇は、強くあるべきものだと思っています。強くないと、古いと思われてしまうから。

岡田氏が、劇団「チェルフィッチュ」を立ち上げたのは1997年。一度聞けば耳に残る、その特徴的な名前の由来を聞くと、自分自身がセルフィッシュ(利己的、わがまま)でチャイルディッシュ(幼稚)だから、その2つの言葉を掛け合わせてみたと説明しつつ、「何せ20年くらい前の僕が乗りで付けたものなので、もう忘れました」ときっぱり。そこに自分がやりたい演劇を作るという意味を込めたわけではないと、演劇との関連性を否定するが、その名は彼自身が作り上げてきた演劇の世界観に寄り添うように、存在感を確立してきたのではないだろうか。原発事故が自身に与えた衝撃を真正面から受け止めながら、自分が面白い、楽しいと思う演劇ができれば幸せと考え、強い作品を持って社会に対してメッセージを発信し続ける演劇作家、岡田利規の確固たる信念を感じられる舞台を観られる機会は、今後も世界各地でますます増えていきそうだ。


最終更新 Dienstag, 25 Juni 2019 16:15
 

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