特集


ドイツのスタートアップ事情

新たなビジネスの形について考える ドイツの
スタートアップ事情

欧州の中心的な都市の中でも比較的物価が安く、さまざまな人種が暮らす多文化共生が根付いているベルリンを中心に、多種多様なスタートアップ企業が生まれ続けているドイツ。実際にドイツで事業を展開している日独スタートアップ企業のインタビューをはじめ、ベルリンスタートアップのハブ的存在である「ファクトリー・ベルリン」のレポート、そして私たち日本人がドイツでスタートアップ事業を展開するためのヒントなどを紹介していこう。Text:編集部、佐藤ゆき

新しいアイデアで世の中を変える!?
ドイツで注目のスタートアップ

土に返るおむつでエコロジカルビジネスを 2015年ベルリン発 DYCLE ダイクル

DYCLEのビジネスモデル

松坂 愛友美さん

100%堆肥化できるおむつを生産→使用済みおむつを回収→おむつから肥料を作る→肥料を利用して果樹などを育てる→果樹を食べて排せつ物になる、という循環型モデル。2019年よりオペレーション開始予定。

創業者プロフィール

松坂愛友美さん
2001年にドイツへ移住。バウハウス大学でコンセプチュアルアートを学び、自然循環をテーマに科学者らと協力しながら作品を発表してきた。
https://dycle.org/de

アートプロジェクトからビジネスへ

赤ちゃんにおむつは不可欠。毎日出るおむつのゴミにうんざりしているお母さんお父さんは少なくないはず。そんな世界共通の悩みともいえる、おむつのゴミ問題に注目したのはベルリン在住の松坂愛友美さん。「もともとはアーティストとして、排せつ物をいかに土に戻すか、というプロジェクトをしていました。その中で子育て中の家族がおむつのごみに罪悪感を感じるということが分かってきたんです。そこで、科学者の方たちと相談しながら、おむつを堆肥化して木を育て、それを循環サイクルにするというビジネスモデルを作っていきました。

2015年に友人を誘って4人のチームでスタート。ちょうどほかのスタートアップで100%堆肥化できるおむつを作っていて、そのおむつの一部を譲り受けることができました。そして、パイロットという形で20組の家族に1週間、そのおむつを使ってもらったんです。それを1年かけて堆肥にして土を作り、植樹をするという一つのサイクルを完成させました。

アートプロジェクトではなく、ビジネスに落とし込むのは初めてのこと。どれくらいの準備期間が必要なのか、投資家を見つけて利益を生むことは可能なのかなど、ビジネスの知識や経験なしに始めることに当初は不安を感じていました。それでも、実際におむつを使ってくれた家族が喜んでくれたり、できあがった土をビオ農家の方に使ってもらったりと、行動に移すことで自信がつきましたね」

Dycle1年かけてひとまわりする「おむつ循環サイクル」

世界中で可能なビジネスに育てたい

2017年におむつを開発し、2018年現在はおむつの製造機を開発中。来年の事業スタートを目指す。「2018年5月にFAMAEという、家庭における地球に優しいアイデアを募るフランスのコンペティションで、グランプリを受賞しました。今までの財源は寄付だけだったのが、受賞したことで投資家からも支援を受けられることになったんです。

もしこのビジネスをほかの地で始める時に、ドイツからおむつを送るのではなくて、その土地の繊維素材を使ったおむつを作ったら良いと思うんですね。ローコスト・ローテクでおむつ製造機の開発が実現すれば、どこでもおむつが生産できます。世界中のコミュニティーで、地域雇用も生めるビジネスになったらうれしいです」

地産地消的なビジネスモデルを世の中に広めたいと語る松坂さん。DYCLEの循環システムがあちこちで回りはじめる日は、そう遠くないかもしれない。

おむつさまざまな自然繊維素材を使った100%堆肥化できるおむつ

DYCLEこれまでにDYCLEに関わった人は延べ100人以上

土ビオ農家さんお墨付きの DYCLEの土

植樹2016年のパイロットの植樹の ようす

ゴミ箱行きの運命の食料を救いたい! 2015年ケルン発 THE GOOD FOOD

THE GOOD FOODのビジネスモデル

ニコール・クラスキーさん

まだ食べられるにも関わらず、廃棄されてしまう野菜・果物や賞味期限の迫った食品などを農場やメーカー先から回収。商品に値段をつけていないため、いくら支払うかは消費者にゆだねられている。2017年より常設店舗を構える。

創業者プロフィール

ニコール・クラスキーさん
ケルンでは法学を専攻、オーストラリアの大学院で人権について学ぶ。その後、ネパールのNGOで働き、ケルンに戻って仲間とともにフードシェアリングを立ち上げた。

THE GOOD FOOD
オープン:火〜土11:00〜19:00
住所:Venloer Str.414, 50825 Köln
www.the-good-food.de

はじまりはフードシェアリング

形がよくない、大きさが不揃い、賞味期限が迫っている……ケルン市内にある「THE GOOD FOOD」の棚には、そんな野菜や果物、食品が並ぶ。廃棄される予定の食料を低価格で分配する「フードシェアリング」に携わった経験をもとにスタートアップした、と話すのは創業者のニコール・クラスキーさんだ。

「THE GOOD FOODは2人で立ち上げたのですが、私たちは一緒にフードシェアリングの活動をしていました。ドイツではまだ食べられるにも関わらず、大量の食料が無駄に捨てられています。それに対して怒りを感じていたし、そこで働くうちに食料廃棄にはさまざまな原因があることが分かったんです。この捨てられる運命にある食べものたちを救うために、自分たちの手で何かを始める必要がありました」  

2015年、スタートアップを支援する「Social Impact」という企業から助成金を受けることに。まずは事業に関心のある地元の農家や食品メーカーとパートナー関係になり、これまでは廃棄していたような食料を回収、それらを取り扱うポップアップストアなどを出店することから始めた、とクラスキーさん。

「ケルン市の環境保護賞(Umweltschutzpreis)を2016年に受賞し、この街は自分たちの活動に味方しているんだということが自信につながりました。そして2017年2月、ついに常設店舗がオープン。今は60人以上のボランティアがお店に立ったり、農場と店を行き来するなどして働いています。ボランティアやお客さんの多さから、市民が食料廃棄問題に高い関心を寄せていることも分かりました。ほかにも、ここに集まった食材を使ってケータリングをしたり、イベントなどで寄付を募っています」

店内の様子THE GOOD FOODの店内の様子

小さな進歩が大きなエネルギーに

「営業時間の拡大や輸送手段の改善などの課題はありますが、最近ではケータリング事業のシェフを雇えるほどの利益が確保できるようになりました。これは私たちにとって大きな進歩です。もちろん挑戦や困難なことがありました。大切なのは、自分がやっていることがマニュアルから外れていないか、理論的なのかどうか、と恐れないこと。身の回りの小さなことから始めたことが私の支えになり、ここまでやってこれたのだと思います」  

少しずつ、でも確実に前進しているTHE GOOD FOOD。焦らずに一つひとつ取り組んできたクラスキーさんの姿もまた、周囲の共感を呼び、これからも市民や街が彼女たちの支えとなるのだろう。

農家と協力

農家と協力事業に興味を持ってくれた農家と協力しながら、野菜や果物を収穫・回収する


経験者に聞く!
ドイツでスタートアップする3つのメリット

ドイツ、主にベルリンでスタートアップすると、どんなメリットがあるのか? DYCLEの松坂さんにその魅力についてお聞きした。

スタートアップのためのコンペが多い

ドイツでは、スタートアップのアイデアを募るコンペティションが多く開かれている。入賞すると、無料で6カ月オフィスが利用できるなどの特典があるという。「実は、スタートアップしている人は月に何本もコンペティションに応募しています。もちろん、私たちも賞を受賞したコンペ以外にも何十本も出して、ファイナルに進めないことがたくさんありました。ただ、以前企画書を読んでくれた審査員がほかのコンペでまた企画書を読んでくれることがあるんです。企画の進捗を知ってもらうことで『インタビューしてみようか』と思ってもらえるなど、色々なご縁につながって楽しいです よ」(松坂さん)

スタートアップのコミュニティーが多彩

スタートアップを支援してくれるインキュベーション(企業支援)プログラムやコワーキングスペースがドイツには多数あることが魅力のひとつだ。「コワーキングスペースの種類が多彩で、自分のビジョンにあったコミュニティーを選ぶことができます。ソーシャルビジネス、IT系、環境系……それぞれのスペースには独特のコミュニティーがあり、そこで同じビジョンを持ったメンバーに出会い、新しい起業チームが発足することも。スペースの創業者がベンチャー起業家や社会起業家である場合もあり、ニーズに合ったネットワークを素早く広げ、コーチングや育成システム、ワークショップでビジネスの基本を素早く学べるのもメリット」(松坂さん)

市民も街も新しい取り組みに寛容

新しいことに興味を持ってくれる市民が周りにいることは、スタートアップをする上でとても心強いことだ。とくにベルリンという土地は特別ではないか、と松坂さんは続ける。「実際にほかの都市と比べたことがあるわけではないのですが、ベルリンは色々な人が集まっている場所なので、この人がダメでも、隣りの人なら大丈夫……ということがたくさんあります。新しいものを受け入れる器の大きさというのが、街自体にもあると感じますね。何か新しいプロダクトやサービスを企画する場合は、ベルリンで試してみるとより可能性が広がるのではないかと思います」(松坂さん)

スタートアップのハブ的存在「Factory Berlin」 ドイツでスタートアップを始めるためのQ&A

最終更新 Freitag, 17 August 2018 14:25
 

スタートアップのハブ的存在「Factory Berlin」

新たなビジネスの形について考える ドイツの
スタートアップ事情

欧州の中心的な都市の中でも比較的物価が安く、さまざまな人種が暮らす多文化共生が根付いているベルリンを中心に、多種多様なスタートアップ企業が生まれ続けているドイツ。実際にドイツで事業を展開している日独スタートアップ企業のインタビューをはじめ、ベルリンスタートアップのハブ的存在である「ファクトリー・ベルリン」のレポート、そして私たち日本人がドイツでスタートアップ事業を展開するためのヒントなどを紹介していこう。Text:佐藤ゆき

ベルリン、スタートアップのハブ的存在 コワーキングスペースからイノベーターのコミュニティーへ つながりからビジネスを生み出す場 「Factory Berlin」

ドイツのみならず、欧州のスタートアップの中心地でもあるベルリンには、関連するイベントや施設が数多く存在している。そんなクリエイティブで新しいビジネスが生まれる街で起業家たちが集まるハブ、Factory Berlin(ファクトリー・ベルリン)の現状を同地でテックライターとして活躍している佐藤ゆき氏がレポート。

Factory Berlin2014年7月のFactory Berlin オープンニングの日。
グーグルのエリック・シュミット会長や当時のベルリン市長が駆け付けた

スタートアップ都市としてここ数年勢いを大きく伸ばしているベルリンでは、スタートアップ関連のスペースも急増中だ。ミッテ地区のベルリンの壁記念館のそばにあるFactory Berlin(以下Factory)もそんなスペースの一つで、2014年の夏にオープンして以来、ベルリン内外のスタートアップや起業家、投資家、大手企業などから注目を集めてきた。

スタートアップ関連のスペースというと、多くの方が「コワーキングスペース」を想像するようだ。実際、Factoryもオープンしてから最初の1~2年は、1階の部分を通常のコワーキングスペースの形態で、1デスクにつき月額300ユーロ程度で貸し出されていた。だが、その後2016年の夏になって、Factory は「ここはコワーキングスペースではありません、ビジネスクラブです」と言い、突如新たなコンセプトを掲げた。以来、彼らは「イノベーターのコミュニティー」を看板に、求心力のあるコミュニティーの形成に努めている。

ワークスペースからコミュニティーへと、コンセプトを転換させたFactoryが現在目指しているのは、単に仕事をする場所ではなく、新しいアイデアを持った者同士が出会える、そしてその出会いを通じて新たなビジネスやプロジェクトが生まれる場所、つまりイノベーションが起こる環境であることだ。イノベーションが起こる環境づくりといっても、無論それは簡単なことではないが、Factoryは質の高いコミュニティーづくりに注力することでそれを実現しようとしている。

Factory Berlinミッテキャンパス。メインはオープンデスクだが、パートナー企業用の個室や
メンバーが活用できる会議室もある

Factory Berlinミッテキャンパス。正面より

たとえば、コミュニティーのメンバーになるためには基本的にFactoryの審査を通らなければならない。筆者自身もここ2年ほどFactoryのメンバーであるが、最初にメンバー申請をした時にはグループ面接を受けた。その際に尋ねられたことで印象に残っているのが「あなたはどのような形でコミュニティーに貢献できますか?」という質問だ。

この質問からも分かるように、Factoryが求めているメンバー像は「自発的にコミュニティーづくりに貢献できる人物」である。私自身は日本のマーケットに興味があるスタートアップをサポートできます、といったようなことを答えた覚えがあるが、とにかくメンバーそれぞれが自分の強みや専門性をいかに持ち寄ってコミュニティー全体に貢献できるかという点が重視されている。そして、Fact or y自身も数名のコミュニティーマネジャーを通じて、オフライン・オンラインでコミュニケーションが活発に行われるように促したり、メンバー同士が知り合える機会が増えるように定期的にイベントを開催するなどして工夫を凝らしている。

こうした面接を通じて入会したFactoryの現在のメンバー数は2000名を超えるともいわれる。メンバーは主に、比較的小規模のスタートアップ、エンジニアやデザイナーなどのフリーランサー、投資家、企業のイノベーションチームなどだ。会費は月額50ユーロで(パートナー企業になる、個室オフィスを借りる場合は別プラン)、最初にオープンしたミッテキャンパスと、昨年末にオープンしたばかりのクロイツベルクキャンパスの両方に平日朝9時から夜9時までアクセスすることができる。

スタートアップを作るためにはアイデアと実行力を持った起業家が必要であるのは言うまでもないが、そこからさらに成長していくためには、投資家やパートナー企業、そしてプロダクトづくりに関わるエンジニアやデザイナーといった人材が必要不可欠だ。Factoryはそうした成長に必要な「出会い」をデザインすることで、ベルリンのスタートアップエコシステムに貢献している。(Text&Photo:佐藤ゆき)

Factory Berlinミッテキャンパス。2階から入り口を見渡したところ。
奥に見える芝生エリアは、ベルリンの壁記念公園

Factory Berlinミッテキャンパス1階。メンバーが投稿する情報メモ。
メンバーが求めているもの、提供できるものなどの情報が貼られている

Factory Berlinクロイツベルクキャンパスのオープンデスクエリア

Factory Berlinクロイツベルクキャンパスの「プレイルーム」。ボールプールや卓球台などが設置されている

ドイツで注目のスタートアップ ドイツでスタートアップを始めるためのQ&A

最終更新 Dienstag, 10 Juli 2018 11:54
 

スタートアップを始めるためのQ&A

新たなビジネスの形について考える ドイツの
スタートアップ事情

欧州の中心的な都市の中でも比較的物価が安く、さまざまな人種が暮らす多文化共生が根付いているベルリンを中心に、多種多様なスタートアップ企業が生まれ続けているドイツ。実際にドイツで事業を展開している日独スタートアップ企業のインタビューをはじめ、ベルリンスタートアップのハブ的存在である「ファクトリー・ベルリン」のレポート、そして私たち日本人がドイツでスタートアップ事業を展開するためのヒントなどを紹介していこう。Text:編集部

ドイツでスタートアップを始めるためのQ&A

スタートアップの聖地ベルリンをはじめとしたドイツで、スタートアップ事業を展開するための魅力やポイントとは?

bistream代表・武田誠さんベルリンを拠点に、新ビジネス領域での日欧間B2B コラボレーションの開拓と、欧州スタートアップ企業を研修先とする人材研修プログラムを展開するbistream の代表。2018年6月よりジェトロが展開するグローバル・アクセラレーション・ハブの事業パートナーとなり、日本のスタートアップのドイツ・欧州進出、ドイツ・欧州スタートアップの日本進出を実現させるための橋渡しとして相談・アクセラレーターや投資家への紹介を行っている。
bistream:www.bistream.de
グローバル・アクセラレーション・ハブ:www.jetro.go.jp/services/jhub.html

ベルリンでスタートアップをする魅力は?

誰にでもチャンスがあり、オープンで、ファウンダーたちが互いに迅速に助け合うカルチャーが魅力ですね。とても国際的な都市ですが、気取ったところがありません。

ベルリンにはどのような人材が集まっていますか?

高度な知識や技術を持った人材、国際色が非常に豊かです。ベルリンそのものの魅力のおかげで才能のある人たちがたくさん集まってくるので、海外からわざわざ優秀な人を雇う必要がなく、ベルリン内で見つかるという話をよく聞きます。

bistreamではドイツ企業とのコラボやインター ン研修をアレンジしていますね?どのような目的を持った方が参加されていますか?

はい、ビジネスマッチングと人材研修を行っています。企業間のコラボレーションでいうと、こちらの提案で日本の大手企業がドイツのデザインカンパニーと契約した例などがあります。人材研修について言えば、個人、特に大学生はスキルアップと経験を求めていることが多く、企業クライアントは社内人材の国際化を目指しています。

グローバル・アクセラレーション・ハブのプログラムを受けるとどのようなことが期待できますか?

ベルリンというエコシステムをまずは知ってみたい、入り込んでみたいと思っている企業には良いと思います。スタートアップの場合は無料で素敵なコワーキングスペースも使えるので、ぜひ使っていただきたいです。入口のサポートに続いて、さらに具体的なビジネスの開拓や、協業の交渉の際に支援が必要であれば有償で提供しています。

日本のスタートアップ事業の状況は?

日本は決して起業が難しい環境ではありません。しかし、よく言われることですが国内市場向けのスタートアップが多いので、グローバルなビジネスモデルを持ち、そのために必要なグローバル人材を揃えていくというのは、初期のスタートアップには難しいかも……。そういう意味ではベルリンに来てみるという選択肢はあると思います。

ドイツでスタートアップ事業を始めたい場合、どのような技術や能力が求められると思いますか?

何も恐れない、恥ずかしがらないという「能力」でしょうか。片言の英語でも、ここぞという時は相手を圧倒して喋り倒すくらいの強さがあると良いですね。

ドイツを目指して起業したいと考えている人たちに向けて、どのようなことを伝えたいですか?

最近、僕の好きなベルリンの起業家の一人が「人は自分が何を知らないかを知らない」と言いました。だからこそスタートアップのファウンダーは、自分が何を知らないのかを教えてくれる他者を必要とすると。ドイツは日本と似ているところもたくさんありますが、違いもたくさんあります。新しい知識や発想、感覚、考え方に対して貪欲であってほしいと思います。

目指せ日本からNRW州へ!
大学発スタートアッププログラムレポート

今年2月、ノルトライン=ヴェストファーレン(NRW)州の州都であるデュッセルドルフで、日本の大学発信のベンチャーやスタートアップ事業のドイツ進出を目指し、それぞれのビジネスモデルを磨くためのプログラムが3日間にわたって行われた。

デュッセルドルフそれぞれの研究テーマについて発表する参加者たち

メディエンハーフェンに位置するデジタルアクセラレーター、デジハブ(digihub)のオフィスが会場となり9つの大学からさまざまなジャンルの研究を行う研究員や教授が参加した。各大学の研究テーマは、IoT分野における監視システムや光触媒を使った革新的なスキンケアアイテム、歯磨きロボットなど多様なジャンルにわたる。

今回のプログラムは、国立研究開発法人科学技術振興機構が行う「社会還元加速プログラム(SCORE)」のイベントで、起業家を支援するプラットフォームである01Boosterが企画・運営。日系のスタートアップ団体の呼び込みにも積極的なNRW州経済局のサポートもあり、実現する運びとなった。以下、今回の参加者のコメントを紹介(所属は取材当時)。

「今回のプラグラムに参加して、大学の研究を社会に向けて世界的に発信することの魅力だけではなく、厳しさも知ることができました」(名古屋大学 青木宏文博士、名古屋大学リサーチ・アドミニストレーター 跡部悠未博士)

「プログラム参加者の方たちはエネルギーに溢れていて、さまざまな発見がありました」(早稲田大学 栄田源さん)

「今回のプログラムを通して、ドイツでは皆が目的意識やビジョンを持っていることを肌で感じました」(筑波大学チーム 髙林真莉さん)

「ドイツも日本もスタートアップ企業を立ち上げるためのメソッドは一緒だと思いました。また、イベントを通して日本へのサポート体制が積極的だということも知ることができました。ここで得たコネクションを今後につなげていきたいです」(東京大学 早水建祥さん)

「ビジネスに特化した人たちとの交流によってアイデアを具現化するこができました。エンドユーザーについて考え知る良いきっかけとなりました」(国立研究開発法人物質・材料研究機構 阿部英樹博士)

今後、ますます日系の企業や団体、研究者たちが海外で活躍できる場が増えることだろう。

デュッセルドルフ研究テーマについてデジハブのスタッフと話し合い内容を精査する

デュッセルドルフ研究テーマについてデジハブのスタッフと話し合い内容を精査する

ドイツで注目のスタートアップ スタートアップのハブ的存在「Factory Berlin」

最終更新 Dienstag, 10 Juli 2018 09:37
 

2018 FIFA ワールドカップ ロシア大会いよいよ開幕!6月14日(木)〜7月15日(日)

ワールドカップのトロフィー

ドイツの二連覇達成なるか? 2018 FIFA WORLD CUP RUSSIA ワールドカップ ロシア大会
いよいよ開幕! 6月14日(木)〜7月15日(日)

世界のサッカー好きが心待ちにする4年に一度のサッカーの祭典が間もなく幕を開ける。1つのボールの行方を追う、極めてシンプルなサッカーというスポーツが見せるひと夏の夢。トップアスリートのプレーに目を見張り、戦う男たちの涙に心揺さぶられ、各国のサポーターと感情をむき出しに声を枯らせば、にわかファンからスタートしたあなたもきっとサッカーの虜に。W杯覇者であるドイツで観戦に臨むならば、サッカー大国となったドイツの歴史もチェック! (Interview&Text:Takahashi / i-mim.de

熱狂する準備はできていますか?
ドイツでサッカーW杯を観戦する前に
知っておきたいドイツ語表現

Weltmeisterschaft
ワールドカップ

Football6月14日に開幕する第21回サッカーワールドカップ(W杯)は、最新技術を駆使して運営される。史上初めてVAR(Video assistant referee) というビデオ判定技術を導入。設置されるのは、一部スタジアムのみ(ソチ、モスクワ、サンクトペテルブルク、カザン)だが、「神の手」など数々の伝説を生んできたゴール判定の正確性が高まることが期待される。公式ボールのTelstar 18( アディダス)にはチップが搭載されていて、リアルタイムでボールの位置情報が得られる。

Mannschaft 
チーム

5大陸から予選を勝ち抜いた32カ国の代表チームが出場する。10年以上ぶりに出場するのは、エジプト、モロッコ、ペルー。欧州予選では、強豪イタリアやオランダがW杯本戦出場を逃し、米国は約30年ぶりの予選敗退。W杯出場枠は、2026年から48カ国に増設される予定。W杯出場数の最多記録を持つのは初回から出場し続けているブラジル。

Belohnung
賞金

W杯は巨額が動く大会でもある。もし、ドイツが連覇を達成したら、ドイツサッカー協会は代表選手一人当たり35万ユーロ(約4500万円)の報奨金を出すことを約束。さらに高額なのはスペインで、優勝賞金は選手一人当たり80万ユーロ(約1億円)。FIFAからの賞金総額は史上最高の約455億円。優勝国には43億円が贈られ、グループリーグ敗退のケースでも約9億円が支払われる。

Russland 
ロシア

東欧が開催地となるのは、W杯史上初。32日間で全64試合を、11都市、12のスタジアムで開催する。広大な国土を持つロシアの会場は、4つのタイムゾーンに広がり、最西端と最東端の距離は3000Km!大会の公式マスコットは、オオカミをモチーフにした「ザビワカ(Zabivaka)」、ロシア語で「点を取る人」という意味。

WM-Neuling 
W杯初出場

本大会に初参加するのは、アイスランドとパナマ。いずれもW杯本戦出場を決めたこと自体が歴史的な快挙で、アイスランドでは国民の20%に当たる6万6000人がチケットを申し込み、パナマでは、本大会への出場が決まった日の翌日が急遽祝日になるなど、盛り上がりは最高潮!

Helden von Rom 
ローマの英雄たち

1990年、W杯イタリア大会で優勝した西ドイツ代表を指す言葉。1974年のW杯でドイツにW杯優勝をもたらした立役者で、「Kaiser(皇帝)」の異名を持つフランツ・ベッケンバウアーが代表監督としてチームを率いた 大会。選手と監督、双方の立場でW杯制覇を経験した史上二人目の人物となる。ローター・マテウス、ユルゲン・クリンスマンなどドイツの才能が世界を魅了した。

Titel im eigenen Land
自国開催での優勝

1974年、ドイツは初めてW杯開催地に選ばれた。1966年の準優勝、1970年も「Jahrhundertspiel(世紀の試合)」と呼ばれる壮絶な決勝戦の末に準優勝という結果を経て、西ドイツ代表のミッションは、「優勝」あるのみ。主催地のプレッシャーの中、フランツ・ベッケンバウアーを筆頭とした西ドイツ代表は決勝まで勝ち進み、ヨハン・クライフの率いるオランダを2−1で下して二度目のW杯優勝を成し遂げた。

Wunder von Bern
ベルンの奇蹟

1954年、W杯スイス大会で西ドイツ代表は初優勝を果たした。決勝に駒を進めたことを「奇蹟」と呼ぶくらい、当時の西ドイツはダークホース的存在だった。第二次世界大戦の敗戦から約10年、ドイツ人が自信を取り戻すきっかけとして語り継がれている。この大会でもう一つ脚光を浴びたのが西ドイツ代表が履いていた世界初のサッカー専用シューズ。その靴を手掛けた靴職人アドルフ・ダスラーはその後、アディダスの創業者となる。

Sommermärchen 
夏のメルヘン

2006年の自国開催で3位と健闘した大会、そして2014年のブラジル大会優勝を讃える言葉。2006年にユルゲン・クリンスマンから代表監督を引き継いだヨアヒム・レーヴ監督が率い、2014年の決勝戦はドイツ対アルゼンチン。決勝でのこの顔ぶれは、1986年メキシコ大会、1990年イタリア大会と2大会連続で対戦して以来3度目。運命の相手との試合は延長戦にもつれ込み、延長後半にマリオ・ゲッツェが決勝ゴールをあげ、24年ぶり、ドイツが再統一してから初めての優勝を果たした。

Wembley-Tor
ウェンブリーのゴール

日本に「ドーハの悲劇」があるように、ドイツにも悔しい記憶を象徴する言葉がある。1966年、W杯イングランド大会の決勝戦。開催国であるイングランドと西ドイツの対戦は延長戦に突入し、101分にイングランドのFWジェフ・ハーストがシュート。そのボールがゴールラインを割っていたかどうか、今もドイツでは論争の的に。

Weltmeister 
世界王者

最多優勝はブラジルの5回。次いで、ドイツ(西ドイツ時代を含む)とイタリアが4回。W杯連覇を果たしたのは、イタリア(1934年、1938年)とブラジル(1958年、1962年)。1962年のブラジル以降は半世紀以上、二連覇した国は現れていない。優勝経験がある国は7カ国で、いずれも自国出身の監督がチームを率いていた。

Interview mit Litti

日本を愛し、ドイツの強さを知る男
ピエール・リトバルスキ

リトバルスキ

サッカー選手にとって人生最高の舞台、W杯。そこに立ち、世界王者の座を目指すというのは、どういうことなのだろうか?日本代表が優勝候補の筆頭に上がるには、何が必要なのだろうか?その答えを求めて、ピエール・リトバルスキ氏に会いに行った。3回のW杯出場経験があり、1982年スペイン大会と1986年メキシコ大会で準優勝、1990年イタリア大会では念願の優勝を掴んだ西ドイツ最高のドリブラー。代表引退後は、J リーグ黎明期に日本で活躍し、「リティ」の愛称で親しまれた。CMで見せた笑顔が印象に残っている人もいるのではないだろうか。現在はVLf ヴォルフスブルクのスカウティング部長として、世界のサッカー事情に通じているリティに、W杯で勝つために必要なこと、今年のW杯の見所について聞いた。

Pierre Littbarski 1960年、西ドイツ生まれ。1990年の代表引退までに73試合に出場し、18得点を記録。ブンデスリーガの1.FCケルンやフランスのRCパリに在籍し、1993年のJリーグ開幕に合わせてジェフユナイテッド市原に入団し、その後ブランメル仙台。現役引退後は横浜FCやアビスパ福岡などさまざまな国で監督を務め、現在はVLfヴォルフスブルクのスカウティング部長として、チーム運営に携わっている。

W杯で優勝するために必要なものは?
「才能と経験と戦略、そして運!」

才能ある選手がチームに必要ですが、もちろん才能だけじゃダメ。自分の能力をすべて発揮する力を持つ選手である必要があります。経験の重要性については、3度目のW杯出場の際に実感しました。1982年のW杯決勝前夜は全く眠れなかったものですが、90年の決勝前夜は熟睡できましたよ。自分には睡眠が必要だと学んだし、入眠へ向けて自分の感情をコントロールできたからです。対戦相手の分析と戦略は、現代のサッカーにおいては年々重要性を増しています。

でも、いくら才能ある選手を集め、経験を積み、巧みな戦略を持って試合に臨んだとしても、W杯で必ず優勝できるという保障はありません。決勝戦で勝利できるかどうか、それは本当に紙一重で、言わば運にかかっている。私自身も2回の準優勝を経験しましたが、3度目のW杯にも参加でき、優勝できたことは本当に幸運なことでした!

日本のグループリーグ突破は?
「可能性はある。大切なのは初戦!」

初戦を勝ち抜くことが日本にとって大事な一歩になるでしょう。相手をリスペ クトすることは大切ですが、恐れることはありません。経験と実績のある選手を多数擁するポーランドは波があるし、スター選手のいるコロンビアはチームとしては課題も、セネガルは技術力やスピードで翻弄することができるはずです。

1993年にJ リーグに参戦した時、日本の選手の技術レベルの高さに驚きました。そして今、リーグ開幕からたった25年で組織としても成熟し、海外で活躍する選手も増えた。ドイツのブンデスリーガで活躍する選手については、元同僚 で代理人のトーマス・クロートに私から推薦した選手もいますし、彼らの活躍を見るのは嬉しい。年に2回は日本を訪問していますが、サッカーがしっかり文化として根を張り始めていると感じます。日本サッカーの発展は目覚ましいものがあり、まだまだこれから伸びる国!

日本代表の監督交代についての見解は?
「日本には、日本人監督が必要!」

日本人選手にとってコミュニケーションは大切。戦略や評価について、じっくり話す必要があります。岡田武史監督時代の結果を見ても、日本代表には日本人監督が合っていると思います。西野朗監督が率いる日本代表に期待しています!

今年のドイツ代表の特徴は?
「W杯優勝経験+若い才能」

キミッヒやサネ、ゴレツカ、ジューレら若手の台頭も頼もしく、監督は高いレベルの戦略を立てられるでしょう。懸念されるのは、世界トップレベルの選手たちの消耗度や怪我。2014年と比較しても、より速いテンポのプレーが可能な選手層の厚さと、昨年のW杯優勝経験がドイツの強みです。

W杯ロシア大会、優勝するのは?
「ドイツ、であることを願っている」

個人的には、世界最高の選手であるメッシ(アルゼンチン)のW杯最後になるかもしれないプレーを見ることも楽しみにしています。決勝戦でドイツ対アルゼンチンが対決し、ドイツが優勝したら最高です!

ファン

2018W杯 参加チームと試合日程

開催時刻はドイツ時間になります

グループF

ドイツ(FIFA ランキング 1位)
メキシコ(15位)
スウェーデン(23位)
韓国(61位)

日時対戦カード場所TV放映
6月17日(日)17:00 ドイツ vs メキシコ モスクワ ZDF
6月18日(月)14:00 スウェーデン vs 韓国 ニジニ・ノヴゴロド
6月23日(土)17:00 韓国 vs メキシコ ロストフ・ナ・ドヌ
6月23日(土)20:00 ドイツ vs スウェーデン ソチ ARD
6月27日(水)16:00 メキシコ vs スウェーデン エカテリンブルク
6月27日(水)16:00 韓国 vs ドイツ カザン ZDF

ドイツ代表

連覇の偉業を目指すドイツは、17大会連続19回目の出場。3度目の優勝を掴んだ1990年のユニフォームをオマージュしたデザインで臨む。クロース、ミュラー、エジルと世界一層の厚い中盤、2017年のコンフェデで実力を見せたゴレツカやサネ、キミッヒら若手の黄金世代、悲運の天才と呼ばれたロイスもW杯に初参加。29歳にして代表初招集となったペーターゼンにも期待。

ドイツ代表

監督

ヨアヒム・レーヴヨアヒム・レーヴ(58歳)
「私の、そして私たちの目標は、W杯優勝というタイトルの防衛だ」

選手(6月4日発表)

● GK
マヌエル・ノイアー(32歳):バイエルン・ミュンヘン
マルク=アンドレ・テア・シュテーゲン(26歳):FC バルセロナ(スペイン)
ケヴィン・トラップ(27歳):パリ・サンジェルマン (フランス)

● DF
ジェローム・ボアテング(29歳):バイエルン・ミュンヘン
マティアス・ギンター(24歳):ボルシア・メンヒェン グラートバッハ
ヨナス・ヘクトル(27歳):1.FC ケルン
マッツ・フメルス(29歳):バイエルン・ミュンヘン
ヨシュア・キミッヒ(23歳):バイエルン・ミュンヘン
マーヴィン・プラッテンハート(26歳):ヘルタ・ベルリン
アントニオ・リューディガー(25歳):チェルシー(イングランド)
ニクラス・ジューレ(22歳):バイエルン・ミュンヘン

● MF / FW
ユリアン・ブラント(21歳):バイヤー・レヴァークーゼン
ユリアン・ドラクスラー(24歳):パリ・サンジェルマン(フランス)
マリオ・ゴメス(32歳):VfB シュトゥットガルト
レオン・ゴレツカ(23歳):シャルケ04
イルカイ・ギュンドアン(27歳):マンチェスター・シティ(イングランド)
サミ・ケディラ(31歳):ユヴェントス(イタリア)
トーニ・クロース(28歳):レアル・マドリー(スペイン)
トーマス・ミュラー(28歳):バイエルン・ミュンヘン
メスト・エジル(29歳):アーセナル(イングランド)
マルコ・ロイス(29歳):ボルシア・ドルトムント
バスティアン・ルディ(28歳):バイエルン・ミュンヘン
ティモ・ヴァーナー(22歳):RB ライプツィヒ

グループH

日本(FIFA ランキング60位)
ポーランド(10位)
セネガル(28位)
コロンビア(16位)

日時対戦カード場所
6月19日(火)14:00 コロンビア vs 日本 サランスク
6月19日(火)17:00 ポーランド vs セネガル モスクワ
6月24日(日)17:00 日本 vs セネガル エカテリンブルク
6月24日(日)20:00 ポーランド vs コロンビア カザン
6月28日(木)16:00 セネガル vs コロンビア サマーラ
6月28日(木)16:00 日本 vs ポーランド ヴォルゴグラード

日本代表

日本代表W杯6大会連続出場する日本。4月9日に代表監督だったヴァヒド・ハリルホジッチ氏を解任し、西野朗氏が新たに就任した。日本人の代表監督就任は、岡田武史氏以来2人目。グループHは強国不在ではあるが、スター選手を擁する実力国。「日本らしいサッカー」を目指すチームの全貌は、W杯本戦でどのようなプレーを見せるのか。グループリーグ突破を目指す日本代表のうち、17人が海外クラブ在籍、8人がドイツのブンデスリーガに所属している。

監督

西野朗(63歳)
「(新監督として)ロシアに向けて精一杯チームづくりをしていきたいという覚悟」

選手(5月31日発表)

● GK
川島永嗣(35歳):FC メス(フランス)
東口順昭(32歳):ガンバ大阪
中村航輔(23歳):柏レイソル

● DF
酒井宏樹(28歳):マルセイユ(フランス)
酒井高徳(27歳):ハンブルガーSV(ドイツ)
長友佑都(31歳):ガラタサライ(トルコ)
槙野智章(31歳):浦和レッズ
植田直通(23歳):鹿島アントラーズ
昌子源(25歳):鹿島アントラーズ
遠藤航(25歳):浦和レッズ
吉田麻也(29歳):サウサンプトン(イングランド)

● MF
長谷部誠(34歳):アイントラハト・フランクフルト (ドイツ)
山口蛍(27歳):セレッソ大阪
原口元気(27歳):フォルトゥナ・デュッセルドルフ (ドイツ)
宇佐美貴史(26歳):フォルトゥナ・デュッセルドルフ (ドイツ)
大島僚太(25歳):川崎フロンターレ
柴崎岳(25歳):ヘタフェCF(スペイン)
香川真司(29歳):ボルシア・ドルトムン(ドイツ)
乾貴士(29歳):レアル・ベティス(スペイン)
本田圭佑(31歳):パチューカ(メキシコ)

● FW
大迫勇也(28歳):ヴェルダー・ブレーメン(ドイツ)
岡崎慎司(32歳):レスター・シティFC(イングランド)
武藤嘉紀(25歳):1.FSV マインツ05(ドイツ)

グループA

ロシア(FIFA ランキング66位)
サウジアラビア(67位)
エジプト(46位)
ウルグアイ(17位)

日時対戦カード場所
6月14日(木)17:00 ロシア vs サウジアラビア モスクワ
6月15日(金)14:00 エジプト vs ウルグアイ エカテリンブルク
6月19日(火)20:00 ロシア vs エジプト サンクトペテルブルク
6月20日(水)17:00 ウルグアイ vs サウジアラビア ロストフ・ナ・ドヌ
6月25日(月)16:00 サウジアラビア vs エジプト ヴォルゴグラード
6月25日(月)16:00 ウルグアイ vs ロシア サマーラ

グループB

ポルトガル(FIFA ランキング 4位)
スペイン(8位)
モロッコ(42位)
イラン(36位)

日時対戦カード場所
6月15日(金)17:00 モロッコ vs イラン サンクトペテルブルク
6月15日(金)20:00 ポルトガル vs スペイン ソチ
6月20日(水)14:00 ポルトガル vs モロッコ モスクワ
6月20日(水)20:00 イラン vs スペイン カザン
6月25日(月)20:00 イラン vs ポルトガル サランスク
6月25日(月)20:00 スペイン vs モロッコ カリーニングラード

グループC

フランス(FIFA ランキング 7位)
オーストラリア(40位)
ペルー(11位)
デンマーク(12位)

日時対戦カード場所
6月16日(土)12:00 フランス vs オーストラリア カザン
6月16日(土)18:00 ペルー vs デンマーク サランスク
6月21日(木)14:00 デンマーク vs オーストラリア サマーラ
6月21日(木)17:00 フランス vs ペルー エカテリンブルク
6月26日(火)20:00 オーストラリア vs ペルー ソチ
6月26日(火)20:00 デンマーク vs フランス モスクワ

グループD

アルゼンチン(FIFA ランキング 5位)
アイスランド(22位)
クロアチア(18位)
ナイジェリア(47位)

日時対戦カード場所
6月16日(土)15:00 アルゼンチン vs アイスランド モスクワ
6月16日(土)21:00 クロアチア vs ナイジェリア カリーニングラード
6月21日(木)20:00 アルゼンチン vs クロアチア ニジニ・ノヴゴロド
6月22日(金)17:00 ナイジェリア vs アイスランド ヴォルゴグラード
6月26日(火)20:00 アイスランド vs クロアチア ロストフ・ナ・ドヌ
6月26日(火)20:00 ナイジェリア vs アルゼンチン サンクトペテルブルク

グループE

ブラジル(FIFA ランキング 2位)
スイス(6位)
コスタリカ(25位)
セルビア(35位)

日時対戦カード場所
6月17日(日)14:00 コスタリカ vs セルビア サマーラ
6月17日(日)20:00 ブラジル vs スイス ロストフ・ナ・ドヌ
6月22日(金)14:00 ブラジル vs コスタリカ サンクトペテルブルク
6月22日(金)20:00 セルビア vs スイス カリーニングラード
6月27日(水)20:00 セルビア vs ブラジル モスクワ
6月27日(水)20:00 スイス vs コスタリカ ニジニ・ノヴゴロド

グループG

ベルギー(FIFA ランキング 3位)
パナマ(55位)
チュニジア(14位)
イングランド(13位)

日時対戦カード場所
6月18日(月)17:00 ベルギー vs パナマ ソチ
6月18日(月)20:00 チュニジア vs イングランド ヴォルゴグラード
6月23日(土)14:00 ベルギー vs チュニジア モスクワ
6月24日(日)14:00 イングランド vs パナマ ニジニ・ノヴゴロド
6月28日(木)20:00 イングランド vs ベルギー カリーニングラード
6月28日(木)20:00 パナマ vs チュニジア サランスク

ベスト16

 日時対戦カード場所
AF1 6月30日(土)16:00 C組1位 vs D組2位 カザン
AF2 6月30日(土)20:00 A組1位 vs B組2位 ソチ
AF3 7月1日(日)16:00 B組1位 vs A組2位 モスクワ
AF4 7月1日(日)20:00 D組1位 vs C組2位 ニジニ・ノヴゴロド
AF5 7月2日(月)16:00 E組1位 vs F組2位 サマーラ
AF6 7月2日(月)20:00 G組1位 vs H組2位 ロストフ・ナ・ドヌ
AF7 7月3日(火)16:00 F組1位 vs E組2位 サンクトペテルブルク
AF8 7月3日(火)20:00 H組1位 vs G組2位 モスクワ

準々決勝

 日時対戦カード場所
VF1 7月6日(金)16:00 AF1勝者 vs AF2勝者 ニジニ・ノヴゴロド
VF2 7月6日(金)20:00 AF5勝者 vs AF6勝者 カザン
VF3 7月7日(土)16:00 AF7勝者 vs AF8勝者 サマーラ
VF4 7月7日(土)20:00 AF3勝者 vs AF4勝者 ソチ

準決勝

日時対戦カード場所
7月10日(火)20:00 VT1勝者 vs VT2勝者 サンクトペテルブルク
7月11日(水)20:00 VT3勝者 vs VT4勝者 モスクワ

3位決定戦

7月14日(土)16:00 サンクトペテルブルク

決勝戦

7月15日(日)17:00 モスクワ

最終更新 Montag, 09 Juli 2018 10:25
 

ドイツと欧州の未来を予測 - 今後の政治・経済動向

ドイツと欧州の未来を予測
今後の政治・経済動向

2016年国民投票によって決定した英国のEU離脱、2017年の米ドナルド・トランプ政権の誕生など、世界中で予想外の出来事が起こっている現代。私たちが暮らすドイツでは、昨年9月に行われた総選挙から半年近くにわたり政権の不在期間が続いた。今年3月4日、第4期目となるアンゲラ・メルケル政権が始動した同国では、いま、さまざまな側面で転換期を迎えようとしている。(Text: 編集部)

ドイツ連邦議会総選挙から
第4次メルケル政権発足までの主な動き
2017年9月~2018年3月

2017年9月24日

●ドイツ連邦議会総選挙投開票。アンゲラ・メルケル氏率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が第1党となり、メルケル首相の4期目続投が決定する。

●右派政党、ドイツのための選択肢(AfD)が、前回の選挙から飛躍的に得票数を伸ばし、第3党に躍進。

AfDが第3党に躍進AfDが第3党に躍進

●選挙の結果を受け、社会民主党(SPD)は連立政権には加わらず、野党になる方針を明らかにした。

2017年10月18日

●CSU・CDU、緑の党、自由民主党(FDP)による連立協議が開始。

2017年11月19日

●CSU・CDU、緑の党、FDPによる連立交渉が、FDPの離脱により決裂。クリスティアン・リントナーFDP党首は、意見の相違により協議からの撤退を表明した。

リントナー氏連立交渉から撤退を表明したリントナー氏

2017年11月30日

●フランク=ヴァルター・シュタインマイヤー大統領がSPD党首のマルティン・シュルツ氏と会談を行い、連立政権の可能性を模索。シュルツ氏はこれまでの大連立政権への不参加を表明していた態度を軟化。

2017年12月7日

●SPDの党大会でマルティン・シュルツ氏が再選。緑の党、FDPと連立交渉が決裂したCSU・CDUとの大連立に向けての話し合いを継続することが決定。

2018年1月21日

●ボンでSPDの臨時党大会が開催。大連立政権協議入りの是非を巡って行なわれた投票で56%の支持率により、大連立政権への正式な協議が開始されることが決定した。

2018年2月7日

●CDU・CSUとSPDが大連立政権成立で合意。

CSU・SDU、SPDが連立政権成立で合意

2018年2月13日

●シュルツSPD党首が辞任を発表。SPD党内では連立政権成立の合意に伴い、シュルツ氏への批判が拡大していたため、政権発足の最後の砦となる党員投票を目前に早期辞任を発表することで混乱の収拾を図ったとみられる。

シュルツ氏がSPDの党首を辞任シュルツ氏がSPDの党首を辞任

2018年2月26日

●ベルリンで行なわれたCDUの臨時党大会で97%の支持を得て、SPDとの大連立政権に向けた協定を承認。

2018年3月4日

●SPD党員投票の結果、66%の支持率で大連立政権が承認。第4期目となるメルケル政権が発足・始動した。

第4次メルケル政権が始動第4次メルケル政権が始動

近年の欧州各国の主な動き

英国

2019年3月29日にEUから正式に離脱(予定)、2020年12月末までが移行期間となっており、自由貿易協定締結を目指す。2019年以降にはスコットランドの独立を問う住民投票が実施される可能性も。

フランス

2017年5月の大統領総選挙により、エマニュエル・マクロン政権が誕生。就任直後は支持率が低迷したものの、同年末に急上昇している。また、約半年にわたり政権の空白状態が続いたドイツに変わり、EUの中心的指導者としても注目を集めている。

スペイン

2017年10月に実施されたカタルーニャ州の独立是非を問う国民投票では、投票者の9割が賛成票に投じた。独立に反対姿勢の中央政府といまだに緊張状態が続く。また、プチデモン前カタルーニャ州政府首相の後任選出が難航中。

オーストリア

2017年10月に行われた総選挙の結果、世界最年少となる31歳のセバスティアン・クルツ氏(中道右派・国民党)が首相に就任した。同年12月には第3党の極右・自由党との連立政権樹立で合意し、今後は難民政策の厳格化が必至とみられている。

イタリア

2018年3月に実施されたイタリアの総選挙では、EUに批判的な姿勢を示してきた「五つ星運動」が躍進。政党連合では中道右派連合が最多で票を獲得。現在は新政権樹立に向け、「五つ星運動」と前与党・民主党との間で連立の可能性を探っている。

フィンランド、スウェーデン

2018年1月に行なわれたフィンランドの大統領総選挙では、親EU路線のサウリ・ニーニスト大統領が62.7%の得票率を獲得し、再選となった。また9月には、スウェーデンで総選挙が行なわれる予定。

ロシア

2018年3月に行なわれたロシア大統領選挙。開票率約95%の段階でウラジミール・プーチン氏の得票率が7割を超え圧勝し、6年の続投が決定した。現在は3月に英国で起きた元ロシアスパイ毒殺未遂事件で欧州連合(EU)との関係が悪化している。

政治 Politik

3月4日、ドイツでは第4次メルケル政権が始動した。欧州連合(EU)における結束や財政の強化を図ると共に、2015年から続くドイツでの難民問題、そしてITインフラにおける安全確保など、すでに課題は山積みだ。

執筆:熊谷 徹
早稲田大学政治経済学部卒業後、NHKに入局。神戸放送、報道局国際部、ワシントン特派員を経て、1990年よりフリージャーナリストとしてドイツ在住。 最新の著書には『5時に帰るドイツ人、5時から頑張る日本人 ドイツに27年住んでわかった定時に帰る仕事術』や『日本の製造業はIoT先進国ドイツに学べ』などがある。

キーワード 1 欧州統合の深化

メルケル政権は、連立協定書の中で欧州統合の深化を冒頭に掲げ、最も重要な目標として位置付けた。ドイツ政府は欧州連合(EU)について、同国の今日の繁栄や安全保障にとってかけがえのない存在と考えている。具体的には、EU財政の強化を提案しており、「ドイツは財政的貢献を増やす準備がある」と明言している。また2009年に表面化したような債務危機の再発を防ぐために、ユーロ圏加盟国の成長力を強めるための政策を取り、インフラ投資を増やす。

フランスのマクロン大統領は、「ユーロ圏に独自の予算権を持つ財務大臣のポストを新設すると共に、国際通貨基金(IMF)の欧州版である欧州通貨基金(EMF)を創設するべきだ」と提案するなど、ユーロ圏の抜本的な改革を求めている。メルケル政権はこれらの提案について、フランス政府と具体的な協議を始めなくてはならない。

メルケル氏(左)とマクロン氏第4次政権樹立後、初の外遊先として3月16日に訪れたフランスにて。首脳会談を行なったメルケル氏(左)とマクロン氏

またドイツはほかのEU加盟国と協力して、米国政府が取り始めているような保護主義的な政策に反対する。EU市民、特に若者が域内で自由に移動し、他国の文化に接することができるように、エラスムスなどの交流プログラムを拡充する。

EUでは、東西間で不協和音が強まっている。つまりポーランド、ハンガリー、チェコなどで、西欧の普遍的価値である三権分立や言論の自由を尊重せず、EUに批判的な政権が出現している。これらの国々は、欧州での影響力拡大を目指す中国に急接近している。このためドイツにとっては、中東欧諸国との「和解」をいかに達成するかも重要なポイントだ。

さらに欧州では、ロシアのクリミア半島併合や、ウクライナ内戦介入によって、安全保障上の懸念が強まっている。かつての東西冷戦を想起させる状況だが、米国は孤立主義的な傾向を見せており、将来欧州で勃発した局地紛争に軍事介入するという保証はない。つまりドイツなどEU加盟国は、米国抜きでも独自に危機管理を行える能力を早急に身に着けなくてはならない。このためEU加盟国による緊急展開部隊や、兵器調達の効率化を急いでいる。

欧州で活動する日本企業にとって、ブレグジット(英国のEU離脱)は想定外の事態だった。その意味でドイツの主導権の下にEUが結束を強化することは、日本企業にとっても大きな意味を持つ。

キーワード 2 難民数のコントロール強化

多くのドイツ市民は2015年のシリア難民受け入れに強く反発し、伝統的な政党への支持率は大幅に下がった。これは右派ポピュリズムの高まりの原因の一つとなっている。しかしメルケル政権は、憲法(基本法)が保障する亡命権を制限せず、将来も国際法に基づいて難民に庇護を与える方針を打ち出している。

だが同政権は、連立協定書の中で「1年間の難民受け入れ数が18万~22万人を超えないようにする」という大枠を設定することで、市民の理解を得ようとしている。そのために、EUの難民受け入れの基準である「ダブリン協定」を改正し、難民がEU加盟国の中で公平に配分されるようにする。現在、難民受け入れの負担はドイツなど一部の国に偏り過ぎている。

難民申請2015年、ドイツへの難民申請を行なうために施設で待つ人々

さらにドイツ市民の不満を抑える上で重要なのは、難民の社会への融合を急ぎ、彼らが社会保障制度に大きな負担となる事態を避けることだ。メルケル政権は、イスラム国という異なる文化圏からの難民の社会への融合を促進するために、専門家委員会を設置し、法的な枠組みや支援措置の整備を急ぐ。また、中東や北アフリカ諸国では、出生率が欧州を大幅に上回っているが、経済成長率は低く、多くの若者にとって住居や就職、結婚の機会が不足している。このためドイツ政府は、国連やほかのEU諸国と共に、中東・北アフリカ諸国の経済基盤の強化に手を差し伸べる方針だ。これらの国々の若者が経済難民として欧州を目指す傾向に歯止めをかけることは、21世紀のEUにとって最も重要な対外政策の一つである。

キーワード 3 治安の確保

ドイツでは近年イスラム過激派によるテロや、難民などによる暴力事件が増加する傾向があるが、警察官や裁判官の数が圧倒的に不足している。このためメルケル政権は、警察官の数を1万5000人増やすほか、連邦裁判所・州裁判所の裁判官の数を2000人増やす。さらに犯罪の広域化に対応して、治安当局、州警察の間の情報の流れをスムーズにするために、犯罪者や容疑者に関するデータを連邦刑事局が集中的に管理するシステムを構築する。

ドイツ鉄道2017年5月に起こったサイバー攻撃によって被害を受けたドイツ鉄道では、掲示板の不具合などが起こった

ただし欧州では、各国の諜報機関や警察の間の情報交換が不十分である。特にイスラム過激派の無差別テロを未然に防ぐためには、欧州全域でデータの流れを改善する必要があるだろう。

またメルケル政権は、ハッカーなどによるサイバー攻撃が政府や民間経済に多大な損害を与える危険が強まっているとして、ITシステムの安全確保にも力を入れる。特に医療機関、エネルギー産業、金融機関などの重要なインフラストラクチャーについては、サイバー攻撃に対する防御態勢を強化する。

経済 Wirtschaft

ドイツにおける2018・2019年の国民総生産は約2%の増加が見込まれており、過去50年間で最も長い好況期となる可能性がある(※)。しかし、日本同様に高齢化社会による技術者不足など、社会的な問題が背景にある経済的懸念事項を抱えていることも事実だ。
(※)詳細なデータは www.prudentia-mr.com にて公開

執筆:編集部 話を聞いた人:湯川久美子さん
独ビーレフェルト大学にて経済博士号を取得。専門はデータ分析。2007年にデュッセルドルフにてプルデンシア・マーケティングリサーチを共同設立。同社のマネージングディレクター。市場・ユーザー動向から業界・競合動向、技術・規格動向まで、ドイツ・EUにおける幅広い市場・競合分析サービスを手掛ける。 http://prudentia-mr.com

キーワード 1 中国の脅威

貿易パートナーとして深い関係にあるドイツと中国。もともとドイツは発展途上段階にあった中国との貿易や直接投資を通して、社会主義国家である中国の体制を民主主義へとシフトさせたいという政治的な狙いがあった。しかし、ここ数年の間に中国が多額でドイツ企業を合併・買収するケースが増えており、近年ではその立場が逆転しつつあることが顕著になっている。中でも大きな衝撃を与えたのが、2016年の中国家電メーカー「美的集団(Midea Group)」による独ロボット大手「クーカ(KUKA)」の買収だ。クーカ社は、「インダストリー4.0」において重要な企業であるため、この買収をきっかけに2017年7月より経済省では、ドイツ企業が欧州以外の企業に買収される際の審査基準の厳格化を打ち出した。

中国とドイツの間の直接投資(2000年~2016年)

中国における欧州への直接投資は2011年頃から急激に上昇しており、2016年は32%がドイツへの投資となっている。中国のドイツにおける直接投資は、2015年(12億ユーロ)から2016年(110億ユーロ)にかけて817%も増加した。中国が主にターゲットとしている市場は、欧州全体では機械・インフラ・情報通信を、ドイツに対しては機械・自動車が上位を占めている。また、中国の複数の自動車ブランドが2019年~2021年を目処に、電気自動車(EV)を中心に欧州市場に参入する計画を立てているため、ドイツ市場の自動車シェアも大きく変化する可能性がある。

これらの状況が続くことにより、中国がドイツ企業からノウハウを吸収した後、生産拠点を中国に移したり、買収したドイツ企業での従業員の削減などの問題が懸念される。また、中国による欧州企業への投資が増えても、欧州企業の中国市場へのアクセスが阻害されていることもあり、その不公平さから経済的なリスクが高まっている。

キーワード 2 米国との貿易摩擦

3月1日に鉄鋼(25%)・アルミニウム(10%)に輸入関税を課すことを表明した米国のトランプ大統領。これに対して欧州連合(EU)が一部の米国からの輸入品に25%の関税を課す報復措置を検討していることが分かると「EUから輸入される自動車に関税を課すだけだ」とツイッターで発信。同月22日にはEUの適用除外が発表され、たが、この暫定措置は延期されず5月1日以降は関税が課される見通し(4月27日現在)。このようにトランプ大統領はSNSを駆使して世界の政治・経済を混乱させる内容を発信している。

トランプ氏は2017年1月にもEUからの自動車輸入に対して35%の関税を課すという案をツイッターで発表している。現在、欧州から米国へ自動車を輸出する際の関税は2.5%、米国から欧州へ輸入する際の関税は10%となっているため、10倍以上もの輸入関税をかける案は非現実的とみられる。しかし、万が一この案が決議された場合は、現在、年間約100万台を超える米国への輸出量が51万6000台に、売上は最大約170億ユーロも減少することが見込まれる。

キーワード 3 英国のEU離脱

2019年3月29日にEUから正式に離脱を予定している英国。ドイツにとって英国は米国に次いで2番目に大きな貿易黒字相手国でもある。ドイツ経済に大きな打撃を与える可能性が考えられるのがハードブレグジット、すなわちEU単一市場と関税同盟から外れ、世界貿易機関(WTO)のルールが適用される場合のドイツから英国への自動車・自動車部品の輸出や雇用に関わる問題だ。まず完成車の輸出量は現状から31%減少すると見られており、自動車部品の年間売上は38億ユーロ落ち込む可能性が考えられる。その影響により、自動車部品メーカーに勤務する1万4000人もの人々が職を失う恐れがあるという。EUと英国との間の通商交渉の結果次第では、生産拠点の移転など大きな変化が起こるとみられている。

また、ブレグジット以前の中国や韓国による不動産投資の規模はロンドンが断トツで大きかったが、ブレグジット決定後は、その動きがドイツへと移行しつつある。現状の家賃高騰は直接この動きには関係していないものの、今後ロンドンと同様に不動産価格が高騰する可能性も考えられる。

メイ首相EU離脱後の欧州と経済パートナーシップについてスピーチを行なう英国のメイ首相

キーワード 4 技術革新

毎年春には世界最大級の産業見本市「ハノーファーメッセ」を開催するなど、「インダストリー4.0」を牽引する国の一つであるドイツだが、実はITインフラの部分でさまざまな問題点がある。まず、ドイツにおけるインターネット回線の速度は世界で26位とかなり低い水準であり、光ファイバーの普及はドイツ全土の2.1%。ドイツ政府は現在、2025年までの通信インフラ整備を公約しているが、その頃にはメルケル首相の4年の任期が終わっており、実現に向けてまだまだ不透明な部分がある。

また、米国や中国ではICT関係の産業が強いことに比べて、ドイツは昔ながらの自動車や機械産業が国を支えているのが現状。さらなる技術革新に向けて、少子高齢化や人口の減少による専門職従事者の確保、インターネットなどの情報通信インフラの整備、米国や中国に対抗できるようなIT関連のスタートアップ企業の支援基盤を創ることが今後の課題となりそうだ。

ハノーファーメッセ今年のハノーファーメッセに視察に訪れたメルケル首相(右)

最終更新 Montag, 25 Juni 2018 11:53
 

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