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オクトーバーフェスト200周年

オクトーバーフェストビール王国ご自慢の祭り ミュンヘン・オクトーバーフェスト200周年

短いドイツの夏が足早に過ぎ去ろうとしているこの時期、南部最大の都市ミュンヘンは、ある秋の行事に向けた支度でにわかに騒がしくなる。年に一度、ビール王国ドイツの威信をかけて盛大に開催される「オクトーバーフェスト」が近付いているのだ。人々が1リットルジョッキを片手に肩を組み合い、飲めや歌えの大騒ぎで羽目を外す2週間の巨大イベント。200周年を迎える今年は、どんな盛り上がりを見せるのだろう。

(編集部:林 康子)

オクトーバーフェスト200年の歩み
始まりは王家の結婚式

元々は、ビールの醸造シーズンの到来を告げる祝祭としてドイツ各地で催されていた「オクトーバーフェスト」。ミュンヘンにおけるこの祭りの起源は1810年10月12日、時のバイエルン王国の王子ルートヴィヒ(後のルートヴィヒ1世)とザクセン=ヒルトブルクハウゼン公の娘テレーゼとの結婚式に遡る。結婚式の宴は5日間にわたって執り行われ、最後は競馬で締め括られたという。競馬場となった卵型の広場は、後に王妃テレーゼにちなんで「テレージエンヴィーゼ(Theresienwiese)」と名付けられ、さらにミュンヘンっ子の間では「ヴィーズン(Wiesn)」の通称で親しまれるようになった。その後200年間変わらずこの場所で、世界最大のビール祭りオクトーバーフェストが行われてきたのである。

バイエルン王国左)Prinzen Therese von Sachsen-Hildburghausen, um 1810 ©Münchner Stadtmuseum

右)Nach M.V. Kellerhoven, Kronprinz Ludwig von Bayern, um 1810 ©Münchner Stadtmuseum

国民的なビール祭りへ

王家の結婚式以降も引き継がれていった祭りの伝統は、1900年頃から国民的なビールの祭りへと発展。地元の醸造所が祭り会場にブースを設けてビールを提供するようになった。これが現在の巨大なテントの原型である。各醸造所は宣伝用ポスターを飾るなど客寄せに力を入れ、遊園地のアトラクションや、曲芸、音楽ショーなども登場して祭りの規模はさらに拡大。戦時中の休止や規模縮小を経て、49年にTrachten(民俗衣装を着た人々)やSchützen(射撃団)によるパレードが新たに加わって復活した。そして50年には、酒場の店員に扮したミュンヘンのトーマス・ヴィマー市長が「O' zapft is!(樽が開いた!)」の掛け声でビール樽を割り、祭りの開幕を宣言。ここに、現在まで続くオクトーバーフェストの形が完成した。

昔のオクトーバーフェストGustav Kraus, Festzug vor dem Königszelt, 1835 ©Münchner Stadtmuseum

Das Oktoberfest 1810-2010
オクトーバーフェストの歴史がまるわかり!
ミュンヘン市立博物館 「オクトーバーフェストの歴史展」

ビール樽からジョッキ、テントの中の机や椅子、食器、宣伝用ポスター、ウェイターの民俗衣装まで、歴代のオクトーバーフェストで実際に使用されてきたものを通して、200年のオクトーバーフェスト史を余すところなく披露する特別展。歴史のみならず、「会場のテントってどうやって作られるの?」「ビールはどうやって会場に持ち込まれるの?」など、オクトーバーフェストにまつわる疑問も、この展覧会を観ればすべて解消される!

2010年10月31日(日)まで開催中
開館時間:10:00~18:00 火10:00~21:00 
月曜休館
入場料:6ユーロ(割引3ユーロ、ファミリー9ユーロ)
Münchner Stadtmuseum St.-Jakobs-Platz 1, 80331 München
www.stadtmuseum-online.de

200周年のオクトーバーフェストを200%楽しもう!

テント

オクトーバーフェストの来場者数は、毎年2週間で約600万人。この数字は1960年以降ほとんど変わらないが、ビールの消費量はこの50年間に約300万リットルから650万リットルへと伸長し、世界最大級のビール祭りの勢いは止まらない! 基本情報と200周年記念プログラムを予習して、いざミュンヘンの地へ。

オクトーバーフェスト地図
クリックで拡大

オクトーバーフェスト 基本情報
期間 9月18日(土)~10月4日(月)
会場 Theresienwiese, 80336 München
時間 平日 10:00~22:30、土日祝 9:00~22:30
入場料 無料 ※200周年記念会場のみ4ユーロ(14歳以下無料)
公共交通機関
でのアクセス
S-Bahn: S1/S8でHackerbrücke下車。S7/S20/S27でHeimeranplatzまで行き、U4/U5に乗り換えてTheresienwieseまたはSchwanthalerhöhe下車
U-Bahn: U3/U6でGoetheplatzまたはPoccistraße下車。
U4/U5でTheresienwieseまたはSchwanthalerhöhe下車
※ その他、バスや路面電車の利用も可

 

オクトーバーフェストのビール

ビールオクトーバーフェストの営業規定によれば、伝統あるミュンヘンの6つの醸造所で造られたビールのみ、会場で提供することが認められている。アウグスティナー(Augustiner)、レーヴェンブロイ(Löwenbräu)、ホーフブロイ(Hofbräu)、パウラーナー(Paulaner)、ハッカー・プショール(Hacker-Pschorr)、シュパーテン(Spaten)だ。ビール純粋令に則ってこの祭りのためだけに造られたビールは、麦芽とホップの量が通常のビールよりやや多く、その分アルコール度数も平均6%と高め。また炭酸分が少ないため喉越しがさっぱりとしていて、脂身の多いバイエルン料理と合わせるには最適だ。今年の値段は1杯(1リットル)8.30~8.90ユーロ。

テントの予約

世界中からビールファンが押し寄せる祭りでは、テント内の席は事前に予約しておくのが無難。とは言え、屋内外に約8000席を抱える大きなテントでは月曜~金曜は3分の1の席、土日・統一記念日(10月3日)は全席について予約を受け付けていないので、予約なしでも席を確保できるチャンスは大きい。また、規模は小さいものの、アットホームで落ち着いた雰囲気の中で、ビールやバイエルンの名物料理をゆっくりと堪能できる中小のテントやワインテント、カフェもオススメ。各テントの予約受付用電話番号は、オクトーバーフェストの公式ホームページ(www.oktoberfest.de)の「Zelt」のバナーからお目当てのテントを選んで確認しよう。

オクトーバーフェスト 今年の見どころ

200年前のお祭りムードを再現
ヒストリー・テント 

ヒストリー・テント
Fischer-Vroni, 1907 ©Münchner Stadtmuseum

「オクトーバーフェストの原点に帰ろう」をモットーに今回特別設置されるテント。昔の射撃盤や射撃団の勲章ワッペン、ジョッキなどが飾られたノスタルジックな雰囲気漂うテント内で、連日バイエルン伝統のフォークダンスや靴ダンスなどが披露される。また、ミュンヘンの醸造家たちが共同で造った200周年記念ビール(1リットル8.80ユーロ)も味わえる。200年前の醸造法で再現されたビールは、透き通るような琥珀色と芳醇な麦の香りが特徴。当時のレシピに忠実に作られた寸詰まりソーセージなどの料理と合わせて召し上がれ。

バイエルンの文化に触れる
ヘルツカスパーのテント

南ドイツ、オーストリア地方で人形劇の道化役、もしくはその人形を意味するカスパー(Kasperl)。このちょっと生意気だけど好奇心旺盛なバイエルン独自のキャラクラーにちなんで、今年のオクトーバーフェストでは“ヘルツカスパー(Herzkasperl)”という名のテントが設置される。ここではカバレットや演劇、民俗音楽、舞踊など、バイエルンの暮らしや伝統を紹介するプログラムが毎日催される。9月19日には、公募による予選を勝ち抜いた5組のアマチュア・アーティストたちが、オリジナルのパフォーマンスを披露する。

パレード
Nr. 32a, Konzert der Wiesnkapellen vor der Bavaria Foto: Robert Hetz, Tourismusamt München

祭りを派手に飾る
イベント パレード&競馬

今年のオクトーバーフェストは、 ルートヴィヒとテレーゼの結婚25周年の祝祭行列を模したパレードから始まる。9月18日の11時、ミュンヘン交通センターの敷地内にバイエルン地方の射撃団や鼓笛隊、騎馬隊などが集結し、テレージエンヘーエ通りから南入り口を通ってヒストリー・テント近くの競馬場“Der große Ring”に到着するコースを約1時間掛けて練り歩く。そしてミュンヘンのウーデ市長による12時の開幕宣言に続き、競馬がスタート。初日以降も毎日、パレードは11時と16時、競馬は13時と18時にそれぞれ開催される。

老若男女が我を忘れて大はしゃぎ
乗り物・アトラクション

アトラクション
Nr. D-1170, Kettenkarussell auf der Wiesn Foto: B. Roemmelt, Tourismusamt München

今やオクトーバーフェストに欠かせないアトラクションが、初めてテレージエンヴィーゼに登場したのは1850年。アトラクション自体は時代とともに新しくなったが、今も昔も祭りを盛り上げる立役者であることに変わりはない。レトロなオルガンの音色に合わせて一風変わった自転車を器用に操縦し、前に進ませる「Veldrom」や1939年に建造されたオクトーバーフェストの中でも最も古いメリーゴーランド「Fahrt ins Paradies」、本物のポニーの背中に乗れる「Pony-Parcours」のほか、観覧車やジェットコースターなど、大人も子どもも楽しめるアトラクションが充実!

お土産にはコレ!

オクトーバーフェストを200%楽しむため、忘れられない思い出として残すため、あるいは残念ながら行くチャンスはないけれど、気分だけでも楽しみたい人のために、オクトーバーフェスト・グッズはいかが?

ジョッキOffizieller Jubiläumskrug
33ユーロ

ルートヴィヒとテレーゼの顔が描かれた今年限りの200周年記念ジョッキ。

ハンドバッグDirndlhandtasche
28.50ユーロ

女性が着るバイエルンの民俗衣装ディアンディルをあしらったハンドバッグ。


看板Schild “Biergarten“
14ユーロ

自宅にビアガーデンを作ってしまいたいほどにビールを愛する人のための標識。

オクトーバーフェスト公式ショップ(http://shop.oktoberfest.de)より購入可能

オクトーバーフェストで食べる!

オクトーバーフェストを訪れる最大の目的はビールだけれど、白ソーセージ(Weisswurst)や豚のすね肉(Schweinshaxe)など、バイエルンならではの料理を味わえるのもこの祭りの醍醐味。とりあえず“ビール1杯!(A Maß Bier!)”と頼んだら、次はバイエルン方言で料理を注文してみよう!

食べ物編
• Bauernseufzer: 燻製の焼きソーセージ
• Braukraut: 赤キャベツ
• Brezn: プレッツェル
• Erdäpfel:じゃがいも
• Fleischpflanzerl: ハンバーグ(Frikadelle)
• Hendl: 雄鶏のグリル
• Kas/ Kaas: チーズ
• Semmel: パン(Brötchen)
• Ribbal: 燻製もしくは塩漬けの豚肉(Kassler)

飲み物編
• Grachal/ Krachal: レモネード
• Russ: ヴァイツェンとレモネードのミックスビール
• Starkbier: ボックビール
• Weißbier: ヴァイツェンビール

デザート編
• Apfelkiachl: リンゴケーキ
• Rohrnudeln: ブフテルン(パン生地にジャムやクリームチーズを練り込んで焼いたオーストリアの菓子)
• Zwetschgendatschi: セイヨウスモモのケーキ

小島店長レストランTOSHIのビールに合う日本食!

「世間はオクトーバーフェストで盛り上がっていることだし、ビールは飲みたい。でも、それと合わせるのは、やっぱり食べ慣れた和食がいいよな~」という人も多いはず。そんなあなたには、オクトーバーフェスト・ムード一色に染まるミュンヘンの街中で、絶品の日本食をいただけるレストラン「TOSHI」がオススメだ。

小畠店長オススメのビールに合うメニュー 3品はこちら!

自家製キムチ イベリコ餃子 フォアグラとフィレステーキ
自家製キムチ
(白菜・大根)

すっきりさわやかな味の決め手は、隠し味の柚子!
TOSHIオリジナル
特製イベリコ餃子

イベリコ豚肉と野菜をふんだんに使い、カリッとした焼き上がりに。
フォアグラと
フィレステーキの鉄板焼

西京味噌に漬け込んだフォアグラとフィレステーキの組み合わせ。

Restaurant TOSHI
Wurzerstraße 18, 80539 München
TEL: 089-25546942
営業時間:月~金12:00~14:00、月~土18:00~24:00 日休
www.toshi.de.com

最終更新 Dienstag, 13 August 2019 16:29
 

チェリスト 石坂団十郎インタビュー 「生きる喜び」を弓で奏でる

チェリスト石坂団十郎

「磨き抜かれた確かな技巧」「優れた音楽的感性」と、
クラシック音楽界が声高に絶賛する新進気鋭のアーティストがいる。
著名なオーケストラとの共演やリサイタル、室内楽演奏で
日々忙しく世界中を駆け回っている
独日ハーフのチェリスト、石坂団十郎だ。
演奏する先々で聴衆の心を揺さぶる彼の音楽的パワーは
どこから来るのだろうか。
熱い情熱の根源に迫るべく、
彼自身に音楽家としての半生を語っていただいた。
(編集部:林 康子)

チェリスト石坂団十郎

「磨き抜かれた確かな技巧」「優れた音楽的感性」と、
クラシック音楽界が声高に絶賛する新進気鋭のアーティストがいる。
著名なオーケストラとの共演やリサイタル、室内楽演奏で
日々忙しく世界中を駆け回っている
独日ハーフのチェリスト、石坂団十郎だ。
演奏する先々で聴衆の心を揺さぶる彼の音楽的パワーは
どこから来るのだろうか。
熱い情熱の根源に迫るべく、
彼自身に音楽家としての半生を語っていただいた。
(編集部:林 康子)


石坂団十郎 / Danjulo Ishizaka
1979年、ボン生まれ。日本人の父、ドイツ人の母を持つ。4歳からチェロを弾きはじめ、ボリス・ペルガメンシコフらに師事。92年若い音楽家のためのチャイコフスキー国際コンクール(モスクワ)特別賞受賞、2001年ARD ミュンヘン国際音楽コンクール第1位、02年エマヌエル・フォイアーマン大賞コンクール(ベルリン)グランプリ受賞、03年 には世界的な活躍が期待されるアーティストに贈られる「ヤングアーティスト・オブ・ザ・イヤー」を受賞するなど、コンクール受賞歴 多数。06年のデビューCD「チェロ・ソナタ」はドイツのグラミー賞とも言われるドイツ・フォノ・アカデミー主催のエコー・クラシック賞で「新進演奏家賞」を獲得。現在はベルリンを拠点に世界各地で演奏活動を展開中。

音楽は寝食と同じ

4歳でチェロを始められたそうですが、きっかけは何だったのでしょうか?

母親がピアノの先生だったこともあり、4歳でまずピアノを習い始めました。ただ、姉と兄が2人ともすでにヴァイオリンやピアノを弾いていたので、母に「うちにはチェリストがいないから、チェロを習うと良いわね」と言われて、5歳になる前にチェロを習い始め、兄妹3人で「石坂トリオ」を組むことになったんです。トリオはその後16年間、僕が20歳になるまで続けました。

まさに、音楽一家に生まれ育ったんですね。子どもの頃はひたすら練習、練習の日々でしたか?

チェロを習い始めた頃は、母について弓だけを持って動かす練習をしていましたが、しばらくしてから楽器を持って、少しずつ弾いていきました。すでに楽譜を読めたので、弾くこと自体はそれほど難しくありませんでした。ただ、一番辛かったのは練習です。母によく「練習しなさい」と厳しく言われたものです。学校から帰ったらまず宿題をし、それが済んだらピアノとチェロの両方の練習、その後はトリオの合わせ、というのが日課でした。そして週末になると祖母の家に行き、ハウス・コンサートを開いていました。そんな半生でした(笑)。学校の友達と遊ぶ時間もなくて……。 今思うと、それはやはり辛かったですね。「本当に音楽を続けたいのかな」と自問することもありました。

それでも弾き続けてこられた理由とは?

音楽が好きだからです。音楽は僕にとって、食べることや寝ることと同じ、生活の一部なのです。母親にも「音楽家になる以外、ほかに選択肢はないのですよ」というようなことを言われ、それなら音楽家になるしかないと思っていましたからね。

過去、師事した先生には、どのようなことを教わりましたか?

様々な先生の指導を受けましたが、最も影響を受けたのはボリス・ペルガメンシコフ氏 *1です。彼に初めて会ったのは8、9歳の頃。その後1年に1度くらいの頻度で会い、講習会にも行っていました。そして「石坂トリオ」をやめてベルリンに引っ越してから、本格的に彼の下で習い始めました。自ら多くの演奏会をこなし、舞台経験が豊富な先生だったので、彼には絶大な信頼を寄せていました。通常、音楽家は10、11歳くらいでオーケストラと初共演するのですが、僕の場合はそれが19歳のときでした。とても緊張していたのですが、「この曲のこの部分はファゴット、ここはク ラリネットをよく聴いて」など、とにかく細かく指導してくれました。そんな先生を頼りにしていたので、集中して弾くことができたのです。

また先生は、曲が作られた当時の文化的背景や作曲家が生きた時代の社会・歴史などにも詳しく、楽曲を知るに当たって、どんな本を読めば良いかなども教えてくれました。演奏する際、曲の背景を思い浮かべながら弾けるようにと。

曲の内容を理解し、イメージを創り上げる

1992年、13歳で挑戦した「若い音楽家のためのチャイコフスキー国際コンクール」にて最年少で特別賞を受賞したことを皮切りに、その後、数々のコンクールに出場し、受賞されていますね。やはり、コンクールでの勝負が音楽家のその後のキャリアを左右すると思われますか?

音楽家としてのキャリアを積むには様々な方法があり、コンクールを重ねて大物になる人もいれば、コンクールを全く受けない人もいます。コンクールで受賞すれば、演奏会の機会が一気に増えます。例えばフォイアーマン・コンクールで勝てば、その後の20公演は決まりますね。また、コンクールを受けなくても、オー ケストラの指揮者から「一緒にやってみないか」と声を掛けられ、そこから段々と演奏機会が増えるパターンもあります。そうして有名になっていきます。

僕自身は、コンクールを受けるのがあまり好きではありませんでした。その理由は、コンクールでは自分の好きなように弾けないからです。勝つために、先生に言われた通りに弾くしかない。でも、そもそも音楽はコンクール(=競争)には向いていないと思うんです。自分で曲の内容を考えて理解し、イメージを創り上げて弾くのがベスト。スポーツのように比べられるものではなく、芸術なのですから。

2004年に日本デビューを飾って以降、NHK交響楽団をはじめ、数々の日本のオーケストラと共演されていますね。特にヴィブラートを抑えたピリオド奏法 *2 が好評を博したとのことですが、この奏法を実践されたのはなぜですか。

2006年にロジャー・ノリントン *3 指揮でNHK交響楽団と共演したのですが、ノリントンはどのオーケストラに対してもノン・ヴィブラートで弾くよう依頼する指揮者で、僕もそれに合わせようと思ったのです。その際はエルガーの協奏曲を弾いたのですが、ノリントンと共通のイメージを作ろうと、なるべく彼の意見を受け入れました。演奏自体は上手くいったと思うのですが、自分としてはあまり納得がいきませんでした。

僕自身は、曲によって付けるヴィブラートの数を決めます。バッハの曲は内向的で、それほど音楽を“見せる”必要はないと思うのでほとんど付けませんが、ロマン派の曲では、やはりヴィブラートを付けた方が雰囲気を出せると思っています。

自然な状態で、音楽を感じながら弾く

1日にどのくらい練習されるのでしょうか。

必要なときは、1日8時間くらい弾くこともありますね。もちろん、コンサートで移動があるときはそんなに練習できませんが。また、疲れて体力が落ちているときなど、夜まで練習しない日もありますが、そんなときでも「弾かなければ……」「申し訳ない」という思いが心のどこかにあります。

楽器の演奏は、まさに「体力勝負」なのですね。

音楽家だって人間なので、疲れることもあります。弾く気になれなくても練習しなければいけないときは、最も難しい部分だけを集中して弾いたり、逆に調子が良い日は細部まで練習したりします。どのくらい練習が必要なのかは自分が一番良く分かっているので、自然と練習の時間を決めていますね。また、緊張すべきところで力を入れて、そうでないところはリラックスして弾くことを心掛けています。

練習はプログラミングのようなもので、それによって体はもう弾き方を覚えています。ですから舞台では自分を信じ、音楽を感じながら弾きます。自然な状態で音楽を感じることができるときに、一番良い音が出るのです。

楽器の個性を大切に

石坂団十郎

ハードな練習で、そして本番で、石坂さんが毎日付き合う楽器も気になります。現在使われているチェロの1つは、日本音楽財団から貸与されている1696年製ストラディバリウス *4 の名器だそうですね。

毎年、日本音楽財団に自分のプロフィールや演奏活動スケジュール、デモテープに、楽器を使いたい理由を添えて送ります。それを財団が見て判断し、貸与が決まります。今、貸与されている楽器はもう6年ほど使っています。

楽器との関係は、人間との関係と同じ。楽器には個性があり、自身のプライドもあるようなので、喧嘩っぽくなることもありますね。また日によって、あるいは天候によって出る音が変わってくるので、楽器の調子に合わせて弾くことが大切です。コントロールしようとしすぎると音を潰してしまうので、常にコミュニケーションを図りながら、楽器に対してオープンに接しています。

そんな相性の良いチェロと共に、1年間でどのくらいの数のコンサートをこなされていますか?

今年はオーケストラ、室内楽、リサイタルで60~70回くらいですね。いつも同じ曲を弾くなら、もっと数を増やせるのでしょうが、演奏プログラムを考えなければならないので、回数的にはそのくらいで十分という感じです。

ロマン派が好き、でも最近はジャズやタンゴも

好きな作曲家、好きな楽曲について教えてください。

ロマン派、特にシューマンが大好きです。彼は妻のクララと付き合い始めた当初、クララの父が厳しかったこともあり、内密な交際をしていました。その間に作られた曲には寂しさや孤独感が表れていて、それがすごく綺麗なのです。ほかには、シェーンベルク *5 の『浄められた夜』。あれは最高ですね。デーメルの詩 *6『浄夜』を元に作られたとてもロマンチックで綺麗な弦楽曲です。

バッハの『無伴奏チェロ組曲』や『ブランデンブルク協奏曲』『ヴァイオリン協奏曲』も良いですね。それから、ベンデレツキ *7 などの現代曲も好きです。今、ミヒャエル・デンホフという現代ドイツの作曲家が僕のためにチェロの曲を作ってくれています。

クラシック以外の曲を聴くことはあるのですか?

以前はクラシック以外の曲は全く聴かなかったんですが、最近、友達に勧められてジャズを聴くようになりました。あと、マイケル・ジャクソンとかも。『Thriller』とか『Bad』とか、踊りが格好良いですよね。彼が天才だったということも分かってきました。

タンゴも好きかな。最近、アルゼンチンのピアニストと、ピアソラ *8 が作曲したチェロとピアノのための曲でタンゴ・デュエットもしたんですよ。いつかはタンゴ・リサイタルもやってみたいですね。

どんな感情も、音楽で表現できる

石坂さんにとって、ずばりチェロの魅力とは何ですか?また、音楽家であることの醍醐味とは?

魅力はやはり、音の美しさですね。チェロの音色は、どこか人間の声に似ている気がします。そして音楽の持つ力。悲しいときに音楽を聴けば落ち着き、苦しい状況のときに聴くと希望が沸きます。

例えば、ロシアで市民が国家による圧政を受けていた時代、音楽は人々の望みでした。音楽がなかったら市民は生きていられなかったかもしれません。音楽は人に考えることを促す存在でもありますからね。それほど音楽の力は強く、“Lebenslust(=生きる喜び)” であると言えます。

音楽家の醍醐味は、人間のどんな感情でも表現できることです。チェロの演奏をするとき、僕は自分の感情を表現し、観客と一体になり、音楽を“体感”することができます。言葉では表現できないことを演奏によって表し、また弾くことの中から新たなイメージが沸いたりもします。

もちろん日によって感情も体調も異なり、経験から 「今日の演奏はこんな感じになるだろう」と予測できるものではありません。あまり集中できないときもあれば、全く期待していなかったのに、自然に良いイメージを膨らませて弾けるときもあります。

常に音楽と向き合っていらっしゃいますが、音楽家であることから離れることはあるのでしょうか?

休みの日は映画を観たり、友達に会ったり、本を読んだり、卓球をしたりして過ごしています。たまにスキーや山歩きもしますね。父が昔、スキーのインストラクターをしていたということもあって。その他、リラックスするために最近はヨガもやっています。

音楽がずっと絶えないように……

今後、新たに挑戦してみたいことはありますか?

そろそろ教える立場に立っても良いかなと思っています。これまでは自分のことで精一杯で叶いませんでしたが、教えるからには自分の教え子に責任を持ちたいと思いますね。もちろん、まだ少し先の話ですが。今後も、オーケストラとの演奏や室内楽は続けていきたいです。

最後に、ドイツニュースダイジェストの読者にメッセージをお願いします。

北極の氷が年々溶けているのと同じように、近年人々のクラシック音楽に対する興味が薄くなっています。30、40年後、今と同じようにコンサートを聴きに行けるかどうか、保証はありません。ですから、私たちの後の世代もずっと音楽を聴き続けられるように、音楽がなくならないようにしてほしいと思います。ぜひ演奏を聴きに行ってください。「音楽は(想いを表現する)言葉のようなもの」ということを未来の世代に伝えるために。

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石坂さん「どうも、はじめまして。石坂です」── インタビュー前、そう言いながら満面の笑みを投げかけてくれた石坂さん。若き偉才チェリストとして世界が注目する音楽家の気さくさに、緊張で凝り固まっていた体が一気にほぐれた。終始和やかに進んだインタビューだが、投げかけた質問すべてに予想通りの回答が返ってきたわけではない。音楽家として悩める姿も包み隠さず言葉にするのだ。褒め称えられる彼の技量・才能は、そんな音楽に対するひたむきで誠実な姿勢に裏付けられているものだと確信した。この先の道のりも決して平坦ではないかもしれない。しかし、音楽への揺るぎない情熱を強力な味方に、彼は弦を弾き続けるだろう。

石坂さんの演奏情報
www.danjulo-ishizaka.com


  • * 1:ボリス・ペルガメンシコフ(1948~2004)。ロシア(旧ソ連)出身のチェリスト。スイス・バーゼル音楽院、ベルリン・ハンス・アイスラー音楽大学などで教鞭を取った。
  • * 2:ピリオド奏法:モダン(現代仕様の)楽器で、ピリオド(作曲された当時)の演奏方法に則して演奏すること。
  • * 3:ロジャー・ノリントン(1934~):イギリスの指揮者。1997年からシュトゥットガルト放送交響楽団の首席指揮者を務める。
  • * 4:アントニオ・ストラディバリ(1644~1737):イタリア北西部・クレモナで活躍した弦楽器制作者。彼が制作した楽器は「ストラディバリウス」と呼ばれる。
  • * 5:アルノルト・シェーンベルク(1874~1951):オー ストリアの作曲家。『浄められた夜』は1899年にウィーンで作曲された弦楽六重奏曲。
  • * 6:リヒャルト・デーメル(1863~1920):ドイツの詩人。『浄夜』以外の代表作に、『Aber die Liebe』や『Schöne wilde Welt』など。
  • * 7:クシシュトフ・ペンデレツキ(1933~):ポーランドのユダヤ系作曲家、指揮者。代表作に『ルカ受難曲』『ヴァイオリン協奏曲』など。
  • * 8:アストル・ピアソラ(1921~1992):アルゼンチンの作曲家。タンゴとクラシック、ジャズを融合させた。
最終更新 Dienstag, 13 August 2019 15:55
 

遠藤卓実 オートバイ・ロードレースライダー

時速250kmで夢を追い駆ける。遠藤卓実 オートバイ・ロードレースライダー

ドイツの伝統あるロードレース、ヤマハR6・ダンロップ・カップ(以下、ヤマハカップ)に、日本人として初のフル参戦を果たし、今現在も戦い(レース)の最中にいる遠藤卓実さん。ロードレースに掛ける思いと、ドイツでの挑戦について語っていただいた。(編集部:高橋 萌)


TAKUMI ENDO
Takumi Endo1984年6月7日、新潟県新潟市に生まれる。2004年にロードレースデビュー。その年、SUGOロードレース選手権ST600クラスでシリーズランキング2位(優勝1回、2位3回)。翌年、国際ライダーに自動昇格。2006~08年、全日本ロードレース選手権GP250クラスにフル出場。2008年ロードレース世界選手権(Moto GP)の日本GP/250ccにワイルドカード参戦。2009年からドイツのヤマハR6・ダンロップ・カップに参戦。2010年、同カップの開幕戦で3位入賞、表彰台に上る。
http://roadrace.jp

必然だったドイツへの挑戦

まず、日本を飛び出してきた経緯を伺うと、思いがけない言葉が返ってきた。

「自分への挑戦です。メーカーに雇われているわけではないので、自分でスポンサーを探して、目標金額を集めてドイツに飛んで、それでレースを戦っています」

F1に代表されるように、モータースポーツ界は華やかな世界なんだろうと想像していたため、日本でトップクラスのライダーが自力でスポンサーを探し、道を切り開いているなんて、にわかには信じられなかった。

「正直な話、2008年シーズン、全日本選手権を最後まで戦った後は金銭面で非常に厳しい状況で、2009年は日本では続けられない……そう考えていた矢先、お世話になっている人が良いお話を持ってきてくれたんです」

それが、ヤマハカップへの誘い。とはいえ、全日本選手権に出場するのとドイツでレースに出るのとでは、全く条件が違う。住むところも変われば、言葉も違う。資金面でも問題は山積み。しかも、行くとなったら出発は2カ月後と迫っている。さぁ、どうする?!

「せっかく、自分のところに来たチャンス。しかも自分の目標としているところに行けるということで、二つ返事で『はい。やります!』って言っちゃったんです」

「チャンスの神様の前髪」を逃す遠藤さんではなかった。日本に残っていたらライダーとしての2009年はなく、辞めていたかもしれないと、当時を振り返る。こうして、それまで海外と言えば佐渡島に行ったことがあるだけという新潟男児はドイツに旅立ち、ロードレースの本場で挑戦を始めた。

愛用のワゴン
オートバイを運ぶため、日本から船便を使って
ドイツに持って来た愛用のワゴン。
ドイツで右ハンドルの車はかなり注目を集める

人の力を超えたスピードの中から感動を伝えたい

超高速でオートバイを走らせるライダー。エクストリームスポーツとは言わないまでも、常に危険と隣り合わせであることに変わりはない。なぜ、ライダーの道を選んだのだろうか。

「小さい頃から『機械』が好きで、ゴミ収集車が回収に来るとその複雑な動きに見入ってしまうほど。その機械好きの延長で、オートバイにも興味を持つようになりました。若い頃にオートバイに乗っていたという父や、オートバイに乗り始めていた兄の影響も大きかったです」

いつかは自分も!と願う少年は、テレビに映るスポーツとしてのオートバイにも興味を持ち始める。世界の舞台で活躍している日本人ライダーの姿は鮮烈で、強い憧れが生まれた。

「新潟市の間瀬サーキットへ見学に行ったとき、たまたま全日本選手権に出場しているライダーが練習していたんです。それを見たときに体がしびれて、感動して、僕もライダーになろうって、そう思いました」

初めて目の前で見たプロの実力に圧倒されつつも、オートバイで一生懸命に走る姿がこんなにも見る人に感動を与えるものなんだという事実に興奮した。好きなオートバイで走る、それによって人に感動を与えられる存在に自分もなりたい。「ライダーになって全日本選手権で良い成績を出し、世界選手権に出場する。そして、ヨーロッパのサーキットで走る」という、高校生だった遠藤さんの目標が定まった。その後、本格的なトレーニングを開始し、20歳を迎えた2004年、初レースに臨んだ。

「初めて出場した公式戦で、いきなり2位になったんですよ。びっくりしました」

その勢いは止まらず、翌年には全日本選手権に出場するまでに急成長した。全日本選手権では厳しい戦いが続いたが、2008年には世界選手権にスポット参戦を果たす。ライダーを目指した頃の目標が次々に達成されていく。ここまで来れた秘訣は?

「転んでも、怪我しても、その度に立ち上がって楽しんでいるから」

ドイツ参戦、波乱の幕開け

2009年4月、渡独したばかりの遠藤さんの新天地での挑戦が始まった。しかし……

「最悪のスタートでしたね。サーキットって、1つとして同じコースがないんです。だから走り込まないと速く走れない。ところが、2009年のレースはすべてがぶっつけ本番。初めてのコースで右に曲がるか、左に曲がるかを覚えながら走っていたので、もう散々な結果でした」

開幕戦、ドイツでの初レースは1周目で転倒。2戦目は多重クラッシュに巻き込まれ、スタートすらできなかった。隣で転倒したライダーの1人は命を落としていた。状況は最悪だが、この事故を通して「生かされている」と実感した。

「まだまだ走り続けろってことなんだ。絶対に諦めてはいけないという、宿命のようなものを感じました」

1人でレースに臨むということは、テントの設営もマシンのメンテナンスも、すべてを自分で管理するということ。とはいえ、オートバイの移動など人手が必要なこともある。そんなときは周囲に、「Bitte! Bitte!!」と、覚えたてのドイツ語を駆使して協力を仰ぐ。そんなライダーの存在に、「ワンマンショー」「クレイジー・ジャパニーズ」と騒ぎ立てる者もいた。

「注目が集まるのは、僕にとっては嬉しいこと。お前らとこれだけ条件が違う中で、お前らに勝ってやるから見てろよっていう気持ちが強かった。現実は甘くなかったですけど(笑)」

逆境の中も、あくまでポジティブに、自分の力を信じて迎えた第3戦で、念願の完走を果たした。続く第4戦では15位以内に食い込み、初めてポイントを獲得しただけでなく、第2レースでは順位を8位に上げた。この頃からようやく周りから「ライダー」として認められるようになった。

「いつの間にか、周りには温かい仲間が増えていました。特にドイツ・ヤマハの森本社長。オートバイのメンテナンスの面で協力を得ている伊集院さん。アパートの大家であり、ドイツでのレース経験もある先輩ライダーの川崎さん。アルバイトでお世話になっている加賀屋(レストラン)の加賀さん。そして同じ新潟出身で、強力な協力者でもある、なにわ(レストラン)の小林さん。彼らは良き理解者であり、デュッセルドルフの親父と呼ばせていただいています」

ドイツ・ヤマハの森本社長
遠藤さんがドイツの父と慕う、ドイツ・ヤマハの森本社長。
「バレンティーノ・ロッシに次いで尊敬するライダー」と、
人間性に信頼を寄せる

3位入賞
2010年4月25日、Eurospeedway Lausitzにて、3位入賞

守られた約束

2010年シーズン、開幕戦で3位に入賞した遠藤さんは表彰台に上り、歓喜の中にいた。隣には、この勝利を心から分かち合える仲間スヴェン・ベニンさん。お互いの約束を果たした上での最高の結果だった。その約束とは……

2009年の最終戦は、表彰台を掴めそうで掴めなかった前戦の悔しさが残る中で迎えた。ところが決勝がスタートして1周目、事故が起きてレースが止められてしまった。

「僕がドイツのレースに参加し始めた当初から積極的に協力してくれたドイツ人がいるんです。スヴェンっていうライダーで、彼は『困ってるんだろ、手伝ってやるからいつでも言え』って、いつも手伝ってくれました」

スヴェンさんはヤマハカップに10年来参戦し、何度も表彰台に上っているベテランのライダー。その彼が多重クラッシュに巻き込まれ、大怪我を負ってしまったのだ。

「実は彼、2009年の第4戦目くらいで、今年でレース辞めるって言ってたんです。引退して、来年はお前のメカニックをやりたい、一緒にチャンピオンを目指そうって約束してくれたんですよ。それなのに、事故が起きてしまった」

骨盤を骨折し、足も動かない状態。下半身不随の不安もあったが、奇跡的に神経は残っていた。シーズンが終わり、日本に帰る前に遠藤さんはスヴェンさんのお見舞いに行った。

「必ずドイツに帰ってくる。厳しいけど、またお金集めて帰ってくるから、だからお前も来年の開幕までに治しておけよ! ……そう約束して、千羽鶴をプレゼントしました」

必死にスポンサーを集めて、今年の4月、再びヤマハカップに戻ってきた遠藤さんがサーキットで目にしたのは、松葉杖をつきながら自力で歩いているスヴェンさんの姿だった。彼は用意していたオフィスチェアーに座り、遠藤さんのオートバイのメンテナンスを当たり前のように始める。

「すごく嬉しかったですね。涙が出そうでした。彼も、約束を守ってくれた」

2009年は1人だった。でも、今はスヴェンさんとその家族が一緒に戦っている。

「自分が勝ちたいから走るし、彼らが一緒に戦ってくれるから、勝ちたい。1人でやっているときとは全然違います。今年は優勝しないと帰れません!」

スヴェンさんと
スヴェンさん(写真右)と、勝利を喜ぶ遠藤さん

冷静と情熱の間から掴む未来

2010年は、残すところあと3レース。現在、シリーズランキング5位。

「まだまだ、チャンスはあります。今年チャンピオンになって、来年はトップカテゴリで走る。それが今年の目標です」

ドイツ選手権、世界選手権と、まだまだ上の世界がある。上を目指しながら、「両目」で先を見る。1つの可能性がなくなったとき、何も考えていないと取り残されるのは自分。「片目で自分の行き先を見据えながら、もう片方の目で自分の足下を見ておけよ」という、森本社長からの言葉が常に頭の片隅にある。それは、レースでも同じこと。

「レースって、ちょうど、冷静と情熱の間にいるのがベストで、がむしゃらにやって勝てるわけではない。攻め過ぎたら転倒する、でも、アドレナリン出して攻めて行かないと抜かれる。どっちが多くてもだめなんです。だから、常に自分のメンタルな部分と戦っています」

0.001秒が勝敗を分ける世界。マシンが生み出す暴力的なほどのスピードを操るライダーは、人間の限界に挑戦し続けている。だからこそ見る者に感動を与えるし、面白い。

「単身、日本から日本魂を持ってきて挑戦を続けています。僕の生き様をサーキットで見てください!!」

自分を信じ、邁進する姿はその覚悟の深さゆえか、力強い。遠藤さんの人生を掛けた戦いを応援しに、サーキットに行ってみよう!


今後のレース予定
第6戦 2010年8月1日(日) Schleiz(ドイツ)
第7戦 2010年8月22日(日) Assen(オランダ)
第8戦 2010年9月19日(日) Hockenheim(ドイツ)

レースの詳細、選手情報については、ヤマハR6・ダンロップ・カップ公式HPをご参照ください。
http://yamaha-cup.de

最終更新 Dienstag, 13 August 2019 16:38
 

鉄道で巡るブリュッセル・パリ・ケルンの旅

鉄道で巡るブリュッセル・パリ・ケルンの旅

ブリュッセル・パリ・ケルンの地図

鉄道に揺られながら国境を越えて旅するのは、ヨーロッパに暮らすだいご味の1つ。フランス、ドイツの「ニュースダイジェスト」編集部が、ガイドブックには載っていない、地元目線のお薦めスポットを紹介します。より速く、より快適に生まれ変わった国際高速列車タリスを利用して、ちょっと隣りの国まで小旅行に出掛けてみませんか。

Thalysタリスで快適、列車の旅

タリス(Thalys)は、フランス、ベルギー、ドイツ、オランダの15の主要都市を結ぶ高速列車。印象的なワインレッドのボディーが時速300キロのスピードで各都市を駆け抜ける。2009年より、人体工学に基づいた座席の改良、電源の配備、食事サービスの改善、乗務員の新しいユニフォームなど、より快適で美しい列車を目指して完全リニューアルを進めている。

乗車時間

ケルン中央駅―パリ北駅間:3時間14分
ケルン中央駅―ブリュッセル駅間:1時間47分

料 金

サマーキャンペーン実施中
期間中(7月5日~8月27日)は、ドイツ国内からパリまで29ユーロ~、ブリュッセルまでなら19ユーロ~で片道チケットを購入できる。

通常料金( HI - LIFE )

ケルン―パリ:165ユーロ(1等席)、105ユーロ(2等席)
ケルン―ブリュッセル:76ユーロ(1等席)、48ユーロ(2等席)

割引料金( Opti Way )

ケルン―パリ間:91~124ユーロ(1等席)、53~87ユーロ(2等席)
ケルン―ブリュッセル:42~57ユーロ(1等席)、29~38ユーロ(2等席)

早割り料金( Smoove )

ケルン―パリ:69ユーロ(1等席)、29~39ユーロ(2等席)
ケルン―ブリュッセル:29ユーロ(1等席)、19ユーロ(2等席)

(2010年6月21日現在)

時刻表やチケットのオンライン予約などの詳細は、公式サイトにてご確認ください。
www.thalys.com

ブリュッセル

文化の融合で形成された、ユニークなベルギーを堪能

さまざまな国の支配を受けたベルギーは、他国の風習を取り込み、自国の文化と掛け合わせて進化を遂げてきた。そのため、伝統を守りつつも新しいものも取り入れる、これがベルギーのスタンス。こうして“品種改良”された文化の種は、シュールレアリスムの天才画家、ルネ・マグリットのような、一風変わった花を咲かせた。今日でもデザイナーがアトリエを構えるダンサール通りを散歩していると、1枚の服でさまざまな着こなしが楽しめそうなY-dress? など、斬新なデザインのブランドを見つけることができる。

ベルギー人のユニークさはビールにも見られる。スパイス、ハーブ、フルーツなどを使用し、自由な発想で造られるビールの銘柄は実に800種類。自然酵母で発酵させた酸味の強いランビック・ビールは、ブリュッセルのカフェやバーでよく飲まれる もの。中でもお薦めは「Mort Subite(突然死)」という銘柄を樽出しで飲めるカフェ・ バー、その名もA la Mort Subite。店名とは裏腹に、アールデコ調の美しい店内が、ビールを一層おいしくしてくれる。

グラン・プラスBelga Queen は、伝統とモダンを掛け合わせるのが上手なベルギーを象徴したレストラン。18世紀に建てられ、銀行として使われていたという厳格で豪華な建物は、モダンなレストランに変身。ベルギーの食材をおしゃれに調理した料理が楽しめる。

今年は、ブリュッセルの中心地グラン・プラス(写真右)に2年に1度、花のカー ペットが敷かれるTapis de fleurs の年。この夏、ブリュッセルは一段と華やかになりそうだ。 

(Texte : Kei Okishima)


・Musée René Magritte (マグリット美術館) アート

マグリット美術館火~ 日 10:00-17:00(水20:00 まで)、月休 
入場料:8ユーロ
1, pl Royale 1000 Brussels
M: Gare Centrale ①⑤
TEL: +32(0) 02 508 32 11
www.musee-magritte-museum.be


・Y-dress? ファッション

Y-dress? 火~土 12:00-19:00、日月休
102, rue Antoine Dansaert 1000 Brussels
M: Bourse ③④
TEL: +32(0) 02 502 69 81
www.ydress.com


・A la Mort Subite カフェ・バー

A la Mort Subite 月~土 11:00-25:00、日12:00- 23:00
7, rue Montagne aux Herbes Potagères 1000 Brussels
M: Gare Centrale、De Brouckère ①⑤
TEL: +32(0) 02 513 13 18
www.alamortsubite.com


・Belga Queen レストラン

月~日 12:00-14:30 / 19:00-24:00
32, rue du Fossé aux Loups 1000 Brussels
M: De Brouckère ①⑤
TEL: 02 217 21 87
www.belgaqueen.be


・Boutique Neuhaus お土産(チョコレート)

Boutique Neuhaus月~土 9:00-23:00、 日10:00-23:00
27, Grand Place 1000 Brussels
M: Gare Centrale ①⑤
TEL: +32(0) 02 514 28 50
www.neuhaus.be


・Tapis de fleurs イベント

8月13日(金)~ 15日(日) 9:00-23:00 
入場料:3ユーロ
Grand Place 1000 Brussels
M: Gare Centrale ①⑤
www.flowercarpet.be

ベルギー観光局  www.belgium-travel.jp

パリ

セーヌ川のほとりで夏に酔う

大都会の真ん中に砂浜を作ってしまうくらい、パリの夏は大胆で魅力的。そんな活気あふれるパリの滞在を、より充実させるスポットを紹介!
(Texte : Kei Okishima)

アンティーク雑貨が揃うマルシェのよう
Au Petit Bonheur la Chance

Au Petit Bonheur la Chance

1890年から1970年までのノスタルジックな商品が床から天井まで並ぶ。ほうろうのポットやキャニスター、レトロな柄のリボンやボタン、おもちゃ、ステーショナリーなど、今でも十分に使用可能なアンティークが見つかる。蚤の市をギュッと凝縮したようなぜいたくな空間。

13, rue Saint-Paul 75004 Paris
M: Saint-Paul ①
TEL: +33(0)1 42 74 36 38
木~月 11:00-13:00 / 14:30-19:00、火水休

Gillesさんお土産にお薦めなのはカフェオレ・ボウル(13ユーロ~)。たっぷり入ったカフェオレにクロワッサンを浸して食べるのがフランス流!
店員Gillesさん

フランス最大のワイン専門店
LAVINIA

LAVINIA

マドレーヌ寺院やオペラ座に近い、ワイン約5000点を販売するフランス最大のワイン専門店。試飲用の機械が設置されており、専用カードを購入すれば自由に試飲が可能。店員は全員ソムリエなので、細かいアドバイスを仰ぐことができる。日本人ソムリエが勤務している日もあるので、確認してから出掛けよう。

3, bd de la Madeleine 75001 Paris
M: Madeleine ⑧⑫⑭
TEL: +33(0)1 42 97 20 20
販売・試飲 月~土 10:00-20:00 (レストラン12:00-15:30)、日休
www.lavinia.fr

Nicolasさん店内で購入したワインは2階の本格派フレンチ・レストランに持ち込めるので、小売価格でワインを楽しめますよ!
店員Nicolas さん

セーヌ川沿いの美景+ 美食フレンチ
Marina de Paris

Marina de Paris

ノートルダム大聖堂やコンシェルジュリー、エッフェル塔など、セーヌ川沿いの観光名所を眺めながら、手の込んだフレンチをいただけるクルーズ・レストラン。サービスが行き届き、どの席に座っても美しい風景が楽しめるのは、中型船ならではの特権。いつもと違う角度で見るパリは格別だ。

Port de Solférino 75007 Paris
M: Solférino ⑫
TEL: +33(0)1 43 43 40 30(要予約)
ディナークルーズ 月~日18:45-20:00 / 21:00-23:15
ランチクルーズ 金土日 12:30-14:30
www.marinadeparis.com(オンライン予約可)

Alainさん毎朝市場で仕入れる新鮮な食材を使っています。大型船と違い、ひとりひとりの料理にまで目が行き届くので、繊細な味わいを楽しめますよ。
料理長 Alain さん

下町のワイン・バー
Le Baron Rouge

Le Baron Rouge

活気いっぱいのダリーグル市場(火~日 午前開催)のすぐそばにある、地元民がふらっと立ち寄るワイン・バー。市場の活気をそのまま持ち込んだような、庶民的で親しみの持てる雰囲気が魅力。華やかなパリ観光の合間に、ほっと一息つけるバーだ。割安なワインの量り売りも人気(空瓶55サンチーム+2.85ユーロ~)。

1, rue Theophile Roussel 75012 Paris
M: Ledru Rollin ⑧
TEL: +33(0)1 43 43 14 32
火~木 10:00-14:00 / 17:00-22:00
金土 10:00-22:00、日 10:00-16:00、月休

Quentinさんワイン初心者には飲みやすいMuscadet(ミュスカデ、白)やCahors(カオール、赤)がお薦めだね。
店員Quentin さん

平和を願う、おしゃれセレクト・ショップ
Marci

Marci

利益をマダガスカルの恵まれない子どもに送るというコンセプトで、昨年春のオープンと同時にパリの話題をさらったセレクト・ショップ。洋服や靴、アクセサリーはもちろんのこと、キッチン用具、家具、植物までが広い店内に抜群のセンスで並べられている。店内のカフェでは有機食材を使ったランチも楽しめる。

111, bd Beaumarchais 75003 Paris
M: Saint Sébastien-Froissart ⑧
TEL: +33(0)1 42 77 00 33
月~土 10:00-19:00、日休 
www.merci-merci.com

Marieさん店の主旨に賛同したブランドが、通常よりも安い価格で商品を提供してくれています。
随時変わるディスプレーにも注目して!
店員Marie さん

この夏のおすすめイベント!

・Tour de France

毎年夏をにぎわす世界最大級の自転車レース。97回目の今回はオランダ、ロッテルダムからスタートし、ベルギーを通過してフランスに入る。全20ステージ3,596kmのゴールは25日、パリ・シャンゼリゼ。

7月3日(土)~25日(日) 見学無料
TEL: +33(0)1 41 33 14 00(大会本部)
www.letour.fr

・Cinéma en plein air villette

ヴィレット公園で毎年夏に行われる野外映画祭。パリ最大の面積を誇る公園の芝生に座り、真夏の夜空の下、大スクリーンで映画を鑑賞。上映開始は日が暮れる22時過ぎから。終電時刻のチェックをお忘れなく。

7月17日(土)~8月22日(日)月休
入場無料(デッキチェア&毛布レンタル:7ユーロ)
会場:Parc de la Villette 211, av Jean-Jaurès 75019 Paris
M: Porte de Pantin⑤、Porte de la Villette⑦
TEL: +33(0)1 40 03 75 75 / 76 92
www.villette.com

・Paris Plages

セーヌ川沿いを中心に、夏の間だけ現れる人工浜辺、パリ・プラージュ。コンサートやスポーツ・イベントなど、催し物が盛りだくさん。都会のど真ん中で、名所を背景にリゾート気分を満喫。

7月20日(火)~8月20日(金) 入場無料
La voie Georges-Pompidou
M: Hôtel de Ville①⑪
Le Bassin de la Villette
M: Stalingrad②⑤⑦
TEL: 3975
www.paris.fr

パリ観光局  http://ja.parisinfo.com

ケルン

ライン川を望む文化の中心地

カーニバルとビールとサッカーの街。ゲルマン魂の熱い鼓動が聞こえてくるケルンから、ドイツらしさを存分に楽む旅のススメ。

Peters Brauhaus旧市街の息吹とケルンの味を
Peters Brauhaus

ケルン中央駅に到着したら、すぐに目に飛び込んでくるのが世界遺産の大聖堂。その南側には中世の面影を残す旧市街が。まずは1544年からビールを醸造し続けているペーター醸造所で1杯いただきましょう。もちろんケルンの地ビール、ケルシュ(Kölsch)で乾杯!

Mühlengasse 1, 50667 Köln
TEL: +49 (0)221 - 2573950
11:00-24:30(ラストオーダー24:00)
www.peters-brauhaus.de

ビールと料理ソーセージ、豚肉、ジャガイモ料理など、定番のドイツ料理はもちろん、ケルンの伝統的な食文化を伝える当店は、他では食べられない郷土料理も充実しているよ。
(写真左)ペーター醸造所のオリジナル・ケルシュビール。
(右)ケルンのキャビアと呼ばれている血のソーセージ。


ドイツのビアガーデン青空の下で飲むビール
Biergarten Aachener Weiher

ドイツには「何もしないぜいたく」を知っている人が多い。ビアガーデンでじっくり、のんびりビールを味わう。つまみは、照り付ける太陽と陽気な笑顔。これ以上の幸せってあるかい?そんなドイツの夏の何気ない日常を味わえる格好のスポットがビアガーデンだ。

Richard-Wagner-Straße, 50674 Köln
TEL: +49 (0)221-5000614
11:00-24:00
www.biergarten-aachenerweiher.de

ビールと料理ポメス(フライドポテト)やカリーヴルスト(カレー粉がかかったソーセージ)からシュニッツェルまで、お手頃価格で食事も楽しめます。
(写真左)ここでは、「Gaffel」というケルシュが飲める。
(右)カリーヴルスト(3.20ユーロ)

Bäckerei Balkhausenドイツパンのうまみを実感
Bäckerei Balkhausen

パンの種類の豊富さは世界一!と言われるドイツ。腕利きのパン職人がしのぎを削るケルンで、味にうるさい地元っ子の信頼を集めているのがこのお店。噛み締めるほどに実感できる手作りならではの良質なパンのうまみが人気の秘訣。ケーキの美味しさにも定評がある。

Apostelnstraße 27, 50667 Köln
TEL: +49 (0)221-2570264
6:30-19:00、木-20:00、土-18:00 日休

パンレーズンパン(Rosinenbrötchen)や、ずっしりと重い全粒穀物パン(Vollkorn- Roggenbrot)が特に人気。迷ったときは店員さんに希望を伝えて。彼らはパンのプロフェッショナル。
パンの博物館のように、所狭しとパンが並んでいる。焼きたてを狙うなら午前中に買いに行こう。

Trippen体に良い靴、履いていますか?
Trippen

1992年にデザイナーのアンジェラ・シュピーツとミヒャエル・エーラーによって設立されたトリッペン。足の健康と靴作りが密接な関係を持つドイツの職人ならではの、履き心地へのこだわりと、ヴォルフガング・ヨープやクラウディア・スコダなどをうならせるデザイン性が特徴。

Flandrische Straße 10a, 50674 Köln
TEL: +49 (0)221-45318645
11:00-19:00 、日休
www.trippen.com

Trippenそれぞれのお客様の「お気に入りの一足」を作り出すことが Trippen の願い。長いお付き合いをしていただけるよう、素材には特にこだわっています。試着の際は、かかと&つま先のフィット感に注目。同社のインソールへのこだわりが実感できるはず。

この夏のおすすめイベント!

・Kölner Lichter

ケルンの街を華麗に彩る花火と音楽の饗宴。ライン川沿いにはイベント用特設ステージや屋台が軒を連ねる。ライン川下りとセットのクルージング・プランがオススメ。水上から花火を楽しめば、感動も倍増するはず。

7月17日(土)
14:00 イベント開始
23:30花火の打ち上げ開始
am Kölner Rheinufer, 50679 Köln
入場無料
www.koelner-lichter.de

・Ballonfestival

60個の気球が一同に集まるバルーン・フェスティバル。今年、ケルンで初開催される同フェスティバルでは、家族みんなが楽しめる体験型のイベントが盛りだくさん。気球に乗って空からの景色を楽しんだり、夜は幻想的なライトアップも。

8月20日(金)~ 22日(日)
金14:00、土12:00、日11:00
Jahnwiesen, 50933 Köln
(サッカースタジアムRheinenergie-Stadion近く)
入場無料
www.koelner-ballonfestival.de

・Gamescom

ケルンで昨年から始まったゲームイベント。あまりの反響の大きさから一躍世界一の名を与えられた。今年も、ソニーや任天堂を始め世界各国から最新のゲーム機やソフトが集まり、いち早く体験できる。

8月19日(木)~ 22日(日)
Koelnmesse, 50679 Köln
1日券: 10 ~ 13.50 ユーロ( 割引6 ~ 9 ユーロ)
www.gamescom.de

・Picknick im Schlosspark

ケルン郊外にたたずむ古城ホテル、レーバッハ。同ホテル自慢の三ツ星レストランが、各シーズンごとに企画するイベントの1つ。レストランと変わらぬ味を、ちょっと趣向を変えて古城ホテルでピクニックしながらいただける。

8月31日(火)まで
Schlosshotel Lerbach
Lerbacher Weg, 51465 Bergisch Gladbach
TEL: +49 (0) 2202-2040
52 ~ 72 ユーロ
www.schlosshotel-lerbach.com

最終更新 Donnerstag, 15 August 2019 14:47
 

マイセン磁器 生誕300周年 「白い金」の魅力に迫る。

マイセン磁器 生誕300周年

1人の熱狂的な美術蒐集家から始まったヨーロッパの磁器物語。18世紀、ザクセン王アウグスト2世の東洋磁器の美しさへの憧れが芸術家や職人を突き動かし、素材、フォルム、装飾、模様のすべてにおいて“最高級”の枕詞が付くマイセン磁器を生んだ。そして「白い金」と呼ばれたその磁器は、ドイツが世界に誇る逸品となったのである。今号では、工房設立300周年を迎えたマイセン磁器にスポットを当てる。

(編集部:林 康子 / 写真提供:Staatliche Porzellan-Manufaktur Meissen GmbH)

マイセン磁器300年の歩み

13世紀以降、ヨーロッパの貴族たちが中国から買い付けていた白磁。その贅沢品を当地で作れたら……という野望を持ったか否か、18世紀初頭、ザクセン王アウグスト2世(強王)の宮廷錬金術師ヨハン・フリードリヒ・ベットガーが、「無価値の素材から『金』を作れる」と言い放った。それを聞きつけた王は、それを証明させるために彼を幽閉。しかしベットガーはそこで、数学者で哲学者のエーレンフリート・ヴァルター・フォン・チルンハウスに説得されて陶器の製造に乗り出す。

マイセンの磁器そして1707年、赤い色の焼き物(ベットガー炻器 =Böttgersteinzeug®)、08年にはヨーロッパ初の白磁器(ベットガー磁器=Böttgerporzellan)の製造に成功。ベットガーがその成果を王に報告すると、10年1月23日に磁器製造の独占権を持つ「王立ザクセン磁器工場」がドレスデンに建てられ、さらに製造の秘密を守るため、6月6日に工房がマイセンのアルブレヒト城に移設されたのである。

その後の歴史

1861~ 64年 マイセン磁器工房、近郊のトリービシュタールに移転(今日まで製造の拠点)
1912~15、16年 工房内に磁器美術館建設。展示ホール(Schauhalle)がオープン
1991年 6月26日、東西ドイツの成立に伴い、国立マイセン磁器製造所(Staatliche Porzellan-Manufaktur Meissen GmbH)設立
1996年 絵付け師ヨハン・グレゴリウス・ヘロルト(Johann Gregorius Höroldt)*の生誕300周年
1998年 6月1日、国立マイセン磁器製造所マイセン磁器のファンクラブ「マイセン磁器友の会(Freunde des Meissener Porzellans)」設立
2000年 世界初、マイセン磁器製のパイプオルガンが完成
2005年 磁器美術館の拡大リニューアル・オープン
2006年 彫刻家ヨハン・ヨアヒム・ケンドラー**の生誕300周年
2007年 ベットガー炻器、誕生300周年

* 7色の虹色を含む16色の新たな絵付け用の絵具を開発した絵付け師
** 様々な造形技術を開発、発展させ、マイセン磁器における人物や動物の彫刻品の基礎を打ち立てた彫刻家

マイセン磁器の豆知識

マイセンロゴトレードマーク「青い双剣」
Gekreuzte Schwerter

マイセン磁器の製造では機密保持が厳守され、従業員にも製造過程の一部のみが伝えられていた。しかし1718年にウィーンで競合を立ち上げようと考えた職人の1人、サミュエル・シュテルツェルが製造技術を盗み出そうとしたため、偽装防止措置として1722年、交差した青い2つの剣の模様がマイセン磁器のトレードマークに認定された。

ブルーオニオン玉ねぎ模様「ブルーオニオン」
Zwiebelmusterdekor

中国や日本の磁器の影響を色濃く受けていた初期のマイセン磁器。しかし東洋磁器に施されていた絵柄は菊の花や竹など、ヨーロッパ人には馴染みのないもので、ザクロもその1つだった。その模様を最初に見て玉ねぎと勘違いした絵付け師が、1939年に玉ねぎ模様の図案を作成。後に大ヒットする「ブルーオニオン」のきっかけとなった。

ブルーオニオンマイセン磁器の原料
Porzellanerde

初期の頃のマイセン磁器の製造には、エルツ山地の北麗の町アウエで採掘されるカオリン(磁器土)が使われていたが、1764年にある農家がマイセンから12km離れたザイリッツ村で偶然、カオリン鉱床を発見し、ここの白い土が磁器の製造に最適であることが判明。以来、ここで採掘されるカオリンが利用されている。

マイセン磁器の今日

300年の歴史の中で、ヨーロッパの食卓やインテリアのあり方を規定してきたマイセン磁器のブランド。レアな素材から制作過程における磨き抜かれた職人技に至るまで、贅を尽くしたその品質は、今や世界中の磁器愛好家たちを虜にしている。

あらゆるスペースを瀟洒に飾る

あらゆるスペースを瀟洒に飾る
18世紀初頭、マイセン磁器生誕期にケンドラーが編み出した造形に代表されるように、マイセン磁器の彫刻製品は、1つ1つ入念に彫り込まれたきめ細やかな装飾が特徴。オブジェ、壁飾り、照明、花瓶と実に豊富なバラエティを誇り、公共空間から広々としたオフィス、家のリビングルームまで、あらゆる空間を華麗に彩ってくれる。

女性の「美」を引き立たせる

女性の「美」を引き立たせる
近年、ジュエリーの分野でも躍進するマイセン磁器のブランド。特に、今年4月に行われた世界最大級のデザインの祭典「ミラノサローネ」(イタリア・ミラノ)に出展し、世界のジュエリー・ファンを魅了したMEISSEN Mystery®のコレクションは、女性らしさを最大限に引き出す上品な素材、色、フォルムのアンサンブルで人気を集めている。

食卓で、伝統とモダンが交わる

食卓で、伝統とモダンが交わる
長らく上流階級の食卓に上ってきたマイセン磁器の食器。しかし今日、人々の食事スタイルは大きく変化し、ピザもスシもドイツ人の日常に定着している。国際色豊かな食生活を営む現代人の嗜好に合わせ、マイセンの食器はブルーオニオンなどの伝統を保持しながら、モダンなフォルムを取り入れる新しい試みを行っている。

300年の伝統を凝縮した今年だけの限定品

300年の伝統を凝縮した、
今年だけの限定品

マイセン磁器工房は今年、300周年を記念して約40のプレミアム・コレクションを発表した。300年をかけて築き上げられた成果の集大成であるこのコレクションは、2011年に日本で開かれる「マイセン磁器誕生300周年-ザクセン王国の文化遺産」と題した巡回展でも披露される。

マイセンに行こう

写真を通して眺めるだけで、目の保養になるマイセン磁器。しかし、それだけでは物足りない! 愛好家も、まだ本物を目にしたことがない人も、生誕300周年というこの機会にマイセン磁器工房を訪れ、五感を通してその魅力にはまってみてはいかがだろう。

Staatliche Porzellan-Manufaktur Meissen GmbH 
Talstr.9, 01662 Meißen 
www.meissen.com

買うマイセン・ブティック
MEISSEN®-Boutique

マイセン・ブティック自分用に、あるいは大切な人への贈り物として欲しいという人へ。美術館に併設されたマイセン磁器のショップは、工房が誇る多種多様な品を取り揃えている。オーダーメイドでオリジナルの1品に仕上げてもらうことも可能。また世界30カ国、300の専門店でも購入できる。7月末には、ケルンにマイセン・ブティックが新規オープン(Wallrafplatz 3)。当ブティックに問い合わせて、オープニング招待券をゲットしよう!

E-Mail: このメールアドレスは、スパムロボットから保護されています。アドレスを確認するにはJavaScriptを有効にしてください
Tel. 0221-2585677

食べるカフェ&レストラン
Café & Restaurant

マイセンのカフェ&レストラン食材の色や風味を引き立たせるマイセン磁器の食器で、極上の食事はいかが? 工房のレストランのメニュー「マイセンの時間旅行(Meissener Zeitreise)」は、代表的な絵柄が施された食器で出される3品のコース(第2金曜19:00~、29ユーロ)。また、カフェの「ティー、コーヒー、ココア―3つの飲み物を楽しむ」というプログラムでは、これらの飲み物やマイセン磁器製の容器に関するレクチャーが施される(第3日曜、飲食代14.50ユーロ)。

レストラン11:00~、カフェ9:00~18:00
www.gastronomie-meissen.de

体験する絵付け・クリエィティブセミナー
Mal- und Kreativkurse

マイセンの絵付け・クリエィティブセミナー 熟練した職人の技の結晶であるマイセン磁器の模様を自ら描くことができるセミナー。初級から上級まで、レベルに合わせて工房のプロによる指導を受けられる。基礎コース(3日間:243ユーロ)は、紙の上に絵を描き、マイセン磁器の絵柄に対する理解を深めるというもの。そして絵付けコース(3日間:243ユーロ、5日間:490ユーロ)では、青の双剣や花、東洋の絵柄など、様々なモチーフの中から、自分の好きなものを選んで実際に磁器に絵を描いていく。

2010年のコース開催日程は、工房のウェブサイト参照
www.meissen.com

観る磁器美術館
Museum of MEISSEN® Art

陶磁器美術館

約2万点におよぶマイセン磁器の歴代の作品を所蔵する美術館。その展示ホールでは、常時その中から3000点が披露されている。展示品は毎年入れ替えられるので、訪れるたびにマイセン磁器の新たな側面に出会える。高さ3.5メートルの宮廷用のセンターピースは、まさに圧巻! また、実演工房では轆轤(ろくろ)・成形作業、接合(像形磁器の各部分をつなぎ合わせる作業)、ブルーオニオンの絵付け、花模様・インド風の絵付けの工程を見学できる。

開館時間:9:00~18:00(11~4月は9:00~17:00)
入場料:8.50ユーロ
(割引4.50ユーロ、ファミリーチケット18.50ユーロ、6歳まで無料)

観るDer Meissener Porzellan-Zoo
für kleine und goße Kinder
マイセン磁器の動物園
12月31日(金)まで

マイセン磁器の動物園古来より芸術家を惹き付けてきた動物の世界。マイセン磁器工房も例外ではなく、設立以来、様々な動物の像を、時にナチュラルに、時に威厳を放つよう誇張したスタイルで手掛けてきた。同展は、バロックやユーゲントシュティール期など、時代ごとに、動物に焦点を当てたマイセン磁器の歴史を俯瞰する。

観る300周年 特別展
All Nations are Welcome
文化、国境、宗教の架け橋としてのマイセン磁器
12月31日(金)まで

文化、国境、宗教の架け橋としてのマイセン磁器マイセン磁器は代々、君主や外交官、愛好家らによって贈呈品として世界中の人々の手に渡り、様々な民族、文化、宗教をつなぐ架け橋の役割を担ってきた。同展では、国際性、多様な文化や時代の影響を色濃く反映する作品を展示する。ハイライトは、18世紀ロシアの女帝エカチェリーナ2世が作らせた像形作品「Die Große」。

観るオープンデー
Tag der offenen Tür
オープンデー10月23日(土)

実演工房は、あくまで訪問者のために特別に設置されているもの。オープンデーでは、実際に市場に出回る製品が作られている、工房のほぼすべての部屋が一般公開され、轆轤、成形、接合、絵付けの全工程を間近で見ることができる。秘密厳守、普段は未公開の工房の扉の奥を覗けば、マイセン磁器がぐっと身近に感じられるだろう。

10:00~17:00
入場料:8.50ユーロ(20人以上の団体1人6.50ユーロ)

観るTriumpf der blauen Schwerter
青い双剣の勝利
8月29日(日)まで

マイセン磁器誕生のきっかけを作った張本人、アウグスト2世が収集品を置くための「磁器の城」として建造したドレスデンの「日本宮殿」で、マイセン磁器の最初の約100年(1710~1815年)の作品が展示される。普段は未公開の数々の貴重な特別展示品が、バロックからビーダーマイヤー期の磁器文化を物語る。

開館時間:10:00~18:00 木~21:00 月曜休館
入場料:6ユーロ(割引3ユーロ) Japanisches Palais
住所:Palaisplatz 11, 01097 Dresden
www.skdmuseum.de

観るDer Stein der Weis(s)en
賢者の(白い)石
10月31日(日)まで

ベットガーが発明した繊細で上品な輝きを放つマイセン磁器は、アルブレヒト城の中でゴシック様式の堅い城壁に守られるようにして発展を遂げた。今日、この場所で育まれた技術を示す痕跡はないが、初期にここで多くの名作が生まれたのは事実。展示品は当時の作業の様子を想起させ、「見えない工房」を蘇らせる。

開館時間:10:00~18:00 水~21:00
入場料:8ユーロ(割引6ユーロ) Albrechtsburg Meissen
住所:Domplatz 1, 01662 Meißen
www.der-stein-der-weissen.de

最終更新 Dienstag, 13 August 2019 16:57
 

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