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Japanese Rooms~日本人の部屋~Japanese Rooms ~日本人の部屋~
Sven Ingmar Thies(著)

Schwarzerfreitag GmbH
ISBN: 978-3-937623-90-0

「Japanese Rooms」という写真集と出合ったきっかけは、スヴェン・イングマー・ティースさんからの1本の電話だった。そう、写真家であり、グラフィックデザイナーでもあるこの本の著者だ。著者本人が直接プロモーションをかけてくることは、そんなにめずらしいことではないのだが、スヴェンさんの場合は、押しの強さが人一倍だった。電話での自作の紹介の後、すぐに見本を送ってくれた。その後、本は逃げないからと傍らに置き、目前のイベントやニュース原稿に追われる私に丁寧な催促のメール。(スヴェンさん、ごめんなさい。やっと腰を落ち着けてこの本と向き合っています)

さて、この本はちょっと風変わりな作りになっている。まず、「東京、ベルリン、ニューヨーク、上海、ウィーンに住む日本人の私的な空間」と記されたケースをスライドさせて出てくるのは、こま撮り写真のように日本人の部屋が並ぶ表紙。剥き出しになった背から、しっかりと糸で綴じられた製本がほどこされていることがわかる。

ページをめくると、著者が2年半の日本滞在の中で日本人の日常に興味を持ったこと、そして、その後9年の歳月をかけ、世界5都市82人の日本人の部屋を写真に収めてきたことがわかる。果たして日本人の部屋の写真を集めて面白いものなのかと、半信半疑でページを繰る。横長の大判のページ全体に広がるモノクロの写真。まるで映画のワンシーンを見ているかのような錯覚を起こす。1通り写真を見てから、もう一度じっくり見てみる。この写真集、面白い。日本人の部屋の写真の中に、住人の私的な空間が存分に語られている。文字情報として与えられているのは、職業と年齢、そして住んでいる都市だけ。それにもかかわらず、写真は住人の趣味や考え方、育ってきた環境、ありのままの日々の暮らし振りなどを雄弁に物語る。各部屋の写真は、都市別に区切られた構成。もしバラバラにして混ぜてしまったとしたら、再び仕分けることができるだろうか。自信がない。そのくらいに日本的なものが暮らしの中から姿を消しつつ、しかし確かな存在感をもって溶け込んでいるという2つの事実が同時に示されている。(高)



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