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Fr. 25. Sep. 2020

ビール小話
歴史の裏にビールあり!文化の影にビールあり!人類の歴史を語るのにビールは欠かせません。
知れば知るほどに、楽しく美味しくビールを飲めるはず。
毎月ちょっと面白い、そしていつかは役に立つ(?)小話をご紹介します。


キリンビールがドイツにやってきた

先日、もしかしたら日本のビール史に残るかもしれない驚きのニュースが入ってきました。ビールの都ミュンヘンの郊外で、「キリン一番搾り」の製造が始まるというのです。日本のビールもついにここまできたか! という感じです。果たしてドイツの一番搾りは本当に美味しいのか、日本のビールはドイツ・ビールと互角に渡り合えるのか、気になるところです。そこで早速、デュッセルドルフのキリン・ヨーロッパ社にインタビューを敢行。醸造責任者の逸見優さんとマーケティング・マネージャーの光富常郎さんに、ドイツで造る「一番搾り」についてうかがいました。


ボトルもリニューアル。
日本語が持つクールで凛としたイメージをラベルにも

お客さまにより近い場所から、おいしいビールを届けたい

コウゴ キリン一番搾りは、欧州では「KIRIN ICHIBAN」という商品名で販売されていますね。今まで私たちがヨーロッパの日本食レストランなどで飲んでいた一番搾りは、ロシアとイギリスの工場で委託製造され、各街に送られていました。なぜ、ビール純粋令(ビールの原料を麦芽とホップと水に限定する法律)があり、消費者の目も厳しいドイツに工場を移すことにしたのですか?

光富 おいしい製品をより早くお客様にお届けするために、お客様に近い場所で造りたいと思ったからです。昨年3月に日本国内で一番搾りを麦芽100%にリニューアルしたので、ビール純粋令に適合することになり、それならばドイツで造ってヨーロッパの現地の人にも楽しんでもらおうと考えました。そしてドイツ国内で協力してもらえる工場を探し、ミュンヘン近郊で見付けたのです。そこで造って各地に直送することで、移動に要する距離はこれまでより約4割短くなりました。

コウゴ 鮮度が命のビールにとって輸送時間の短縮や移動時の振動の削減は大きなメリットですよね。なぜ、これまで副原料を使っていたものを、麦芽100%にしたのでしょうか?

光富 元々キリンが明治時代にドイツ人技師を招いてビールを造り始めた頃は、麦芽100%だったんですよ。しかし当時の技術では、麦芽だけではもたつき感が出てしまったので、時間を掛けて日本人の味覚に合うよう米やコーン・スターチを加えてすっきりとした味わいに変えていったのです。しかし、醸造技術が向上し、副原料を使用しなくてもこれまでと変わらないすっきりした味わいを出せるようになったので、麦芽100%にしたのです。

デュッセルドルフのキリン・ヨーロッパ社 マーケティング・マネージャーの光富常郎さん
「ドイツで醸造するということは、ハードルも
高いのですが、喜びと期待も大きかったです」と
目を輝かす光富さん

コウゴ 一番搾りは、ほかのビールと何が違うのでしょう?

逸見 ビールを造るにはまず、粉砕した麦芽を煮てジュースのような甘い麦汁を造ります。その際、麦の殻がフィルターの役割を果たし、麦汁はろ過されます。最初にろ過された麦汁を「一番搾り麦汁」と呼びます。この時点ではまだ麦の殻に甘い味のエキスが残っているので、一般的なビールの場合はもう一度湯をかけて麦汁を取り出します。これが「二番搾り」です。2 回麦汁を取ることでエキス量は増えますが、ポリフェノールなどの余計な渋み成分が入ってしまいます。キリン一番搾りは一番搾り麦汁だけを使うので、雑味が抑えられ、上品でさっぱりとした味わいとなるのです。

コウゴ なるほど、一番搾り麦汁だけを使用した贅沢なビールなのですね。

キリンとヴァイエンシュテファン、2つの職人魂

コウゴ 今回キリン・ヨーロッパ社がKIRIN ICHIBANの製造を委託するのは、ミュンヘン郊外のヴァイエンシュテファン醸造所ですね。1040年創業の、現存する最古のビール醸造所です。現在はミュンヘン工科大学の醸造研究室が隣接し、世界中からビール醸造を学ぶために人が集まっており、ビールの聖地と呼ぶ方もいます。伝統と格式を保ちながら、新しい技術を開発するシンクタンクでもあるわけです。そんな一流の醸造所に醸造を受諾してもらい、さらに自分達が目指す味を作り上げるまでには大変なご苦労があったのでは?

ヴァイエンシュテファンの工場
豊かな牧草地と木々に囲まれた美しい丘の上に立つ
ヴァイエンシュテファンの工場。もとは修道院だった

逸見 委託契約後にうかがったのですが、嬉しいことに先方は当社が品質にこだわっているということを以前からご存じで、委託醸造の話が来たとき、キリンとなら一緒にやっていけると思ってくださったそうです。苦労したのは細かな醸造の調整です。醸造法は日本と同じですが、醸造設備が違いますから。ヴァイエンシュテファンの醸造長パイファーさんは醸造所の設備を熟知していて、いろんな提案をしてくれました。私も彼も同じようにビールに対する愛情とこだわりを持っていましたので、何度も話し合いと試験醸造を繰り返しました。とても勉強になりましたし、反対に日本のビール醸造の最新技術に驚かれることもありました。愛情を注いだ分、美味しいビールが出来ましたよ。

デュッセルドルフのキリン・ヨーロッパ社 醸造責任者の逸見優さん
「おいしいビールでもっとお客さんに
笑顔になってもらいたい」と静かに
語る逸見さん。日本が誇る職人です

コウゴ 美味しいビールを届けたいという思いと職人魂が、ドイツでの生産につながったのですね。工業製品やアニメだけではない日本の魅力、もっと世界中に伝えていって欲しいです!

光富 10月から順次ヨーロッパ各地の日本食レストランで飲めるようになります。もちろんドラフトで飲めるお店もありますよ。専用のビアタワーも、これから積極的に展開していきたいと思っています。これからのキリンビールにご期待ください。

インタビューの最後に、特別に販売前のビールをちょっとだけ味見させてもらいました。う〜ん、美味しい!!雑味が少なくすっきりとした味わいでした。もう発売を待ちきれませんね!

 
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コウゴ アヤコ: ビアジャーナリスト協会会員。ビール好きが高じて2008年から1年半、ミュンヘンで暮らし、暇を見付けては欧州各地の醸造所やビアハウスを旅して回る。2010年からは拠点を日本に移し、ライフワークである旅とビールをミックスした「旅ビール」を楽しんでいる。ブログ「ビアテイスターの世界ぐるっとビール旅」http://gogorinreise.blog34.fc2.com
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