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ロンドンのゲストハウス
Sa. 19. Okt. 2019

ビール小話
歴史の裏にビールあり!文化の影にビールあり!人類の歴史を語るのにビールは欠かせません。
知れば知るほどに、楽しく美味しくビールを飲めるはず。
毎月ちょっと面白い、そしていつかは役に立つ(?)小話をご紹介します。


ベルギー育ちのすっぱいビール

3年間も寝かせたすっぱいビールってご存知ですか?それ、腐ってる……ですって?! いいえ、違います。野生の酵母がビールを醸す「自然発酵」に分類される「ランビック」と呼ばれるビールで、ベルギーの首都ブリュッセル近郊にしか生息しない野生酵母を取り込んで造られます。自然発酵は、今ではほぼ消滅した古典的なビールの醸造法ですが、この国には現存するのです。ブリュッセル南駅近くのカンティヨン醸造所では、100年前から使われている道具で実際にランビックビールを造る様子を見学できます (www.cantillon.be)。

ベルギー育ちのすっぱいビール
もくもくと湯気を上げる冷却槽。
木枯らしとともに今年もビールの仕込みが始まりました

普段私たちが口にしているビールは、製造過程で外気に触れることで雑菌が混入しないよう細心の注意が払われ、酵母は純粋培養されたものを使って造られています。しかし、ランビックの製造においては、熱々の麦汁を屋根裏部屋に置かれた表面積の広い銅製の冷却槽に流し込み、外気に触れさせて麦汁を冷まします。湯気で真っ白になった屋根裏部屋の窓から冷たい風が吹き込み、天井瓦の隙間からは光が漏れていました。ランビックを発酵させる野生酵母は、外から風に乗って運ばれて麦汁に根付くのです。屋根裏には蔵付き酵母が住み着いているので、蜘蛛の巣が張っても掃除をしません。現代の徹底した食品衛生の観念からすると、信じがたい話ですよね。

ランビックの冷却、酵母の根付け作業は、10〜4月の寒い時期に行われます。実はこれはランビックに限ったことではなく、冷蔵機が発明されるまではバイエルンでもビール醸造を冬期に限るという法律がありました。微生物の活動をパスツールが発見したのは19世紀末のこと。それ以前のビール職人たちは長年の経験から、ビールを造ったときに出る澱(酵母の残り)を使ってさらにビールを造っていました。無菌管理は行えず、低温殺菌の方法も知りませんでしたから、雑菌が繁殖してビールが駄目になってしまうこともよくありました。しかし、冬場にビールを仕込むと麦汁を効率良く冷ますことができる上に、雑菌の繁殖を抑えられるため、腐敗を防止できたのです。とはいえ、優秀と言われた醸造家でも成功率は70%だったとか。ビール造りは季節もの、そして最後は神頼みだったのですね。

外気に触れたランビックが腐敗しないのは、それが野生酵母と年月を味方に付けたからです。野生酵母の根付いた麦汁はワインの古樽に移され、3年間寝かせます。その間ゆっくりと発酵が進み、pH(水素イオン指数)値が下がることで雑菌は死滅するのです。こうして造られたランビックは、すっぱく微炭酸。昔のビールはこんな味がしたのでしょうでしょうか。さくらんぼや木苺を漬けた甘酸っぱいフルーツ・ランビックもあり、女性に人気です。

技術の進歩により、世界中の至る所で1年中ビールを造ることが可能になった現代でも、まだ自然の力を借りたユニークなビールがあるのですね。

 
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コウゴ アヤコ: ビアジャーナリスト協会会員。ビール好きが高じて2008年から1年半、ミュンヘンで暮らし、暇を見付けては欧州各地の醸造所やビアハウスを旅して回る。2010年からは拠点を日本に移し、ライフワークである旅とビールをミックスした「旅ビール」を楽しんでいる。ブログ「ビアテイスターの世界ぐるっとビール旅」http://gogorinreise.blog34.fc2.com
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