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バンベルクの燻製ビール

ドイツ中南部、バイエルン州のバンベルクという古い町に、ちょっと変わったビールがあります。それが「ラオホビア(Rauchbier)」という名物ビール。その名の通り、煙(Rauch)のビール。グラスに顔を近付けるだけで、強烈なスモーク香が襲ってきます。焦げたナッツやトーストのような香ばしさと、深煎りしたコーヒー豆のようなオイリーさ、こしょうのようなスパイシーさも感じます。はたして、その味は好き嫌いが分かれるところですが、燻製の食べ物なら、何にでもよく合います。ベーコンやチーズ、さらにラオホビアで煮込んだバンベルク名物、玉ねぎの肉詰めとの相性は抜群。いつしか病み付きになってしまうビールです。

メルツェン
常時飲めるのはメルツェンと呼ばれるスタイル。
限定生産のヴァイツェンとボックも強い燻製香がある

バンベルクは人口7万人程度の小さな町ですが、その市街地には10軒の醸造所があります。ドイツ有数のホップの産地、フランケン地方に位置するこの町では、古くからビール造りが盛んなのです。常時ラオホビアを造っているのは、シュレンケルラ醸造所とシュペツィアル醸造所。特に創業1678年のシュレンケルラの、妥協を許さない伝統的な醸造法によるビールへの評価は高く、旧市庁舎近くの直営レストランには世界中からビールファンが訪れます。店内はいくつかの小部屋に分かれ、メインとなる部屋の中央カウンターには大きな木樽が置かれています。樽の下に注ぎ口が付いていて、ウエイターは底から直接ビールを注いでくれます。

シュレンケルラの特徴は、そのパンチの効いたスモーク香。ビールの原料となる麦芽を造るには、大麦を水に浸して少し芽が出てきたところで温風などを当てて乾燥させるのが一般的ですが、シュレンケルラではブナの木を燃やして麦芽を乾燥させています。また、薪は地元フランケンの森から切り出したブナの木を3年間寝かせて乾燥させたものを使うというこだわりぶりです。直火で24時間以上掛けてじっくりと麦芽を燻す過程で煙の香りが移った麦芽は、誰にも真似できない独特の味と香りをもたらします。

焙煎の技術が発達するまでは、どのビールにも多少なりともスモーク香が付いていたと言われます。煙を逃す焙煎釜の登場により、煙臭さは取り除かれるようになりましたが、シュレンケルラは昔ながらの手法で麦芽を造り、伝統的な香りを出しています。この個性的な味を求め、米国や日本などの小規模醸造所でもラオホビアが造られるようになりました。

バンベルクは、観光にもお勧め。戦火を免れた旧市街地は200年前の姿をそのままにとどめ、その美しい町並みは世界文化遺産に登録されています。レグニッツ川の中州に建つ旧市庁舎の壁には、パステルカラーのテンペラ画が描かれ、メルヘンチック。水辺には小さな家々がひしめき合い、「小ヴェニス」と呼ばれる美しい景観を成しています。中世の香り漂う町で当時から続くビールを飲めば、その昔にタイムスリップしたような気分になること間違いなしです。

最終更新 Donnerstag, 20 Juni 2013 13:42  
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