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Mi. 21. Aug. 2019

難航する学校改革

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このほどハンブルクで、「6年制小学校」の設立を柱にした学校改革が失敗に終わった。4年制小学校による「早期ふるい分け」を問題視し、「すべての子どもに平等な教育」を与えようとしたものだったが、住民からの反対を受け、あえなく破たん。今回は、改革に改革を重ねながらも、なかなか先に進まないドイツの学校改革と現状の学校制度について見ていきたい。

ドイツの学校体系

連邦制をとるドイツでは、ほかの多くの制度と同様に教育制度も各州の権限に委ねられている。そのため、学校のあり方は国内でも州によって大きく異なる。とは言っても、各州の文部大臣が集う会議(KMK)で、ある程度の統一は図られており、基本的に児童はみな6歳前後で日本の小学校にあたる「基礎学校(Grundschule)」に入学するようになっている。

基礎学校で4年間の教育を受けた後は、それぞれの能力や志望に合わせ、3種の中等教育過程に進む。1つは卒業後、職業訓練に入ることを前提とした「基幹学校(Hauptschule)」、もう1つは職業高校や専門高校などに進む「実科学校(Realschule)」、そして最後は大学などの高等教育過程に進む「ギムナジウム(Gymnasium)」だ。ドイツの学校制度はこのため、「3分岐型システム(dreigliedriges Schulsystem)」と呼ばれている(→図表参照)。義務教育はこれら中等教育が終了するまでの9~10年間。

ドイツの学校制度

3分岐型廃止の動き

同制度下では、途中で学校の変更も可能ではあるが、小学4年生、つまりわずか9、10歳で将来の進路を決めなければならないことになる。また、裕福な家庭の子どもはギムナジウムに、貧しい家庭の子どもは基幹学校に進む傾向もあり、「早期ふるい分け」が問題視されてきた。実際、学習到達度調査(PISA)や小学校読解力調査(IGLU)などの国際調査からも、通っている学校と社会階層によって学力に大きな差が生じていることがわかっており、家庭環境などに関係なく、誰でも平等の教育を受けることができる学校制度への変更が求められている。

このため基幹、実科、ギムナジウムの全中等過程をまとめた総合学校(Gesamtschule)が誕生し、今日では伝統的な「3分岐型」を崩す形で普及するに至っている。また、“ふるい分け”を遅らせることで子どもの能力を平等に伸ばせるよう、基礎学校を4年制から6年制にする改革も行われている。特に東西分裂時に一貫教育制が導入されていた旧東ドイツ地域では、小学校6年制のほか、国際的な基準に沿った「ギムナジウム8年制(G8→用語説明)」の導入も進んでいる。

改革のつまずき

ハンブルクで行われる予定だった学校改革も、4年制の基礎学校を6年制の小学校(Primarschule)に移行するものだった。しかし4年生の時点ですでに学力の差が顕著に現れていること、そのためすべての生徒に適したレベルの授業は行えないこと、エリート層が私立学校に進み、格差がさらに進んでしまうことなどを理由に、市民運動「Wir wollen lernen」が猛反対。これに対して、「現行の学校制度は階級を分けているだけ」「低所得者層の子どもたちのチャンスについては省みられていない」「裕福層のエリート主義」などとして、改革支持派による対抗運動も繰り広げられた。しかし、7月中旬に行われた住民表決では、改革反対派が勝利する結果となった。

ハンブルクの学校改革のつまずきは、全国で大きな議論を呼んでいる。ノルトライン=ヴェストファーレン州のレールマン教育相(緑の党)は、全国統一の学校教育法の制定を提案、学校制度に連邦政府の関与を認めていない連邦法の改定を訴えた。連邦制はそもそも、各州が競い合うことで発展が期待できるという利点があるが、4、5年おきに変わる州政府がそれぞれに改革を行っていては、混乱が生じるのも無理はない。全国統一の学校法制定案には、シャヴァン法相(キリスト教民主同盟=CDU)も賛同している。またハンブルクの住民運動成功に触発され、他州でも各種教育改革に反対する住民運動が活発化している。今回の改革破たんを機に、これからの学校改革は大きく変わっていくことだろう。

8年生が通う学校の内訳は、基幹学校20.6%、実科学校26.5%、ギムナジウム33.4%、統合学校8.5%、そして学習上困難がある生徒などが通う特別支援学校(Sonderschule, Förderschule)が3.8%。残り6.4%は、「そのほか」だ。州によってさまざまな形の学校が存在するドイツ。各州の学校形態はどうなっているのだろうか。

基礎学校はたいていの州で4年間。一貫教育が行われていたかつての東ドイツに属していたベルリン、ブランデンブルク州では6年間となっている。

義務教育終了後の進学が一般化するようになった今日、3分岐した学校を統一した統合学校とは別に、基幹学校と実科学校の2校を統合する傾向が、各州で強まっている。州によりその名称はさまざまで、「Mittelschule」(ザクセン州)、「Regelschule」(テューリンゲン州)、「Erweiterte Realschule」(ザールラント州)、「Sekundarschule」(ブレーメン、ザクセン=アンハルト州)、「Integrierte Haupt- und Realschule」(ハンブルク→次項参照)、「Verbundene Hauptund Realschule」および「Zusammengefasste Haupt- und Realschule」(ベルリン、ヘッセン州、メクレンブルク=フォアポメルン州、ニーダーザクセン州)、「Regionale Schule」(メクレンブルク=フォアポメルン州、ラインラント=プファルツ州)、「Oberschule」(ブランデンブルク州)、「Duale Oberschule」( ラインラント=プファルツ州)、「Regionalschule」または「Gemeinschaftsschule」(シュレスヴィヒ=ホルシュタイン州)など。

ハンブルクでは今回の改革により、基幹学校、実科学校、統合学校を統一したドイツで初めての学校の形「Stadtteilschule」が導入されることになった。これにより基礎学校修了後は、ギムナジウムか「Stadtteilschule」のどちらかに進むことになる。「Stadtteilschule」の生徒で、大学入学資格アビトゥアを取得したい生徒は、11年生からギムナジウム上級に進み、そこで3年間学ぶ。このため卒業は13年生を終えてから。一方ギムナジウムに直接進んだ生徒は、12年生で卒業となり、ギムナジウム8年制と9年制が平行して存在することになる。(注:同制度は住民表決の対象にはならなかったが、現在若干の調整が行われている)

Quelle:KMK“ Grundstruktur des Bildungswesens in der Bundesrepublik Deutschland(Stand: Januar 2009)”ほか

用語解説

G8
Achtjähriges Gymnasium

ギムナジウムの年数を9年から8年に短縮する制度。小学校入学から大学入学までの期間を、ほかの多くの国と同様、12年にするのが目的。すでに全州で導入されており、2016年をめどに順次移行が完了する予定。しかしドイツでは半日制の学校が多いことからも、1年短縮によって1週間当たりの授業数が大幅に増加。授業の質の低下、生徒の負担増、学力の低下などが懸念され、西側の州を中心に反対運動も行われている。

<参考文献>
■ Behörde für Schule und Berufsbildung Hamburg 
■ Kultusminister Konferenz(KMK)
■ DUDEN Pilitik und Geselschaft
■ Die Welt“ Vorstoß für bundesweite Bildungsstandards”(30.07.2010)

内田 由起子(うちだ・ゆきこ) 東京外国語大学ドイツ語学科卒業。在学中、卒業後とドイツを行ったり来たりしながら語学勉強を続けた後、英語ニュースの翻訳に携わり、ジャーナリズムの世界に入る。04年1月からハンブルク在住。渡独後は主に、ドイツニュースの発信に努めている。
 
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