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Do. 25. Feb. 2021

会社役員の女性比率 - 法定の必要はあるか

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フォン・デア・ライエン労働相(キリスト教民主同盟= CDU)が、会社役員に占める最低女性比率を法律で定める考えを示した。同相は7人の子どもを持つ母親でもあり、女性の社会進出に熱心に取り組む政治家の筆頭に挙げられる。しかし反対意見が多勢を占め、同じ女性党員であるメルケル首相、シュレーダー家庭相とも意見が対立している。今回はこの「女性比率」問題について見ていこう。

女性比率を法定

ドイツ経済研究所(DIW)によると、国内主要30社の取締役員のうち、女性が占める割合はわずか2.2%。欧州では最低水準で、さらに中国やブラジルといった中進国にも水をあけられている(→図表参照)。大学卒業者の51%が女性だというのに、このありさまだ。2001年にも問題となり、政府と各企業が女性役員の割合を増やすことで任意の合意に至ったが、この10年間ほとんど変化は見られていない。

各国主要企業の取締役に占める女性の割合(%)

Quelle: DIW(2010年)

そこでフォン・デア・ライエン労働相は、法的拘束力を与えることでその割合を確実に高めていこうと提案。主に上場企業を対象に、取締役および監査役会における女性比率(→用語解説)をそれぞれ最低30%に規定するとした。違反した企業には、制裁を科すことも盛り込んだ。さらに法律で定めることで、有能な女性の早期発掘、女性社員の育成強化が進むことを期待している。

“比率の女”を懸念

野党である社会民主党(SPD)および緑の党は、かねてから女性比率の導入に積極的で、それぞれ独自の目標値を掲げながら女性の登用を進めてきた。しかし肝心の与党からは、反対意見が相次いでいる。CDUの姉妹党キリスト教社会同盟(CSU)および連立を組む自由民主党(FDP)は、企業の自由を制限することになるなどとして断固拒否。メルケル首相も、企業の自主性に任せるべきだとし、法定比率には反対の立場を取った。さらに実際に管理職に就いている女性からも、女性の進出を促すためには比率よりも、保育所や全日制の学校の拡大、フレックスタイムの充実など、仕事と家庭を両立させるための対策の方が必要だという意見が上がっている。

また数字のせいで、女性役員が“比率の女”と見なされてしまう懸念もある。実力で役員になっても、正当に評価されないかもしれない。また数字を満たすために、適任ではない女性を仕方なく起用することになるかもしれない。女性比率の設定は男女同権に基づいた考えだが、女性優遇、つまり男性差別につながる危険性もあるのだ。会社にとっても女性にとっても、そして男性にとっても、数字は利益より害になるという見方が多い。

企業の自主性に期待

それでは、どうしたら良いのだろうか。シュレーダー家庭相は、各社に独自の女性比率の目標値を設定、発表させ、2年以内に実現するよう義務付ける考えを提示した。フォン・デア・ライエン労働相が提唱する法定女性比率には反対していないものの、メディア業界では女性の割合が比較的高く、鉄鋼産業では低いなど、業種によって男女比も異なると説明。そのため比率は一律にすべきではないとしている。家庭相は3月にも主要企業代表者などを招き、同案について話し合いを行っていく予定。

女性比率の設定も、期限付きで導入すれば有意義だとの意見もある。女性の登用が目に見えて増加するきっかけになるのは確かだからだ。そして今回の議論は実際、企業にも圧力を掛けることになった。ドイチェ・テレコムはすでに女性役員率を30%にまで引き上げる考えを発表していたが、ここに来てエネルギーのエーオンや自動車のBMWおよびダイムラー、自動車部品のボッシュなども、独自の目標値を自発的に発表し始めている。ダイムラーは早速実行に移し、同社初となる女性取締役員を迎えた。女性比率を法律で決められることは、企業にとっても好ましいことではない。法定比率問題は少なくとも、企業自らが少しずつ動き出すきっかけにはなったようだ。

ドイツ経済研究所(DIW)によると、2010年における主要30企業の取締役(Vorstand)の内、女性が占める割合はたったの2.2%(182人中4人)。上位100企業でも2.2%(490人中11人)だった。女性社長はゼロ。上位200企業まで広げて、ようやく3.2%(906人中29人)にまで増えるが、それでも女性の進出率が欧州内で最低レベルであることに変わりはない。女性社長もここに来てようやく、2人(医薬品のサンド・インターナショナル= 116位、イケア・ドイツ= 174位)になる。

監査役会(Aufsichtsrat)では、女性の割合が取締役よりも高い。上位200企業で10.6%、100企業で9.6%、30企業では13.1%だ。主要30企業の1つである化学メーカーのヘンケルでは、女性が会長を務めている。

監査役会に女性が多い背景に「共同決定法」がある。ドイツの会社は実際に業務を担当する取締役と、それを監督する監査役会の二重構造で成り立っており、さらに「共同決定法」に基づいて、監査役会の一部が従業員代表で成り立つという独特のシステムを取っている。そして女性役員の70%以上が、従業員からの代表だ。この関係で、主要企業の監査役会における女性の比率は欧州連合(EU)加盟27カ国の平均を1ポイント上回っている。

【ランキング】欧州各国主要企業の監査役会における女性の割合

1 フィンランド 26%
2 スウェーデン 26%
3 ラトビア 23%
4 スロバキア 22%
5 ルーマニア 21%
6 デンマーク 18%
7 オランダ 15%
8 ハンガリー 14%
9 ドイツ 13%
10 リトアニア 13%
11 英国 13%
EU27カ国平均 12%
12 チェコ 12%
13 フランス 12%
14 ポーランド 12%
15 ブルガリア 11%
16 ベルギー 10%
17 スペイン 10%
18 スロベニア 10%
19 オーストリア 9%
20 アイルランド 8%
21 エストニア 7%
22 ギリシャ 6%
23 イタリア 5%
24 ポルトガル 5%
25 キプロス 4%
26 ルクセンブルク 4%
27 マルタ 2%
用語解説

女性比率 Frauenquote

ノルウェーでは2003年、上場企業の監査役会における男女の比率を、それぞれ40%以上にすることを決定。02年は6%だった女性比率が、09年には目標値に達した。フランスでもこのほど監査役会および取締役の女性比率40%を決定。ほかスペイン、オランダなどでも導入、もしくは導入が決まっている。ちなみに女性首相を擁するドイツでは現在、14大臣のうち5人が女性(36%)。

<参考文献>
■ DIW Wochenbericht Nr. 3/3022 vom 18. Januar 2011
■ Der Spiegel“ Warum Deutschland die Frauen-Quote braucht” (Nr.5/31.1.11)
■ Die Welt
“ Vorzeige-Ministerinnen im Clinch über Frauenquote”(30.1.11),
“ Daimler holt erstmals Frau in den Vorstand”(15.02.11)ほか

内田 由起子(うちだ・ゆきこ) 東京外国語大学ドイツ語学科卒業。在学中、卒業後とドイツを行ったり来たりしながら語学勉強を続けた後、英語ニュースの翻訳に携わり、ジャーナリズムの世界に入る。04年1月からハンブルク在住。渡独後は主に、ドイツニュースの発信に努めている。
 
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