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電子滞在許可証(eAT)のメリット&デメリット

2011年9月より外国人の滞在許可証が電子化されることになった。 チップを組み込み、クレジットカードサイズになった電子滞在許可証(eAT)は、旅券とは別に持ち歩ける。eAT導入により、新しいサービスの可能性が広がった一方で、セキュリティーの問題には懸念が残る。私たちにとって身近なeATのメリットとデメリットを確認しよう。

身分証の携帯は、ドイツにいるすべての市民の「義務」

日本で暮らしていた時にはあまり意識しなかったことの1つ、 それは自分の身分を証明することではないだろうか? 日本でレンタルショップの会員カードを作るときには、免許証か保険証を見せれば、簡単にカードが作れた。しかし、ドイツでは不在郵便物を受け取る際にもパスポートの提示が求められる。外国人として海外に住んでいることを実感する瞬間だ。

ドイツでは、16歳以上の国民に旅券もしくは身分証明書を常に携帯することが義務付けられている。これと同様に、ドイツに滞在する外国人にも、旅券と滞在許可証を携帯するこ とが義務付けられている。

ドイツ人の旅券は2005年11月に、身分証明書は10年11月に電子化された。そして、11年9月より、いよいよ外国人の滞在許可証も電子化されることになった。

なぜ電子滞在許可証が導入されたのか

電子滞在許可証(eAT)の導入は、全EU加盟国で義務付けられたものだ。EU内の滞在許可証の形式を標準化すること、生体認証(写真と指紋。指紋は6歳以上)データをカード 内に保管することにより、紛失した場合に他者によって濫用されることを防ぐこと、そして先に導入されたドイツ人の身分証明書との標準化も、狙いの1つだろう。

新しいeATの有効期間は、無期限の滞在許可証を持つ人で10年。従来の滞在許可証と同様、旅券の有効期限が切れるのと同時にeATの有効期限も切れることになる。つまり、無期限の滞在許可証を持つ人が初めてeATを受け取る際には、旅券の有効期限=滞在許可証の期限となり、それ以降は常に旅券の更新と同時にeATも更新されることになる。

電子滞在許可証のメリット

eATの最大のメリットは、旅券に貼り付けるタイプからクレジットカードサイズに変更されたことで、旅券とは別に携帯することが可能になり、持ち運びしやすくなったことだ。

※ただし、身分証明書としては不十分で、やはり旅券や付帯条件も携帯しなければいけない。担当者の話によると、デュッセルド ルフの場合、市内にいる限りはeATだけでも黙認されると言うが、各自治体によって状況は異なる。

eATの大きな特色は、オンライン身分証明機能が加わり、オンラインで自分の身分を証明することが可能になったこと。例えば、新車登録の際、今までは当局に書類を取りに行かなければならなかったが、今後はオンラインで簡単に済ませることができるようなるだろう。

チップには、写真と指紋のほか、氏名や住所など、カードに印字された情報や付帯条件も保存されているが、オンライ ン身分証明で転送する情報は自分で選択できる。また、デー タの転送には6桁のPIN番号の入力が必要で、この作業がデータのセキュリティーを高めている。

これらのサービスを有効にするかどうかは、電子滞在許可証を受け取る際に本人が決定する。いったん無効を選択した場合でも、外国人局でいつでも有効にすることができ、また 無効に戻すことも可能だ。

電子滞在許可証の気になるデメリット

第一に挙げられるのは、ドイツ人の身分証明書が電子化されたときにも問題になったセキュリティー上の問題。オンライン認証の際には、ファイアーウォールやウイルス対策が万 全なインターネット環境で行われることが絶対条件ではあるが、ウイルス対策を施したとしても、家庭のパソコン環境が常に万全を期していると言えるだろうか。

また、データが保管されているチップのセキュリティーは高く、警察と外国人局のみがデータにアクセスできるというが、はたして本当に安全なのだろうか。例えば、カードリー ダーが正しいものでない場合、データを盗まれる危険性がある。いわゆるスキミングである。

さらに、発行までに掛かる時間と発行手数料にも問題がある。私自身、現在滞在許可証を更新中だが、発行までに約2カ月を要すると外国人局で言われた。発行に掛かる手数料は、初回申請で1年以内のeATについては100ユーロ、1 年以上で110ユーロ。更新を申請する場合は3カ月以内の滞 在延長で65ユーロ、3カ月以上で80ユーロ、永住者の場合は135ユーロとなっている。

紙の滞在許可証の発行手数料が50 ~ 60ユーロだったことを考えると、高い印象がぬぐえない。また、ドイツ人の電子身分証明書(24歳以上、10年間有効)の28.80ユーロと比 べても、格段に高い。

実際、この発行手数料が高いかどうかは、今後、それに見合うサービスが民間まで普及していくかがカギとなるだろう。

電子滞在許可証によって想定される新しいサービス

● オンライン登録

インターネットサイトで、初めてのオンライン登録をする際に、eATから正確なデータを転送できるようになる。

例: オンラインショッピングの際に、住所の記入間違いにより配達されないというミスを防げる。 オンライン用紙への記入時間を短縮できる。

● 機械での身分証明

情報機器や自動販売機を使用する際の身分証明が可能になる。

例: 煙草を自動販売機で購入する際、年齢確認のためにeATを使用する。

● 偽名を使ったサービス

インターネットで個人情報を転送する必要はないが、サイト運営者が利用者当人であるかを確認したい場合に、偽名での認証が可能。

例: FacebookやXingなどのソーシャルネットワーク サービス(SNS)で、他人が本人になりすましてア クセスする行為を防げるようになる。

● オンライン署名

オンラインでも安全に契約などを結ぶことができるようになる。通常は署名証明書の入手など、別途手続きが必要。


● 年齢、住居地確認

年齢や住居地に制限が付くオンラインサービスについて、 確実に年齢と住居地の確認が行える。

例: 自動車保険の登録時に必要な書類の入手。オンラインでの納税申告。
用語解説

電子滞在許可証
Elektronischer Aufenthaltstitel (eAT)

電子滞在許可証に保存される情報は、生体認証データ、氏名、場合により学位、発行国、年齢、住居地、生年月日、 出生地、識別情報(偽名)などである。識別情報によっ て、個人情報と関係性のない偽名をeATに保存し、同じく識別情報をプロバイダーが保管することによって、 個人情報を開示せずに本人確認が行える。また、オンライン証明で開示される情報は、自分で選択できる。

<参考URL>
■ Bundesamt für Miguration und Flüchtlinge: www.bamf.de/eaufenthaltstitel
■ Bundesministerium der Justiz: www.gesetze-im-internet.de/aufenthv

藤田さおり(ふじた・さおり) 法政大学経営学部経営学科卒業。ニュルンベルク在住。スイスの日本人向け会報誌にて、PCコラムを執筆中。日本とドイツの文化の橋渡し役を夢見て邁進中ですが、目下の目標は、ドイツの乳製品でお腹を壊さないようになること。
最終更新 Donnerstag, 14 Januar 2016 13:05  
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