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Mi. 26. Jun. 2019

ドイツの子育てサポート制度

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前回(11月16日発行942号)の枠外記事で書いたように、 女性の社会進出と出産、育児や家事労働との間には切っても切れない関係がある。2012年11月には在宅育児手当が新たに連邦議会で可決されたが、子どもを産み育てる際に、ドイツにはどのような社会保障制度があるのか、主に給付と休業の制度についてみてみよう。

子どもに向けた施策

児童手当

ドイツの「Kindergeld(児童手当)」は1955年に導入された。当初第3子にのみ支払われていた手当が後に拡充され、2010年の改訂を経た現在は、第1子と第2子へそれぞれ月184ユーロ、第3子へは月190ユーロ、第4子以降は月215ユーロ支給されている。支給期間は児童が18歳になる(学生は25歳)までである。児童に向けた施策であるため、保護者の収入に関係なく支給され、課税対象ではないのが特徴である。

親に向けた施策

ドイツの育児休業と育児手当は1986年に導入され、その後、段階的に制度が拡張された。

育児休業と親時間

「Erziehungsurlaub(育児休業)」は2000年に諸改正が行われ、2001年には「Elternzeit(親時間)」に名称が変更された。男性も育児休業を取得しやすい制度に、との計らいである。親時間は最長3年。産前産後休業(用語解説)後に続けて利用可能な制度で、職場への復帰が保証される。子どもが3~8歳の間に、そのうち1年を繰り延べることも可能。また、親時間取得中に親は週30時間までのパートタイム就労を認められるため、共働きの夫婦はどちらがどれだけの親時間を取得するかを決めやすい。親時間を取得する場合には、取得開始の7週間前までに会社側に報告することが義務付けられ、その際に2年分の取得予定を雇用主に提示する必要がある。  

親時間により、男性の育児休業取得者は若干増加したと言われているが、大幅な増加にはならなかった。その裏には、下記のような経済的な事情がある。

育児手当から両親手当へ

ドイツの育児手当は、育児休業取得者に対し、子どもが生後24カ月になるまで月300ユーロ、または生後12カ月になるまで月450ユーロを給付する制度だった(2007年1月1日までに生まれた子どもに有効)。しかし、子どもの数ごとに所得制限が設けられる上に、支給額も少なかったことから、男性が育児休業を取得した際の社会保障としては十分とは言えず、そのため男性の育児休業取得者は大幅には増えなかったのである。  

そこで2007年に「Erziehungsgeld」(育児手当)は「Elterngeld」(両親手当)へと制度変更がなされ、親時間の取得によって所得が減る人に対し、子どもが生まれる前の平均賃金(手取り)の67%を受給できるようにした。最高で月1800ユーロの制限はあるが、育児手当からは大きく前進した内容だ。支給期間にも工夫があり、両親に与えられる14カ月分の請求権に対し、一方の親が請求できるのは最長12カ月までである。つまり、もう1人の親、主に父親が最低2カ月の育児休業取得することを推奨する制度になっている。一方、支給期間は24カ月から最長14カ月へ短縮された。母親が早く職場に復帰することによって社会復帰を円滑なものにし、夫婦での子育てを推進する制度となっているのである。

在宅育児手当

2012年11月9日、連邦議会は在宅育児手当の関連法案を可決した。「Betreungsgeld(在宅育児手当)」は、2012年8月1日以降に生まれた1~2歳の子どもを託児所に預けず、自宅で養育する親に対し2013年8月から月100ユーロ、2014年8月から月150ユーロを最長22カ月支給する制度である。また、その給付金を受け取らずに老後の備えや教育費として貯蓄する場合には、月15ユーロの補助金給付を保証する。  

この法案は、「託児所の増設策とともに、育児について親に選択肢を与える政策」として提案されたが、反対意見も多い。同予算が高額で良い経済効果を生み出さない、託児所の増設策がより急務であるといった意見や、女性を再び家に縛る退行政策であるという見方もある。  

親時間、両親手当、在宅育児手当は北欧各国の制度を参考に導入された。日本から見れば進んだドイツの諸制度であるが、ドイツもさらに進んだ北欧諸国を規範として模索しているのである。

日本とドイツ、子育てに関する手当の比較

衆議院議員選挙の投票は12月16日(日)に実施された。この記事を執筆している12月半ば時点では、どの党が政権を握るかまだ決まっていないが、民主党の政策に「子ども手当」があったことを覚えているだろうか? 日本の児童手当は1972年に施行された。民主党政権下で所得制限限度額と所得控除が廃止され、子ども手当になったが、2012年4月1日には再び児童手当に戻っている。日本とドイツの諸制度を比較してみよう。

日本 ドイツ
児童
手当
月額 第1子、第2子10,000円、
第3子以降15,000円
(3歳~小学校修了までの場合)※1
第1子と第2子184€、
第3子190€、
第4子以降215€
年齢 中学校修了まで(15歳) 18歳 (学生の場合25歳)
育児
休業
  1年 3年
育児
手当
月額 50% 67%
(最低300€、最高1800€)※2
支払条件 2年間で11日以上働いた月が
12カ月以上ある人
期間 12カ月※3 14カ月
在宅
育児
手当
月額 なし 100€(2013年8月から)
150€(2014年から)
期間 2年

※1:高所得者は対象外
※2:出産前に所得がない者にも300€の支給
※3:特例で一歳半まで延長あり

ドイツのその他の施策

このほかにも親に向けた施策として、ドイツには所得税の児童控除や、育児期間が社会保険に考慮されるなどのサポート制度がある。公立学校の授業料がほぼ無料というのも、日本との大きな違いだろう。2012年には税制度の簡素化が実施され、児童手当や育児費用の控除が一部変更された。18歳以上(ドイツでは18歳以上を成人と扱う)の児童で、8004ユーロ以上の収入がある者は児童手当を受け取れなかったが、それが廃止され、受け取れるようになった。また、保育費の控除に対する両親の所得制限が廃止され、子ども1人につき、費用の3分の2(ただし4000ユーロまで)を所得から控除できるようになった。
用語解説

産前産後休業 Mutterschaftsurlaub

当初、Mutterschaftsurlaubは育児休業を意味していたが、育児休業はErziehungsurlaubと言われるようになり、現在はEltenzeit(親時間)と言われる。ドイツでは出産予定日前6週間、産後8週間、計14週間の休暇を取得でき、その期間の賃金は100%保証される。日本では、賃金の支払いについては会社によって異なるが、健康保険制度では標準報酬日額の3分の2とされている。

参考
■ Bundesministerium für Familie, Senioren, Frauen und Jugend
■ Bundeszentralamt füer Steuern “Merkblatt Kindergeld” (01. 2012)
■ Süddeutsche.de “So beantragt man Elternzeit und Elterngeld” (15.05.2012)
finanztip.de “Maßnahmen zur Steuervereinfachung für 2012”
■ 厚生労働省
香川大学 経済政策研究 第5号(03.2009)
みずほレポート”父親の育休取得拡大を実現しつつあるドイツ” (26.06.2008)

藤田さおり(ふじた・さおり) 法政大学経営学部経営学科卒業。ニュルンベルク在住。スイスの日本人向け会報誌にて、PCコラムを執筆中。日本とドイツの文化の橋渡し役を夢見て邁進中ですが、目下の目標は、ドイツの乳製品でお腹を壊さないようになること。
 
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