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ドイツにおける日本食品の消費動向を追え!

和食が2013年12月にユネスコの無形文化遺産として登録されてから、早2年が過ぎた。2014年に日本産牛肉の輸入が解禁されたことも手伝ってか、以前に比べ、牛肉を含む様々な日本食品を取り扱う店や日本食レストランが増えてきていることを、ドイツで暮らす中で実感している。10月にケルンで開催された世界最大の食品見本市ANUGAでは、今年も日本パビリオンが設置され、盛り上がりを見せた。

日本食品輸入額の推移

ドイツ連邦統計局によると、2014年は日本からの農林水産物・食品の輸入額が、3819万ユーロ(約51億5600万円、1ユーロ=135円)であった。

2010年は前年比15%の増加だったが、主因はドイツにおける日本食市場が拡大し、需要が増加したためと考えられる。また、米国のリーマンショックの影響で、ユーロに対し約20円もの円の高騰があったことも忘れてはならないだろう。

2011年は、東日本大震災と福島第一原子力発電所事故の影響が大いに関係し、輸入額は前年比で約5%落ち込んだ。続く2012年がほぼ横ばいなのは、欧州連合(EU)が放射能検査に関する規則を施行したために、EU側での通関を厳しく取り締るようになったからである。

2013年は、輸入額が約3100万ユーロを超え、増加率は前年比約6%。震災前の水準に戻った。通関規制の緩和が実施されたことが影響しているのだろう。前年比22%と大きく伸長した2014年は、ドイツ経済がEUの中で比較的好調で、日本食のような高価なものにお金を使う余裕があったと考えられる。

しかし、ドイツへの外国からの輸入総額全体でみると、日本食品関連(約3819万ユーロ)が占める割合は約0.05%に過ぎない。例えば中国からの食品輸入総額は約11億4400万ユーロと、日本の約30倍。これを見る限り、和食の人気は上がってきてはいるものの、まだまだ伸び代があるといえる。

ドイツにおける日本からの農林水産物・食品輸入状況

主な品目別の日本食輸入状況の比較

品目別(15品目)でみると、2014年の1位はA.食品一般、調理済食品、調味料。続いて、2009年と比較したとき5年間で3.2倍も輸入額が増加したB.茶。また、C.アルコール飲料(2014年4位)、E.米(2014年13位、)も5年で2倍以上の伸びを示している。

また注目すべき点は、D.の牛肉(生鮮、冷蔵および冷凍、2014年5位)だ。日本産和牛は、2010年に宮崎県で発生した家畜伝染病の一つ「口蹄疫」が原因で輸入が認められていなかった。「口蹄疫」自体は5カ月ほどで終息したが、EU向け日本産和牛の輸出が解禁になったのは2013年3月28日のこと。2014年5月、日本で3施設(鹿児島2、群馬1)がEU向け輸出食肉取扱施設となり、翌6月からEUへの輸出が始まった結果、2014年のランキング上位に初お目見えしたというわけだ。現在はまだ日本食輸入総額全体の3%と少ないが和牛は日本食ブームによる需要拡大に比例し、今後さらなる増加が見込まれるだろう。

和牛

消費者の食に対する意識の変化

オーガニック情報を扱うドイツの出版社Bio verlagの発表によると、ドイツは米国に次ぐ世界第2位のオーガニック市場を持つ。その規模は、専門店とオーガニックを扱う一般スーパーマーケットなどを合わせると、2014年は79億1000万ユーロ(前年比4.8%増)。オーガニック専門店に特化すると、2014年は27億4000万ユーロ(前年比9.6%増)。2010年の数字と比較すると44%の増加を示し、この市場が急速に拡大していることが分かる。

オーガニックや日本食が流行る背景には、共通した消費者意識の変化がある。健康志向の高まりと、量より質を重視する傾向、そして、そのために食費にお金をかけるようになったことだ。国際世界保健機関(WHO)が加工肉の発がん性リスクについて言及したこと受け、ベジタリアンフード分野への注目はさらに高まるかもしれない。


好きな外国料理、日本料理は?

日本貿易振興機構(Jetro)が、2015年2月に興味深いアンケート調査(20代~50代男女計388人対象、複数回答可)を実施した。ベルリン、ハンブルク、ミュンヘン、ライプツィヒ、ドレスデン、その他の地域で、好きな外国料理についてを質問した。

好きな外国料理

結果は、「日本料理」が21.8%で最も人気が高く、次いで「イタリア料理」の15%、「中華料理」の12.4%と続く。また、日本、中国、タイ、韓国料理を合わせると52.8%にもなり、アジア料理が半分以上を占める。

次に、好きな日本料理は、1位が寿司(巻き寿司を含む)14.3%、2位ラーメン9.6%、3位は味噌汁6.1%、4位が刺し身6.8%、5位おにぎり6.2%。寿司は圧倒的な人気を誇っているが、2位がラーメン、5位がおにぎりという結果をみると、最近、ドイツでラーメン屋やおにぎり屋が増えてきていることも頷ける。

ドイツ人やそれ以外の外国人から、「日本人は毎日お寿司を食べているの?」と何度も質問されたことがある。「そんな贅沢な!」と思わず心の中で叫んだものだが、彼らはまだ、日本料理がいかに多様性に富んでいるものなのか知らないのだと思う。このまま日本食ブームが進んでいけば、そのような先入観もなくなり、もっと簡単に、そして手軽に日本食材をドイツのスーパーマーケット調達できるようになる日が来るのではないか。店頭に、鶏ひき肉や、豚肉や牛肉の薄切り肉が並ぶことも、そう先の話ではないのではないかと期待する。

用語解説

無形文化遺産
Immaterielles Kulturerbe

2003年採択、2006年発効の「無形文化遺産の保護に関する条約」に基づくユネスコ事業の一つ。世界各地の民族芸能、口承伝統や少数言語などの無形の文化遺産保護を目的としている。日本には2015年現在、合計23件が登録されており、人形浄瑠璃(2003年)、歌舞伎(2005年)や和紙(石州半紙2009年、美濃和紙・小川和紙2014年)がある。

<参考>
■ 日本貿易振興機構(ジェトロ)www.jetro.go.jp
■ 農林水産省 www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/ich/
■ ドイツ連邦統計局(Statistisches Bundesamt)www.destatis.de
■ “Bio-Markt wächst auf 7,91 Milliarden Euro”(10.02.2015)http://bio-markt.info その他

筧 美恵子(かけひ・みえこ) 大学卒業後、婦人服のパタンナーとなる。その後一転し、電機メーカーにて主に輸出関連業務に10年間携わる。その頃からドイツとの馴染みが深い。2006年4月からニュルンベルク在住。幅広い視野を持って、分かりやすい記事の発信を目指す。健康のため、ジムで筋力トレーニングに日々励んでいる。

最終更新 Donnerstag, 14 Januar 2016 12:47  
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