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本とぬくもりに包まれて ブリュールの古書店 Eule

未知の国や街の地図を広げ、まず真っ先にすることは書店と図書館を探すこと。いつだって私の旅はそこから始まります。

本に囲まれ本を読む。楽園はここにあり本に囲まれ本を読む。楽園はここにあり

ケルン中央駅から列車に揺られること20分。作曲家ベートーヴェンゆかりの地であるボンとの狭間の街「ブリュール」(Brühl)。降り立てば、真っすぐに伸びた道の向こう、開けた空を背に佇む世界遺産「アウグストゥスブルク城」。その城から見晴らすは美しい庭園と心地よい水景。そしてすぐ先には、20世紀シュルレアリスムの代表的画家(彫刻家)マックス・エルンストの美術館。優美なロココの城と混沌とした現代作品、散歩がてらに悠久の時をさまよう旅を楽しむことができる街。そんなブリュールの目抜き通り、縁えにしを感じるケルン通りの一角、人々の暮らしに寄り添うようその古書店はありました。

子どもも大人も本と戯るカフェスペース子どもも大人も本と戯るカフェスペース

「Buchhandlung & Antiquariat Eule」。フクロウのマークと名前を冠する、2018年創業のお店。扉を開けてすぐに目を引くのは、かわいらしい花柄の壁紙とカフェスペース。並ぶ席では本を片手の一人客、声ひそめながらも楽しそうにおしゃべりに花を咲かせる友人同士や家族連れ、絵本を抱え何度も往復する子どもたち、店には穏やかなにぎわいが満ちています。そして店の奥には……視界を埋め尽くす本。本の城塞! 本の山! 四方八方を本に囲われ、手を伸ばせば読むことを許される。本好きにとって、まさに楽園。棚に入り切らずそこかしこに積み上げられているその光景は、まるで「運命の本に出会えるか否かはお前次第」と挑まれているかのよう。発掘作業のごとく書籍をかき分け、気になる本を見つけたらテーブル席で頁をめくり、財布の中身と積み上げた愛しきものたちとを天秤にかけ頭を悩ませるのもまた至福。もう一度、またもう一度と足を運び、お腹が空けばランチを食べ、読書の合間におやつをつまみ……。そんなことを続けているうち気づけば日は傾き、外はすっかり夕焼けに染まっていました。

クラシカルで愛らしいインテリア。もちろん本は所狭しにクラシカルで愛らしいインテリア。もちろん本は所狭しに

生まれたときから本に囲まれ育った私にとって、生活は本と共にあること。それ故、旅にも本を求めます。これまでさまざまな書店や図書館を訪れましたが、こんなにも心地よく人々を迎え入れ、心に明かりを灯し送り出してくれる場所はほかにありませんでした。

宮殿庭園に花咲き誇る春ももちろん良いけれど、秋のブリュール旅も私は推したい。それはこの店の存在があるから。日に日に風は冷たさを増し、夜が長くなるこの季節。友とする本と人のぬくもりを求め、足を運んでみてはいかがでしょうか?

上原ありす
ケルンに暮らす、モダンとバロックのチェロ奏者。そして物書き。自身を通して音楽と文学をかさねながら、うさぎ穴に飛び込むごとくさまざまな世界へ飛び込み、活動を行っている。文学・アート・アンティーク・甘いものが生きる糧。 https://kaninchen-bau.com | Instagram: @alice_u_cello
 
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