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色とりどりの自然に溢れるヒデンゼー島

ここはバルト海に浮かぶ、ヒデンゼー島(Insel Hiddensee)。ドイツ最大の島であるリューゲン島の西側に位置しています。港でのんびりしていると聞こえるのは、鳥の鳴き声、子どもたちのうれしそうな声、馬がパカパカと歩く音。この島での移動手段は、自分の足、自転車、馬、馬車もしくは電気で走るコミュニティーバスだけ。車の音がほとんどせず、大自然に耳を傾けることができるため、20世紀初頭から多くの文化人に愛されている休暇先です。

ヒデンゼー島はタツノオトシゴのような形をしています。長さ17キロ、一番幅が広いところで3.7キロ、最も狭いところではたったの250メートル。そのため、あっという間に島の反対側まで行けてしまいます。空を見上げれば数えきれないほどの鳥たちが飛び、草原を見渡せば寝転んでいる馬や牛の姿。また、ロストックなどの同じ北ドイツでも見たことのないような、色とりどりの花が咲き乱れています。

丘の上に立つ灯台丘の上に立つ灯台

そんな大自然の中を自転車で走り抜けていくと、赤い屋根の白い灯台が丘の上に見えてきます。まるで物語に出てきそうなこの丘は、島の北部のドルンブッシュ(Dornbusch)という丘陵地帯。自然保護地域になっているため、灯台へ行くには自転車も降りなければなりません。

舗装されていない細い道を、自転車を押しながら登ったその先には……素晴らしい絶景が広がっています。さらに灯台に上がると、透き通るような青空を背景に、デンマークのメン島や、バルト海の都市シュトラールズントの三つの教会の塔がくっきりと見えました。この島をよく訪れる友人いわく、今年ほど空気が澄んで遠くまで景色が見渡せたことはこれまでにないそう。コロナ禍で飛行機があまり飛ばなくなった影響の一つなのかもしれません。

灯台からの眺めは大変美しいです灯台からの眺めは大変美しいです

この島を散策していてすぐに感じるのが、「大衆化していない」ということ。実は、旧東ドイツ時代に多くの観光地で大衆観光のためのインフラ整備が行われた際、ヒデンゼー島はそれを拒否したのだとか。そのため、今でも大きな建物などは一切なく、バルト海沿岸地域でよく見られるかやぶき屋根の家屋が立ち並んでいます。また、家並みを見ながら歩いていると、直線的な記号のようなモチーフが家の外壁に打ち付けられているのが目に入ります。これは、それぞれの家が先祖代々少しずつ形を変えながら引き継いでいる家紋のようなものです。

家の外壁に取り付けられた紋章家の外壁に取り付けられた紋章

ヒデンゼー島へは、シュトラールズントやリューゲン島から運航しているフェリーで訪れることができます。馬車ツアーや自転車を利用すれば、日帰りでも十分に満喫することも。心からおすすめしたい場所ですが、少し秘密にもしておきたいような、ちょっと特別な島です。

ハス エリコ
ロストック在住。ドイツ北東地方の案内人、そしてシュヴェリーン城公認ガイド。ツイッターで観光、街、大好きなビールについて、ほぼ毎日つぶやいています。
Twitter: @rostock_jp
griffin-guides.com
 
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