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菜の花畑が魅せる 5月のドイツ北東地方

ドイツの春の色といったら黄色。その春の終わりを締めくくり、これから来る夏の喜びを表すかのように、菜の花が鮮やかな黄金色の景色を見せてくれます。ドイツ北東地方では5月に入ると、菜の花が栽培されている畑に黄色の点々が次第に増えていき、気づくとあたり一面の黄金色の海が広がります。

ロストックの中心地から自転車で10分足らずで広がる景色ロストックの中心地から自転車で10分足らずで広がる景色

地平線まで続く菜の花畑を目の当たりにして、改めてこんな広大な土地を全て菜の花にした農家の皆さんに感服。今年は例年よりも規模が大きい気がするなと思って調べてみたところ、今シーズンのメクレンブルク=フォアポンメルン州(MV州)の菜の花の作付面積は、昨シーズンに比べて8%広く、全体では1800平方キロメートルに上ります。これはベルリン州の面積のほぼ2倍。この時期にMV州内は「国道か高速を走るか、電車に乗ればすぐに菜の花畑に当たる」と言い切ってもいいくらい、目の前にも、地平線沿いにも黄金色が広がるのです。そして窓を開ければ、あの少し酸っぱいような濃厚な花の匂いが鼻をくすぐります。菜の花畑が全く見えない街の中でさえ菜の花を匂いがするほどなので、先日、自転車で果てしない畑の横を走っていたら匂いに少し酔ってしまったくらいです。

菜の花は私たちの目を楽しませてくれるだけでなく、ミツバチをはじめとする昆虫たちの大事な栄養源。そしてそれは回り回って、はちみつとなってわれわれにおすそ分けされますね。夏になれば実を結び、それが菜種油の原料に。種以外の部分は圧縮されて家畜の餌になり、さらに収穫された後の土壌を良くするという働きも。廃棄のほとんどない、超マルチタレントな作物なのです。MV州ではドイツ国内全体の18%が生産されており、農業においては貴重な収入源でもあります。

まさに黄金色の海!まさに黄金色の海!

しかし、ロシアによるウクライナ侵攻の影響がここにも影を落としています。今年4月から当面8月まで、ロシアがひまわりの種や菜種の輸出を禁止しているため、今シーズンの栽培コストはすでに前シーズンの2倍に跳ね上がっているそう。今後さらなる菜種油や関連製品価格の記録的高騰が見込まれています。菜の花は夏に収穫された後、8〜9月にかけて種まきが行われますが、次の春も広大な黄金色の海原のような菜の花を見ることができるかどうかは、一日も早い戦争の平和的解決にかかっていると言っても過言ではありません。来年の5月、何も憂うことなく、ただ純粋に青空に映える菜の花畑を眺めることができるようにと祈るばかりです。

ハス エリコ
ロストック在住。ドイツ北東地方の案内人、そしてシュヴェリーン城公認ガイド。ツイッターで観光、街、大好きなビールについて、ほぼ毎日つぶやいています。
Twitter: @rostock_jp
griffin-guides.com
 
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