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エコ社会には不要?!白熱電球が消える

2009年9月以来、店頭に並ぶ照明器具に大きな変化が生じている。暖かく柔らかい光が好まれてきた白熱電球が、効率の悪いものから順に廃止され、2012年9月以降は店頭から一切姿を消すことになっているのだ。理由は省エネルギー対策と二酸化炭素(CO2)排出削減のため。今回は、白熱電球廃止の背景とこれからの照明に光を当ててみよう。

白熱電球と環境問題

白熱電球は、導体を発熱させることによって生じる光を利用したもの。しかし発光率は極めて低く、光となっているのは全電力のわずか5%程度。残りの95%は熱として放出されているだけだ。

つまり消費電力が極めて多い。このことはまた、地球温暖化の原因とされるCO2をたくさん排出することになり、環境に非常に悪い影響を与える。そのため欧州連合(EU)は2008年、白熱電球の販売を禁止することに決めた。

EUは、少しの電力で長く使える効率の良い照明を「A」、反対に効率の悪いものを「G」として、7段階に分類。2009年9月には早速、Gクラス、Fクラスのほか、Eクラスの一部を廃止した。

今後も廃止の対象を拡大していき、2012年以降はA、B、Cクラスのみしか販売されないようになる。Dクラス以下の白熱電球はこのため、店頭から消えることになるのだ。白熱電球の廃止は、オーストラリアから始まり、現在はEUのほか日本もこれに倣うなど、世界的な傾向となっている。

省エネ照明の利点

白熱電球に代わって増えているのが、電球型蛍光灯。この蛍光灯は、白熱電球よりも75%も少ない電力で、同じ明るさを生み出すことができる。電力消費量が4分の1ということは、CO2排出量も4分の1。白熱電球をすべて電球型蛍光灯に変えると、EU全体で年間消費電力量を400億キロワット時(ルーマニアの年間電力消費量に当たる)も削減、年間1500万トンのCO2削減につながる計算だ。蛍光灯と言えば、明々とした光というイメージがあるかもしれないが、色温度も豊富に出ている。

また電球型蛍光灯は環境だけでなく、家計にもやさしい。電球型蛍光灯の価格は白熱電球の10倍と高いが、寿命も白熱電球の10倍程度長い。そのため、家の大きさや使用頻度によっても異なるが、最終的には年間約60ユーロの節約につながる。現在まだ使える白熱電球を処分する必要はないが、次の買い換え時にはエネルギー消費量の少ない照明(A、BもしくはC)を買うのが賢明だ。今後普及が進めば、商品価格も低下するだろう。さらなる負担減も期待できる。


©Initiative EnergieEffizienz / dena

問題点と課題

以上のように、2012年を待たずして、なるべく早く白熱電球を電球型蛍光灯に変えるメリットは十分にある。しかし、やはりデメリットもあるのだ。それは電球型蛍光灯には有毒な水銀(用語解説)が含まれているということ。白熱電球には水銀は含まれておらず、普通ごみとして処分できるが、電球型蛍光灯は商品取扱店に持って行くか、指定のごみ捨て場に運ぶなど、適切なごみ処理が必要になってくる。しかし実際、各家庭で正しく廃棄されているかどうかは、コントロールできない。1つ1つに入っている水銀は少量だが、今後普及が進めばその総量も増えていくことになる。環境保護のために白熱電球に取って代わることになった電球型蛍光灯が、環境に悪影響を及ぼしてしまっては本末転倒だ。そのため、白熱電球廃止を止めようとする動きもある。

また、さらに効率が良く、しかも水銀を含んでいない「LED(発光ダイオード)照明」(写真右)の開発も急速に進められている。ただ、現時点では白熱電球の代替となれるほどの技術にまでは達しておらず、環境対策にすぐさまつながるレベルでもない。しかし“将来の照明”として注目されていることは確かだ。さらなる技術の発展を期待するとともに、省エネ問題、地球温暖化問題、ごみ問題と、環境に対する我々消費者の意識も高めていかなければならない。

白熱電球 電球型蛍光灯 節約分
100ワット 20〜23ワット 192ユーロ
75ワット 15〜20ワット 144ユーロ
60ワット 11〜16ワット 118ユーロ
40ワット 7〜9ワット 79ユーロ
25ワット 5〜7ワット 48ユーロ
15ワット 3〜5ワット 29ユーロ

寿命が1万時間の電球型蛍光灯を使用し終えた場合(平均的な電気代1キロワット時24セントで計算)

照明の種類と比較
各照明器具のメリット(+)とデメリット(-)について比較してみよう。

● 白熱電球(Glühlampe)
=Dクラス以下

+ 安価
- 電力消費量多い
- 寿命は1000時間(約1年)

● ハロゲンランプ(Halogenlampe)
=C~Eクラス

+ ハロゲン技術を施した白熱電球で、機能や見た目などは白熱電球とほぼ同じ
+ 安価
- 白熱電球に比べ、わずか25~45%の省エネ
- 寿命は2000時間(約2年)

● 電球型蛍光灯(Kompaktleuchtstofflampen)
=A、Bクラス

+ 白熱電球に比べ、70~80%の省エネ
+ 寿命は1万時間(6~10年)
- 明るさの調節ができないものがある
- スイッチを入れてから完全に明るくなるまで、時間が掛かるものが多い
- 水銀を含む

● LED照明(Leuchtdioden-Lampen)
=A、Bクラス

+ 白熱電球に比べ、80%以上の省エネ
+ 寿命は1万5000時間(10年以上)
- 単価が非常に高く、現在のところ種類もまだ豊富ではない
- 周囲の温度に敏感
- 明るさの調節ができないものもが多い

用語解説

水銀 Quecksilber

1つの電球型蛍光灯に含まれる水銀の量は最高で5ミリグラム。電子体温計が普及する前に使われていた水銀式体温計に入っていたのが数グラムだったのに比べれば小量だが、毒性が強く、健康を害する恐れがある。使用の際に割れたりした場合は、窓を開けるなどして換気を良くする、肌への接触を避ける、掃除機は使わず、ぬれた布で拭き取ること(参考:Europälsche Kommission)。

<参考文献>
■ Europälsche Kommission (http://ec.europa.eu/energy/lumen/index_de.htm)
■ Deutsche Energie Agentur (dena)

内田 由起子(うちだ・ゆきこ) 東京外国語大学ドイツ語学科卒業。在学中、卒業後とドイツを行ったり来たりしながら語学勉強を続けた後、英語ニュースの翻訳に携わり、ジャーナリズムの世界に入る。04年1月からハンブルク在住。渡独後は主に、ドイツニュースの発信に努めている。
 
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