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低血圧のあなたに

私は血圧が低い方で、早朝の起床がつらいです。お薬で治るものでしょうか?

低血圧(Hypotonie)とは?

文字通り「血圧が低い」状態を指しますが、その定義はあいまいです。医学専門誌の多くは収縮期血圧(最高血圧)が90mmHg以下、一般の臨床では100mmHg以下と定義。日常会話の中では105mmHg前後でも「血圧が低い」と表現されます。

低血圧に伴う症状は?

早起きが苦手、熱いお風呂がつらい、頭重感、立ち眩み、めまい、だるさ、活力が湧かない、などです。血圧値が低くても平気な人もいます。低血圧に伴う諸症状は、貧血(Anämie)の症状と似ていますが、前者は循環器系の病態で、後者は血液中の赤血球の量が問題です。若い女性は、軽度の鉄欠乏性貧血と低血圧を併せ持っていることもあるので、あまりにも立ち眩みやだるさが酷い場合は、調べてもらいましょう。

図1 低血圧

血圧が低くなる原因は?

低血圧のほとんどは原因不明の慢性低血圧で、「本態性低血圧」と呼ばれています。男性より、痩せ型の若い女性に多くみられます。また、不整脈や心臓病により心臓からうまく血液を送り出せない、降圧薬が強すぎる、下痢や出血で循環血液量が減る、自律神経の病気で血圧調整がうまく行かないといった場合にも低血圧になることがあります。

血圧が低い人の利点とは?

疫学調査によると、血圧が低めの人の方が高めの人より長生きできます。これは、血管に掛かる圧負荷が減り、心筋梗塞や脳卒中などを引き起こす動脈硬化が起きにくいためです。

起立性低血圧とは?

寝た状態から急に立ち上がった際に、収縮期血圧で20mmHg以上、拡張期血圧で10mmHg以上、血圧が下がる状態です。体位を変えると重力によって血液が下肢に溜まります。通常は心臓と血管が即座に反応し、血液分布の再調整と血圧維持がなされますが、これがうまく行かない病態が起立性低血圧です。糖尿病による自律神経障害、降圧剤服用中の高齢者、さらに前立腺肥大症やパーキンソン病の治療薬が影響していることもあります。

子どもの起立性調節障害とは?

長時間立ちっぱなしの状態が続いた時、脳への血流調整がうまく行かず、めまいや立ち眩み、失神などを起こします。成長期における自律神経系の調整機能の失調が原因で、体の発達が著しい年齢の子どもの約1割にみられます。成長が進むとともに自然と消失します。

起立性低血圧の治療法は?

下肢を圧迫し、静脈内に溜まった血液を心臓に戻りやすくする「弾性ストッキング」が有用。コルチコステロイドというホルモン製剤を処方されることもあります。

食後低血圧とは?

食べた物を消化するために、胃や腸では大量の血液を必要としますが、循環器系の調整機能が衰えると、食後の血流分布の変化に対応できずに血圧が下がります。高齢者や長期の糖尿病患者にみられます。

排尿時の血圧下降

男性に多く、特にアルコールを飲んで排尿を長く我慢した後、一気に膀胱を空にしようとする際に起こり、人によっては失神することもあります(排尿性失神)。アルコールで血管が拡がっているところに、排尿に伴い迷走神経が刺激されてさらに血管が拡がり、急激に血圧が下がるためと考えられています。

脳下垂体機能低下に伴う低血圧

出産時に大量の出血を経験した女性にみられます。脳下垂体から分泌される副腎皮質を刺激するホルモンがうまく出ないために生じます。長期間のだるさ、疲労感、活力低下、低血圧、低ナトリウム血症を伴います。脳下垂体や副腎皮質機能の検査によって診断されます。

食事療法

早寝早起きを心掛け、朝はゆっくりと身支度できる時間を作ります。朝食は少しでも摂るようにし、朝食後はコーヒーやお茶を飲む。カフェインには交感神経系を刺激して血圧を多少上げる作用があります。しかし、睡眠の妨げになるので夕方以降はカフェイン類を控えましょう。多めの飲水と適度の塩分摂取は血圧の維持に役立ちます。偏食や過度のダイエットは禁物です。

運動療法

適度な運動は、血管運動の調整を司っている自律神経系を刺激します。1日中座り仕事に従事している人にとっては特に大切です。心臓や血管の調整機能を直接刺激するには「でんぐり返し」や「逆立ち」も効果があります。ただし、けがには注意しましょう。

低血圧のお薬

低血圧の症状が強い場合、昇圧剤と呼ばれる薬を用います。交感神経系を刺激して血圧を上げるタイプと、静脈を収縮させて心臓に戻る血液量を増やすタイプの薬があります。前者では時として動悸や頭痛の副作用が、後者は合併する疾患によっては使えない場合があります。薬ではありませんが、ローズマリーやクスノキなど植物の葉を煎じて飲むと良いという人もいます。

表1 低血圧を克服するための日常生活における留意点
・ 十分な睡眠をとる
・ 早起きを心掛ける
・ 朝はゆっくりと立ち上がる
・ 少しでも朝食を摂る
・ 朝食後にコーヒーかお茶を飲む
・ 夕方以降のカフェイン飲料の摂取は控える
・ 偏食を避ける
・ 極端なダイエットはしない
・ 毎日体を動かす
 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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