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コンピューターと健康

仕事で1日中コンピューター(PC)を使っています。最近、目がぼんやりして見えることがありますが、PCとの関係はあるのでしょうか?

コンピューターで病気に?

1日に何時間もコンピューター(PC)に向かっている人の8割近くが経験するとも言われる目や肩の諸症状。ドイツではMausarm(マウス症候群)、RSI(Repetitive Strain Injury、反復負荷による障害)、Computer Vision Syndrome(コンピューター視覚症候群、日本で言うVDT症候群)などと呼ばれています。最近では、PCから離れられない「依存症」も問題となっています。

目への影響

目の疲れ・ぼやけ感
ディスプレーを何時間も休みなく注視した後、ふと周囲に目をやると、まるで視力が落ちたように対象物がぼやけたり(Verschwommene Sicht)、ダブって見える(Doppelbilder)ことがあります。ディスプレーやキーボード、書類など、近距離にある物にだけ視線を向けていると、目の焦点の調整機能の緊張が絶えず続く状態となり、目の疲れ(Müde Augen)に繋がります。また、ディスプレーの反射や映り込みも目の疲れを助長します。遠くを見るのに有用な矯正力の強い眼鏡も、近距離での作業を続けるには不向きな場合があります。

図1 モニターと窓の位置

目の乾燥(ドライアイ)
私たちの眼球の表面は、まばたきする際に運ばれる涙によって乾燥から守られています。しかし、PC作業 時はまばたきの回数が減り、目が乾燥しやすくなります。目の乾燥(Trokene Augen)は、特にコンタクトレンズ装着時に強く感じられ、時に目が焼けるような感じや痛み(Brennen und Schmerzen der Augen)、発赤(gerötete Augen)を生じます。

視力への影響は?
PC作業が直接、視力低下をもたらすという医学的証拠は今のところありません。目の症状の多くは、視力低下によるものではなく、PC使用による視覚系への負荷(ストレス)によると考えられています。一方、2004年の英国の医学雑誌に報告された、約1万人を対象とした日本の研究では、PCを長時間利用する近視の人と緑内障(視野異常)の関係が示唆されています。

肩、首、背中、手の症状

手首や指のしびれ感
高速タイピング、手首を捻ってのトラックパッドやマウスの使用という単純な負荷の繰り返し(RSI)により、 腱鞘炎や手根管症候群を発症することがあります。「マウス腱鞘炎」と呼ばれることも。

肩凝り、首の痛み
PC作業中は、腕は前方に曲げたままで、手はほとんどキーボードとマウスだけという非常に限られた動きになります。手だけではなく、首や肩の筋肉にも負荷が掛かり、長時間の作業では往々にして首、肩、腕に違和感や痛み(Beschwerde)を生じます。

腰痛や背中の不快感
私たちは絶えず移動したり、体の位置を変えて生活しています。PC の前での姿勢は、机・椅子の高さ、ならびにディスプレー、キーボート、マウスの位置によって決まります。同じ姿勢で数時間も座り続けると、背中や腰の筋肉の過緊張から、背中のだるさや腰の痛み(Rückenschmerzen)を来たすことも少なくありません。

精神面への影響

精神的な負担
PC を利用する仕事に従事している人の中には、過量な仕事を抱え込むことによる過労、デッドライン(締切)に追い立てられる心理的圧迫を感じている人もいます。このことが、PC の前に釘付けにさせ、さらに前述の症状を増悪させる誘因になっています。これらの心理的負担から、PC の前に座るだけで疲労感、めまい、イライラ感などを訴える人もいます。

心理的な依存症も
余りにもPC生活の深みにはまると、天気の良い週末や休日でもPC や携帯電話の画面に向かっていないと不安に感じる場合もあります。一旦PC のスイッチを入れると、際限なく色々なページを訪れ回ることも。極端な場合は、パソコン依存症、ネット中毒などとも呼ばれ ます。

電磁波の影響はありますか?

PC は、本体、ディスプレー、周辺機器・ネットワークの配線などから、ほかの家電器具と同様に、超低周波の電磁波を発しています。PC本体からはドイツの電源の周波数に準じた50ヘルツの電磁波が、ディスプレーからは60〜450ヘルツの複数の電磁波が出ています。今のところ、これらの電磁波がPC を扱う人の、白内障や特定の皮ふの病気、生まれてくる赤ちゃんの障害などに関連したという報告はありません。

ノートパソコンでは?

キーボードとディスプレー、トラックパッドが一体となったノートパソコンの場合、使用者の姿勢や動きがより制限され、どうしても覗き込む姿勢になりやすいため、注意が必要です。机上で長時間にわたり使用する際には、外付けのキーボードやマウスを用いて、腕や手首への負担を軽減する工夫も大切です。

健康を保つ工夫

定期的な休憩・体のストレッチ
少なくとも1時間画面を見つめたら、10〜15分間はPC から離れ、肩や腕を回し、体のストレッチをして筋 肉の緊張をほぐしましょう。長く働いて長時間の休息を取るより、こまめに休憩を入れた方が健康面からも作業能率からも効果的だと言われています。休憩中はメールのチェックをしたり、読みかけの本を読むのではなく、できるだけ遠方を眺めて目を休めるようにします。

ディスプレーの位置・高さ
使用者の真正面に設置し、背中を丸めないで眺めることができ、さらに首が上向きにならずに見れる(多くは自分の頭を超えない)高さに調整します。ディスプレーを机の端に置き、いつも体を横向きに捩って使うのは好ましくありません。ディスプレーの真後ろに太陽光の入る窓があったり、窓からの光が直接ディスプレー画面を照らす位置は避けます。画面上のホコリは定期的に取り除き、輝度やコントラストもきちんと調整します。

キーボードの位置と高さ
ディスプレーの正面(すなわち自分の正面)に来るようにします。手首を曲げないで(腕と直線になるように) キーボードを打てるような高さにします。キーボードは単体で移動ができる分離型で、角度の調整ができるタイプをお勧めします。マウスはキーボードと同じ高さで、 しかもキーボードの直ぐ横で用いるようにします。

椅子と机の高さ
ドイツで販売されている椅子の中には、座る位置が極端に高いものもありますが、まず両足が楽に床につくことが大切です。足が宙に浮いたり、逆に低すぎて膝が持ち上がったような姿勢は望ましくありま せん。場合によっては、フットレストの活用も有用です。長時間PCで仕事をする人は、腰へのサポート (Lendenunterstützung)機能の付いた椅子が、腰の負担の軽減に有用です。キーボードを載せる机の高さは、 伸ばした前腕(肘から先の部分)が床と水平になること が理想です。

それでは今日も、健康的にコンピューターを活用して ください。

図2 コンピューターと姿勢

 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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