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視界に現れる異常 - 飛蚊症と光視症

最近、ふと空を見上げたときなどに、視界に何か小さなゴミのようなものが浮いているように見えて、気になります。何かの病気でしょうか?

Point

  • 視界に浮遊物が見えるのは、飛蚊症。
  • 暗い所で一瞬光りが見えるのは、光視症。
  • ものがゆがんでみえるのが変視症。
  • 重篤な目の病気の前触れであることも、まずは眼科へ。
  • 偏頭痛に先立つ視覚異常は、脳血流の変化から。
  • 貧血で星が見えるのは、脳の虚血によるもの。

飛蚊症(ひぶんしょう)とは

● 症状は?

明るい壁や空を見たときに、目の前を小さな糸くずやゴミのようなものが移動しているように見えることがあります。眼球の中の硝子体(しょうしたい)と呼ばれる卵白のようなゼリー状の物質に、何らかの原因で濁りができると、その影が飛蚊症として感知されます。眼球内を蚊が飛んでいるように見えるため、飛蚊症(fliegende Mücken)という名がつきました。目を動かしたり、視点を変えると、目の動きに少しおくれて浮遊物も移動します。

飛蚊症

● 原因1:生まれつき

胎児のうちは硝子体に血管が通っており、通常は生まれるまでにこの血管はなくなります。しかし、生後もその一部が硝子体の中に濁りとして残ることがあり、その影が網膜に映ります。特に心配する必要はありません。

● 原因2:加齢

50歳以降、年齢を重ねるに従って硝子体の容積は減り、硝子体と網膜の間に小さな隙間ができます(後部硝子体剥離)。また、加齢によって硝子体の構造が崩れ、硝子体ポケットと呼ばれる水の部分ができ、そこに繊維成分が濁りとして浮遊します。どちらも、飛蚊症を生じさせる原因です。

硝子体

● 原因3:強い近視

強い近視の人は、眼球の長さ(角膜から網膜の長さ) が伸びているため、硝子体も引き伸ばされています。それにより、硝子体の中に空洞ができやすく、そこに繊維成分が集まって飛蚊症の原因になります。また、網膜も絶えず硝子体側に引っ張られることで網膜が薄くなって、丸い穴(円孔)ができ、飛蚊症の原因になります。

● 原因4:網膜の亀裂、眼底出血

何らかの原因で網膜に亀裂が入ると、飛蚊症や光視症が現れます。網膜裂孔(もうまくれっこう)と呼ばれるこの亀裂がさらに進むと、網膜が剥がれて「網膜はく離(Netzhautablösung)」を起こします。また、網膜の血管が破れて血液が硝子体の中に流れ込んだような場合にも、突然の飛蚊症と視野障害をきたします。どちらも放っておくと失明の危険があるので、できるだけ早く眼科での治療が必要です。

視覚の症状の原因

光視症(こうししょう)とは

● 症状は?

光の見えないはずの暗闇の中で、視界にピカっと光が見えたり、キラキラと小さな光の点が横切って見えたりする症状です。

光視症

● 原因1:加齢

眼球内の硝子体の動きに伴い、網膜が刺激を受け、それが光として認知されることによって起きる症状です。原因として最も多いのは。加齢による後部硝子体剥離です。網膜と硝子体の間に癒着ができ、目を動かした際に網膜の一部が引っ張られて、その刺激が光として感じられるのです。

● 原因2:網膜剥離の前触れ

多くの場合、光視症は眼球の老化に伴う症状ですが、中には網膜剥離の前兆として起こる場合もあります。光視症の人の20%が網膜裂孔を生じるとされ、網膜裂孔がさらに進展すると網膜剥離を起こし、失明の危険も出てきます。光視症を経験したら、眼科を受診しましょう。

● 「 眼から火花が出る」?

頭を強く打って「星が見える」という表現がありますが、打撲や大きなくしゃみのような物理的な衝撃が網膜を刺激し、光として捉えられたために生じる現象であると考えられています。貧血や低血圧の人が急に立ち上がったときに見るチカチカ感は、一過性の脳の虚血現象と理解されています。

変視症とは

● ものが歪んで見える?

例えば、まっすぐに立っているはずのスカイツリーが、途中で曲がっているように見える視覚異常です。目のフィルムに相当する網膜の表面がゆがむことによって生じます。必ず眼科を受診してください。

変視症

● 黄斑変性症を疑う

変視症の多くは、網膜の中心にある黄斑(おうはん)の部分が加齢によって変化し、黄斑変性症を発症していることが原因です。黄斑変性症の人は、視野の中心だけがゆがんだり、ぼやけたり、暗く見えますが、視野の周辺部は正常に見えます。黄斑変性症は、日本人の失明原因の4位にランクインしています。

その他の視野の異常

● 偏頭痛の直前に起こる光の前兆

偏頭痛(Migräne)の痛みに先立って、視野に異常が生じ、のこぎりの刃型のギザギザした形が見えたり、ギラギラした光が広がってみえることがあります。これは閃輝暗点(せんきあんてん)と呼ばれ、このような前兆は偏頭痛の約1/2 の人にみられます。脳内の血流変化が原因で、目の病気ではありません。

● 不思議の国のアリス症候群

変わった病名ですが、突然、目の前のものが大きく見えたり(大視症)、周囲のものが小さく見えたり(小視症)、ゆがんで見えたり(変視症)、あるいは時間の経過が速くなったり、遅くなったり、様々なバリエーションの症状があります。多くの場合、数分で元にもどります。偏頭痛、ウィルス性脳炎の感染など、いくつかの原因が考えられます。

視覚異常

眼科受診時の留意点

受診前に電話で予約を取ってください。かかり付けの医師から紹介してもらっても良いでしょう。常用している治療薬、患っている慢性の病気があれば眼科医に伝えてください。目の変化が全身の病気と関係している場合もありますし、散瞳剤などが慢性の病気に影響したり、ほかの治療薬との薬物相互作用を起こすのを防ぐためです。まれに、説明がないまま検査室に案内され、検査結果や測定値の説明もなかった、という話を聞くことがあります。そのような場合、検査結果が後日、紹介元のかかり付け医に郵送されるのか尋ねてみましょう。

 

 

 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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