Hanacell

気になる、尿漏れ

2人目の子供を出産してから、大声で笑った時に少し尿が漏れてしまうことがあります。赤ちゃんはまだ小さいため育児に忙しく、どうしたら良いのか誰にも相談できずに困っています。

Point

  • 男女共に尿漏れは決して希ではありません
  • 女性は出産後の骨盤底筋の緩みが関係
  • 男性は前立腺肥大が関係
  • 過活動膀胱は尿意切迫感が主症状
  • 外出の際は事前にトイレの場所の確認を
  • 一度、泌尿器科に相談しましょう

尿漏れが起こる原因は?(Harninkontinenz)

● 括約筋が大活躍

一日の大半は膀胱の出口の尿道括約筋がしっかり締まっていて尿が出てくることはありません。トイレの中ではこの尿道括約筋が緩み、同時に膀胱が縮んで排尿する仕組みになっています。

● トイレを我慢

この括約筋の収縮は神経反射により無意識に行われています。膀胱内にある程度の尿が貯まると尿意(Harndrang)を感じますが、自分で意識的に尿を我慢することができます。

● 尿漏れの原因は?

排尿の調節には複数の神経と筋肉が関与していて、このいずれかの問題で排尿調節に障害が生れます。女性では骨盤底筋(Beckenbodenmuskel)の緩み、男性では前立腺肥大が大きく関わってきます。

● 決して希ではない尿漏れ経験

一度だけの軽い「ちょい漏れ」も含めると4割以上の女性に尿漏れ経験があり(日本泌尿器科学会)、50歳以上の男性の3人に1人に尿漏れの経験があるといわれています(軽いものから、一度だけの経験も含めると8割近いという2016年のユニ・チャームの報告もあります)。

尿漏れのタイプ

尿漏れ(尿失禁)のタイプ

腹圧性尿失禁 咳など急な腹圧の上昇で 骨盤底筋の緩み
切迫性尿失禁 突然の尿意で我慢できない 骨盤底筋の緩み、前立腺肥大症
溢流性尿失禁 少しずつ尿が漏れ出てくる 前立腺肥大症
機能性尿失禁 排尿機能以外の原因 歩行障害など

● 腹圧が原因のタイプ(腹圧性尿失禁)

重いものを持ち上げたり、咳やくしゃみをしてお腹に力が入った時に尿が漏れてしまうのが、「腹圧性尿失禁(Belastungsinkontinenz)」です。40代の女性の尿漏れの多くがこのタイプです。

● 急に我慢できないタイプ(切迫性尿失禁)

急にトイレに行きたくなり(尿意切迫感)、間に合わずにトイレの手前で漏れてしまうのが「切迫性尿失禁(Dranginkontinenz)」です。膀胱が過敏になっている状態(過活動膀胱、Überaktive Blase、略はOAB、後述)が原因で、男性では前立腺肥大、女性では骨盤臓器脱が原因となります。40歳以上の男女の8人に1人にみられるといわれています。

● 少しずつ漏れるタイプ(溢流性尿失禁)

自分で尿を出したいのに尿が出にくくなる排尿障害に伴い、少しずつ尿が漏れてしまうのが「溢流性尿失禁(Überlaufinkontinez)」です。このような排尿障害の原因としては男性の前立腺肥大症があります。

● 排尿機能は正常なタイプ(機能性尿失禁)

排尿機能は正常なものの、例えば足が不自由でトイレまで間に合わない、認知症があって本来のトイレで用足しができないような場合を「機能性尿失禁」と呼びます。

女性の尿漏れ

● 男性より多い理由

① 解剖学的に女性の尿道は男性に比べ太く短い ② 経膣分娩で骨盤底の筋肉や付随する組織が引っ張られ生じた骨盤底筋の緩みが、尿漏れを起こしやすくしています。ドイツでの調査でも25〜35歳の出産後の女性の4人に1人に尿漏れがみられるということです。

● 女性の尿漏れには2つのタイプ

お腹に力が入った時にちょっと漏れる腹圧性尿失禁と、急に我慢し難い尿意を催して漏らしてしまう切迫性尿失禁の2つのタイプの尿漏れがみられます。女性の尿漏れ全体の約3割に両者が混在しています。

● 咳、くしゃみで

尿漏れは、咳(Husten)、くしゃみ(Niesen)の時に最も起きやすく、さらにスポーツの最中、大笑いなどお腹に急激な力が加わった時にもみられます。体が冷えてトイレが近くなる冬の時期も起こりやすくなります(2010年のユニ・チャームの調査より)。

● 骨盤底筋トレーニングが効果的

軽い腹圧性尿失禁は骨盤底筋トレーニング(Beckenboden-Training/-Übungen)によって改善が期待できます。骨盤底筋トレーニングは自分できますが、最初は理学療法科(Phisiotherapie)で指導してもらうことも可能です。

● 婦人科、泌尿器科に相談

「恥ずかしい」「何科を受診すれば良いのか」という人も、泌尿器科(Urologie)や、妊娠中にお世話になった婦人科(Gynäkologie)に相談してみましょう。分からなければまず家庭医(Hausarzt/-ärtin)に。

男性の尿漏れ

● 急に我慢できない尿意

例えば、水の流れる音を聞いた時だけでも急に我慢できない尿意を催し、トイレまで間に合わずに尿が漏れてしまうことがあります。このような症状は「過活動膀胱」とも呼ばれています(後述)。

● 多くは前立腺肥大症が関係

男性の尿漏れの多くは、前立腺肥大症(Prostatahypertrophie)に起因します。本症の50~70%に過活動膀胱がみられます。トイレが終わっても「切れ」が悪く、尿道内に貯まり残っていた尿がポタポタと垂れ出る排尿後尿滴下(しずく漏れ)も特徴的です。

● 症状の改善には?

排尿後のちょい漏れは尿道に残っている尿が原因。座ってのトイレでは排尿後に会陰部(睾丸と肛門の間)の皮ふを指で下から押し上げるように尿を絞り出すことである程度改善します。夜間のトイレや頻尿に対する膀胱機能や排尿機能の改善には、お尻の肛門の締めたり緩めたりする「肛門体操」や下半身強化の「スクワット体操」が効くこともあります。前立腺肥大の治療は、その程度と合併症状の有無により、薬物治療や手術療法が選択されます(詳しくは本誌839号「男性の前立腺の病気」を参照)。

● 泌尿器科に相談

似た症状をきたす前立腺がん(Prostatakarzinom)の除外も含め一度泌尿器科に診てもらいましょう。

「過活動膀胱」とは何?

● どのような症状が?

「尿意切迫感」を主症状とする膀胱状態の総称で、本来は単一の病気ではありません。時に「切迫性尿失禁」を伴い、多くは「尿回数が多い」「夜間のトイレ」を併せ持ちます。

● 原因は何?

前述の女性の骨盤底筋の緩み、男性の前立腺肥大、加齢化、膀胱と排尿機能を司る中枢神経系や末梢神経の障害などです。原因が分からない場合もあります。

● どのように診断を?

膀胱炎などの尿所見がなく、繰返し尿意切迫がある場合に診断されます。ほかの尿路の病気を除外するため、過活動膀胱問診票、国際前立腺症状スコア、トイレに行った時刻と尿量などを記した排尿日誌の評価、さらに排尿後の腹部超音波検査での膀胱の残尿量の測定などを行います。

● 治療方法は?

日常生活で改善できる点の改善、骨盤底筋トレーニング、膀胱訓練などの行動療法と膀胱機能を改善する薬物療法(男性では前立腺肥大症に対する治療も)が行われます。

● 長時間の外出はトイレの場所の確認を

ドイツの街中にトイレが少ないことも不安助長の要因。予めトイレの場所を確認しておくことが大きな安心に繋がります。いざという時の尿漏れ用の尿ケア用品も販売されています(Einmalschlüpfer mit enthaltener Vorlage 、日本のチャームナップ®に似ています)。

尿意切迫感(過活動膀胱)の日常生活での対策

● 水分をとる量を調節する
● 便秘対策も大切
● 下半身を冷やさないようにする
● 骨盤底筋トレーニング
● カフェイン、アルコールの摂取制限
● 少しずつトイレの間隔を延ばしていく
● 街のトイレの場所を確認しておく

 
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馬場恒春 内科医師、医学博士、元福島医大助教授。 ザビーネ夫人がノイゲバウア馬場内科クリニックを開設 (Oststraße 51, Tel. 0211-383756)、著者は同分院 (Prinzenallee 19) で診療。

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