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ジャパンダイジェスト
Fr. 28. Feb. 2020

CDU・緑の党の党大会が示した明暗

次の連邦議会選挙は、2021年10月24日。あと2年足らずである。各政党は首相候補を絞り込むための作業を始めた。キリスト教民主同盟(CDU)が11月22~23日に、緑の党が11月15~17日に開催した党大会は、再来年の総選挙で大きな波乱が起きることをはっきりと示した。支持率低下に苦しむ伝統政党と、「国盗り」を目指す環境政党の躍動感と結束の強さ。2つの党大会は、この格差を白日の下にさらした。

11月22日、CDUの党大会で演説するクランプ=カレンバウアー氏11月22日、CDUの党大会で演説するクランプ=カレンバウアー氏

批判を封じ込んだクランプ=カレンバウアー氏

CDUのライプツィヒでの党大会は、A・クランプ=カレンバウアー党首にとって正念場だった。同党では彼女の指導力に疑問を呈する声が強まっていたからだ。「首相候補にふさわしくないのではないか」という見方も浮上している。だが彼女は党大会での捨て身の演説によって、こうした不満を少なくとも一時的に鎮静化させることに成功した。

同氏は「私が望んでいる将来のドイツが皆さんの希望と異なる場合には、今日この場で率直に話し合って、諍(いさかい)に終止符を打ちましょう。もしも私の構想が皆さんの希望と一致する場合には、今日から一緒に仕事に取り組みましょう」と訴えた。彼女は「私に不満があるならば、党大会ではっきりさせよう」という「最後通牒」を突き付けたのだ。この演説直後、代議員たちは総立ちになり7分間にわたって党首に拍手を送った。これによって同氏は一種の「みそぎ」を受けて、自分への批判を封じ込んだのである。

党首の人気がわずか18%に下落

党首に対する批判の理由の1つは、今年9~10月にザクセン州など3つの州で行われた州議会選挙で、CDUが「惨敗」したことだ。同党のテューリンゲン州議会選挙での得票率は前回に比べて約12ポイント、ザクセン州とブランデンブルク州ではそれぞれ約7ポイント減った。右翼政党ドイツのための選択肢(AfD)がどの州でも、得票率を大幅に増やしたのとは対照的だ。昨年11月の党大会での党首選で敗れたF・メルツ元院内総務は、「連邦政府のイメージは最悪だ」と公言し、旧東ドイツ地域での州議会選挙の連敗の責任はメルケル政権にあると批判した。

メルケル首相の後継者として最も有力視されていたクランプ=カレンバウアー氏の人気は下がる一方だ。公共放送ARDの意識調査によると、同氏への支持率は今年1月には46%だったが、11月にはわずか18%に下落した。同氏は7月に連邦国防大臣に就任したが、突然「欧州諸国はシリア北部に軍を派遣して緩衝地帯を設置し、トルコ軍の侵攻で危険にさらされているクルド人を守るべきだ。ドイツも約2500人の兵士を送る準備がある」と発表。同氏はこの構想を大連立政権のパートナーである社会民主党(SPD)と全く協議していなかった。またクランプ=カレンバウアー氏は、トルコ軍のシリア侵攻を誤って「併合」と発言してしまい、国際政治の領域での知識や経験不足が露呈した。

それだけに党大会での代議員たちのソフトな反応は意外だった。最大のライバルのメルツ氏さえ、クランプ=カレンバウアー氏を全く批判せず、指導部に協力する姿勢を見せた。CDUはメディアと有権者が注目する党大会で、分裂している印象を与えることを避けたのだ。つまり本当は険悪な関係の夫婦が、公では仲良く振舞うようなものである。ただしこの党大会でCDUの問題が抜本的に解決されたわけではなく、多くの有権者が厳しい目を向けていることに変わりない。

緑の党の次期政権入りは確実か?

これとは対照的に、圧倒的な統率力と団結、政権奪取への熱意を示したのが、緑の党のビーレフェルトでの党大会だった。共同代表A・ベアボック氏とR・ハベック氏は、CDUやSPDの執行部が足元にも及ばない強い指導力を発揮した。

ベアボック氏は代議員の97.1%、ハベック氏は90.4%という高い支持率で代表に再選された。これは緑の党の党大会での代表選における支持率としては、過去最高である。緑の党は1998~2005年までSPDとの連立政権に参加したが、当時は副次的な役割しか演じることができなかった。ベアボック氏は、「われわれは1998年には他党の随伴役にすぎなかった。しかしそのような時代は終わった。これからは、われわれが自ら政策を実行する番だ」と語り、再来年の選挙で政権に参加し、緑の党が連邦首相府のあるじになるという野望を明確に打ち出した。

緑の党は1999年にもビーレフェルトで党大会を開いた。当時外務大臣だったJ・フィッシャー氏は、左派勢力からインクの入った袋を投げつけられた。彼はコソボに連邦軍を派遣することを支持していたからだ。しかし今回の党大会では、共同代表の両氏が左派を見事にコントロールし、結束の固さを見せつけた。

指導層の過半数が緑の党の入閣を希望

11月のARDの意識調査によると、緑の党への支持率は22%で、第二党の座にある。現在の状況が続けば、緑の党が連立政権に入ることは確実だ。アレンスバッハ研究所によるドイツの企業幹部や政治家など指導層へのアンケートでは、「CDUと緑の党の連立政権を望む」と回答した比率は、2月には19%だったが、11月には31%に増加。回答者の62%が、緑の党が何らかの形で政権に加わることを望んでいる。上昇気流に乗った緑の党と下降を続けるCDUが見せた明暗は、新時代の到来を暗示しているように思える。

 

熊谷徹
1959年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、NHKに入局。ワシントン支局勤務中に、ベルリンの壁崩壊、米ソ首脳会談などを取材。90年からはフリージャーナリストとしてドイツ・ミュンヘン市に在住。過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題を中心に取材、執筆を続けている。著書に「ドイツの憂鬱」、「新生ドイツの挑戦」(丸善ライブラリー)、「ドイツ病に学べ」、「住まなきゃわからないドイツ」、「びっくり先進国ドイツ」(新潮社)など。
http://www.tkumagai.de
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