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TK Techniker
Fr. 16. Apr. 2021

CDU党首にラシェット氏 連邦首相候補決定は春に

キリスト教民主同盟(CDU)は、1月16日のオンライン党大会で、ノルトライン=ヴェストファーレン(NRW)州のアルミン・ラシェット首相(59歳)を新党首に選んだ。

1月16日のオンライン党大会で演説するラシェット氏1月16日のオンライン党大会で演説するラシェット氏

党首選では辛勝

CDUはメルケル路線の継承者として知られるラシェット氏を中心に、コロナ・パンデミックや景気後退などの難題に取り組む。だが最も注目される連邦議会選挙の首相候補は決まっておらず、キリスト教社会同盟(CSU)のマルクス・ゼーダ―党首とラシェット氏が協議して、4月の復活祭後に決定される予定だ。

ただしラシェット氏は、圧勝したわけではない。第1回目の投票では、ラシェット氏だけでなく、中道右派のフリードリヒ・メルツ元院内総務、連邦議会のノルベルト・レットゲン外務委員長も過半数を取れなかった。メルツ氏が385票を獲得したのに対し、ラシェット氏の得票数はそれよりも5票少なかった。この開票結果は、CDU内部の路線が必ずしも統一されていないことを物語っている。ラシェット氏は決選投票で521票を獲得し、メルツ氏(466票)を下した。

メルケル路線の強力な支持者

ラシェット氏はドイツ語で「Merkelianer(メルケリアーナー)」、つまり熱烈なメルケル支持者の1人。メルケル氏が2015年に多数のシリア難民にドイツでの亡命申請を許したために、党内外から厳しく批判された時にも、頑として首相の難民政策を支持し続けた。

ラシェット氏は党大会での演説で、「われわれは、社会の真ん中で強くなることによってのみ勝利することができる。この国には、まずメルケル首相が好きで、次にCDUが好きだという人がたくさんいる。メルケル首相の優れた点は、『信頼感』という言葉に集約することができる。今CDUが党として必要としているのは、まさに信頼感だ」と語っている。

同氏は、フリージャーナリストとしてラジオ放送局やアーヘンの教会新聞などのために働いた経験を持つ。1989年にCDUに入党して5年後には連邦議会議員となった。1999年から6年間は欧州議会の議員も務めている。2017年のNRW州議会選挙ではCDUが第1党となり、州首相の座を射止めた。

復活祭後に首相候補を決定か

最大の焦点は、今年9月26日の連邦議会選挙へ向けて、誰が首相候補になるかである。実はCDU・CSUには、ラシェット氏よりも有力視されている政治家がいる。バイエルン州のゼーダ―首相だ。ドイツ第2テレビ(ZDF)が昨年11月13日に公表した世論調査によると、「CSUのゼーダ―党首が首相候補に適している」と答えた人の比率は58%で、ラシェット氏と答えた人の比率(27%)を大きく上回っている。

ゼーダ―氏は、「誰が連邦議会選挙で首相候補として出馬するかは、私とラシェット氏の話し合いで決める」と語っている。両氏ともに、緑の党との連立については前向きの姿勢を取っている。ゼーダ―氏は、昨年3月以来厳しいコロナ対策を行ってきたことで人気が急上昇した。しかしCSUでは、彼がバイエルン州の首相のポストに留まることを希望する声が強い。

ロックダウン強化の背景に、変異株への不安

現在の政局の焦点は、コロナ対策だ。ドイツではコロナ対策の巧拙が敏感に政治家の支持率に反映される。12月16日に施行されたロックダウンによって、直近1週間の人口10万人あたりの新規感染者数は、減る傾向を見せている。イェンツ・シュパーン連邦保健大臣は、「市民が接触や旅行を自粛してくれたからだ」と述べている。

だが、油断は禁物だ。ドイツでは今も毎日約1000人の市民が、新型コロナウイルスの犠牲となっている。メルケル政権は、新規感染者数が減る兆候を見せているにもかかわらず、ロックダウンを2月14日まで延長した。さらに企業に対してテレワークを強化させる政令を発布したほか、商店や公共交通機関を利用する際にFFP2マスクなど高性能のマスクの着用を義務付けるなど、ロックダウンを強化した。

この背景には、英国で見つかった新型コロナウイルスの変異株B.1.1.7について、メルケル政権が警戒心を強めているという事実がある。オックスフォード大学の研究によると、B.1.1.7の感染率は、これまでの新型コロナウイルスよりも20~35%高い(70%という説もある)。しかも英国のボリス・ジョンソン首相は1月22日の記者会見で、「B.1.1.7は感染率だけではなく、死亡率も従来のウイルスよりも高いことを示すデータがある」と発言している。

ベルリン・シャリテー医科大学病院のクリスティアン・ドロステン教授も、「現在は1日あたりの新規感染者数が2万~3万人だが、B.1.1.7の抑え込みに失敗したら、毎日10万人ずつ感染者が増えるかもしれない」と警告している。B.1.1.7によって新規感染者数が急増した場合、医療資源が枯渇して死者数がさらに増える危険がある。頼みの綱である予防接種も、昨年夏の欧州連合(EU)の注文数が少なすぎたことや、認証の遅れ、メーカーの生産が間に合わないことなどにより、遅々として進まない。

ラシェット氏、ゼーダ―氏のどちらがメルケル首相の後継ぎになるにせよ、パンデミックおよび不況との闘いという険しい道程を歩まざるを得ないことだけは確実である。

 
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熊谷徹
1959年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、NHKに入局。ワシントン支局勤務中に、ベルリンの壁崩壊、米ソ首脳会談などを取材。90年からはフリージャーナリストとしてドイツ・ミュンヘン市に在住。過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題を中心に取材、執筆を続けている。著書に「ドイツの憂鬱」、「新生ドイツの挑戦」(丸善ライブラリー)、「ドイツ病に学べ」、「住まなきゃわからないドイツ」、「びっくり先進国ドイツ」(新潮社)など。
http://www.tkumagai.de
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