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Sa. 31. Okt. 2020

どうなる? ドイツ連邦議会選挙

2013年は、ドイツにとって重要な選挙が目白押しの年だ。州議会選挙は、1月20日にニーダーザクセン州、9月15日にバイエルン州、12月にヘッセン州で行われる。さらに9月には、今後4年間の国政の行方を大きく左右する連邦議会選挙が実施される。連邦議会選挙の投票日は、本稿を執筆している1月上旬の時点では9月22日が有力である。

メルケル首相に人気集中

現在、アンゲラ・メルケル首相の人気は比較的高い。メルケル氏は、昨年12月4日にキリスト教民主同盟(CDU)の党大会で党首に再選されたが、その際には97.94%もの支持率を得た。彼女は2000年からCDU党首を務めているが、これほど高い支持率を得たことは今までになかった。

公共放送ARDが1月4日に行なった世論調査によると、CDUと姉妹政党キリスト教社会同盟(CSU)への支持率は、4年前の連邦議会選挙に比べて約7ポイント増えて41%となっている。

政党支持率

好景気が追い風

メルケル氏の人気が上昇した最大の理由は、好景気である。連邦雇用庁によると、2012年の就業者数は、前年に比べて1%増えて4150万人となり、過去最高の記録を達成した。確かに私が住んでいるミュンヘンでも、エンジニアなど特殊技能を持つ人材が枯渇しているだけではなく、パン屋やスーパーマーケットまでが、「店員募集中」の張り紙を出している。私はこの国に23年間住んでいるが、これほどの好景気は珍しい。

連邦統計局によると、メルケル氏が首相に就任した2005年の失業率は10.5%。457万人が路頭に迷っていた。しかし過去8年間で失業者数は173万人も減った。昨年11月時点の失業率は5.3%。ドイツ統一以来最低の水準である。バイエルン州の失業率は4%を割っており、いわゆる「完全雇用状態」を実現した。

もちろんこれはメルケル氏だけの業績ではなく、前任者のゲアハルト・シュレーダー氏が抜本的な労働市場改革を実施し、労働コストを削減したことが奏功している。メルケル氏は、赤緑政権が実施した「痛みを伴う改革」がもたらした果実を手にするという、幸運な立場にあるわけだ。

FDPの地盤沈下

しかしメルケル氏とて、油断は禁物である。保守中道政権の連立相手である自由民主党(FDP)の低迷が著しいからだ。FDPへの支持率は、前回選挙の14.6%から3分の1以下に減って、わずか4%。このため3党を合わせた支持率は45%と、前回に比べて約3ポイント減っている。ドイツでは、いわゆる「5%条項」に基づき、得票率が5%未満の政党は会派として議席を持つことができない(小政党の乱立を防ぐため)。つまり今のままでは、FDPの議員団が連邦議会から締め出される恐れもあるのだ。

FDP低迷の最大の理由は、フィリップ・レスラー党首の指導力の欠如である。党内ではレスラー氏への風当たりが日に日に厳しくなっている。このため同党は、ニーダーザクセン州議会選挙で敗北した場合、党首交代によって支持率の挽回を図る可能性が高い。

メルケル首相にとっては、FDPが支持率を回復できるかどうかが政権維持を大きく左右するのだが、CDUには、「FDPが現在の泥沼から抜け出せない場合、CDU・CSUは緑の党との連立を考えてはどうか」という意見を持つ議員すらいる。実現の可能性は低いとは思うが、FDPの状況がいかに深刻であるかを示すエピソードだ。

シュタインブリュック氏の講演問題

一方、野党側もいまひとつ元気がない。昨年中頃の時点では、今年、社会民主党(SPD)と緑の党による連立政権が誕生するのは必至と見られていた。確かにSPDと緑の党への支持率は、前回の選挙に比べて約7ポイント増えて41%となっている。だが、SPDが2005年の大連立政権で財務相を務めたペール・シュタインブリュック氏を首相候補に選んでから、雲行きが怪しくなっている。

それは、同氏が財務相を辞めてからの3年間に、企業などのために75回講演を行い、125万ユーロ(1億2500万円・1ユーロ=100円換算)の講演料を受け取っていたことがわかったからだ。同氏はこの講演料を税務申告しており、法的には問題ない。しかし財務相を務めた議員が、企業から多額の報酬を受け取っていたことは、多くの市民を驚かせた。この問題を受け、SPDへの支持率は徐々に下がりつつある。

緑の党も、福島第1原発事故の直後は20%近い支持率を誇っていたが、その後勢いを増した海賊党に若い有権者の票を横取りされつつある。さらに保守党も含めてすべての政党が脱原子力と再生可能エネルギーの拡大を支持しているので、緑の党が環境政党としての独自色を出すのが難しくなってきている。

次の選挙でも、勝敗を決するのは固定した支持政党を持たない浮動層である。中国や米国、ドイツ以外のユーロ圏加盟国の景気が悪化する中、貿易立国ドイツの経済の先行きにも黄信号が灯っている。浮動票は、今年から来年にかけての景気の悪化に対して、有効な対策を打ち出せそうな政党に流れるに違いない。

その意味で、連邦議会選挙の最大の争点は「経済政策」と「社会保障政策」に絞られるだろう。

18 Januar 2013 Nr.946

 
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熊谷徹
1959年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒業後、NHKに入局。ワシントン支局勤務中に、ベルリンの壁崩壊、米ソ首脳会談などを取材。90年からはフリージャーナリストとしてドイツ・ミュンヘン市に在住。過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題を中心に取材、執筆を続けている。著書に「ドイツの憂鬱」、「新生ドイツの挑戦」(丸善ライブラリー)、「ドイツ病に学べ」、「住まなきゃわからないドイツ」、「びっくり先進国ドイツ」(新潮社)など。
http://www.tkumagai.de
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