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Mo. 09. Dez. 2019

水彩画からのぞく芸術の世界 寄り道 小貫恒夫

66. ゴッホ⑤:跳ね橋とクロー平原

ラングロアの跳ね橋(アルル)
ラングロアの跳ね橋(アルル)

アルル滞在中のゴッホは、絵の題材を求めて精力的に歩き回っていました。到着した2月には雪景色を2枚、さらに翌3月には街から1キロメートル以上も南に下がったラングロア運河に掛かる「アルルの跳ね橋」を見つけ、これまた2枚も描いています。跳ね橋はフランスでは数少ないのですが、故郷オランダでは典型的な橋なので郷愁を感じたのでしょうね。よほど気に入ったのか、4月にもう1枚、5月には対岸からの眺めを描きました。私はその橋を一度見てみたかったので、近くまで行きそうなバスに乗り込み、跳ね橋を目指すことに。降りたところには何もなく、カラッカラの畑ばかりが広がる平原をしばらく歩いていきます。

やっとそれらしき跳ね橋が遠くにポツンと見えて来ました。橋を渡ったたもとには、一軒の古い農家が寂しく立っています。この跳ね橋は復元されたものだそうですが、ゴッホが描いたあちこちの位置に立って、感慨深く眺めてみました。3月から5月にかけては果樹が見事に咲き誇るので、絵描きの気持ちを沸きたたせます。ゴッホも桃をはじめアンズやリンゴ、梨やアーモンドなどの果樹園を連作のように描きました。

そして6月には、クロー平原で麦畑や収穫の風景をまたしても数多く描いています。なかでも私が好きなのは「クロー平原の収穫」と題された1枚で、穏やかで長閑な田園風景が美しい作品です。時期としても、6月で最も過ごしやすい季節ですし、ゴッホも穏やかな気持ちで描いていたようで、この絵には彼独特の激しいタッチや強烈な色使いなどは見受けられません。空も南仏の抜けるようなブルーではなく、くすんだエメラルド・グリーンに抑えられています。

青みを帯びた荷車が中央に置かれ、西洋画の構図としては多少違和感を覚えてしまうのですが、ゴッホは浮世絵の奇抜な構図を意識したのでしょうか。それを中心に収穫をする人たちや家路に向かう荷車が、そして遠景には彼らが帰るであろう農家が点在しています。遠くにはアルピーユ山脈が描かれているのですが、それほど高くない山脈は安心感すら漂わせます。この絵に描かれているのは、温かく平穏な日常。私はこの絵を見ていると、必ずビゼーの「アルルの女」からの「パストラール」のメロディーが頭をよぎり、プロヴァンスの暖かい風を感じます。

 

小貫 恒夫

小貫 恒夫 Tsuneo Onuki

1950年大阪生まれ、武蔵野美術大学舞台美術専攻。在学中より舞台美術および舞台監督としてオペラやバレエの公演に多数参加。85年より博報堂ドイツにクリエイティブ・ディレクターとして勤務。各種大規模イベント、展示会のデザインおよび総合プロデュースを手掛ける傍ら、欧州各地で風景画を制作。その他、講演、執筆などの活動も行っている。
www.atelier-onuki.com
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