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Mo. 09. Dez. 2019

水彩画からのぞく芸術の世界 寄り道 小貫恒夫

67. ゴッホ⑥:サント・マリー・ドゥ・ラ・メール

夕靄のサント・マリー・ドゥ・ラ・メール
夕靄のサント・マリー・ドゥ・ラ・メール

ゴッホは題材を求めてアルル近郊を精力的に歩き回っていましたが、20キロほど南へ下った、地中海に面した街サント・マリー・ドゥ・ラ・メールへも足を運んでいます。途中、ローヌ川の河口でカマルグと言われる広大なデルタ地帯を通りますが、ここには野生のフラミンゴや馬がたくさん生息しています。ここの馬は小振りで愛らしい姿です。それに本物のカウボーイもいて、牛の放牧をしています。水田地帯も広がり、ちょっと日本の原風景を思い起こさせますが、なんでも日本人が農法を教えたそう。そりゃ、日本の風景に似るわけですね。

さて、サント・マリー・ドゥ・ラ・メールにある教会の塔が見えてきました。この街の名前の由来は、キリストが昇天した後、エルサレムを追われた3人のマリア、すなわちマグダラのマリア、マリア・サロメ、そしてマリア・ヤコベたちを乗せた小舟が、たえなる風に乗って一晩で漂着したこと。そのため、「海からの聖マリアたち」という意味を地名にしたそうです。彼女らはこの地で布教を始めるのですが、そのうちのサラというエジプト人の従者が、不治の病に苦しんでいたシンティ・ロマの子どもを癒したことから、守護神として崇められるようになりました。この地にはシンティ・ロマがたくさん住んでいたそうで、サラの命日には大きな祭りが催されます。また、サラの肌が黒かったことから、教会の地下には黒いマリア像が祭られており、アルジェリア辺りからも多くの人が参拝に訪れます。

アルジェリアから大勢やってくるスアブ族の噂をゴッホも聞きつけていたようで、ユニークな衣裳をまとったスアブ人の肖像を描いています。まだそれほど知り合いもなく、モデルになってくれる人がいなかったゴッホにとっては、スアブ人は珍しくもあり、貴重な存在だったようです。

また、風景画もたくさん描いています。畑を通した遠景の街並みや、初めて見る明るい海に感銘を受け、明るく伸びやかでキラキラとした風景を捉えました。遠くに浮かぶカラフルな漁船も、波に揺られる躍動感に溢れています。そのうちの1枚では、浜辺に上げられている漁船を描いていますが、マストの角度がリズミカルでいかにも心地よさそう。この絵は私が高校生のころ買ったゴッホの画集の表紙に使われていたので、観るたびに懐かしく、当時を思い浮かべています。

 

小貫 恒夫

小貫 恒夫 Tsuneo Onuki

1950年大阪生まれ、武蔵野美術大学舞台美術専攻。在学中より舞台美術および舞台監督としてオペラやバレエの公演に多数参加。85年より博報堂ドイツにクリエイティブ・ディレクターとして勤務。各種大規模イベント、展示会のデザインおよび総合プロデュースを手掛ける傍ら、欧州各地で風景画を制作。その他、講演、執筆などの活動も行っている。
www.atelier-onuki.com
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