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水彩画からのぞく芸術の世界 寄り道 小貫恒夫

97. シューベルトの交響曲は番号がややこしい

ウィーンの旧市街ウィーンの旧市街

シューベルトは生前、六つの交響曲を発表していました。彼が没して10年ほど経った頃、ウィーンを訪れたシューマンは、シューベルトのお兄さんであるフェルディナントの案内で彼の部屋に通されます。その時、シューマンは机の上でほこりにまみれた楽譜を発見します。これはすごい曲であると悟った彼は、家族の許可を得てライプツィヒへと持ち帰りました。

それがメンデルスゾーンの指揮、ライプツィヒのゲヴァントハウス管弦楽団によって初演されますが、これが彼の残した最後の交響曲ハ長調でした。一般的に「ザ・グレート」と呼ばれますが、これは英国の楽譜出版社が発刊する際に、ほかにもあるシューベルトのハ長調の交響曲と区別するため、長い方と分かるように「ザ・グレート」と命名したそうです。ちなみにシューマンが発見したした際、当時としてはあまりにも長い曲だったので、「天国的な長さだ!」と言ったそうです。

この曲は世界的に知られるようになり、自然と「第七番」の交響曲として番号が付けられました。ところがその後、さらに未発表の交響曲が発見されます。これは2楽章までしか書かれていなかったため、交響曲「未完成」として発表されました。4楽章で構成されるべき交響曲の形式としては未完成ですが、あまりに素晴らしい曲で、精神的には完全に完成されています。この「未完成」交響曲は「第八番」とされましたが、後になって第七番交響曲より以前に書かれた曲であることが判明し、番号の入れ替えがありました。

さらに、まだまだ膨大な未整理の楽譜が残っていたため、オーストリアの音楽学者オットー・エーリヒ・ドイチュによって事細かな調査が行われ、作品番号の整理が行われました。そこで発見されたホ長調の交響曲が、作曲年代に従って「第七番」として食い込みます。それがシューベルト作品番号の基本として受け継がれてきました。

私もこれに従って、「未完成」が第八番、「ザ・グレート」が第九番と思って長年親しんできました。ところが、2007年のシューベルト没150周年を機に、国際シューベルト協会によって再び作品番号の整理が敢行されました。その結果、第七番交響曲は自筆譜では演奏不可能との理由から外され、再び「未完成」交響曲が第七番、「ザ・グレート」が第八番へと変更。やれやれ、私の頭の中もいまだに整理がついていません。

 
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小貫 恒夫

小貫 恒夫 Tsuneo Onuki

1950年大阪生まれ、武蔵野美術大学舞台美術専攻。在学中より舞台美術および舞台監督としてオペラやバレエの公演に多数参加。85年より博報堂ドイツにクリエイティブ・ディレクターとして勤務。各種大規模イベント、展示会のデザインおよび総合プロデュースを手掛ける傍ら、欧州各地で風景画を制作。その他、講演、執筆などの活動も行っている。
www.atelier-onuki.com
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