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水彩画からのぞく芸術の世界 寄り道 小貫恒夫

110. ラヴェッロ(Ravello)のこと

ヴィラ・ルーフォロの庭からヴィラ・ルーフォロの庭から

アマルフィーを出発したバスは、真っ青な海を背景にぐねぐねと山道を登り、20分ほどで終点へ到着しました。ここはナポリの南、ソレント半島の中央南に位置するラヴェッロという山間の小さな街です。

なぜこの街へ来たかというと、ワーグナーがかつて滞在し、楽劇「パルジファル」第二幕の花園のシーンを着想したという、庭園が見事なヴィラ・ルーフォロを訪れるためでした。ここはもともと個人の邸宅でしたが、まるでお城のような佇まいです。それに、なんといっても高低差をうまく使った広大な庭園が素晴らしい。一番下のテラスには、テニスコートほどもある大きな花壇があります。毎年夏にはここに仮設ステージを設け、ラヴェッロ音楽祭が催されています。もともとワーグナーにちなんで、彼の作品を取り上げてきたそうですが、現在はさまざまな作曲家の作品を演奏しています。

また、毎年音楽祭のテーマを設けており、このテーマもワーグナーにちなんで「ライトモチーフ」と呼ばれます。これまでに「夢」や「旅」などのテーマが設定され、プログラムが組まれてきました。出演者も豪華で、オーケストラだと近場ではナポリのサンカルロ歌劇場のオーケストラや、ローマのサンタ・チェチェーリア管弦楽団、ミラノのスカラ座のオーケストラなど。国外からは、ロンドン交響楽団やドレスデン・シュターツ・カペレ、ミュンヘン・フィルに、フランス国立管弦楽団などが出演し、指揮者もリッカルド・ムーティをはじめ、ズービン・メータやダニエル・ハーディングなどの大御所も登場します。

さて、このヴィラを後にして、さらに奥へと細い道を登って行くと、20分ほどでヴィラ・チンブローネの入り口が現れました。現在はホテルになっていますが、ここもお城のような風格があり、ヴィラ・ルーフォロ同様に広大な庭園が広がっています。一番奥にある、手すりに胸像が並んだテラスからの眺めが絶景です。

中心の広場へと戻り、街外れの地元感溢れる小さなレストランで昼食を取りました。上下フリルの付いた赤いエプロン姿で、大きな髪飾りを着けたおばあさんが切り盛りをしています。帰り際、店内に飾ってあった写真をふと見ると、そこにはなんと、ムーティと親しげに寄り添うおばあさんの姿がありました。

 
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小貫 恒夫

小貫 恒夫 Tsuneo Onuki

1950年大阪生まれ、武蔵野美術大学舞台美術専攻。在学中より舞台美術および舞台監督としてオペラやバレエの公演に多数参加。85年より博報堂ドイツにクリエイティブ・ディレクターとして勤務。各種大規模イベント、展示会のデザインおよび総合プロデュースを手掛ける傍ら、欧州各地で風景画を制作。その他、講演、執筆などの活動も行っている。
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