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ロンドンのゲストハウス
Do. 14. Nov. 2019

2. 風景画への取り組み

早春のオーバーカッセル(デュッセルドルフ)(C)Tsuneo Onuki
早春のオーバーカッセル(デュッセルドルフ)

風景画家にとって春は待ち遠しいもので、毎年、暖かくなるのをウズウズしながら待っています。3月初旬のようやく晴れたある日、「よし、今日は描くぞ!」とばかりに勢い良くオーバーカッセルの川原へ出掛けました。

この地区のライン川沿いには、色とりどりのファサードが美しい素敵な家々が立ち並んでいます。その中でも赤い色が印象的な家を見付けて、迷わず描き始めました。結局、2日間通って仕上げたのですが、まだ寒かったせいか、酷い風邪を引いてしまいました。

このように、屋外へキャンバスを持ち出して描き始めたのは印象派の画家たちが最初だったのですが、アトリエで描くときは全く感覚が違います。室内で描いていると、どうしてもディテールにこだわったり、観念的になったりして、絵の勢いも薄れた印象になってしまいます。

しかし屋外では、周りを取り囲む雰囲気も感じ取りながら描くことができます。風景の中から一部を切り取って画面の中に収めていくわけですが、その画面からはみ出している部分、すなわちそこで感じた風や温度、香りや音をも、自然にその画面に埋め込むことができるのです。

時間的な制約があり、ある程度の簡略化も必要になりますが、この簡略化の仕方に絵描きとしての技量が試されるため、重要なポイントでもあります。屋外では自ずと筆遣いにも勢いが出て、ササッと描けるので、リズム感やメリハリが付き、絵が生き生きとしたものになります。

こうした観点から見ると、モネの風景画は素晴らしく、描かれている対象の周りの雰囲気がキャンバスの中にぐっと凝縮されています。彼の絵を観ていると、フワッとした心地良い風を感じ、絵の世界に引き込まれ、まるで自分がその風景の中に立っているような錯覚に陥ることさえあります。

このオーバーカッセルの絵は、我ながらすごく気に入っていて、ずっと手元に置いておこうと思っていたのですが、どうしても欲しいとおっしゃる人が現れたのです。以前にも私の絵をお譲りしたことのある方でしたので、渋々手放してしまいました。

かわいい子を里子に出したような、何だかちょっと寂しい気持ちになったことを思い出します。

 
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小貫 恒夫

小貫 恒夫 Tsuneo Onuki

1950年大阪生まれ、武蔵野美術大学舞台美術専攻。在学中より舞台美術および舞台監督としてオペラやバレエの公演に多数参加。85年より博報堂ドイツにクリエイティブ・ディレクターとして勤務。各種大規模イベント、展示会のデザインおよび総合プロデュースを手掛ける傍ら、欧州各地で風景画を制作。その他、講演、執筆などの活動も行っている。
www.atelier-onuki.com
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