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Fr. 25. Sep. 2020

水彩画からのぞく芸術の世界 寄り道 小貫恒夫

21. ウィーンの「ムジーク・フェライン」

21. ウィーンの「ムジーク・フェライン」

シェーンブリュンの庭
シェーンブリュンの庭

クラシック・ファンの誰もが思うように、私も日本にいた頃から一度はこのニューイヤーコンサートでもおなじみのホール(ムジーク・フェライン)で、ウィーン・フィルの演奏を聴いてみたいと憧れていました。落成は1870年ですから、ウィーン・フィルが創設されてから30年ほど。その後150年近くこのホールを本拠地にしてきた彼らは、残響が2.6秒という、音楽ホールとしては驚異的に長い特徴を生かし、どう演奏したらどう響くのか熟知していて、あのまろやかで深みのある演奏を築き上げてきました。

ホールは近年、地下にも増設されましたが、基本的には大ホールと、室内楽用の「ブラームス・ザール」と言われる小ホールが併設されています。大ホールは通称「ゴルデナー・ザール」(黄金の間)とも呼ばれていて、文字通りパイプオルガンをはじめ、天井や欄干、彫刻に至るまで金箔をふんだんに使った装飾が施されています。

建物の基本的な形はシューボックス型と言われる直方体で、平行な壁面が六面もできてしまうため、音が響かず、音楽ホールの設計上はタブーとされていますが、驚くことに前述のような残響の長い豊かな音響空間となっています。

その秘密の一つが金箔です。これが音の反響を促しているのでしょう。回廊を取り巻くカリアティードと言われる女人像をはじめとする彫刻も音の乱反射を生み、さらに、天井裏と板張りの床下には秘密の空間があって、響きを増幅しているそうです。恐らく私の知る限り最も音の動きが“見える”ホールで、オーケストラが弾き終えた瞬間など、天井に向かってサァ~ッと音が登って行くのを目で追うことができます。

どの席でも素晴らしい響きですが、私は特にロジェと言われる舞台正面の平土間の両サイド、一段高くなった席が大好きです。ここではオーケストラから伝わってくる生々しい音とあちこちから跳ね返ってきた音が混じり、時折音の洪水にふんわりと包まれたような瞬間があって、もう夢を見ているようです。私が初めてこのホールで聴いたのは1983年で、ピアノにツィマーマンを向かえ、バーンスタインが指揮したブラームスの「ピアノ協奏曲1番」でしたが、その冒頭、ティンパニーがドドドーンと連打して、コントラバスがガリガリ弾く所では、ホール全体が揺れているようで腰が抜けそうになりました。

 
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小貫 恒夫

小貫 恒夫 Tsuneo Onuki

1950年大阪生まれ、武蔵野美術大学舞台美術専攻。在学中より舞台美術および舞台監督としてオペラやバレエの公演に多数参加。85年より博報堂ドイツにクリエイティブ・ディレクターとして勤務。各種大規模イベント、展示会のデザインおよび総合プロデュースを手掛ける傍ら、欧州各地で風景画を制作。その他、講演、執筆などの活動も行っている。
www.atelier-onuki.com
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