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ロンドンのゲストハウス
Sa. 19. Okt. 2019

27. ビゼーのオペラ「カルメン」 2

セヴィリアの闘牛場
セヴィリアの闘牛場

この「カルメン」は名作中の名作で、上演すればほぼ満席となります。内容はドラマチックながら叙情的なところも相まって起承転結がはっきりした明瞭な作品です。それに何といっても音楽が素晴らしく、上演時間の長いオペラですが、四幕通して飽きることなく緊迫感をもって観ることができます。あのワーグナーもこの作品には、えらく嫉妬をしたようです。というのも、彼が苦労して練り上げた理念を、まだ無名の若きフランス人作曲家がサラッと克服してしまったからです。ワーグナーが提唱していたライト・モチーフ(示導動機。特定のイメージと結び付けられたメロディー)など、すでに序曲から暗示され全編にわたって至るところで変奏をしながら効果的に展開していきます。

スペイン・バスク地方出身の主人公ホセは、セヴィリアにあるタバコ工場の衛兵ですが、気まぐれなカルメンからからかわれたところからドラマは始まります。結局は本気で好きになってしまったホセは、闘牛士のライバル出現後、つれなくなってしまったカルメンを嫉妬に狂い殺害してしまいます。オペラは全四幕ありますが、ホセとカルメンの衣裳が幕を追うごとに対比するように変化します。ホセは伍長の制服から最後はこじき同然の格好に、カルメンは工場での作業着から始まり最終幕の闘牛場のシーンでは華やかに着飾っています。カルメンにとってはほんのお遊び程度だったのですが、バスク人特有の実直で勤勉だけれど頑固で融通が利かない性格が、この事件の背景にあるようです。

ホセには故郷にミカエラという婚約者がいて、わざわざバスクから彼を訪ねて来るのですが、カルメンの魅力に盲目になったホセは、葛藤の末つれなくあしらいます。このミカエラに付けられたアリア(独唱曲)に、ビゼーはフランス風の叙情的でロマンチックなメロディーを与えています。控えめで品格さえ漂うミカエラは、オペラでは魅力的な登場人物です。そんなミカエラに会いたくてバスク地方を訪ねたことがありましたが、対するカルメンは美人の宝庫といわれるアンダルシアのロマ。エキゾティックな色気を漂わせていたのでしょう。田舎者のホセにとってカルメンは、あらがい難い魅力を持っていたのかもしれません。バスクに行ってみて、その気持ちが分かるような気がしました。

 
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小貫 恒夫

小貫 恒夫 Tsuneo Onuki

1950年大阪生まれ、武蔵野美術大学舞台美術専攻。在学中より舞台美術および舞台監督としてオペラやバレエの公演に多数参加。85年より博報堂ドイツにクリエイティブ・ディレクターとして勤務。各種大規模イベント、展示会のデザインおよび総合プロデュースを手掛ける傍ら、欧州各地で風景画を制作。その他、講演、執筆などの活動も行っている。
www.atelier-onuki.com
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