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ロンドンのゲストハウス
So. 17. Nov. 2019

29. ビゼー「アルルの女」から第2組曲

ドーデの風車小屋
プロヴァンスの農家

「アルルの女」第2組曲はジョルジュ・ビゼーが編曲の途中、36歳で亡くなったために親交のあったエルネスト・ギローによって編さんされました。ギローはビゼー作曲の「カルメン」を大歌劇場でも上演できるようグランド・オペラ版に編曲し、ビゼーの名を世界に広めました。

組曲の第1曲目は、金管楽器群が熱く伸びやかな「パストラール」。牧歌的なプロヴァンスの暖かい空気を運びます。続く弦と木管によるけだるいハーモニーはのどかな田園風景を想像させます。しばらくして太鼓を伴った民族舞踊風に変わり、農村の収穫祭でしょうか、楽しさと切なさが漂います。この場面ではゴッホ作「ラ・クローの収穫風景」の絵が浮かびます。曲は「間奏曲」へと移り、弦楽による荘厳で重々しい調べから、一変してサクソホンと木管のハーモニーでメロディーが慈しむように吹かれますが……あれっ、これってシューベルトの「アヴェ・マリア」にそっくり。再度同じ旋律を繰り返した後、サクソホンが新たな甘いメロディーを面々と吹くと、それぞれの節目の終わり部分にも「アヴェ・マリア」のメロディーが何度も暗示されます。そしてフィナーレではオーケストラの全奏で、今度は「アヴェ・マリア」をはっきりと強調します。若い息子に先立たれた母ローズと聖母マリアを重ね合わせるかのようです。ビゼーには「アルルの女」作曲後に第1組曲の「前奏曲」後半に出てくるメロディーを編さんした歌曲があり、「アヴェ・マリア」というタイトルが付いています。

曲は一転して穏やかなハープの爪弾きを伴奏にフルートが甘いメロディーを奏でる「メヌエット」へ。昔、この曲が吹きたくてフルートを買ったほどで、今でも大好きな曲です。最後の「ファランドール」では再び「前奏曲」と同じメイン・テーマが荘厳に奏でられ、そこに民族舞踊の「ファランドール」のメロディーが軽快に絡みます。オーケストラは盛り上がり、明と暗のテーマが交差し合いながら一つのハーモニーへとなだれ込み、フィナーレを迎えます。

アルルの夏は明るい太陽がさんさんと輝いていますが、その影には深い闇をにおわせる瞬間があります。物語の舞台となった農村、アルル近郊のカマルグ辺りにはもっと古い因習やしきたりなどが感じられますが、その影響も背景にありそうです。

 
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小貫 恒夫

小貫 恒夫 Tsuneo Onuki

1950年大阪生まれ、武蔵野美術大学舞台美術専攻。在学中より舞台美術および舞台監督としてオペラやバレエの公演に多数参加。85年より博報堂ドイツにクリエイティブ・ディレクターとして勤務。各種大規模イベント、展示会のデザインおよび総合プロデュースを手掛ける傍ら、欧州各地で風景画を制作。その他、講演、執筆などの活動も行っている。
www.atelier-onuki.com
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